元リッツ・カールトン日本トップが語る組織論
社長、「ヒトが動く仕組み」をつくることが真の「働き方改革」なんです Sponsoredあしたのチーム

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国が働き方改革の旗を振る昨今、「私の考え方は、もう時代遅れなのかな」。こんなため息をつく経営者が多いでしょう。自らの若いころを思い返せば「世の中に新しい価値を提供しよう」と、寝食も忘れて仕事に没頭した。それを、「いまの若い社員たちにも体験させてやりたい」と考えるのは、間違いなのか──。いいえ、そんなことはありません。会社に強制されることなく、全社員が顧客のため、仕事に没頭する。そんな「感動を顧客に提供する組織」をつくれるのです。リッツ・カールトンホテルの日本支社長だった高野さんに、その要諦を聞きました。


閉店時刻オーバーの客に バーテンダーが言ったひとこと

──高野さんが日本でのトップを務めたリッツ・カールトンホテルは、ホスピタリティにあふれた顧客サービスで有名です。でも、昨今は「働き方改革」の必要性が叫ばれ、労働時間短縮が経営の至上命題。ホスピタリティを高めるほど、「お客さまの都合にあわせる」働き方になり、労働時間を自分でコントロールできない。改革に逆行するのではありませんか。

それは違います。あなたのいまの言い方には、「お客さまの都合にあわせる」ことは、社員にとって「つらいこと」「苦しいこと」という前提があります。だからその時間を削減したほうがいい、と。でも、仕事とはそういうものではないですよね。お客さまに最高の体験を与えるのが仕事の目的。お客さまが「よい」と思ってくださったら、それは社員にとって楽しいことであるはずです。社員に対して、機械的に「労働時間を削減します」と言ったら、「私たちの楽しみを奪わないでください」と反対してくる。それが本来のあり方です。

──うーん、理屈はそうでも、現実には「仕事はつらい」「残業はしたくない」と考えている社員が多いと思います。

では、リッツ・カールトンでの実例をお話ししましょう。ホテルのバーで、お客さまが旧友と飲んでいた。積もる話に花が咲き、閉店の午前0時を2時間もオーバー。気がつくと、自分たち以外に客はいない。お客さまは不安にかられ、バーテンダーに聞きます。「ここ、何時までだったっけ?」。「お客さまがお帰りになられる時が閉店時刻でございます」。バーテンダーがニッコリ笑って、そう返答した。お客さまはとても感動してくださいました。

バーテンダーにしてみれば、「お客さまの都合にあわせて」残業しているわけです。でも、それはまったく苦痛ではない。お客さまにバーでのひとときを楽しんでいただくのが仕事。それを実現できているのだから、バーテンダーにとって、なによりも楽しい時間だからです。

──普通の店なら、閉店時刻を過ぎて営業するのはコストがかかるので、2人の客に帰ってもらおうとすると思います。

そうでしょうね。でも、そうするとお客さまは不機嫌になり、「こんな店、二度と来ない」と思うでしょう。店員も後ろめたい思いをして、仕事が楽しくない。結果、売上も業務効率も落ちて、利益は下がる。一方、「お客さまが楽しんでくださっているのであれば、閉店時刻にかかわらず、楽しんでいただく」という態度の店。お客さまは感動してファンになってくれます。リピートで来店いただけるだけでなく、「いい店があるよ」と知人に広めてくれるかもしれません。店員も楽しく働いているので、モチベーションも高い。利益は上がっていくわけです。

事業にひもづけた哲学を 経営者は語っているか

──好循環のスパイラルに入るわけですね。では、「お客さまに最高の体験をしていただくことが、自分にとって最高に楽しいこと」と、社員に意識づけするにはどうしたらいいのでしょう。

経営者が経営哲学を語ることです。ここで大事なことは3点あります。第一に、経営哲学は、事業ミッションにひもづいたものでなければいけない。ありがちなのが、事業ミッションと無関係な抽象的なもの経営哲学にしていること。

──「経営者の好きな言葉」を哲学と称しているケースですね。社員はみんな、ただのお題目だと思っている…。

そうなりがちです。社員に仕事を楽しいものだと思ってもらうには、それではダメです。2つ目に大事なことは、事業ミッションと哲学は関連していなければいけませんが、「事業ミッションそのもの」でもいけない、ということです。「高性能な浄水器の販売を通しておいしくて健康によい水を人々に飲んでもらう」。これを哲学と称していたら、それは誤りです。これは事業ミッションそのもの。哲学はもう一段階、抽象化した上位概念ですから。

──確かに。誤った例だと、水以外の領域で新事業を始めるのは、哲学に反することになってしまいますね。では、3つ目に大事なことを教えてください。

経営者が「本気で語る」ことです。「ウチの社員たちには哲学が浸透していない」というなら、それは本気で語っていないから。事業ミッションにひもづいていて、その上位概念になっている経営哲学を、経営者が本気で語る。そうすれば、社員は仕事を楽しむようになります。

──なぜ、そうなるのでしょう。

仕事の目的が見えるようになるからです。仕事のプロセスでは、「イヤだな」と思うことがあっても、確かな目的が見えていれば苦痛になりません。自分が仕事をすることで、お客さまが笑顔になる。そのビジョンがしっかり見えていれば、そのプロセスで、たとえば重い荷物を運ばなければならないとしても、苦痛には感じないわけです。

一方で、経営哲学がなかったり、経営者が語っていなかったりすると、社員には仕事の目的が見えません。「会社に労働力を時間単位で売って、給料をもらっている」。そんな認識になってしまいます。これで労働時間が長いのであれば、それは大変な苦痛です。「働き方改革」が必要になります。でもその前に、「社員が仕事を楽しんでいないのは、私が経営哲学をきちんと語っていないんだな」と思ってほしいですね。

「顧客との関係性」を 社員の評価基準にせよ

──なるほど。とはいえ、「会社に労働力を時間単位で売って、給料をもらっている」という認識を変えるには、「労働時間」ではない別の軸で社員を評価する必要があると思います。なにか代案はありますか。

もちろん、あります。「顧客との関係性」で評価すればいいんですよ。まず、顧客とまったく関係性を築けていないレベルがあります。誰もその人の提供する価値を購入しようとする気配がない状態。次に、「検討はしてくれるけれど、購入はしてもらえない」レベル。そして、「購入してくれている」レベルがある。その上のレベルが「ファンになってくれている」レベル。さらに上が「よいものだから、あなたも買ったほうがいい」と他人にすすめてくれるレベルです。こうやって、その社員が顧客と築けている関係性の強度を指標に評価するのです。

──わかりやすいですね。「購入してくれている」レベルから「ファンになってくれている」レベルになっていると、どうやって判断したらよいのでしょう。

「顧客がその社員の名前をおぼえている」ことです。会社名や商品名だけでなく、価値を提供してくれた人の名前までおぼえてくれていて、「●●さんから買いたい」とか「●●さんがつくったものをください」と指名されている状態が「ファンになってくれている」レベルです。

会社ごと、事業ごと、部署ごとに「どんな状態になっていることを『ファンになってくれているレベル』と定義するのか」は違ってくるでしょう。でも、労働時間ではない評価の仕組みはつくれます。

──顧客との関係性で評価されるようになると、組織はどう変わりますか。

社員が自律・自立して働くようになります。社員には、顧客にどんな価値を提供するのか、その価値が提供されたら顧客がどうなるのか、という目的が見えています。そして、自分がどれだけ顧客に価値を提供できたかを、会社がしっかり評価してくれる。こうなれば、顧客に対して価値を提供しようと、自ら動いてくれるはずです。それこそ真の「働き方改革」なんです。

高野氏 登壇セミナー【2018/6/20(水)開催】

「あしたの人事クラブ」交流会

経営を「人事視点」で変革する経営者たちの、経営者による、経営者たちの交流会「あしたの人事クラブ」に元リッツ・カールトン日本支社代表の高野さんとIndeed Japan代表の高橋さんが登壇します。

さまざまな経営課題を解決し、業績をアップするためにはどうすれば良いか? 全国の経営者同士が集い、“真の働き方改革”を実現するための学びを深め、そして相互に協力しあえる交流会が「あしたの人事クラブ」です。

※初めて参加される企業の方は1社1名まで無料です。

日時 2018年6月20日(水)17:00~21:00(受付16:30~)

場所 ベルサール東京日本橋 4階J/K会場
東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー
(東京メトロもしくは都営地下鉄「日本橋駅」B6出口直結)
※全国の別会場からLIVE中継をご覧いただけます(東京・札幌・仙台・新潟・金沢・静岡・名古屋・大阪・高松・松山・広島・福岡・沖縄)

登壇者
人とホスピタリティ研究所 代表 高野登氏(元リッツカールトン日本支社長)
Indeed Japan株式会社 代表取締役/ゼネラルマネジャー 高橋慎太郎氏

参加資格 あしたの人事クラブ会員および入会検討中の企業の経営者
(東京会場は200名まで)

参加費 5,000円(税込/要予約)
※初めて参加される企業の方は1社1名まで無料となります。

主催 株式会社あしたのチーム

詳しくはコチラ

 

プロフィール
高野 登

高野 登 (たかの のぼる)
1953年、長野県生まれ。1972年、プリンスホテルの内部教育機関だったプリンスホテルスクール(現:専門学校 日本ホテルスクール)に第一期生として入学。卒業後の1974年に渡米、ニューヨークのプラザホテルをはじめ全米各地の著名ホテルでの勤務を経験。1990年、リッツ・カールトン(The Ritz-Carlton Hotel Company, L.L.C)に移る。1994年、日本支社長に就任。「クレドを全社員へ浸透させ、ホスピタリティにあふれた顧客へのサービスを提供する」独自の経営哲学を広め、経営層に感銘を与えた。2009年に退社した後は、人とホスピタリティ研究所を設立。コンサルティングや講演を精力的に展開。『リッツ・カールトンで実践した働き方が変わる「心の筋トレ」』(新潮社)など、著書多数。


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