「人事評価制度」社長が失敗しがちな“7つの誤解”
#8 【誤解7】 マイナス査定は労使トラブルに 発展しかねないので実施しない Sponsoredあしたのチーム

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「強い会社」をつくるために不可欠

マイナス査定に慎重な経営者は多いと思います。マイナス査定を行うと社員との関係を悪化させる、労働紛争に発展する恐れがある、企業の社会的な評価にキズがつきかねない。こうした理由が挙げられるからです。

確かに、事例もあります。昨年、大手コンピューター関連会社が低い評価をつけ、給与を大幅削減された社員から訴えられました。

結果は、賃金水準を元に戻し、会社が減額分を支払うことでの和解。社員側の完全勝利、と言っていいでしょう。

「そうなると、やっぱりマイナス査定はしないほうがいい」。こんな考えになってしまうのも無理もありません。

しかし、ちょっと待ってください。この事例では「減額基準や幅が明確ではなく、会社が一方的に労働条件を変えられる規則」が争われ、結果、社員側が勝利したのです。

結論から言わせていただくと、私は「マイナス査定は行うべきだ」と考えています。しかし、そんな私から見ても、この事例における会社側のマイナス査定はバツ。絶対に行ってはいけません。

この会社が行ったのは「会社全体の賃金を下げるためのマイナス査定」。私が示したい新常識は「会社全体の【賃上げ】のためのマイナス査定は不可欠である」です。

逆説的で矛盾しているように聞こえますよね。ポイントは「全体の賃金を下げるためのマイナス査定ではない」点。

成果をあげた社員に対しては、それにふさわしい賃上げを行ない、成果を上げられなかった社員はマイナス査定する、ということです。

業績が悪くても目標を達成した社員の給与は上げなければいけない

上司と部下の間で話し合いを行い、納得したうえで自己目標を設定し、遂行する過程でチェックと改善のアドバイスがあったのに、達成することができなかった。

その場合はプラス評価はできません。基準に基づいたマイナス査定をせざるをえません。

このように基準とプロセスが明確になっていれば違法ではありません。ここが、違法なマイナス査定と法的な問題がないマイナス査定の違いです。

ルール(恣意的ではない明確で合理的な基準)があり、それがきちんと社員に周知されていれば、プラス査定があるようにマイナス査定があっても、なんら法的な問題が問われることはないのです。

目標を達成し、プラス評価する場合も、目標点と評価ランクによって、どれだけ賃上げされるかを明確にしておくべき。同じような成果を出したのに、AさんよりもBさんの給与の上げ幅が低い。

こうした評価が出る場合もありますが、なぜこうなったのか。基準が設定されていれば、その根拠を示すことができます。

「全体の賃下げをするためのマイナス査定」とは、どういうことか。コンパクトに説明しましょう。

簡単に言うと「会社の業績が悪かったので、個人の成果とは関係なく給与を下げます」ということです。

目標を達成した社員の給与は上げるべきだと思いませんか? そもそも、【誤解2】でも指摘したように、給与はコストではなく、自社を成長に欠かせない投資なのです。

コストではないのですから、そこに「会社の業績」という変数は排除されるべき。業績がよくなければ、よけいな備品購入などを控え、コストダウンをはかるのは当たり前。

しかし、社員は備品ではありません。企業成長に欠かせないリソースです。多くの社員が目標を達成できなかったために業績がダウンしたのだとしても、少数でも必死の努力で目標を達成した社員はいるはず。

自分は目標を達成したのに、会社の業績が悪かったから給与を下げます、では納得性の欠片もありません。努力が報われないので、会社に対する不信感を深めるだけです。

その結果、会社が苦境にあっても目標を達成できる優秀な人材、業績が悪いからこそ会社に残ってほしい仕事がデキる人材から先を争うようにして会社を辞めていくでしょう。

残ったのは目標を達成できない人材ばかり…。これでは業績回復の見込みは立ちません。会社は沈んでいくばかりです。

マイナス査定でもヤル気が出る制度設計とは

「いざなぎ超え」といわれる現在の好景気のなかで、企業の好決算は伝えられるものの、働く人の賃上げの足取りは重く、結果、国内消費の低迷が続き、マイナス金利という非常手段をもってしてもインフレ目標値の達成時期は依然、不透明です。

なぜ、好景気でも賃上げが進まないのか。経済産業省所管の政策シンクタンクである独立行政法人経済産業研究所では「賃金を下げることの難しさが、景気回復期の賃上げを抑制している」可能性を指摘しています。

確かに、マイナス査定を禁じ、プラス査定しか許されないのであれば、景気は循環しますから、いつかくる調整局面に備え、足元が好景気でもプラス幅をなるべく抑制し、将来の不況に備えた軍資金を蓄えておこう、というマインドになるでしょう。

しかし、この状態のまま不況がきたら、一体、どうなるでしょう。通常であれば不況期には金利下げが実行され、景気が刺激され、再び上昇軌道に入ります。

しかし、すでにマイナス金利が発動されているので、もはや金利下げの余地はありません。不況期に移行しても金利政策による景気刺激というオペレーションは発動されえないのです。

つまり、マイナス査定を敬遠していることが健全で持続可能な経済と企業経営の阻害要因になっている可能性があるのです。

「プラスがあればマイナスもある」という、ごくごく当たり前な査定をタブー視することは、経済という生き物のリズムを狂わせ、自社の経営のかじ取りを難しくさせるだけなのです。

評価制度などを通じて公正に査定していることが社員に伝わっていれば、プラス査定であれマイナス査定であれ、社員は安心し、納得しながら働けます。

ですから、マイナス査定をせざるをえなかったとしても、労使紛争のタネにはならないし、優秀な社員が会社を辞めてしまうことにも結びつきません。

目標を達成すればプラス査定されることがわかっているのなら、マイナス査定になったとしても高いモチベーションをもちながら仕事に向き合うことができるでしょう。

従業員300人未満の会社の経営者を対象にしたアンケートを見ると、マイナス査定が必要と答えた割合は約7割。それに対して実施している企業は、たったの2割でした。

マイナス査定を組み込みながら賃上げになる制度設計を行うことが、個々の社員のモチベーションを高め、会社を成長に導きます。正しい方法を実行すれば、それは可能。勇気を持って、マイナス査定への一歩を踏み出してください。

【新常識7】 全体の賃上げのためのマイナス査定は不可欠である



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