もしも「行政」を人事評価してみたら
#前編 「もはや限界」行政組織が 閉塞感に包まれている原因 Sponsoredあしたのチーム

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アイドル編に続き「あした式人事評価」で分析するのは行政。民間企業と行政では組織目的が違うし、人事慣行や制度にもさまざまな違いがあります。でも、そこには大きな共通課題があるようです。あなたの会社は“官僚化”していませんか?


年功序列と秘密主義

「お役所仕事」という言葉がありますね。前例に固執し、自分の頭で新しいアイデアを考えようとしない。そうした部下を「そんなお役所仕事じゃダメ」と諭した経験がある経営者は多いでしょう。

こんな悪口をよく 言われる行政組織。ここでは人事評価制度の観点でその問題点を検証するとともに、新しい時代にふさわしい行政組織の姿を探ります。もちろん、そこには民間企業に通じる重要な示唆がたくさんあるからです。

行政組織を検証する前に、お役所を批判できない民間企業が少なくないことを最初に指摘しておきます。ある意味、お役所よりお役所的な会社はじつに多い。不透明で客観性・合理性に欠ける人事慣行が温存され、基本的に年功序列。そんな“官僚化”や “秘密主義”が横行している民間企業が珍しくありません。

行政を本稿で取り上げたのは、役所の悪口を言いたいからではありません。人事評価の観点から浮かび上がってくる行政の問題・課題を「わが事」に置き換え、自社の改善に活かしてほしいからです。

「同時採用同時昇進」という矛盾

まず、「なぜお役所は“お役所的”なのか」ということから検証しましょう。なにかしらのメリットがあったからこそ“お役所仕事”が温存されてきたはずだからです。

行政組織を人事評価の観点から眺めると、典型的な年功序列型、という特徴がまず挙げられます。

年功序列には「勤続年数に比例して職務遂行能力が向上する」という前提があります。行政マンの職遂行能力とは、政策を着実に実行できる能力、抜け・漏れがない定型的な事務処理能力、さらに過去の前例に詳しく物事を安定的に進めるための前例踏襲能力も必要でしょう。

たとえば住民票の手続き。担当者が変わるたびに窓口の場所も申請書類の置き場所も変わり、申請書の記入フォーマットが変更され、住民票が交付されるまでの時間が伸びたり縮んだりする。これでは住民は安心できません。

前例主義などの定型的な仕事は、同じことをただひたすらにやり続けるワケですから、勤続年数が長くなれば長くなるほど安定的にこなせるようになるし、処理スピードも速くなります。「勤続年数に比例して職務遂行能力が向上する」のです。

さらに、勤続年数が長くなるほど能力が向上するとの仮説を受容すれば、民間企業とは大きく異なる行政特有の人事慣行にも納得できます。

それは「同時採用同時昇進」の原則。県庁や市役所などに正規雇用されると(入庁)、原則的に一定期間は全員同じテンポで自動昇進します。入庁から〇年たったら主任、次は主査、係長、そして課長補佐へと、特別な問題がない限り、エスカレーター式、流れ作業的に同時採用された人たちは同じ入庁年数で昇進します。

課長補佐以下の現場実務のポストではなく、課長以上の企画管理職クラスからは昇進スピードに差がついていきます。「勤続年数が同じでも能力向上の度合いは人それぞれ」「同じ期間を漫然と過ごした人と意欲的に仕事に取り組んだ人では実績も異なるから」というのが、その“表向き”の理由です。

表向き、と但し書きをつけたのには明確な理由があります。行政組織のなかでは昇進理由は一切開示されません。そのため、なにが真実の昇進理由なのか、検証できない。だから、表向き、なのです。

役所内部では人事の季節になると「あの人が課長になれたのは親が市長の後援者だから」とか「あの議員先生のお気に入りだから」「街の有力者の子弟だから」といった噂がまことしやかにささやかれがち。それが、表向きではなく「裏側の真実」なのかどうかはわかりません。しかし、不健全な“都市伝説”や “陰謀論”が流れる原因は、昇進理由などの人事評価がフタされ、情報開示されていないため。そう言えるのではないでしょう。

社会の前提が崩壊した

本稿の目的は行政批判ではないので、こうした慣行についての論評は差し控えます。ただ、弁護するわけではありませんが、「業務の着実な遂行」を大きな組織目的として掲げる限り、行政組織はどうしても年功序列型にならざるをえないのだろうなとは思います。

しかし、行政組織はいま、大きな曲がり角に立っています。住民サービスの提供こそが最大ミッションなのに、現実はそうはなっておらず、逆に「住民サービスが劣化しているのでは」と思わざるをえないような事件や行政トラブルを耳にすることが少なくありません。

その理由は、社会の前提が変わったからです。右肩上がりの経済成長から低位成長の持続を目指すヨーロッパ型の成熟社会への転換、少子高齢化、地方の過疎化と都市への一極集中、独居世帯の増加などなど、社会は一昔前からずいぶんと変貌しました。そのため、前例どおりの住民サービスが提供できない、あるいは前例どおりでは住民サービスにならない。そんな社会が到来しているのです。

当然、住民は「社会の前提が変わったことに対応した新しい政策や施策の推進」を望んでいます。しかし、「前例どおりの業務の着実な遂行」を目的とした年功序列型の組織には、こうした新しいニーズへの対応はあまり期待できません。こうしたミスマッチ、綻びが目立っているから、行政批判の声が高まっているのです。

社会変化に組織変革が追いつかず、その結果、組織目的を達成できなくなり、閉塞感に包まれる―。どうでしょう、こうした悩みを抱えている経営者は少なくないのではありませんか。行政組織の問題は、多くの民間企業が直面している課題にも通じているのです。

後編では、人事評価の観点から、どうすれば変化に対応できる行政に生まれ変われるのかを検証するとともに、変革にチャレンジしている自治体の事例などをお届けします。そこには、あなたの会社を変革するヒントがあるはずです。

プロフィール
高橋 恭介
株式会社あしたのチーム 代表取締役社長
高橋 恭介 (たかはし きょうすけ)
1974年千葉県生まれ。東洋大学経営学部を卒業後、興銀リース株式会社でリース営業と財務に各2年間携わる。その後、設立間もないベンチャー企業であったプリモ・ジャパンに入社し、当時数十名だった同社を取締役副社長としてブライダルジュエリー業界のシェア1位、従業員数500名規模にまで飛躍させる。人事にも深く携わり、年間数百名の採用面接を実施、台湾子会社の代表を務めるなどベンチャー企業成長の最前線で活躍。2008年に株式会社あしたのチームを設立し、代表取締役社長に就任。


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