もしも「行政」を人事評価してみたら
#後編 「脱・年功序列」は 自治体でも十分可能 Sponsoredあしたのチーム

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前編では行政が閉塞感に包まれている原因は「年功序列と人事評価の秘密主義」という、民間企業にも共通する悪弊にあることを検証しました。後編では大いなる危機感をもって自己変革に取り組んでいる自治体の事例などを紹介します。民間企業のプライドにかけて行政には負けていられない、はずですよね。


民間企業との共通課題

前編では、行政組織が年功序列型であるがゆえに、社会の変化に対応できておらず、住民サービスという価値提供を十分にできていないことについて論じました。

では、どうすれば社会が期待している価値を行政は発揮できるのか。人事組織の観点で言えば、必然的に「閉塞感をもたらしている原因である年功序列からの脱却が不可欠」ということになります。

実際、新しい人事評価を導入する動きが広がっています。法改正により、中央省庁などの国家公務員では平成21(2009)年から、地方公務員は平成28(2016)年から、能力・実績主義の人事管理の導入が進められています。

そのねらいをシンプルに言うと「デキのいい人をより評価しよう」ということです。一歩前進なのか、半歩前進なのかはわかりませんが「現状を変えるためには人事評価のあり方を見直さなくてはいけない」という危機感のあることが伝わってきます。

しかし、結論から言うと現状程度の改革では、あまり期待できないと言わざるをえません。能力・実績主義の導入をうたいあげているものの、評価と給与が連動していないからです。

公務員の給与は法令で厳格に決められています。根柢にあるのはポスト連動。主査と係長の給与は異なるけれど、同じ係長なら基本的にみんな同じ額、という仕組みです。実績や能力に差があっても、そのポストの給与は一律同額。より上のポストに出世しない限り、給与は増えません。

しかも、評価基準が開示されない点については変わりがない。年功序列と秘密主義という分厚い岩盤の片隅に、能力・実績主義の色を少し塗った程度にすぎません。

でも、「だからお役所というものは…」と一方的な非難はできないでしょう。一方的な非難はブーメランとなって返ってきます。能力主義、成果主義を掲げながら、たとえば断トツの成果を出し続けている若手社員の給与について、長年勤続しているものの成果を出していないベテラン社員よりも2倍多い。そんな民間企業は少数です。

基本的には年功序列を踏襲、そこに成果主義や能力主義の色をつけただけ。給与格差はそれほどない。こうした企業の方が圧倒的に多いはずです。

組織目的が異なるのですから、行政組織と民間企業では人事評価について多少の違いが存在するのは当たり前。しかし、遠目で見るとどうでしょう。白と黒ほどの大きな違いはなさそうです。つまり、行政組織が直面している課題・矛盾は、多くの民間企業にも共通する深刻な問題だと言えるのです。

鯖江市の先進的な取り組み

行政組織の難しさは、なにごとも法令が変わらなければ新しいことにチャレンジできないことです。民間企業なら経営者の一声で、たとえば人事評価を導入するなどのドラスチックな改革も短期間でできますが、法令の縛りが強い行政は、そういうわけにはいきません。それでも変革にチャレンジする果敢な自治体もあります。

たとえば鯖江市(福井県)。同市では人事評価制度を行政向けにカスタマイズし、くわえてクラウドで運用することでデータの蓄積とAIの活用を進めることを決定しました。行政においても個々の職員が目標を設定し、その達成度合いで評価しようという挑戦です。

ただし、個人の給与査定への反映は行わず、新しい取り組みが今後、市職員のモチベーションアップにどう作用するかを評価・検証する試験導入です。ちなみに、当社が今回の鯖江市の取り組みをサポートしています。これは、大きな意義のある取り組みだと思います。

さまざまな事情で評価を給与査定に直結させることが難しいなら、昇進スピードに差をつければよいと思います。実際、いま、公務員の世界では「年次逆転」という現象が非常に増えつつあります。

年次逆転とは後輩が先輩よりも上のポストに就くこと。たとえば、従来、40歳で課長になっていたところを38歳で課長に就任。自分より年次が古い先輩を部下にもつ。こんなケースです。従来の年功序列型はありえないカタチです。

行政における人事評価は、給与反映ではなくポスト連動のほうがというのには、こんな理由もあります。「国家国民や地域に暮らす人々の幸せの実現に身を捧げたい」。こうした高い志をもつ公務員は多いと思います。こうした人たちは、自分の理想を施策や事業に活かすことにやりがいや生きがいを見出すので、給与より権限を重視します。

であるなら、そうした人たちのモチベーションを高めるには、年次逆転が当たり前の組織になったほうがいい。“お役所仕事”に埋没する先輩を押しのけて自分が上のポストにつかなければ理想や志の実現はできないのですから。

ですから、人事評価によって透明性と納得性が担保されて年次逆転が起きていくのであれば、行政組織を大いに活性化する可能性があるはずです。

さらに、住民サービスに身を捧げたいと心から思っている人たちがいて、その生産性をきちんと計測できる人事評価の指標が公務員の世界で確立すれば、結果、2,000万円、3,000万円の給与をもらえる公務員が誕生しても不思議ではないと思います。

いや、そうなるべきです。心からがんばっている人が報われない社会はおかしい。まじめに努力し、必死に取り組む人が、そうした仕事ぶりにふさわしい給与を得られないのでは、そこには正義も公正もなく、絶望しかありません。

“お役所化”していませんか

「新しいアイデアが社員の間から出てこない」「リスクを恐れる社員が多い」。こんな危機感を抱いている経営者は多いでしょう。社員に対して不満や悪口を言うのは簡単です。なにが社員たちをそうさせているのか、いちど振り返ってみてはどうでしょうか。

能力主義や成果主義は形式的で基本的には年功序列型。昇進や昇格の基準はだれにでもわかるようなカタチで透明化されていない―。こんなことに思い当たる場合は黄色信号。さまざまな壁に挑み、必死で改革に取り組んでいる鯖江市などの自治体の努力を見習うべきです。

【まとめ】「行政」から学ぶ人事評価のこれからの姿

①年功序列は通用しない

②透明性と納得性が担保された人事評価を導入する

③「変わらなければ社会に対応できない」という危機感をもつ

プロフィール
髙橋 恭介
株式会社あしたのチーム 代表取締役会長
髙橋 恭介 (たかはし きょうすけ)
1974年千葉県生まれ。東洋大学経営学部を卒業後、興銀リース株式会社でリース営業と財務に各2年間携わる。その後、設立間もないベンチャー企業であったプリモ・ジャパンに入社し、当時数十名だった同社を取締役副社長としてブライダルジュエリー業界のシェア1位、従業員数500名規模にまで飛躍させる。人事にも深く携わり、年間数百名の採用面接を実施、台湾子会社の代表を務めるなどベンチャー企業成長の最前線で活躍。2008年に株式会社あしたのチームを設立し、代表取締役に就任。


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