「あした」をつかんだ経営者


有限会社まるしげ
「漁亭 浜や」
代表取締役社長
佐藤 智明さん
#1 愛される人づくり・会社づくりで「故郷の復興」に貢献する Sponsoredあしたのチーム

イメージ写真

宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区―。日本一とされる旨味の濃いふっくらした赤貝が育つ豊かな海を臨む街には、2011年3月11日に起きた未曽有の震災の傷跡がいまなお残されています。地元の人や観光客などから愛されてきた名物「浜丼」を提供する「漁亭 浜や」を運営する有限会社まるしげ代表の佐藤さんも震災ですべてを失った被災者のひとりです。必死の思いで店舗を再建をした後、佐藤さんは人事評価制度の導入に踏み切ります。導入後の変化や復興に挑む想いなどを取材しました。


人事評価制度の導入で基礎ができた

―人事評価制度を導入した理由を聞かせてください。

以前は私ひとりで社員の給与やボーナスの査定ができていたんですが、社員数が増え、すべてを見ることができない状態になりました。それが、そもそもの導入の動機でした。

導入以前は、自社でいろいろなカタチで給与査定をやったりしていたんですよ。評価制度もつくってね。だけども、それぞれが目標を設定し、達成に向かってがんばっている様子はわかるんですけど、それでどんな効果があるのか、そこら辺までは判断できませんでした。それに、つくったのはいいけれど更新できていないなど、完全には機能していませんでした。

それで、このまま自社で続けていくより、多少お金はかかってもプロがつくった、練りこまれて完成された人事評価制度を採用したほうが、結果として効果があがるんじゃないか。そう思ってあしたのチームの人事評価制度を導入しました。

―こう言っては失礼かもしれませんけど、「おいしいものをお客さまに提供する」のが板前さんたちのお仕事。目標設定という考え方はなじまない気がするんですが。

包丁1本、精進して己の技を突き詰める。自分の目標は、それしかない―。板前さんのイメージってそうですよね。私も若いときはそうでした。

でも、どれだけすばらしい技術をもっていてもサービスと一体化しなければお客さまを満足させることはできません。ある時、自分自身、そんなことに気づきました。極端な話、包丁が半端で切れなくても、白衣が汚れていても、店が掃除されていなくても、おいしい料理はつくれるかもしれません。でも、それでお客さまを満足させることはできませんよね。サービスが悪ければ台無しです。

飲食業なので、おいしい料理を提供するのは当たり前。それを含めて、わざわざお店に来ていただいたお客さまに満足と感動をしてもらい、「また『浜や』に行きたいね」。そう思っていただくことがわれわれの仕事の究極の目標であり、その対価として給与があるんです。こうした“つながり”がわかり、目標を達成すれば自分の収入アップになるんだということが理解できれば、目の前の仕事ひとつひとつが意味をもち、やりがいが生まれるはず。

最初は、技術を上げるのが板前なのに、なんで理念共有とか目標設定とかしなきゃいけないんだよ、という声はそりゃありましたよ。たくさんありました。そこは、もう何度も繰り返し、あきらめないで熱い想いを伝え続けました。

「浜や」は愛される人づくりを経営のテーマに掲げています。一人ひとりがお客さまに愛される人になれば、お店に固定ファンがつきますし、仮にその人が独立開業しても、どこでだって通用する。人事評価制度の導入で、そんな人づくりの基礎ができたように感じています。

夢の実現と目の前の仕事はつながっている

―人事評価制度の導入後、どんな変化がありましたか。

目標を明確に定めて日々の業務に落とし込み、個々人のやることが明確になったので、日々の仕事がしやすくなりました。会社に来てから「今日は何をやらなきゃいけないのかな」と考えるのではなく、今日やるのはこれとこれ、といったように、やるべき作業があらかじめ決まっていて、見通しをたてて仕事をすることができるようになったんです。

また、目標設定をするうえで業務の棚卸しを社員一人ひとりが行い、1日、1時間ごとに区切って、この時間にどういう作業をしていくかということが明確になりました。これによって、店舗間での業務連携につなげたり、時間効率をあげることで社員の休みを増やすなど、福利厚生の充実にもつなげていけそう。そんな手応えも感じています。

それから、自分の将来の夢と目の前にある仕事を関連づけて考えらえるようになったと思います。

家を建てるとか、車を買うとか、結婚して幸せな生活を送るとか、そうした個々人の夢の実現と会社の仕事は密接に結びついていますよね。しかし、イメージはあるけど、多くの場合、具体的な数値化まではされていません。そこで、その個々人の夢の実現にもコミットし、じゃあ今、その夢に向かって、今日はなにをやるのか、今期は何をやったらいいんだということを目標設定のひとつとして明確にしました。

人事評価制度の導入以前は、日々の業務と目標設定とが関連づけられずに、バラバラな形で進んでいました。導入後は、それぞれの夢と目標を書きだし、見える化することで、この社員はこういうことを目標にしていて、そのために頑張っているんだよ、ということを共有できるようになりました。具体的には、個々人に自分自身の夢をしっかり定めてもらい、それを幹部と共有しながら、ここをこうすれば夢が実現するよといったことをしっかり幹部からフィードバックしています。

たとえば、「5年後にこんな夢を実現したいのなら、そのときにはマネージャーになっている必要があるよね。だったら、5年後にマネージャーになるためには、いま、こんなスキルを身に着ける必要があるよ」といったように、会社としてその人の夢の実現に寄り添えるようになりました。社員たちの夢の実現を応援したいんですよ。

私の「宝」は社員たち

―佐藤さんのお話を聞いていると、人づくりを大切にしているからこそ、人事評価の導入につながったんだな、と感じます。

私の宝は社員。社員の成長が会社の発展につながり、会社の発展が閖上の復興につながる。そんな想いがあります。この人事評価制度を練り上げて、宝である社員の価値を適正に評価し、もっと成長してもらいたい。そして、社員の夢が実現することで会社の目標が達成され、故郷の復興や発展に貢献していく。それが私の夢です。

2011年の大震災で閖上は壊滅的な被害を受けました。海岸から1km以内の木造住宅はすべて津波で流され、1,000人もの人が犠牲になりました。当時、1店舗だった「浜や」は、まさに根こそぎ流され、お店で働いてもらっていた人たちのなかにも亡くなった方がいました。海岸から5.5kmの内陸まで津波は押し寄せ、実は私自身、ギリギリのタイミングで飲み込まれずにすみました。私の1台後ろの車は津波で流され、こうして生きているのが奇跡なんです。

借金をして店舗を建て、地震に襲われたのはその返済途中。ですから、会社に資産はありません。私には社員しかないんです。だからなおさら、頑張っている社員をきちんと評価してあげたいんです。

震災で自宅も失い、避難所で生活をしていました。気持ちが落胆し、どうしても一歩前に進む勇気がでなかった。そんな私を奮い立たせてくれたのは、全国から応援に来てくれた多くの仲間たち。『そうか、すべてを失ったけど、こんなにすばらしい仲間がいるじゃないか』と強く思い、前に進む勇気がわいてきたんです。すべて流され、すべてを失ったけど、もう失うものはなにもないんだ。そう思うと怖いものがなにもなくなった。もう、借金も怖くありません(笑)。

亡くなった仲間たちのぶんも頑張って、なんとしても閖上復興のチカラになりたい。それが私の目標です。閖上への想いや会社としての価値観を、もっともっと社員と共有しながら、前進していきたいですね。

「あした」をつかんだ経営者

有限会社まるしげ/「漁亭 浜や」 代表取締役社長
佐藤 智明 (さとう ともあき)
<会社概要>
有限会社まるしげ
創業/1951年4月
事業内容/飲食事業(「漁亭浜や」あすと長町店、仙台エスパル店、名取閖上さいかい市場店、ゆりあげ港朝市メイプル館店)、鮮魚小売り事業(おさかな市場 (有)まるしげ)
社員数/48名
URL/http://www.yuriage.co.jp/



【 そのほかの記事 】

【 そのほかの記事 】