【対談】
「会社のカタチ」はどう変わるのか
#1 「働き方改革」の本質を見極め、眼前のピンチをチャンスに変えよ Sponsoredあしたのチーム

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すべての経営者が直面している「働き方改革」。なぜ、政府が推進しているのか?いま、なにが求められているのか? これから、どんな未来が訪れるのか? そんな働き方改革の“昨日・今日・明日”を知るため、アカデミズムの視点と経営視点をもつ専門家に対談してもらいました。千葉商科大学で教鞭をとる「働き方評論家」の常見さんと、1,300社以上の人事評価制度を支える“あしたのチーム”代表の髙橋さんです。


多義的な「働き方改革」。成立した関連法は経営側に逆風

―ここ数年、国をあげて「働き方改革」が推進されています。この流れは経営者にどのような影響がありますか?

常見

「働き方改革とはなにか?」という問いに、みなさん戸惑っているのではないでしょうか。これは“誰が誰に言うか”によっても意味が変わる。だから「働かせ方改革」という批判を受けるんです。

また、働き方改革関連法も矛盾をはらんでいます。規制強化と規制緩和が同居していますし、過労死対策が不十分です。同一労働同一賃金を「非正規労働者の待遇改善」対策として論じるのは間違っていますし。多様な論点が深められないまま進んでいるので、経営者も戸惑っているでしょう。

とはいえ、規制強化の要素が多いのは事実。経営者には「どんな会社をつくるのか?」という問いがつきつけられています。そして、採用難のなかで働き方の再定義が問われています。

髙橋

政府による「働き方改革」は性悪説からスタートしています。まず国連から是正勧告を受けている長時間労働。画一的な働かせ方を変えなければいけない。そこにはムダがあるので、法律で強制的に残業を減らせば生産性が向上するだろう、といった論法です。

したがって、基本的に働き方改革関連法は労働者側に有利で、経営側にアゲインスト。厳しい内容です。このピンチをチャンスに変えるかどうかは、経営者次第でしょう。

常見

そこは大事な論点ですよね。経済団体の方々や、経営者に聞くと、「ぶっちゃけ話」では総論反対なんですよ。高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の拡大には期待する経営者はいますが。

でも、そこからイノベーションが起こるとは言い切れません。気をつけないと「賃金を下げたいんでしょ」「労働者を自由に使いたいのでしょ」という話になってしまいます。

労働時間を減らすだけでなく、役割分担の見直しやITで効率化を

髙橋

本来、働き方改革法自体は労働者に有利ですが、直近の動きは違います。多くの企業が賃金を抑えて、経営側に所得を移転して、過去最高益を出している。かといって、経営者もそれでいいと思っているわけじゃない。「どうしよう?」という危機感のなかで、混沌としている状況ですね。

常見

管理職の人たちと話をすると、長時間労働の是正にも多様な意見があって。もちろん、気持ちよく働くため、命を大切にするために、労働時間の削減は重要ですよ。だけど、その一方で「ロスが大きいんじゃないか」という議論も出てくる。バックラッシュ(反動)のおそれだってあります。

髙橋

じゃあRPA(ロボットによる業務自動化)だと、すぐロボットに置き換わるような論調もありますよね。

常見

特に地方の中堅・中小企業ほど、「どのように会社を回していくのか」という問題に早く直面します。もう構造的に人が減っていて、首都圏で体感する売り手市場どころの騒ぎじゃない。だからこそ、企業のあり方が問われているんです。

―単純に労働時間を削減するだけでは、アウトプットが減るか、労働者がしわ寄せを受けますよね。

常見

そうなんです。日本の労働者は「人に仕事をつける」モデルなので、個人が多様な仕事をしています。だから、適切に役割分担を変えるとか、パフォーマンスを上げるためにITを入れるとか、なんらかの工夫が必要。そうしなければ仕事量が多いんだから、みんな疲弊してしまうでしょう。

二大潮流は「人事制度改革」と「経営側に有利な新法案」

―2018年以降、「働き方改革」はどのような流れになりますか?

髙橋

大きく2つのトレンドが来ると予測しています。

ひとつは人事制度改革。「働かせ方改革」と評されるように、問題は企業側につきつけられています。だから、本当の意味で生産性を高め、給与を上げて、業績を上げる仕組みが必要。こういった人事制度の導入が求められるでしょう。

もうひとつは、新たな関連法案の提出。来年からは裁量労働制の拡大、金銭解雇制度など、経営側に有利な法案が出てくるはず。これは政局化しかねない重大な法案です。こういった流れはチャンスであり、ピンチ。

ここを乗り越えていった企業が2020年以降の継続的な成長を担保できるでしょう。

常見

いまの働き方改革は大手企業を中心に進んでいます。そこで求められているのは、人・IT・オフィスなどへの適切な投資。すると、クリーンな大企業とそうじゃない中堅・中小企業の差が開いてしまう。

そういった格差を解消するため、IT投資や人材採用を支援する政策が盛り上がっていくでしょう。

個人的に気になっているのは、今後5年から10年の変化です。削除された裁量労働制の拡大も、成立した高度プロフェッショナル制度も、まだまだ先が見えません。

髙橋

たとえば「1075万円」が本当なのか?

高度プロフェッショナル制度の対象は「年収1075万円以上」の労働者とされているが、法律の条文に金額は明記されていない。

常見

「1075」は古い試算という指摘もあります。職種だって疑問ですよ。現段階で対象とされている職種では、企業は制度として使えないということもアリ得ると。

髙橋

対象者はゼロに近いですね。

マスコミ受けする“オモシロ人事制度”を競うな

常見

あと気になるのは、解雇について。今後は雇用契約のあり方が議論されていくでしょう。そこで生まれるのはユートピアなのか、ディストピアなのか…。いずれにせよ、「雇用は契約である」という意識が芽生えればいいですね。

明るい未来予想もありますよ。この人手不足が続くと、企業は労働条件を良くせざるをえない。そこから働き方が変わるんじゃないか、と淡い希望を抱いています。

髙橋

同感です。

―良きにつけ悪しきにつけ、人手不足が働き方改革を加速させていくと。

常見

そうですね。ただし、いまの「働き方改革」の報じられ方には注意が必要です。だって、各企業の取り組みが曲芸大会みたいになってるでしょ? 電話会議システムを入れたとか、全社員が在宅勤務可能になったとか。

髙橋

いわゆるオモシロ人事制度”みたいな。

常見

ええ。「労働者と経営者が使いやすいかどうか」という本質から逸脱しています。ユニークな人事制度やオフィスを競う大会にしちゃいけません。

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プロフィール

働き方評論家 千葉商科大学 国際教養学部 専任講師
常見 陽平(つねみ ようへい)
1974年生まれ、北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学院社会学研究科修士課程修了。株式会社リクルート、株式会社バンダイ、株式会社クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て、2015年4月より現職。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演を行う。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)、『「就活」と日本社会』(NHK出版)、『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)、『「働き方改革」の不都合な真実』(共著/イースト・プレス)など、著書多数。

プロフィール

株式会社あしたのチーム 代表取締役会長
髙橋 恭介 (たかはし きょうすけ)
1974年、千葉県松戸市生まれ、千葉県立船橋高校出身。東洋大学経営学部卒業後、興銀リース株式会社に入社。リース営業と財務を経験する。2002年、創業間もないベンチャー企業であったプリモ・ジャパン株式会社に入社。副社長として人事業務に携わり、当時数十名だった同社を500人規模にまで成長させ、ブライダルジュエリー業界シェア1位に飛躍させた。
同社での経験を生かし、2008年、株式会社あしたのチームを設立、代表取締役に就任。現在、国内47全都道府県に営業拠点、台湾・シンガポール・上海に現地法人を設立するまでに事業を拡大。1300社を超える中小・ベンチャー企業に対して人事評価制度の構築・クラウド型運用支援サービスを提供している。給与コンサルタントとして数々のセミナーの講師も務める。2018年6月より代表取締役会長に就任。



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