【対談】
「会社のカタチ」はどう変わるのか
#2 ビジネスを再デザインし、“給与を上げて回る仕組み”をつくれ Sponsoredあしたのチーム

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前編に続いて、「働き方評論家」の常見さんと、あしたのチーム代表の髙橋さんの対談をお届けします。今年6月に成立した「働き方改革関連法」は企業に対する規制強化の色彩が濃くなりました。深刻な人手不足のなか、どのように経営者は「働き方改革」に取り組めばいいのでしょうか? ふたりの対話から、日本企業の“あした”が見えてきます。


安さ自慢の時代は終わり。HRが事業継続を左右する

―深刻な人手不足と採用難が続くなか、どのように「働き方改革」に取り組めばいいのでしょう?

髙橋

なによりも、給与を上げて勝てる仕組みをつくるべきです。

これまで約25年間にわたってデフレが続き、「安価な労働力を無制限に獲得できる」という幻想に支配されていました。だから、低賃金・長時間労働を前提にしたビジネスがまかり通ってきたんです。

私が10年前に起業した頃は、経営者同士で安さを自慢しあっていました。「安い業者を使っているよ」「こんなに安く人を確保したよ」って。いま、そんな発言をするのは恥ずかしい。

人手不足という必然性にかられて、経営者の目が覚めたんです。もはや生産性うんぬんの前に、廃業のリスクすらあります。

常見

おっしゃる通りです。特にサービス業では、人を採れないと業務自体が成立しません。

ある大手外食チェーンの競合2社 の違いを学生に調べさせたところ、人材施策の重要性が浮き彫りになりました。両社は類似のビジネスモデルに見えて、利益率が10ポイントくらい離れています。

その要因は出店戦略と顧客対象、そして人材マネジメントの違いにありました。利益率が高い方の企業は従業員の時給を手厚くして、パートも含めた表彰式、慰労パーティーなどを開いています。そして、駅前なのでアルコールを出せるし、おつまみも売れるので利益率が高い。

最近は地方でも給与の高い会社が出てきています。これからは「いかに賃金を上げるか、上げても回るか」という点が問われていくでしょう。すなわち、ビジネスの再デザインです。

髙橋

少人数での戦い方を真剣に考えると、まさにグランドデザインが勝負になります。それで給与アップを志向する経営者が増えてきました。つまり、一人あたりの給与を上げて、生産性を上げて、売上高を上げる。「給与を上げて回せれば勝ち」という認識が広がってきましたね。

生産性の本質はオペレーションではなく、ストラテジー

常見

会社を高収益体質にするのは大事だけど、生産性向上には注意が必要です。生産性を大きく左右するのはストラテジー(戦略)であって、オペレーションだけではありません。要は儲かる商売をすべきなんです。

髙橋

「生産性=オペレーション」と変換するのは、製造業主体の思考ですよね。

常見

これは根深い問題ですよ。日本の産業構造はGDPベースも就業者数ベースも、約7割がサービス業。人をはりつけているので、生産性が上がりにくい。

また、生産性が高い国は石油や金融など、付加価値の高い産業が発達しています。つまり、「ニッポンはなにで攻めるのか?」が問われているわけです。

ある財界セミナーで大企業の支社長が本質をついた発言をしていました。よく“誇れる日本の技術”みたいな話がありますよね? iPhoneに日本製のディスプレイが採用されるとか、日本企業のセンサーが使われているとか。

でも「それで喜んでいる、この国はおかしい。いま日本自体が世界の中小企業のような存在になっている」と。やはり日本企業がイノベーションを起こして、ビジネスの主役にならなきゃいけません。

その点は政財界の人たちも真剣に考えているけれど、明確な答えがなかなか見えない。結局、いまのビジネスが厳しい状態に追いこまれて、オペレーションの改善に傾斜している状況です。

中小企業に人材育成・評価の仕組みを

―経産省は「働き方改革にはIT投資と人材投資が重要」と発信しています。

常見

IT投資は重要です。業界のビジネスチャンスにもなるでしょう。一方、人材育成への投資は遅れている。「働き方改革」の多様な論点のなかで、重要な人材育成がスッポリ抜け落ちているんです。

髙橋

ほとんどの中小企業はプレイングマネージャーだらけで“べき論”で投資する余力がない。生きるか死ぬかみたいな状況で走っているので、人材育成に時間もお金も割けないんです。

一方、常見さんが勤めていたリクルートは、人事制度に「Will Can Must」のフレームワークを導入し、ミッショングレード制にもとづいて賃金を支給し、マイナス査定を含めた絶対評価を行っています。これは理にかなった人材育成モデル。中小企業にも、人を育てる仕組みが必要です。

常見

同感ですね。僕は物書きとして出版社や編集プロダクションと仕事をしていますが、彼らの昇進基準がよくわかりません。ポストが空いたとか、一発当てたとかいう理由で、突然エラくなっている(笑)。

どんな企業にも、フェアなルールづくりとその運用が問われていくでしょう。

勉強する余裕をもち、“課題先進企業”に学べ

―「働き方改革」に悩んでいる経営者へメッセージをお願いします。

髙橋

人が足りない、採れない、長く働かせられない、有給取得が義務化されて、産業医の権限も強化される…。これらをピンチではなく、チャンスと考えれば、突破口を見出せます。流動化が進んでいるからこそ、勝ち組になれば優秀な人材を採用できるでしょう。

そのカギとなるのが「給与アップ」。賃金を上げて利益を出すためには、新たな仕組みが求められます。たとえば、一人ひとりの職務を明確にして、サービス品質を上げて、顧客単価を上げる。

すなわち、「給与を上げれば、業績が上がる」という逆転の発想が必要です。この思考の転換をした経営者こそが、幸せをつかめると思います。

常見

経営者には、勉強する余裕が必要です。毎週1日くらい勉強する時間をつくって、自社の業務や仕組みの見直しにつなげてください。すでにヒントはたくさん転がっています。

たとえば、私は12年前に物書きを始めて、いまも生き残っています。その大きな理由は音楽業界をベンチマークしていたから。

文筆業界で起こっている構造変化は、先に音楽業界で起こっていたんです。だから、課題先進業界や企業から学ぶことをおススメします。

人手不足という課題では、ブラック企業と呼ばれて、そこから立ち直った企業から学ぶと良いですね。立て直した方法を知るのは有益。ただし、曲芸的な働き方改革をマネしちゃいけません。冷静な視点を忘れず、本質的な取り組みを学んでほしいですね。

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プロフィール

働き方評論家 千葉商科大学 国際教養学部 専任講師
常見 陽平(つねみ ようへい)
1974年生まれ、北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学院社会学研究科修士課程修了。株式会社リクルート、株式会社バンダイ、株式会社クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て、2015年4月より現職。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演を行う。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)、『「就活」と日本社会』(NHK出版)、『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)、『「働き方改革」の不都合な真実』(共著/イースト・プレス)など、著書多数。

プロフィール

株式会社あしたのチーム 代表取締役会長
髙橋 恭介 (たかはし きょうすけ)
1974年、千葉県松戸市生まれ、千葉県立船橋高校出身。東洋大学経営学部卒業後、興銀リース株式会社に入社。リース営業と財務を経験する。2002年、創業間もないベンチャー企業であったプリモ・ジャパン株式会社に入社。副社長として人事業務に携わり、当時数十名だった同社を500人規模にまで成長させ、ブライダルジュエリー業界シェア1位に飛躍させた。
同社での経験を生かし、2008年、株式会社あしたのチームを設立、代表取締役に就任。現在、国内47全都道府県に営業拠点、台湾・シンガポール・上海に現地法人を設立するまでに事業を拡大。1300社を超える中小・ベンチャー企業に対して人事評価制度の構築・クラウド型運用支援サービスを提供している。給与コンサルタントとして数々のセミナーの講師も務める。2018年6月より代表取締役会長に就任。



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