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上場できる経営者、キーワードは「ワンマン」です。

直近4年半で20社以上のクライアント企業が上場したフォーサイト総合法律事務所 大村弁護士が語る経営“者”論

フォーサイト総合法律事務所 代表パートナー弁護士 大村 健(おおむら たけし)

INOUZTimes編集部
上場できる経営者、キーワードは「ワンマン」です。

“上場を果たした経営者の共通項”。もはやこのテーマの答えを探すこと自体がある意味不毛だと理解しながら・・・。今回お話を伺ったのは、多くの上場企業または上場を目指すベンチャー企業をクライアントに持ち、数々の上場記念パーティでお見かけする(笑)、フォーサイト総合法律事務所の大村弁護士です。ベンチャー界隈では、もうかなり有名な方ですね。テーマは「IPO」「経営者」。

「社長、なぜ上場したいんですか?」

INOUZ Times編集部(以下、編集部)

大村先生、おはようございます。本日はお忙しい中ありがとうございます。成長ベンチャー企業の経営者と幅広い人脈をお持ちの大村先生に「IPO」「経営者」をキーワードにお話をお聞きできればと思っております。よろしくお願いします。

大村健氏(以下、大村)

よろしくお願いします。今日は暑すぎますね、どうぞお茶飲んでください。

編集部

ありがとうございます。早速ですが、2015年はIPO社数が92社になるなど、成長ベンチャー企業の上場が相次いでいます。客観的に大村先生はどう評価していますか?

大村

ずっとこのままの状態が続くとは正直思えないです。IPOの歴史は繰り返しています。僕が弁護士になった頃(1999年~2001年頃)も華やかだったし、そのあとの2004年~2006年頃も活況でした。その後、リーマンショックの後で一気に落ちましたが、再び活況になってきていますよね。活況と不況の繰り返しです。大事なのは、IPO市場のコンディションがどうだろうと、上場できる会社は上場しますし、上場しないといけない会社は上場しなければならない。リーマンショック後の2009年は19社しかIPOしませんでしたが、クックパッドさんなんて、同年の上場なんですよね。できるところはできるんです。

“上場”は一握りの強い会社が実現していくものです。2015年の上場企業数は92社(TOKYO PRO Marketを除く)でしたが、上場を目指している会社自体は、この何倍もあったわけですよ。その中で、実際に上場を果たすのは相当ハードルが高い話なのです。そして上場できたとしても、上場時の企業価値を継続的に超え続けていけるような会社であるべきですよね。僕が10年以上関わってきたある会社も、やっぱり上場までに相当の苦労をされています。もちろん上場した後も苦労していると思うんですけど、上場前から掲げているビジョンに向けて愚直に取り組み、調達した資金で効果的な投資を続け、現在とても大きく開花しています。そういう会社は力強く、IPOが活況でなくなったとしても上場できるし、上場していくと思うんですよね。上場は目的でもないですし、ましてや「目指せ!東証一部。」とかでもないんです。東証一部に行ってからがスタートぐらいの考えでやらないと、その企業に発展はないと思っています。すみません、この部屋さらに暑くなってきましたね。

編集部

はい(笑)。 ベタな質問になるのですが、大村先生が上場を目指す会社とお会いする時に何を見ていますか?

大村先生

極端な話、ベンチャー企業って、社長がすべてだと思うんです。なので、社長とは必ず早い時点で会うようにしています。社長がどんな人なのかを確認します。その時に社長に聞きます、「なぜ上場したいんですか?」って。その理由が明確な社長とそうではない社長だと上場できる確率も変わってくると思うんですよね。

僕は、IPOのコンサルタントではなく、IPOを目指すベンチャー企業や上場企業に関わる法務を中心に取り扱う弁護士なのですが、たまに「うちの会社、こんな感じなんですけど上場したほうがいいですかね?」って聞かれるわけです。僕に聞いている段階で上場しない方がいいって思います(笑)。

「うち儲かってしょうがないんですけど上場した方がいいですかね?」とか「上場は、いつでもできるので、したいときにする」と言っている社長ほど、上場できないですね。間違いない。繰り返しになりますが、上場後のことを考えてないとか、上場について明確な目的を持っていないとか、そういう社長は、まず無理です。その会社のトップである社長が、上場の目的を明確に力強く答えられる社長じゃないとダメですよね。上場することによって、世の中を更に実現したい状態に近づけられる、というくらいの考えがないと。

証券会社や監査法人などとの付き合い方において、よくある勘違い。

編集部

そのほか、上場企業になるうえで「これだけは心に留めておいた方がいい」ことはありますか?

大村

今みたいにIPO市場が活況となると、証券会社や監査法人などは担当する会社の数が飽和状態なんですよ。事実、主幹事を務める証券会社の数も統合その他の理由により、この10年で半分くらいになっています。180社以上もIPOした2006年の当時に比べると今の環境は変わってきています。主幹事を務める証券会社が減っていくことで、各証券会社の関わることができる会社の数のキャパシティも限界に近づきます。

監査法人も同様にキャパシティが限界に近づいていると思います。結果、証券会社や監査法人は上場後にしっかりと市場に評価される会社を優先的に取り扱おうとするのが自然です。ですので、「上場を目指していれば、証券会社や監査法人などから頭を下げてくる」というような環境ではないのです。上場を目指している会社は、証券会社や監査法人などに上場後のポテンシャルがあるということを示さなければなりません。上場企業は、小さく上場しても少しずつ大きくし、継続的に企業価値を上げて続けるべきです。とても大変なことですが、とても重要なことですね。

編集部

上場前のリーガル面では、どういったところを事前に手を打っておくべきでしょうか?

大村

いくつかあります。まずは今のビジネスが、そもそも法律に抵触していないかどうか。特に業法関係です。例えばですが、ネットで人材紹介をやるとします。当然、有料職業紹介事業の許可が必要ですよね。スタートアップでは、このレベルで対応していないところがあったりします。

フィンテック関係だと事業内容によっては金商法(金融商品取引法)の免許が必要だったりとかですね。結構流行っていますけどヘルスケア関係もです。薬機法、医療法、医師法等が関わってきたりします。サービス内容が特殊であれば特許の問題もありますし、サービス名称については商標や不正競争防止法や景品表示法上の問題等のもあります。早期に対処しておかないと、サービスのスキーム自体がダメになってしまう会社もありますよ。会社が成長すればするほど、万が一のインパクトが大きくなってしまう。

その他、B2B関係の会社だったりすると、営業担当者が架空売り上げをやってしまうパターンが一番怖い。ひとつあるだけで、すべてダメになってしまう。特に上場準備時に、計画達成に向けた大きなプレッシャーに負けてやってしまう・・・。決してあってはいけないことですが、意外にベンチャーあるあるなんですよね。

あとは労務問題です。上場承認が下りた後に、労務紛争が発生して上場ができなくなってしまった会社もあるくらいなので、労務はとても重要。特に残業代問題。残業代を適正に払っていない会社は少なくない・・・。「みなし残業で払っているからいいですよね」とか「管理監督者だから残業代を払わなくていいですよね」など。みなし残業でもちゃんと計算して超えたら払わなければならないですし、管理監督者なんて大体一握りなのに従業員の三分の一が管理監督者です、みたいな会社もあるんです。大体ダメですね。

上場した会社は、当然しっかりと対応していますよ。残業代問題は過去2年分なので退職従業員も含むんです。それが大変で、上場を目指すとなると過去2年分の残業代の精算が必要になってきます。僕は社長に、申請期は当たり前で、直前期・直前々期まで払うようにと言っています。それだけでも額としては結構な金額になります。法令遵守は最低限なので、それができないのはダメ。やらなくていい法律なんてない。すみません、どんどん部屋が暑くなってきました。

経営者はワンマンでないとダメ!ワンマンすぎてもダメ!

編集部

上場するまでに多くの壁が立ちはだかります。突破する経営者の資質はなんでしょうか。

大村

例えば、労務に関して。管理部門の役員などに任せっきりにしているか、社長が関わりすぎているかの2つのケースがあります。従業員の中で何かトラブルになりそうな人がいるとして、その方が自ら退職をされる場合は、後に解雇で争うこともありません。問題なのは、社長自身が関わりすぎてしまうケースで、あまりにもひどいことをした従業員だと、社長がカッときて「解雇だ!」と。解雇になっちゃうと、解雇が有効かどうかで紛争リスクになってしまいます。コンプライアンス的にも問題になりますので、社長はカッとなって即断している場合ではない。ビジョンや戦略面では社長がワンマンじゃないといけないけど、全部がワンマンすぎてもダメ。ほんとに難しいところです。

ワンマンすぎて、ナンバー2もナンバー3も管理部長も何から何まで社長のお伺いを立てないと進まない会社もちょっと厳しい。ワンマンすぎちゃうと皆がついてこない。ワンマンですけど、任せるところは任せるみたいな社長はいいと思います。

いろいろ話しましたが、要は人の話をちゃんと聞く社長ですね。聞く耳を持っている社長。当たり前のようで、なかなかいませんよ。ワンマン的に判断できる決断力と周りの意見を的確に聞けることは、矛盾する部分もあるので。ただ、しっかりとその矛盾を統合している経営者は、おもしろいほど「腰が低い」です。

編集部

腰が低い?

大村

通常なかなか知り合えないような超有名経営者と接する機会にいつも感じるのですが、そういう方々は圧倒的に成功しているのに、僕とか周りの人からいろいろ情報を得ようという貪欲さがあるんですよね。逆に偉ぶっちゃう人は、自分だけの殻の中に閉じこもってしまい、自分の成長に蓋をしてしまっている。まわりから吸収してさらに上に行こうって人はどんどん成功していくような気がする。上下とかつけずにちゃんとフラットに情報を得るためにすべき姿勢が、結論として「腰が低い」というところにつながっている。自分が一番偉いわけじゃないですし、常に上にはたくさんすごい人がいるって思い続けることですね。

最後に、申し訳ありません、7月なのに暖房が入っていました(笑)。

大村 健(おおむら たけし)

フォーサイト総合法律事務所 代表パートナー弁護士

1974生まれ。1999年に弁護士登録。2011年にフォーサイト総合法律事務所開設、代表パートナー弁護士就任。もともと弁護士目指したのも自分の力で仕事をしたいと思ったから。司法試験を受けるための近道はどこか?を模索し中央大学附属高等学校へ進学。トップクラスの成績で中央大学法学部へ。大学在学中に1日18時間の勉強をし続け、4年次に司法試験をクリア、現役合格。未来をつくる起業家を応援していけるような弁護士を志す。1999年の弁護士登録前後でマザーズ構想があり、ベンチャーのための市場ができ、自分がやりたかったことができると確信。人脈を広げるため機会があれば経営者の集まる場に参加。「誘われたら断らない」が信条。銀座アポと渋谷アポの間に赤坂で交流会があった時は中間地点ということで10分だけでも顔を出したことも(後にそれがすごい人脈につながった)。

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