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【アドウェイズ】携帯→スマホ、静止画→動画 M&Aでネット業界の変化に先手

変化の激しいネット業界で時代の先手を打つアドウェイズのM&A戦略を読み解く。
INOUZTimes編集部
【アドウェイズ】携帯→スマホ、静止画→動画 M&Aでネット業界の変化に先手

アドウェイズ<2489>が積極的なM&Aを繰り返し、インターネット広告市場で事業を拡大している。「ガラケー」と呼ばれる従来型の携帯電話向け事業を売却する一方、スマートフォン向けや海外向けサービス、ウェブ動画の技術を持つ企業を相次ぎ買収した。資本業務提携先の伊藤忠商事とも連携し、アジアの広告事業にも注力する。変化の激しいネット業界で時代の先手を打つアドウェイズのM&A戦略を読み解く。

【企業概要】 スマホ向け広告配信が主力、アプリ・コンテンツも展開

アドウェイズは国内最大級のアフィリエイトサービスの運営をはじめ、スマ―トフォン向けの広告配信サービスやスマートフォンアプリ向け効果測定システムを主力とし、アプリ・コンテンツの企画・開発・運営など多彩な事業を展開している会社である。2001年に設立し、2006年に東証マザーズに上場している。海外拠点は、アジア、北米地域など11カ国。昨今では、アジアを中心にスマートフォン向け広告事業に注力している。

事業のセグメントは 、広告事業、アプリ・メディア事業、海外事業に分けることができる。

広告事業は、スマートフォンアプリ向け広告サービス「AppDriver」、モバイル向けアフィリエイト広告サービス「Smart-C」、PCサイト向けアフィリエイト広告サービス「JANet」を中心に、インターネット上で事業展開を行う企業に対して、インターネット広告を総合的に提供している。

アプリ・メディア事業はスマートフォン向けアプリ開発の他、士業向けのポータルサイト等のメディアの運営等を行っている。

海外事業は、中国・香港・台湾・韓国・米国・シンガポールにおいて、現地企業と各国における外国企業を対象として、インターネットマーケティングの総合支援サービスを提供している。

またそれら3事業に加え、インターネットを活用した中古品買取販売といった新規事業にもチャレンジしている。

【経営陣】 岡村社長が2000年に創業

岡村陽久社長は2000年にアドウェイズの前身となるインターネット専門の広告配信ネットワークサービスを目的としたアドウェイズエージェンシーを個人事業として創業。2001年に大阪でアドウェイズを設立し、代表取締役社長に就任。

【株主構成】 伊藤忠商事が第2位株主、業務提携も

創業者の岡村陽久社長が今も20%近い持ち株比率で筆頭株主となっている。第2位の伊藤忠商事は2007年からアドウェイズと資本業務提携している。中国や東南アジアなどの海外展開を強化するため、2011年に伊藤忠商事が出資比率を20%に引き上げ持分法適用会社となった。2014年に伊藤忠が持ち株の一部を売却し、持分法適用会社から外れている。

【M&A戦略】 情報媒体の潮流変化に合わせ買収活用

ユーザーに利用される情報媒体の潮流が変わる中、主力の広告事業の拡大に向けて、巧みにM&Aを活用している当社の戦略を読み解きたい。

モバイル(従来型携帯電話)向け広告の強化

はじめのM&Aは2008年8月に子会社化したトイビィー・エンタテインメント(商号はアドウェイズ・エンタテインメントに変更)。エンタテインメントコンテンツの企画製作会社で、人気の韓流スター等の携帯キャリアの公式サイト等、延べ100サイトを運営しており、映画の企画開発も行っていた会社である。

トイビィーが持つ公式モバイルサイト(ユーザー課金型)の運営ノウハウ及びエンタテインメントコンテンツの企画開発力と、アドウェイズが持つ一般サイト(広告収入型)のノウハウを融合することにより、アフィリエイト広告における競合他社との差別化、利益率の向上などシナジー効果を得られると判断したようだ。(なおその後スマートフォンの普及に伴い、従来型携帯電話向けビジネスを行っていた当社を2012年5月に他社に売却するに至っている。)

SNSやスマートフォン向け広告への注力

2011年7月には、元々アドウェイズのモバイル広告事業の責任者が独立して設立したラビオンソーシャルを子会社化した。ソーシャルゲームを始めゲームコンテンツの提供に実績があり、スマートフォンアプリ「小悪魔キャバ嬢らいふ」を開発するなど、多くのコンテンツ開発・運営ノウハウを保有している会社である。

また同様のヒットアプリ開発会社の買収は続き、2013年12月にコパンの発行済全株式の内90%を取得し子会社化している。現在300万ダウンロードを突破した「古の女神と宝石の射手」などスマートフォン向けゲームアプリを提供している会社である。

両社が持つコンテンツ開発のクリエイティブ力や運営ノウハウ、そして当社が持つ広告プラットフォームを融合し、スマートフォン市場に向けたサービスの拡充を志向したと考えられる。

海外向け広告の拡大

海外事業の拡大にもM&Aを利用しており、2015年3月に中国などへの海外配送代行事業「楽一番」を行うトロピックスメディア(現・楽一番)の株式を取得し、子会社化した。海外配送代行事業を通して、当社の強みである「CHANet」「SmartDriver」などのアジアをネットワークするPC・スマートフォン対応アフィリエイトサービスや、アジアを中心とした世界10カ国の拠点を活かし、マーケティングデータを蓄積・分析・活用する取り組みを行っていくとのことだ。また今後は台湾、香港、韓国、東南アジア、欧米へと地域を拡大していくようだ。

新領域への着手

2016年8月にはweb動画技術を保有するMist Technologiesを子会社化している。ユーザー間で動画データの配信を行うことにより混雑時のサーバ負荷を軽減することが出来るP2P型CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)「MistCDN」や、モバイル・PC上でよりリッチな動画再生を実現するHTML5プレイヤー「Mist Inline Player」、モバイル・PCのブラウザ上で360度動画を再生するHTML5プレイヤー「360 VR Player」など、現在のweb動画における先端の技術を保有している会社である。

当社が持つスマートフォンアプリ向け広告効果測定システム「PartyTrack」や、コンテンツ型アドネットワーク事業「Oct-pass」を行っている子会社のBulbitとMist Technologiesの持つ技術を連携し、全世界対応型のアドプラットフォームを開発・提供を目指すとのことだ。

【財務分析】 売り上げ拡大も、販管費増で利益伸び悩む

スマートフォン向け広告市場の拡大を背景にアドウェイズの売上高は右肩上がりに成長している。しかし、2016年3月期の営業利益は6億8700万円と前期比35%の減益となった。海外事業の拡大に向けて人員増など販管費の増加が響いている。

事業別にみると、広告事業が連結売上高の8割を占めている。注力する海外事業の売上高は韓国・台湾などで増加し、2016年3月期に68億円と全体の17%を占める規模まで成長している。今後は東南アジアなどでも事業の拡大が期待できそうだ。

財務指標をみると、自己資本比率は60%前後の高い水準を維持している一方、自己資本利益率(ROE)が1%台に急低下している。これは2016年3月期に純利益が大幅に減少したことに加えて、手元資金が100億円超に膨らんでおり、資本効率が低下している。今後は配当や自社株買いなどの株主還元の強化や、M&Aなどの成長投資で現金の有効な使い道を示す必要がありそうだ。

【株価】 資本効率の低下を嫌気、低迷続く

アドウェイズの株価は2013年末に一時3000円台に乗せたが、その後は下落基調が続き、直近では500円前後に低迷している。株式市場がアドウェイズに期待するのは利益をともなった成長である。積極的なM&Aや投資は売上高を拡大させる一方、営業利益やROEが思うように上がっていないことが株価低迷の背景にある。

【まとめ】 臨機応変なM&A 投資効率の改善に期待

アドウェイズは「PC→モバイル(従来型携帯電話)→SNS→スマートフォン」、「国内→アジア」、「静止画→動画」というように、時代の変遷に合わせて自社広告サービスの展開先、及び展開するための技術・ノウハウをM&Aにより獲得している。今後も情報媒体の流行が変わるタイミングで買収を仕掛け、あるいは時に売却をしながら、臨機応変に主力の広告事業の展開先を変化させていくことだろう。しかし、積極的な買収は売上高を拡大させる一方、利益の増加に十分に結びついていない。手元資金も積み上がっており、投資効率を一段と意識した経営に期待したい。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

本記事は「M&Aonline」から提供を受けております。

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