障がい者が活躍する光景が当たり前になった
働きやすい職場づくり、すなわち“ホワイト化”は、いまや規模・創業年数に関係なく喫緊の経営課題であり、人手不足を背景に加速する優秀人財の争奪戦に勝ち抜くための決め手になり得ます。そこで本特集では、財団法人日本次世代企業普及機構が開催する「ホワイト企業アワード2019」の受賞企業を取材。応募総数1091社のなかから選ばれた25社のうち、とりわけ参考になる取り組みをしている企業の事例を紹介します。
第1回は「ダイバーシティ&インクルージョン部門」で選ばれた、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社です。MS&ADインシュアランスグループの中核事業会社の一つで古い社歴がありながら、テレマティクス技術を活用した急ブレーキや急発進、速度超過といった運転者の安全運転度合いをもとに保険料を割り引く自動車保険を国内で初めて販売するなど最先端領域の商品開発で名をはせています。そんな同社はいま、障がい者の活躍に積極的に取り組んでいるとのこと。ダイバーシティ推進を担当するお二人に、取り組みの背景や効果を聞いてみました。

ハンデを強みに変えて高い能力と精度を発揮!

──今回の受賞理由には障がい者雇用の推進があります。多くの会社がやっているように、障がい者雇用の法定基準を満たすために始めた取り組みなのでしょうか。

小谷彰彦さん(以下、小谷) いいえ。「特色ある個性豊かな会社を目指す」という現社長が就任時から発信し続けているメッセージに基づくものです。私たちが扱っている保険は様々な人にご利用いただくものですから、社内に多様な個性がある方々がいて、様々な意見やアイデアを出し合っていく必要があります。

また、変化の時代を生き残るためにも多様な人財は不可欠です。当社では、障がいを持つことも「多様な個性」のひとつとして、本当の意味で彼ら・彼女らと一緒に働き、障がい者も活躍できる職場を創ろう──。そういった思いで取り組みを開始しました。

──なるほど。具体的な取り組みを教えてください。

住田朋子さん(以下、住田) 取り組みには3本の柱があります。一つ目は、「地域密着モデル」として、特別支援学校の高校生をインターシップで受け入れていることです。2017年以降は、インターンシップで受け入れた学生を採用に繋げています。二つ目は、全国255の拠点で障がい者の採用を積極的に取組んでいること。最後に、一般的に「継続的な雇用が難しい」といわれる精神障がい者の定着に取り組んでいます。これについては、特定業務集中職場の設置という新たな取り組みにより、ここ2年間では一人の退職者も出すことなく、3年目に突入しています。

──それはすばらしい実績ですね。どのようにして、精神障がい者の定着を成功させたのでしょうか。

小谷 個性や能力が活かされる特定業務を切り出して集め、専門の部署「オフィス・事務サポートセンター」を開設しました。業務を切り出す基準は「障がい特性に応じた仕事」。業務のプロセスや出すべき成果があいまいなものは、向かないためです。それらが明確な仕事を社内から募集しています。

また、障がい者5人に1人の割合で責任者を配置しています。誰から指示を受けるのか、困った時や体調が悪い時など誰に相談すればよいか、精神障がい者に対しては指導管理者を明確にする必要があります。

明確な指示を出せる管理者が、少数のチームのメンバーに対して各人の体調に気を配りながら、業務量のコントロールをする。この仕組みをつくれたことが定着した一番の理由だと思いますね。

住田 こうした仕組みづくりができたのは、過去の苦い経験の反省からでもあります。5年前にも一度、精神障がい者を30名ほど採用し、各職場に1名ずつ配属したことがあります。しかし、彼ら・彼女らに合った仕事の切り出しや専任の管理者のマネジメントを徹底させることができませんでした。

結果、彼ら・彼女らの出すサインに周囲が気付けず、また本人たちもSOSを発し辛かったためか、多くの退職者を出してしまいました。この反省を踏まえ、「彼ら・彼女らの能力を活かすには、職場側の受け入れ体制を整えることが不可欠だ」と実感し、改めて2017年に専門の組織として立ち上げたわけです。

──マネジメントには専門の知識やスキルが必要なイメージがあります。専任の上司はどのように選定しているのですか。

住田 彼ら・彼女らが普段から心を開いて1対1で向き合える方にお願いしています。、障がいに関する専門知識は当初からは必要ないことが分かってきたからです。彼ら・彼女らは、非常に優秀です。ただ、指示や出すべき結果があいまいなものにはとまどってしまう傾向があるだけなんです。

そこに気を配れる体制をつくり、適切な仕事に就いてもらえれば、まじめで、しかも一切手を抜かないので、品質もスピードもつねに期待以上の成果を出してくれます。その評判が評判を呼び、現在は捌ききれないくらいの業務依頼が来るほど、社内でも重要な戦力になっています。さらにそういった実績をもって、日本橋と名古屋、大阪にも同様の部署を新設することを検討しています。

──障がいのある高校生を特別支援学校からインターシップで受け入れて、採用に結び付ける「地域密着モデル」の取り組みについては、どんな成果があがっていますか。

住田 こちらは徐々にといった感じです。開始当初は、現場から「何から始めていいか、どのような仕事をさせたらいいか、どんなふうに接したらいいか解らない」という声が多く聞かれていました。

学校の先生から本人の個性を詳細に伝えてもらったうえで、我々からは接し方や注意点などの情報共有を行いながら、3〜4年をかけて継続的に行う中でやっと馴染んできました。現場の指導役のノウハウが、年を追うごとに蓄積されてきたのは、一つの大きな成果ですね。

 

──では、各拠点での障がい者雇用の積極化についてはどうでしょう。

小谷 学校からも自治体からも多くの感謝の声や注目をいただいています。障がいを持つ方にとって、事務仕事やホワイトカラーの就職先は、特に地方では数少ないのが実態です。私たちとしては、「地域の方々との結びつきや繋がりに少しでも貢献できたら」と思っています。

また職場内では、彼ら・彼女らと関わる社員たちに「人を育てよう」という意識やスキルが自然に培われるようになっています。また、各拠点からは「純粋で心やさしい姿勢に改めて学ぶ場面が非常に多い」「実際に仕事を任せると予想以上にスキルが高く、期待以上の成果があがっている」といった声が数多く寄せられており、仕事の幅が年々、広がっていますね。

──取り組みの成果として実感されていることを聞かせてください。

小谷 「WIN—WINの関係をつくれたこと」がいちばんの成果だと感じています。「仕事を施す」というようなカタチではなく、障がいを持つ方たちの仕事が周囲に心から喜ばれ、頼られ、それがまた本人の自信になる――という好循環が生まれたんですね。

ともに働くなかで「彼ら・彼女らの個性を知り、強みを活かせる仕事をうまく集約させることができれば、「楽しく、誇りをもって」更に活躍できる人財がいるに違いないという今後への手応えを得ました。

障がい者スポーツの支援でも地域に貢献

──ホワイト企業アワードを受賞し、今後はどのような取り組みを推進していく予定ですか。

小谷 今回の受賞は、社長自ら「全国部支店長会議」で発表するなど、会社全体としても非常に喜ばしく受けとめています。今後も、現在の取り組みを全国的に広げていく予定です。また、当社は、2006年から「日本車いすバスケットボール連盟」への協賛を始め、全社で障がい者スポーツの観戦・応援等を行ってきました。

さらに2015年からは障がい者スポーツ支援の一環として、障がい者アスリートの雇用を始めました。パラリンピックでメダルを獲るような選手をはじめ、14人の社員全員が全国の各職場に在籍し活躍しています。そのため、当社の障がい者スポーツ支援への取り組みに大きな注目をいただいています。

住田 こうした実績によって、東京都から4年連続で「東京都スポーツ推進モデル企業」の選定をいただいている唯一の企業でもあります。今後も障がい者スポーツ振興には注力していきたいですね。“特色ある個性豊かな会社”になるための取り組みは、全ての分野で、当たり前にやっていこうと考えています。

プロフィール
人事部 ダイバーシティ推進室 室長
住田朋子 (すみだともこ)
プロフィール
人事部 ダイバーシティ推進室 担当次長
小谷彰彦 (こたにあきひこ)

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