
第3回は「最優秀賞」に選ばれた、ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)です。全国2,000ヵ所にくわえ米豪・東南アジアなどのゴルフ場を予約できるほか、ゴルフについての総合的なサービス・情報を提供するWebサイトを運営しています。そんな同社は、現場の自発的な参加をうながす制度を次々と立ち上げ、成果をあげているそうです。ゴルフという「遊び」を事業テーマにしている会社ならではの試みについて、人事企画室の菊池さんと秋山さんにお話を聞きました。
人事が強制しないことで参加意欲を引き出す
──とりくみをスタートさせたのはいつごろですか。
菊池一恵さん(以下、菊池) 2000年の創業からしばらくはベンチャー企業ということもあり、社員が長時間、働く風土だったことは確かです。ただ、会社の成長ステージが変わってくるなか、2013年ごろから経営方針にも働き方の改善についての内容が組み込まれるようになり、「より効率的に仕事をしなければ」という気運が生まれたのです。
まずは「会議のための会議はやめよう」「内容さえわかれば、手の込んだ社以内資料はつくらなくていい」など、ムダを減らすところからスタートしました。さらに、2016年に本社を移転したのをきっかけに、時代のあと押しもあって、「より柔軟な働き方にシフトしよう!」という流れを一気に加速化させられたように思います。
日常業務のなかで変革を進めるのは大きなエネルギーが必要ですが、「オフィスの引っ越し」という非日常的なイベントは多くの変革をおこすきっかけになりました。
──柔軟な働き方を実現するため様々な制度を導入しているそうですね。そのなかのひとつ、今回の受賞理由にも取り上げられた「オネストジョン」とは、どのような制度なのでしょうか。
秋山竜さん(以下、秋山) 残業時間削減のために、2017年に導入した制度です。人事がいくら「残業を減らそう!」といったところで、一人ひとりの意識が変わらなければ実態を変えるのは難しい。そこで、チーム単位でゲーム的に取り組んでもらう制度を考えました。
毎月、マネージャーが事前に残業時間を予測して申告。誤差15%の範囲内ならば、褒賞としてチームの懇親のための費用が支給される──という仕組みです。ゴルフコンペでよく行われる、あらかじめ自分のスコアを予想して、いちばん近いスコアの人が勝つ「オネストジョン方式」を参考にしました。
──なるほど、ゴルフが元ネタなんですね。制度を浸透させるための工夫を教えてください。
菊池 「強制をしなかったこと」「マネージャーを巻き込むカタチにしたこと」の2点がポイントだったと思います。ギチギチに強制せず、「不参加でもかまわない」と、あえて余白を残しました。強制するよりも自発的に参加してもらうほうが形骸化しないと考えたからです。開始当初は参加しないチームもありました。
マネージャーが月初にスコアを入れないとゲームがスタートしないので、「スコアを入れ忘れた」という理由での不参加も。ただ徐々に、「あのチーム、オネストジョン当てて懇親ランチに行ったみたいだ」などとウワサが広がるなかで、ほぼ全チームが参加するまでに広がりました。
現在は「ひとりでも残業が月45時間を超えると褒賞が出ない」というルールもプラス。残業時間削減だけでなく、法律で定められた上限時間への意識も高めてもらえるようにしています。
秋山 また、この制度を立ち上げた時期は、ちょうど会社全体の組織変革も行なっていました。組織上の課題が可視化され、マネージャーたちには働き方改革以外の側面でも、チームマネジメントの改善について協力を求めていたタイミングだったのです。
そこで、「マネージャーたちにチームづくりのツールのひとつにしてもらえる制度にしよう」というねらいもありました。そこにもうまくハマったのかなと思います。
マネージャーとメンバーのコミュニケーションツールとしての効果も
──制度導入により、どのような成果が生まれましたか。
菊池 残業時間スコアを予測するためには、マネージャーが全員の業務状況を把握する必要があります。そこで最低でも月1回は、メンバーと会話することに。コミュニケーションのきっかけが生まれ、活性化したのも大きな成果ですね。懇親費用を使ってチームの交流や結束が深まる効果もあらわれています
──働き方についての取り組みには、「オネストジョン」のほかにどのようなものがあるのでしょうか。
秋山 フレックスタイム制をより個々の状況にあわせた働き方ができるように改善しました。コアタイムを10時~13時と大幅に短縮したのです。コアタイムの前から出勤する勤務スタイルを、暑い日中を避けて早朝にゴルフをする形態にならって「アーリー・バード」と名づけ、8:30までに出社すると無料で朝食とコーヒを出すサポートをしています。
さらに、ハーフでの休憩なしに回る「スループレー」になぞらえ、朝から休憩ナシで就業する「早朝スルー」制度も。これを利用すれば、13時以降早い時間に帰宅でき、午後の時間を有効に使えます。
とはいえ、どうしても仕事が残ってしまうときは、夜残るのではなく、翌日の朝早く出社することを推奨しています。ゴルファーは朝早くから活動していますので、その時間帯にあわせるイメージです(笑)
──ネーミングにこだわりが感じられますね。
菊池 「社員がイメージしやすいほうが浸透する」というねらいとともに、「GDOらしさ」を打ち出したいからです。一連のGDOらしい働き方を「WORK FAST」と命名しましたが、これはゴルフの有名な言葉「PLAY FAST」に由来したもの。
ゴルフというスポーツ、レジャーを事業テーマにした会社ですので、「GDOの社員たるもの、仕事以外にも時間を使って人生を豊かにしているのがかっこいいよね」というコンセプトをもとに、いろいろと考えています。
人事内でワイワイと相談しながらアイデアを出していきますが、経営陣が取り組みに前向きで「やってみな」と背中を押してくれることにも助けられています。創業者がもともと「理想の職場環境をつくりたい」という想いで立ち上げた会社なので、いろいろなことに協力的で、社内展開もスムーズです。
ルールをつくらないことで自立したプロ集団へ
──ホワイト企業アワードの受賞を受け、今後はどのような取り組みをしていく予定ですか。
秋山 受賞は非常にありがたく受けとめ、ますますいろいろな試みをしていこうとしています。一方、既存の制度は、その制度の導入目的である「残業削減」「休暇の積極的な取得」といったことを、みんなが当たり前にできるようになれば、そのつど、柔軟に廃止や刷新を行なっていく予定です。
新制度が始まるタイミングで「不要だ」と判断し、既にやめている制度もいくつかあります。「オネストジョン」をはじめとする諸制度もそろそろバージョンアップが必要だと感じていますね。
菊池 直近の取り組みでいえば、昨年からリモートワークを推進しています。半年ほどいくつかのチームで試し、「大きなトラブルはなさそうだ」と判断したうえでスタートさせました。当社は産休・育休の取得者が多く、100%復帰しています。子育て中の社員や通勤時間をなくすことで一日を有効に使いたいという社員に好評で、利用が広がってきています。
この制度でも、人事からは最低限のルールだけを決め細かいルールを強制することはしないようにしています。リモートは週3回までOKにしていて、「効率良く働くための選択肢の一つとして」活用してもらっています。人事としては「極力ルールをつくらない」のがコンセプトで「チームごとにやりやすいよう運用してほしい」と伝えています。
秋山 とはいえ、いくつか決まりごとは作っています。たとえば、「当日急にリモートにする」といった突発的な利用は交通事情や悪天候などによる実施を除き基本的にNG。事前のスケジューリングと情報共有による業務の効率化が本来の目的だからです。
菊池 「GDOらしい働き方を追求したい」ということで、ゴルフ練習場の一角にサテライトオフィスを置いています。将来的には完全リモートで、どこにいてもオフィスにいるのと変わらない状況を作ることをめざしています。
とはいえ、まだまだベンチャー気質の会社。社内には「一人ひとりが責任を果たす“自立したプロフェッショナル”であることを前提に利用できる制度だよ」という意識面での周知を徹底しています。

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