今回は、海外留学あっせんサービスのパイオニア、アイエスエイが登場する後編です。1970年の設立から半世紀の継続経営を実現した同社。いま、さらなる飛躍をめざし、IPOを目標に掲げています。その実現に向けて、弱点であるITへの取り組みについて、出資者であるファンドの協力をあおいでいるそうです。いわば、「株主を情報システム部門として活用する」という新機軸です。同社専務の池亀さんに、IPOへの取り組みの詳細について、お聞きしました!
IT企業とのコラボを視野に入れる
――WMパートナーズの出資を受け入れた後、どのような支援がありましたか。
事業面では、「どこのIT企業と組んでいくか」について相談に乗ってもらっています。実際に数社、紹介していただきました。私たちは教育系の会社には情報感度が高いと自負していますが、IT分野にはあまりネットワークがありません。しかもIT分野は日進月歩以上の速さで変化しているので、どの企業と組むかについても、最新の動向をもとに判断しなければならない。WMパートナーズのネットワークが心強い味方になっています。
――IT企業とコラボすることで、どのような事業展開がはかれるのでしょうか。
数年前にはなかったようなアプローチが現実的に出てくると考えています。たとえば自動運転のクルマのなかで学習をする。バーチャルリアリティを使って留学の疑似体験をする。生活全般が変わるような時代ですから、当然、教育の現場も大きく変わってくると思います。極端な話、学校に行かなくても家庭学習だけでOKという時代になったとき、私たちの事業はどうなるのかということまで視野に入れ、IT企業とのコラボを考える必要があると思っています。
具体的なIT企業とのコラボについて、WMパートナーズから紹介された会社との提携が大きかったです。提携先企業とWMパートナーズの信頼関係もあり、私たちとの提携効果が出るのが早くなりました。とくに教育分野は、単にメリットがあるかないかではなく、顧客へ継続的にいいサービスを提供し続けられるかという点が重要です。信頼できるパートナーを紹介していただき、本当に感謝しています。
社内管理システム導入で労働時間3割減も
――社内体制強化の面で、WMパートナーズから、なんらかの支援はありましたか。
WMパートナーズに、社内管理システムの構築をサポートしてもらっています。社内の管理体制が紙ベースであることや、導入しているシステムが現状と合致していないことは社内でも具体的な課題としてとらえていました。しかし実際に「どんなシステムをどう構築していけばいいのか」という段階になったとき、費用面や開発期間の面で、どこのIT企業に頼めばいいのかわかりませんでした。そもそも、私たちのリテラシーでは、先方の見積もりが適正なのかも判断できなかったと思います(笑)。
WMパートナーズのなかにいるシステムコンサルタントに、私たちの立場に立って考えていただき、信頼できるIT面でのパートナーになっていただきました。新しいシステムの構築は順調に進んでいて、2020年4月1日カットオーバーの予定です。
――新しい社内管理システムの導入で、どのようなメリットが生まれますか。
新システムが導入される部署では、たぶん労働時間が3割くらい短縮されると考えています。また、ペーパーレスシステムなので、紙代、コピー代、宅配便代などの経費が削減でき、書類の保管場所も不要になるはずです。さらにこれまでのお客さまのデータを整理してデジタル化。データベースとして活用していくこともできるようになるでしょうね。
――データビジネスの展開を考えているわけですね。
ええ。マーケティングプロモーションにデータを使うなどの方向で、次の事業につなげていきたいと考えています。いまは中高生向けにBtoBtoCという学校を通したビジネス展開をしていますが、これからはBtoCも伸ばしていきたいと思っています。
たとえば、自分の状況や目的などを入力するだけで「あなたのスキルアップには、この学校のこういうプログラムに、これだけの期間、留学するのがいいですよ」といったことが表示される仕組みづくりなども魅力的だと思います。こういった展開をするうえで、単なるシステムエンジニアはなく、総合的なIT化、デジタル化のパートナーとしてWMパートナーズのサポートが心強いです。
――今後、WMパートナーズに期待していることはどのようなことですか。
投資家の方たちから見て、どうしたら私たちが「魅力的な会社」になるかについてサポートしてもらうことです。事業ストーリー、ITシステム構築などのインフラ整備を含めたガバナンス強化など、企業価値向上に向け、いろいろな側面からご支援いただいています。海外での新たなパートナー探しという部分で、ネットワークを活かしてご支援いただけるとありがたいですね。
時代が変化する前に変化をキャッチする
――最後に、50年間、経営を継続してきた立場から、ほかの経営者へアドバイスをお願いします。
アドバイスというほどのことではありませんが、私たちが生き残ってこられたのは、理念を大事にしつつ時代が変化するそのちょっと前に変化に気づき、準備することができたからだと思います。留学が盛んになる前に、海外にインフラを整備できたこと。中高生の留学が増加する前に、BtoBtoCのビジネスモデルを構築して、サービスを提供する体制を整えたこと。
「英語教育のための留学」という既存の考え方から脱し、英語+α、つまり「自己のモチベーションやリーダーシップ力を開拓するための留学」という方向性を見いだしたこと。すべてがマスコミなどで取り上げられて流行する「ちょっと前」には準備が整っていました。
しっかりとした準備を行うには、正確な情報収集が欠かせません。情報化の現在、事業会社が単独で情報収集を行うには限界があります。WMパートナーズのような、しっかりと業界環境と最新のベンチャー事情に通じたパートナーはこの点からも不可欠です。
株式会社アイエスエイ
設立/1970年9月
資本金/4億3,420万円(資本剰余金を含む)
売上高/85億8,493万円(2018年12月期)
従業員数/171名(2019年4月末現在)
事業内容/海外教育研修事業、国内教育研修事業、長期留学事業、学校教育イノベーション支援事業
URL/ https://www.isa.co.jp/corporate/
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