半世紀の経験の蓄積を糧に 新たな出資者を迎えて飛躍をめざす
いま、投資市場はスタートアップ企業に熱い視線を送っています。ただ、「そればかり」になっていませんか? 成長を追求し、そのための出資を求めているのはスタートアップ企業だけではありません。本企画では、設立からの長い戦いを経て、なおベンチャースピリットを失わず、さらなる成長をめざす「大人ベンチャー」を取材。その成長戦略のリアルに迫ります。
 今回は、海外留学あっせんサービスのパイオニア、アイエスエイが登場。同社はアメリカ、カナダ、ニュージーランド、シンガポールなどに子会社を設立し、安全・安心なインフラを整え、留学のサポートを行ってきました。1970年の会社設立から約50年、継続経営できている秘訣と、100年企業をめざすための取り組みについて、同社専務の池亀さんにお聞きしました!

中高生を対象にしたBtoBtoCで飛躍

――アイエスエイさんは1970年の設立以来、半世紀にわたって継続経営を実現しています。その秘訣を教えてください。

創業時の理念を維持しつつ、つねに時代の要求の少しだけ先を行くことができたことだと思います。私たちの使命は、グローバル社会で活躍できる人材の輩出を支援すること。この基本的部分については、この50年間、ほぼ変わっていません。

会社が設立された1970年といえば、まだ円は固定相場制。1ドル=360円の時代、海外に行く日本人の数は非常に限られていました。当時、海外の教育制度などを視察して回っていた当社社長の倉橋は、かったつに活躍する海外の若者を目の当たりにし、その一方で、欧米ではホームステイという形態で、体験型教育をする取り組みが盛んなことに気づきました。日本人も、いずれは同様の教育環境を求めるに違いない。

そう考えた倉橋は、アメリカでは寮を確保し、ほかの英語圏ではホームステイ協会を立ち上げて日本人の受け入れ先を用意。また、独自のプログラムを開発して人の育成のインフラ整備を始めました。その基盤がちょうど整ったころ、円が変動相場制になったこともあり、海外に出かける日本人の数が一気に増えました。

――なるほど。競合他社がまだ出てこないなか、アイエスエイだけがインフラを整えていたのですね。その後も、時代の要求を先取りできたことが継続経営につながっていった──。

その通りです。当初、社会人を対象に始まった海外事業は、やがて大学生が主流となり、一時期、海外留学を希望する大学生が爆発的に増えました。しかし、大学自体が留学先をあっせんするようになったため、当社は1985年ごろから対象を中高生にシフトしていきました。学校のカリキュラムの一環として、中高生が海外で学ぶことは、当時はまだほとんど行われていませでした。この分野でも、他社に先駆けて準備を整えることができました。

――中高生の場合も、大学と同様に、学校が留学をあっせんするということにはならなかったのですか。

なりませんでした。というよりも私たちは学校側と協力体制を組む形態でビジネス展開をはかりました。BtoCのビジネスモデルから、中学・高校経由で生徒たちの留学をお手伝いするBtoBtoCというビジネスモデルにシフトチェンジしたわけです。

社会人や大学生の場合、渡航先でなにかあっても自己責任とされるでしょう。しかし中高生の場合、留学先で事故や事件に巻き込まれるようなことは、いっさいあってはなりませんし、なにかあれば学校の責任が問われます。リスク管理、安全管理も重要な要件です。ですから、私たちは、留学生をサポートする子会社を海外にもち、信頼できるホームステイ先を保有し、独自に品質を管理できる体制を整えました。

どのような目的で、どれくらいの期間、生徒を留学させるのか、学校のカリキュラムとの整合性をどうはかるかなど、学校ごとの事情、教育目標に応じてカスタムメイドの留学サービスをご提供していくなかで、当社と学校側の信頼関係が深まりました。現在、数百校の中学・高校と契約を結んでいます。

海外リスクに備えて国内ビジネスを強化

――なるほど。では、この50年間、あまり浮き沈みすることなく、順調に業績を伸ばしてきたわけですね。

いいえ、浮き沈みはありました。当社の事業は、教育業であると同時に旅行業です。為替や景気の変動の影響をそのまま受けます。テロや災害など、海外の諸事情によって留学生が激減することもあります。たとえばリーマンショックで景気が冷えこんだときは、留学生の数は大きく減少しました。その前では、アメリカで9.11のテロが起きたときも、海外留学を自粛する動きが強くなり、お客さまがガクッと減りました。

――テロや災害など予測ができないリスクが顕在化したとき、業績をどのように回復させていったのですか。

当然リスクを回避する、軽減する施策を講じましたが、その一方で、伸長しつつあった国内留学、つまり国内での研修を強化して、お客さまのニーズにこたえるとともに、基盤の強化をはかりました。

たとえば中高生を対象に1週間、都内の施設や在籍校に通いながらオールイングリッシュでディスカッションを行う研修を提供する。この研修では語学力の獲得以上に、自己啓発の要素を重視しています。同年代で他国籍の人たちと、ひとつのテーマで議論していくことで「こういう考え方もあるのか」と気づきます。

また、ハーバードやスタンフォードなどの大学から大学生を招へいし、そうした大学生にグループリーダーとして議論に参加してもらうことで、自分の未来像に「なるほど、こういった考え方があるんだな、こんなふうになれるんだな。こういう方向性があるんだな」と、リアルに知ることもできます。研修を終えると、子どもたちの目の色が変わって、受験やその後の活動にのぞむ姿勢が大きく変化しますよ。

国内研修事業は、為替の変動や海外テロなどと無縁ですが、そのためだけではなく、人の育成という本質的な観点からも今後も大切に伸ばしていきたい分野ですね。

ITに弱い「文系企業体質」が経営課題

――アイエスエイは「50年企業」から「100年企業」をめざすフェーズに突入します。そのなかでの経営課題としては、どのようなことがありますか。

大きな課題がIT化への対応です。IT化という革命的な波によって、教育のあり方が大きく変わろうとしています。EdTechといわれる最新のテクノロジーを活用することで、これからは単純に教室で勉強するだけではなく、遠隔教育も盛んになるはずです。海外に行かずに、海外の大学の授業を受講することもできるようになってきました。

教育環境が大きく変われば、現在の競合相手とは異なる分野から参入してくる企業もあると思います。私たちはITについてはあまり情報をもっていないため、他企業とタッグを組んで事業展開していく必要があると感じています。IT化と教育、留学をどのように結びつけていくのか。そのために、どこの会社と組めばいいのか。そうしたことも大きな課題として、目の前にあります。

それにくわえ、社内体制の面でも、IT化への立ち遅れが顕在化。私たちは文系人材が集まった会社なので、ITによるシステム管理などに弱い側面があります。紙ベースの業務もありましたし、これまで導入していた基幹システムは旅行業に特化したもの。いずれなんとかしなければいけないと考えていました。多様化したサービス、プログラム、顧客サービスを管理するには不十分です。システムを入れ替えて業務を効率化することが、管理部門の課題になっていました。

――そうした課題があるなか、どのような解決策を考えたのでしょう。

IT化への対応が必要という認識はもっていましたが、社内のメンバーは目の前の仕事に追われていることもあり、対応が後手になっている部分がありました。そのタイミングで、WMパートナーズが当社の株主になりました。ちょうど、以前に当社の株式をもっていた企業から、「WMパートナーズに持株の譲渡を行いたい」という依頼があったのです。最初にお会いしたときに、IT化の話やEdTechの話で盛り上がり、今後、中期的に経営計画を作るうえで、いいパートナーになっていただけると確信しました。

WMパートナーズには、ある程度、長い期間にわたって株をもっていただきたいという希望があります。IT化への対応は、結果が出るまでには時間がかかります。じっくりと企業価値を上げていくためのディスカッションをともに行うことができる。プロフェッショナルに伴走してもらえることは、当社の事業スタイルからみて、「ありがたい」と思いました。

――WMパートナーズであれば、経営についての実践的なアドバイスも、もらえそうですね。

その通りです。WMパートナーズは最新のIT業界事情やテクノロジー動向に精通しています。また企業価値向上に関しても、経験豊かであり、実践的なアドバイスをもらえています。WMパートナーズへの株式譲渡を行ってもらい、大変よかったです。

株式会社アイエスエイ
設立/1970年9月
資本金/4億3,420万円(資本剰余金を含む)
売上高/85億8,493万円(2018年12月期)
従業員数/171名(2019年4月末現在)
事業内容/海外教育研修事業、国内教育研修事業、長期留学事業、学校教育イノベーション支援事業
URL/ https://www.isa.co.jp/corporate/


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