経営者としての自分に目覚め、企業成長の方法を知る協力者を探した
いま、投資市場はスタートアップ企業に熱い視線を送っています。ただ、「そればかり」になっていませんか? 成長を追求し、そのための出資を求めているのはスタートアップ企業だけではありません。本企画では、設立からの長い戦いを経て、なおベンチャースピリットを失わず、さらなる成長をめざす「大人ベンチャー」を取材。その成長戦略のリアルに迫ります。
 今回は、企業が広告・プロモーションやイベント・講演などにタレントを活用するときの窓口となるキャスティング会社である、エイスリー代表の山本さんが登場。「キャスティング会社初の株式上場をめざす」と宣言しています。もともとは「自分ひとりだけ食べていければいい」という意識だったという山本さん。それが、インフルエンサーやYouTuberなどの“新しいタレント”たちのキャスティングを手がけることで、会社も、山本さんも大きく変わっていくことに。IPOをめざすまでになったいきさつを語ってもらいました。

Web時代の新しい「タレント」の窓口に

──2016年9月期の売上高3億5,000万円から、2019年9月期は14億2,000万円と、3年間に4倍超の急成長を遂げています。その理由を教えてください。

“総合キャスティング会社”を掲げているエイスリーとして、その「総合」を徹底させることにビジネスを振り切った。それが要因でしょう。

企業や団体などが開催するイベントや講演。そこへタレントを呼ぶお手伝いをするのがキャスティング会社で、国内に多数あります。でも、「芸能人だけ」とか「モデルだけ」とか、キャスティングする対象を限定しているところがほとんど。そのなかで、私たちはどんな分野のタレントでもキャスティングする、“総合キャスティング会社”を標榜しています。

芸人、俳優、モデル、アイドル、歌手、声優、アスリート、専門家、文化人、クリエイター、アーティストなどなど、オールジャンルをあつかっています。当然、対象者はかなりの数にのぼります。移り変わりも激しい。さらに、YouTuberやインフルエンサーといった新しいタイプのタレントもどんどん生まれていくなかで、そのコネクションももつことにより、依頼があればキャスティングできます。

いま、WebやSNSの発達が、「タレント」の概念を根本から崩しています。これまでタレントといえば、テレビやラジオ、CMに出ている「だれもが知っている人」に限られていました。そういう人たちであれば、所属している芸能プロダクションに連絡すれば、コンタクトできました。

もっとも、芸能事務所に直接連絡するのもなかなか大変ですが…。でも、現代の新しいタレントであるYouTuberやクリエイター、インフルエンサーといった人たちは、一部の人たちが知っている存在ですが、熱狂的に支持されているために影響力は大きい。だから、キャスティングの需要も高いのです。

ところが、そうした新しいタレントたちは、どこに連絡すればコンタクトできるのか、よくわかりませんよね。だから、エイスリーがオールジャンルで徹底的に窓口をつくり、橋わたしをしているのです。5年ほど前、経営の舵をそこに振り切ったとき、業績が一気に伸び始めました。

──5年前、なにが起きたのですか。

経営危機に直面してしまったのです。当時のエイスリーは、読者モデルを起用したマーケティング事業で、少しずつですが業績が拡大していました。いまでいうインフルエンサー・マーケティングのはしりですね。

ところが、他社が実施していた案件で、ステルス・マーケティング問題が起き、社会的に批判される事態になってしまった。一時的にブロガーによるマーケティングは下火になり、エイスリーの売上も急激に落ちてしまいました。

業績好調だったので社員を数名、雇っているし、すでに私ひとりの問題ではありません。会社を倒産させてはならない。なんとかしなくちゃいけない。なにをすれば会社が拡大するのか。「拡大」という2文字を意識したのは、そのときがはじめてでした。いってみれば、経営者としての自分が目覚めたんです。

“ビッグカメラ戦略”で顧客を呼び込む

──経営者の自覚が出てきて、まずなにから手をつけたのでしょう。

 「社会がなにを求めているか」を考え抜き、ニーズの高い事業をつくりだすことです。思案の結果、インフルエンサーのような新しいタレントも含めた、すべての分野の有名人・著名人と、企業など一般社会を仲介する「コンシェルジェ」みたいな会社が求められているんじゃないか。そう気づいたのです。

というのも、私はレコード会社の宣伝担当者や、芸能事務所のマネージャーを経験しています。タレントをマネジメントしている人たちは、一般企業の人たちとは気質や文化がちょっと異なっていることをよく知っているんです。

というか、私自身がそのひとりでした(笑)。いわゆる“ギョーカイ人”ですね。一般企業の人たちがイベントや講演会にタレントを呼ぼうとするとき、コンタクトする相手が“ギョーカイ人”だと、コミュニケーションがスムーズにいかない。そんな場面を、なんども見てきたんです。

──確かに、芸能の世界の人たちとのコミュニケーションは難しい印象があります。

ええ、そうですよね。私の場合、芸能界を辞めたあと、一般企業に転職。一般的なビジネスパーソンとして、Webマーケティングを経験したので、その仕事の独特さに気づくことができました。両方の世界を知っている私なら、両者を橋わたしすることができるのではないか。そう考えたわけです。

タレント、芸人、俳優、モデル、Vtuber、Youtuber、インフルエンサー、アイドル、歌手、声優、アスリート、専門家、文化人、クリエイター、アーティスト、コスプレイヤー、エキストラ、MC、キャラクターなどなど、オールジャンルをあつかう会社はめずらしい。ですから、有名人・著名人を起用したいという、なんらかのニーズが出てきたとき「エイスリーに連絡しよう」となるわけです。

私はこれを「ビッグカメラ戦略」と呼んでいます。1階の入り口のところに、最新のスマートフォンが並んでいる。つまりインフルエンサーやYouTuberです。そして上のフロアに行くと白物家電がどーんと置いてある。アイドルや歌手、役者ですね。さらにパソコンや電球まで、地下2階から地上6階まで多様な品ぞろえがある。

これが私たちの場合、スポーツ選手だったり文化人だったりする。「ビッグカメラへ行けば、電気を使う製品はなんでもある」と同じく、「エイスリーに行けばどんな“生き物”でもキャスティングしてくれる」ということで、多くのお客さまが集まり、そしてなんども利用してくれるわけです。

「社長の器にあらず」と身売りを考えたことも

──独自の事業戦略をあみだしたわけですね。経営者としての自分に目覚めてから、一気にトップとしての才能が花開いたという感じでしょうか。

いいえ。定まったのは、事業の方向性だけ。どうやって社員を増やすのか。そして、増えた社員たちをどうやって団結させるのか。どんなふうに組織化すればいいのか。そして私自身は、どんな目標を掲げ、どのように引っ張っていけばいいのか。平たくいえば、「会社を成長させる方法」がわからなかった。

「私にはこれ以上は難しい」と考えて、会社売却を検討したこともあるんです。総合キャスティング事業が軌道に乗ったいまなら高く買ってもらえるし、有能な経営陣を送りこんでくれるだろうから、そのほうがいいと。

──そんなことがあったんですね…。なぜ、そんなにもご自身の経営者としての能力に自信がもてなかったのですか。

もともと、「社長になろう!」と思って起業したわけではないんです。サラリーマンという立場がどうも苦手で、ひとりで仕事するのが好きだっただけ。音楽業界とWeb業界の両方を経験したので、「音楽のWebプロモーションを手がければ、自分ひとりぐらいなら食っていけるだろう」。それくらいの軽い気持ちでの起業でした。自宅だったマンションのワンルームがオフィスです。

でも、レコード会社が自前の人材でWebプロモーションをやるようになってあっという間にお役目ごめん。それでロケ弁当に情報誌を張りつけて芸能人や制作会社の方々に届ける芸能界向けの情報誌を発行したり、声優を使ったテレマーケティング事業を起こしたり。とにかく、「自分ひとりが食っていけるだけは稼げる事業」を企画しては実行していたんです。

そんなとき、知人から読者モデルのブロガーを紹介されて。「読モってなに?」「ブロガーってなに?」という時代。失礼ながら「こんなん商売になるんかい」と思いつつ、事業会社や広告代理店とそのブロガーとの橋わたしをしました。

すると、案件がどんどん来て、決まっていったんです。年間5,000万円ぐらい稼いだブロガーもいて。衝撃でしたね。一般にはほとんど知られていない人間にこれだけの価値がつく。「これは新しいジャンルの生き物が出てきたな。WebやSNSが普及するってことは、新しい生き物がどんどん出てくるってことに違いない」と確信しました。それで、読者モデルのブロガーを起用したマーケティング事業を推し進めたんです。

これがうまくいったので、自宅オフィスから出て、東新宿に家賃10万円のオフィスを借りました。「ちゃんと会社やってもいいかもしれない」と思い始めて。それまで業務委託だったスタッフを正社員にして、社会保険にも入ってみよう。少しずつ、経営者らしくなるための練習をしていた感じです。

──ところが、そこで経営危機に直面してしまった、と。なるほど、練習を重ねてきて、「次は練習試合だ」ぐらいのつもりでいたら、危機を乗り越えるために、いきなり、プロの公式試合に出場しなければならなくなった──。

そうそう、そんな感じです。以前は会社の業績が伸びていなかったというより、「伸ばす気さえなかった」というのが正直なところかもしれません。そんな人間がトップのままで、会社が成長するわけはない。でも自然に伸びてきて、「ああ、もう止まれない…。でもチャンスはありそうだ。どうしよう…」と迷いました。

そこで、つてをたどり、銀行の人や証券会社の人、あるいは、たまたま会社に営業に来てくれた方々に「会社を成長させるネタない?」と聞きまくりました。そのなかでM&Aのことや、買い手候補の会社を紹介してくれた人がいたんです。M&Aに乗るのはいろいろ考えたすえに、やめましたが。そうそう、「IPO」という言葉を初めて耳にしたのも、そのときですね。IPOがなんの略語なのかさえ、それまでは知らなかった(笑)。

キャスティング業界初のIPOをめざす

──そんな山本さんがいま、「株式上場をめざす」と宣言しています。IPOを目標に掲げた背景を教えてください。

「会社を成長させる方法を知っている人」にめぐりあい、パートナーとして迎えることができたからです。それがWMパートナーズです。資本参加してくれたうえに、経営のプロフェッショナルである、ヴァイスプレジデントの大久保さんに参画してもらった。大久保さんと話し合いながら、エイスリーの成長戦略をつくり上げていきました。そのなかで、「IPOを目標に掲げれば、人が集まるし、組織体制が整うし、社員が一致団結するのに効果がある」という結論になりました。

キャスティング業界は小規模の会社も多く、社会的な知名度がありません。IPOを果たせば業界初の例となり、社会に知られ、業界との橋わたしの会社として、もっとお役に立てるかもしれない。経営者としての自分の器の小ささに悩んでいたころからすれば、ずいぶん大風呂敷をかかげるようになったものです(笑)。でも、会社を成長させる方法を知っている人を経営のパートナーに迎えられたことで、自信が出てきました。「IPOをめざす」という宣言は、そのあらわれです。

株式会社エイスリー
設立/2008年10月
資本金/1,000万円
売上高/14億2,000万円(2019年9月期)
従業員数/45名
事業内容/総合キャスティング事業、芸能・エンタメ業界に特化した人材紹介事業、元芸能人・アイドル・インフルエンサーなどのセカンドキャリア支援事業、メディア事業
URL/ http://herocasting.jp/


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