成長ベンチャーは知っている経営管理の新常識
優れた事業アイデアを武器に、新たな価値を創出するスタートアップ。しかし、守りをおろそかにして、成長がストップする企業も少なくありません。そこで今回は、数多くの成長企業を支援してきた専門家を取材。ブリッジコンサルティンググループ代表の宮崎さんに、スタートアップが陥りやすい落とし穴、成長を続けるための経営管理などについて聞きました。

「従業員25名」の見えざる壁

経営管理や資金繰りにおいて、スタートアップが陥りやすい落とし穴は、経営者にお金まわりの知識がないまま、管理を人任せにすること。特に若手や職人気質の創業者はそういった傾向が強い。おそらく、数字に苦手意識があるのでしょう。すると売上が落ちたとたん、資金繰りに苦しむ恐れも。最悪の場合、銀行借入などの資金調達が間にあわず、倒産に追いこまれるケースもあります。

根本的な原因は、お金に対する経営者の意識が低いことです。もしも知識がないのなら、自ら勉強すべきです。会計のキホンを理解したうえで、担当者に任せるのはかまいません。

会社が小さなうちは問題ないんです。たとえ経営者の意識が低くても、会社が一定規模まではアタマの中で資金繰りがイメージができます。今現在、銀行口座にどれくらいの金額があり、3か月後の出入金予定を感覚的にわかっていたりします。

でも従業員25名を超えたあたりから、お金の流れが急に見えなくなります。「25」という数字は目安ですが、私の経験上、このあたりに見えない壁を感じますね。

よく売上ベースで「1億円の壁」「5億円の壁」なんて形容されますが、大半のスタートアップには当てはまりません。アーリーステージでは売上の低い業種が多いので、従業員数のほうが指標に適しています。25名以上の規模をめざすなら、‟経営の見える化”に取り組んだほうがいいでしょう。

過去会計と未来会計に取り組め

もちろん従業員数が25名を超えたからといって、資金繰りに困るわけではないです。組織を拡大するだけで資金繰りは悪化しません。ただ、売上が落ちたときに、ガタが来るんです。右肩上がりの成長が続くスタートアップはひとにぎり。下降局面に陥ったとき、お金の問題が顕在化するわけです。

売上が減少するということは、商品やサービスが売れていないということです。そこで各商品の粗利率や各部門の損益を把握して、立て直す必要が生じます。でも見える化できていないと、適切なジャッジもできません。「どうなってんだ?」と担当者に文句しか言えず、ズルズルと業績が落ちていくでしょう。

経営を見える化するための手段のキーワードは「会計」です。ここでの会計は「過去会計」と「未来会計」に大別されます。過去会計は過去の数字を集計する会計。税務申告書を作成したり、経営状況を把握したりします。一方、未来会計は未来の数字を予測する会計。将来の売上や資金繰りなどを試算し、事業計画を作成します。

2種類の会計は密接に関係しています。過去会計に分類される、これまでの売上や販管費などの理解や整理が甘いと商品の粗利率を把握できません。過去会計の数字をしっかりと把握できていなければ、必然と未来会計の精度も下がります。未来会計は過去の数字をもとに予測を立てていくので、結果的に未来の資金繰りをキチンと管理できなくなってしまいます。だから、まずは基盤となる過去会計の仕組みを整備すべきです。見える化のツールとしては、クラウド会計ソフトと法人カードを活用するのがいいでしょう。

経営者の苦手意識を払拭し、3つのツール導入を

「事業立ち上げは得意だけど、管理業務や資金繰りが苦手」という起業家もいらっしゃいます。まずは苦手意識を払拭し、会計の基本的知識を身につけてください。私が接している成長企業の経営者は勉強家ばかりです。会計だけでなく、すべての領域において高い意識をもっています。

苦手な分野については、専門家レベルまでになる必要はありません。パッと数字を見たときに「違和感を覚える」「理解ができる」というレベルまででいいと思っています。そのうえで、「クラウド会計ソフト」「法人カード」「社外CFO」という3つのツールを上手く活用していくことをおススメしています。

クラウド会計ソフトで迅速に入出金を把握

クラウド会計ソフトと法人カードの併用を勧める理由は、見える化と業務効率化を同時に実現できるからです。クラウド会計ソフトの利点は、銀行口座や法人カードと連携して、その利用明細を自動で取りこめること。手入力の必要がなく、ほぼリアルタイムで入出金を把握できます。

パッケージ型の会計ソフトを使ったり、顧問税理士に記帳をお願いするのでも問題ありません。ただし、パッケージソフトは銀行口座や法人カードとの連携機能が不十分な場合があり、例えば連携不備による作業の手戻りが発生するというリスクもあります。

税理士の記帳代行は安心ですが、スピードが遅い。「1月末の数字が出るのが3月末」といったタイムラグが生じ、2ヵ月分の未来が過ぎ去ってしまいます。もちろん、幅広い税務相談ができるので、顧問税理士の意義自体を否定するわけじゃないですよ。

過去会計と未来会計のつながりを重視した場合、素早く取引データを自動登録できることなどを含め、さまざまな長所短所を比較してもクラウド会計ソフトの利点が大きい―という意味です。

法人カードで決済手段を一元化

当社は多数の企業の経営管理を支援してきました。継続的に成長する企業は、過去会計の仕組みを整えていることが多いです。当社のクライアントは成長意欲が高く、IPOをめざすベンチャーが多い。

そういった企業のトップは意識も高く、創業時から従業員数25名・50名・100名という規模を見据えている。だから、過去会計を効率化するツールを早期に導入し、経営状況を把握しています。

また、成長を続ける企業は専門人材を確保していますね。専任の経理担当が必要ないうちは「総務」や「庶務」でかまいません。社長は事業に専念し、その他の業務全般を総務や庶務がカバーする。従業員10名くらいでも、そういう会社は伸びます。

さらに、最近のトレンドは「社外CFO」。未来会計の専門家の協力を得て、事業計画を立てるわけです。資金調達を含めて、資金繰りのサポートも受けられます。常勤ではないので、高額な人件費はかかりません。

 「CFO」という役職を聞くと、「まだウチには早い」と感じる経営者もいるかと思います。実際に会社を大きくするつもりがないなら、入れなくてもいいですよ。経営管理の重要性が飛躍的に高まるのは、従業員数25名を超えたあたり。そのステージを見据えたときに、社外CFOを活用すればいいでしょう。

大切なのは成長企業の経営管理を学んで、落とし穴をさけること。過去と現在の経営状況を把握しながら、未来の事業計画を描くことです。攻めと守りのバランスを忘れずに、継続的な成長を実現してください。

アメリカン・エキスプレス®・ビジネス・ゴールド・カードなら
クラウド会計ソフトとの連携で即時に「数字の見える化」を実現

◎「クラウド会計ソフト freee」へのデータ連携(登録制/有料)
カードご利用情報を「クラウド会計ソフト freee」(以下、会計freee)へ自動的に取り込むことができます。会計freeeは、個人事業主や中小企業向けのクラウド会計ソフトです。経理・決算を初めて行う方でも簡単に利用でき、 日々の経理業務の効率化や経営分析に役立つ会計freeeに、ビジネス・ゴールド・カードのご利用情報をAPI 連携で安全かつ正確に取り込むことが可能です。