スタートアップは資金管理を効率化して ひたすら成長に集中せよ
暗号資産やスマートフォン決済が話題になり、ITによる変革がおカネの世界にまで押し寄せていることは誰の目にも明らか。資金繰りに日々、アタマを悩ませる経営者にとっても、無関心ではいられません。そこで本特集では、成長企業の経営者や支援者に「新しい時代の資金繰り術」を聞いてみました。
第2回は企業を支援するプロフェッショナルの見方を紹介。創業期の投資・育成に特化したベンチャーキャピタルであるインキュベイトファンドのGeneral Partnerである村田さんです。まだ起業家や創業チームしかいない、プロダクトも存在しないゼロイチ段階のスタートアップが加速度的に成長する上での重要なポイントのひとつが「資金管理の仕組み」だといいます。スタートアップが成功するための資金繰り術について、わかりやすく語ってもらいました!

未来をみすえた経営者の構想力を問う

私たちは、メディア・ゲーム・医療・フロンティアテックといった領域で、投資・インキュベーション活動を展開しています。たとえば、ひとくちにフロンティアテック領域といっても、業界はさまざま。

宇宙産業もあればARやVRのような“XR”産業もある。そのなかでどの業界のスタートアップにも共通していることがあります。それは、「まだ見ぬユーザー体験をどうやって作っていこうか」と、思い描いている点です。

そこで私たちが注目するのは、経営者の構想力です。その経営者自身がもっているビジョンが、短い時間軸ではなく、より遠い未来に対して通用するものなのか。また、その未来の大きな目標に対して、「逆算すると現状はこの地点にある」という視点をもっているのか――。

「202X年、203X年に、なにをどうやって実現できるのか、そのためにいま、こうしなければならない」ということを、より具体的な解像度で語れる。それこそ、事業を成功させるために重要なことだと考えています。

医療現場に革新をもたらす技術に出資

私たちが出資した企業の例をお話しします。その会社は、内視鏡から撮影した大腸のなかの静止画や映像から、「ここにがんがある」「ここに炎症が起きている」ということを瞬時に判別するAIを開発しています。

すでに、トップレベルの内視鏡医による判別精度と同等の成果が出ており、この技術が世に浸透すれば、医療現場の人手不足の解消につながるほか、いままで見えなかった患部が見えるようになり、治療実績も格段に向上するでしょう。「内視鏡を人の目で見て使っていた時代があったの?」といわれるような時代がいまから透けて見えてくるような、革新的な技術です。

例としては、タクシー業界にカーナビの登場が与えた影響に近いかもしれません。昔は、タクシー運転手といえば「まずは50万キロメートルの距離を運転して、道を知るところから始めよう」という世界。それがカーナビの出現で、修行する必要はまったくなくなりました。

同じように、これまで「第一線の内視鏡医になるためには、1万症例の内視鏡検査を行う必要がある」といわれてきたものが、不要になるわけです。そうした大きな時代の変化を見すえたプロダクトの開発という経営者の構想力。そこに着目して出資を決めたのです。

つけくわえれば、政府が医療費削減を目的として、AIやソフトウェアを医療現場で積極的に活用させようとしている時代の動きをとらえていることも、経営者の構想力のひとつ。少し前であれば、「機械に診断させるなど、もってのほか」といわれて、日の目を見なかったかもしれないのですから。

クラウドを活用して効率的に管理せよ

こうした大きな構想力をもてる経営者は、ときに「目の前の細かい管理業務が苦手」というケースがあります。スタートアップの経営者は、まずはプロダクト・サービスを立ち上げることに集中します。

そんななか、資金繰りのことは頭にあっても、損益計算書や予実管理については、おざなりになりがちです。それを避けるには、管理業務を得意とするメンバーを早期にジョインさせるか、数字管理が不得手な経営者でも簡単に管理できる便利な仕組みを利用するか。どちらかの手を早期に打つことです。

手を打つのが遅れると、どうなるか。数字の管理の仕組みをつくるのを引き延ばせば引き延ばすほど、その会社に「引き延ばす」というレガシーがたまっていくんです。当初は「8月末に8月の試算表を出さなければ」と考えていたのに、ズルズルと延びていき、9月になっても10月になっても8月の試算表が出せない会社になってしまいます。

経営者として、会社の健康状態ともいえる損益計算書や賃借対照表を見られる状態にしておくことは、当たり前にやっておかなければならないはずなんですけどね。

そうした「負の業務慣習」を定着させないためには、なるべく早く便利な仕組みを利用することです。たとえば、会計業務なら、たいていの業務はクラウドサービスを利用することで、簡単にできます。採用管理も、ほぼ自動化されたサービスが出ています。それを使えばいいわけです。

スタートアップにはバックオフィス関連の業務効率化を可能にするシステムを積極的に使ってほしい。初期コストがほぼゼロで開始することができますから。私たちとしても、そういう便利なプロダクトを出資先へ積極的に導入することを推奨しています。

未上場企業に門戸を開いた法人カードを活用せよ

また、スタートアップは、決済方法について、法人カードを積極的に活用できると良いでしょう。現在は、アメリカン・エキスプレスをはじめ、設立間もないスタートアップに対しても、法人カードを発行してくれるカード会社が増えてきました。

クラウドサービスの利用料や、ネット広告の出稿費用など、スタートアップが活用すべきサービスの支払いはカード決済が必須になっている場合が多く、支出明細を把握して管理するのにも利便性が高い。

ひと昔前には、未上場の企業には法人カードを発行してもらえない時代もありました。そのため、経営者や管理職の個人のクレジットカードを限度額まで使いきる――ということが起きていました。じつは私も、投資先の企業が支払いに窮したとき、起業家と私達投資家全員の個人のカードの限度額ギリギリまで使ってなんとかしのいだ経験があります。

会社のリソースは有限です。その限られたリソースをうまく使っていくためにも、支払いの手間は限りなく減らしていくことが大切です。クラウドサービスや法人カードなどスタートアップのバックオフィス管理に有効な手段を積極的に活用し、手間を減らす工夫をして、その分グロースに集中することが、シード期におけるスタートアップにとっては非常に重要です。

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