設立5年で上場した不動産Techの雄 スピード経営の要諦は経営情報の数値化にあり
暗号資産やスマートフォン決済が話題になり、ITによる変革がおカネの世界にまで押し寄せていることは誰の目にも明らか。資金繰りに日々、アタマを悩ませる経営者にとっても、無関心ではいられません。そこで本特集では、成長企業の経営者や支援者に「新しい時代の資金繰り術」を聞いてみました。
第1回はGA technologiesの代表・樋口さんを取材。同社は「借りる・買う・売る・投資する」と、不動産をめぐるどんな取引であれ、オンライン上で最適な取引ができ、完結するプラットフォーム『RENOSY』を構築。旧態依然とした不動産業界に旋風を巻き起こし、設立からわずか5年で東証マザーズ上場を果たすほど支持されています。そんなスピード成長を実現できた裏にある「おカネのあつかい方」の工夫について、樋口さんに語ってもらいました!

起業してすぐにバックオフィスを固めた

おかげさまで、2013年3月の会社設立から5年4ヵ月、2018年7月に東証マザーズに株式上場を果たすことができました。短期間に急成長しているベンチャー企業には、「攻めが強く、守りが弱い」イメージがあると思います。

でも当社の場合はちょっと違います。会社設立後の早い段階から、財務・経理をはじめとしたバックオフィスの強化に努めました。まずは「守り」の部分を強化することが、喫緊の課題だと考えたからです。

そんな発想ができたのは、私がビジネスの世界に入る前、小学1年生のときから18年間、サッカーに打ち込んでいたからかもしれません。サッカーの世界で試合に勝つためにいちばん大事なことは、守備を固めることなんです。

点を取られなければ、負けることはない。そして、鉄壁の守備陣がいてくれれば、攻撃陣は自陣に戻って守備をすることを考えることなく、相手ゴールに向かうことに専念できる。だから、守備が弱いうちは、攻撃力が向上することはあり得ないのです。

ビジネスでも同じ。まずはバックオフィスを固めて、余計な支出が出ないようにする。管理がしっかりしていれば、営業スタッフは売上を上げることに専念できる。そうすれば、自然と業績は上向き、企業は成長していくものなのです。

だから、バックオフィスは強ければ強いほどいい。そう考えて、起業直後に多くを投資して体制をつくりあげました。

すべてを数値化して経営判断に活かす

バックオフィスの体制をつくったうえで、私が経営資源を管理するのに重要視したのは、「すべて数値化して、それにもとづいて判断する」ということです。自分の健康状態を把握するとき、「ちょっと調子が悪いな」とか、感覚だけで判断するのは危険ですよね。

「これぐらいなら病院に行くほどでもないだろう」なんて感覚だけで決めてしまい、取り返しのつかないことになる、とか。それを避けるには、健康診断を受けて、そのときの数値を確認することです。「血液検査のこの項目が基準値を大幅に超えている。病院に行かなければ」と。

会社も同じです。会社が悪い状態になるときは、必ずなにかしらのシグナルが出ている。そのシグナルは、数字として出てくる。営業利益率の低下であったり、開発期間の延長であったり。そんなシグナルとなる数字を見極めるため、細かくKPIを追っていくことが、経営においてはなにより重要なんです。

それをいち早く見つけられるかどうかで、会社の先行きが大きく変わってきます。スピード上場を果たせた理由のひとつは、数字によってすばやく経営判断をしてきたことだと思っています。

数値に対する姿勢は、前職の会社員時代に叩き込まれました。「サッカーで世界的選手になる」という夢をあきらめた24歳のとき、飛び込んだ不動産営業の会社。そこでは、アポイント率、成約率、顧客の資産額――。あらゆる項目について数値化して把握することを徹底していたんです。

それに、数字で情報共有すれば、自分と顧客、自分と上司との認識にズレが生じない。コミュニケーションを円滑化することにおいても数値化は有用でした。当時の上司からは、「上司も部下も信用するな。唯一信用するのは数字だ」とまでいわれました。「そんな上司のいうことを信用していいのか」と(笑)。

でも、その教えがいま、経営にとても役立っていて、感謝しています。

経営数字を全社員にオープンに

数値化して、数字で情報共有する──。これは、当社の社員との間で実践していることでもあります。赤字だろうが黒字だろうが全社員にオープンにしています。それが、設立当初から変わらない、当社の企業文化です。

私は「リスクをとらずしてリターンはない」と考えているので、ときには大きなリスクをとって投資したこともあります。その瞬間は、資金繰りの面で窮屈になる。数字的にはマイナス情報になるわけです。

たいていの経営者は、社内にそのマイナス情報を伝えようとしないかもしれません。「悪いことを伝えると、転職しようとするとか、ネガティブなサインが社内から出てくるんじゃないか」と懸念するからでしょう。でも、マイナス情報を隠すから疑心暗鬼になり、「沈む船から逃げ出そう」という心理になるのです。

すべてをオープンにして、経営者がそれに対してどういう打ち手を考えているのかも含めて伝えれば、みんな安心します。

それに、事業が傾いてきたとき、「どうしたら改善できるんだろう」という視点を、社員にももってもらうことができます。ベンチャー企業で働く醍醐味は、経営との距離が近いことにあります。一人ひとりが経営的観点から会社を見る、そんな「ベンチャーのメンバーとしてのマインド」の精神を強くもってほしい。

だから、私が得ている数字は、すべて全社員に見てもらえるようにしているわけです。経営の業績がいいときもそうでない時も、数字が開示されていることで社員はどうしたら現状を改善できるだろうと考えるクセがついたとのだと思います。それにより、社員が一丸となって企業成長にまい進してくれた。それも、スピード成長を実現できた要因のひとつです。

キャッシュレス決済により業務効率化

起業するとき、事業の柱として選んだのは、不動産とテクノロジーを融合させた「不動産Tech」でした。会社勤め時代から「不動産業界って非効率だな」と思っていたわけではないんです。私にITリテラシーがなかったので、そういった疑問さえ浮かばなかったんです(笑)。

でも当時、レガシーな業界にテクノロジーをかけあわせた「XTech」が盛り上がりをみせていた。それなら、どこから見てもレガシーな不動産業界とテクノロジーをかけあわせれば、必ず注目を集めていく領域だろうと見込んだわけです。

「ITで不動産業界を効率化していく」ことを事業にしているので、事業遂行のなかでおカネをやりとりするときも、ITで効率化していくことに努めています。そのひとつに、キャッシュレス決済の導入があげられます。

たとえば、業界常識では現金決済が多い、不動産物件の手付金の支払いについても、カード決済を導入しています。また、当社が不動産の管理会社として機能するときに受け取る、入居者の家賃についても業界に先駆けてカード決済を推奨しています。

さらに、社内の諸経費をカード決済にすることも予定しています。現金をもたなければ安全性が高まりますし、カード決済にすればポイントも付与される。またカードを利用することですぐに財務数字として見える化できます。さらに、社員たちには、「コンビニでの買い物で現金支払いをするなんて時間ムダ。クレジットカードや電子マネーを使うように」といっていますよ。

お客様やビジネス・パートナーとの取引、また生活面においてもキャッシュレス決済は当社の中で相当に浸透していると思います。事業拡大をしていくうえでの広告費についても法人カードで広告費の支払いを行っています。カードの活用は事業を推進していくうえで欠かせないものになっています。

時間は有限です。ビジネスの世界で成功したいなら、いかに効率的にものごとを進めるかを、つねに追求する姿勢が必要だと考えています。今後もあらゆるシチュエーションで、「もっと効率化できないだろうか」を追求していく姿勢をもち続けていきます。

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