
第2回目の登場企業は、国内にマーケティングートメーションが普及する以前から、開発を手がけてきたシャノン。VCの投資期限が迫るなか、外資系の競合との戦いを繰り広げつつ、上場をめざす。そんな難しい情勢に置かれていました。そのとき、期限切れのファンドの株式を譲り受け、さらに上場に向けた追加投資をしたのがWMパートナーズでした。後編となる本記事では、新たな投資を受け、シャノンはどのように変わったのかを、代表の中村さんに聞きました。
IPOプロセスを熟知した助言
──WMパートナーズの支援を受けたことで、どのような変化がありましたか。
代表の徳永さんに、社外取締役として入っていただいたことが大きかったですね。ずっと“仲間内”だけでやってきた役員会や経営会議に、適度な緊張感ができました。徳永さんはファンドという立場で、さまざまな会社のいい例も悪い例も見てきているので、それを踏まえた貴重なアドバイスをもらうことができました。
──アドバイスの具体例を聞かせてください。
たとえば、採算がなかなかとれない部署の廃止を進言してもらったことがあります。私は撤退というのがとにかく嫌いな性格。だから、ずるずる引きずっていたんです。でも、客観的なアドバイスを受けて廃止を決めることができました。
ほかには、経営陣の役割分担について、一部、責任の所在があいまいなものもあることを指摘してもらえました。「それはおかしいから、責任分担を明確にしたほうがいい」と。私たちはほかの会社がどうやっているのかの情報はもっていない。外を知っている人に入ってもらったおかげで、上場準備のスピードが上がりました。
──上場のプロセスを知っている人から知識とノウハウを得られたわけですね。
その通りです。「こういう順番でやったらいいよ」「ここまで進めておけば大丈夫」と、経営者の目線でアドバイスをもらえたのがありがたかったですね。監査法人や主幹事証券もアドバイスしてくれますが、「こういう書類を用意しなければいけない」とか、どうしても規定ありきの助言になってしまうので。
徳永さんの助言が非常に有益だと感じていたので、上場した後も、ムリをいって社外取締役に継続して入ってもらいました。当社にかかわりすぎると、好きなタイミングで株を売ることができないかもしれず、迷惑な話かもしれないですよね。それでも引き受けてもらえたのは、「シャノンを応援しよう」という気持ちをもってもらえたからだと思っています。
「100億円企業」が現実的な目標に
──WMパートナーズからの追加投資を受けました。そのおかげでできるようになったことはなんでしょう。
製品開発への投資です。上場に向けての動きとしては、本当は製品開発などへの投資をおさえて、利益を出しにいくのが一般的かもしれません。ところが私たちの場合、上場へ向かって準備を本格化させた、まさにちょうどそのころ、外資系が参入して、競争が激しくなったんです。製品開発にブレーキを踏める状態ではありませんでした。開発を続けながらも利益を出さなければいけない。そのバランスを一生懸命、とっていたわけです。
そのためには継続的な資金援助が不可欠でしたので、WMパートナーズの追加投資は非常に助かりました。あれがなければ、このタイミングで上場することは難しかったでしょう。周囲からも「シャノンさん、あんな状況で、よく上場できたね」っていわれてます(笑)。
──今後のビジョンを教えてください。
当社はずっと、マーケティングの課題を解決するマーケティングクラウドのリーディングカンパニーとして、お客さまから「シャノンはいいね」といっていただけることをめざしてきました。今後のビジョンもその延長線上にあります。少しでも多くのクライアントさんのマーケティングの問題を解決したい。そのためのサービスを提供したい。これを数字で置き換えると、「売上高100億円規模の会社をつくる」という長期的な目標を掲げています。
非現実的な目標だとは思っていません。売上高1億円をめざしてベンチャーキャピタルから投資してもらったときから考えると、現在はその約18倍の売上規模になっています。現時点から100億円までは5倍強。倍率を考えたら、「たいしたことないぞ!」と社内のみんなを鼓舞しています。
「本当に成長したいのか」と自分に問え
──最後に、ご自身の経験を踏まえたうえで、「もう一度、成長の角度とスピードを上げたい」と考えている経営者にアドバイスをお願いします。
私は、企業の成長はトップの気持ちがすべてだと思っています。これは根性論ではありません。伸び悩んでいる人には「伸ばすぞ!」という気持ちが足りないのだと思っています。どこかで「もういいや」「これくらいでいいや」と思っていませんか?
経営者が集まった場で講演する機会をもらったとき、「問題はあなたです。あなたのせいで会社は伸びていません。間違いなくそうなので、だれかのせいでも社会のせいでもありません」と話しています。まず、「本当に成長したいのか」を自分に問うてほしい、ということです。
私の場合、個人的な夢があります。「親のいない子100人を育てる」というものです。その夢を実現するために会社を成長させ、上場し、いま100億円企業をめざしています。そこまでいったら、株主さんも私が個人的な夢を追っかけても許してくれるでしょうし、資金や時間・人脈といった、夢を実現するためのリソースが私にそなわっているはずだからです。この夢があるから、会社の成長をあきらめないし、あきらめるわけにはいかないんです。
ベンチャー企業を起業して上場した経営者には、それぞれ夢だったり、「認められたい」という承認欲求だったり、「学歴の低い自分が成功して見返してやる」というコンプレックスだったり、「絶対お金持ちになってやる」という執念だったり、強烈な自我があるものです。彼らにとって、その自我を満たすために、「上場する」「会社を大きくする」ということは、やらなくてはならないもの。やるのが当たり前のことなのです。だから迷いがない。できるまでやる。
逆にいうと、途中で走るのをやめてしまう人は、そこまでがんばる理由がないのだと思います。そこをまずトップ自身が、真剣に突きつめて考えてみる必要があるのではないでしょうか。能力なんて、そんなに違いはありません。気持ちの強さの違い。それがすべてだと思っています。
設立/2000年8月
資本金/3億8,688万9,000円
従業員数/150名(2018年10月末現在)
事業内容/マーケティングクラウドの提供ならびにソリューションの企画・開発・販売。マーケティングに関連するコンサルティング・アウトソーシングサービスの提供。
URL/https://www.shanon.co.jp

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