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IPターゲティングがもたらした「マクロミル」のDSP戦略2.0

【連載】「アドテク戦略」の未来 PARTⅠ

株式会社マクロミル マーケティング&プロダクト本部 小松 拓也(こまつ たくや)

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IPターゲティングがもたらした「マクロミル」のDSP戦略2.0

PHOTO:INOUZ Times

BtoCはもちろんBtoBビジネスを展開する企業にとっても欠かせない戦略となっているWebマーケティング。一方で課題も少なくない。たとえば広告配信。ターゲットに広告配信を行うDSP(Demand Side Platform)の活用が広がっているが、“ムダ打ち”が多いとされ、BtoB領域ではそれほど重要視されてこなかった。そうしたなか、ネットリサーチ大手のマクロミルは独自のIPターゲティングで大きな成果を出している。そこで「アドテク戦略」の未来を展望する本連載のPART1では、マクロミルの企業顧客向けDSP戦略を取材。その内容、導入前後の変化、メリットなどを同社オンラインマーケティンググループの小松氏に聞いた。

間接コンバージョンが他DSPの2倍

―IPターゲティングの運用によって、大きな成果をあげているそうですね。

はい。運用開始したのはおよそ1年前。正直、ここまで大きな成果があるとは予想していませんでした。うれしい誤算です。

―具体的に、どのようなメリットがあったのですか。

まず、当社では広告施策の評価に成果配分型のアトリビューション分析モデル(Media Interaction Weight Back model)を利用しています。これを用いて、接触したメディアの種類やフリークエンシーに応じて、ウェイト値をセットし、施策ごとにアトリビューションスコアを算出しています。これには広告のビューも評価対象としているのですが、法人IPに限定した広告配信は、他DSPのブロードリーチよりも2倍以上、アトリビューションスコアが高い結果となりました。

BtoBの場合、施策の良し悪しを判断するためのコンバージョンの絶対数が少ないことが課題にあります。当社がアトリビューション分析を行っているのは、施策のPDCAサイクルを早めるという目的があります。これにより法人IPをターゲティングすることの有効性を早期に確認することができました。

「新規開拓」「掘り起こし」の両方に有効

―なぜそれほど高い成果が出ているのか。その理由を教えてください。

IPターゲティングを導入する以前はターゲットに対しては配信面でしかセグメントできませんでしたが、導入以後はIPアドレスで企業単位でのターゲティングができるようになったからです。

具体的には、過去に取引実績のあるクライアント企業をホワイトリスト化し、案件化する可能性が高い企業に向けて広告配信しています。当社が事業展開している市場調査ビジネスの潜在層は明確で、それは「ある程度規模が大きいこと」「一定の調査予算をもっていること」などです。また、ホワイトリストだけではなく、業種や従業員数、売上高、資本金、その他特殊なカテゴリによる豊富なセグメントが可能になり、潜在層に対して効率的にリーチできるようになりました。

以前は企業規模などの条件でセグメント、配信先をフィルタリングする等はできていませんでした。つまり、クライアントにはなりえないような企業にも広告配信せざるを得ず、どうしても思ったように効率が上がらない、という課題がありました。しかし、IPターゲティングで案件化しやすい潜在層に向けて広告を配信できるようになったため、効率性が格段に向上したのです。とりわけ新規開拓面で大きな効果を発揮しています。

―既存顧客の掘り起こしではいかがですか。

その点でも有効です。クライアントにもよりますが、市場調査は頻繁に行うことが少なく、半年~年に1回実施されるお客様が多くいらっしゃいます。発注いただいたお客様に、次の案件ニーズが発生するまでの間、どうコミュニケーションするか、どうリーチするか、というのが重要になります。

1年あるいは半年に1回の市場調査を行う時期にクライアントが当社の名前を思い出してくれるか否かが、既存顧客を掘り起こすうえで、大切なポイントになってきます。理想は、クライアントが次の市場調査実施を検討し始めるタイミングで、ニーズがありそうなサービスを広告配信する、という施策を実施することです。

IPターゲティングによって、まさにそれが可能になりました。適切なタイミングかつピンポイントで広告配信できるので、目に留まりやすく、クリックしてもらいやすい。こうした施策の実施が、効率的で効果的な既存顧客の掘り起こしにつながっています。IPターゲティングの大きなメリットのひとつですね。

“ムダ打ち”が多かった導入以前

IPターゲティングの仕組み

―そもそも、なぜIPターゲティングを導入したのか、その理由を聞かせてください。

以前の手法では、資料ダウンロードなどのコンバージョンはとれる一方で、案件化しないことが多かったからです。資料ダウンロードユーザーは潜在層と呼べますが、潜在層の中でもニーズの顕在化までに時間がかかる層です。

この層のナーチャリングも確かに重要なのですが、まずは潜在層の中でも確度の高い層へのリーチを増やし、売上に繋がるコンバージョンを獲得すべきと考えました。

そこで、確度の高い潜在層へリーチを増やしたいと考えたのですが、今までの広告手法は、“面”のターゲティング中心のため、どうしてもミスマッチが起こりやすくなります。そこで、IPターゲティングを導入しました。

もはや欠かせないWebマーケ手法

―なるほど。そうした一連のボトルネックを解消するためIPターゲティングを導入したんですね。最初から「これはイケる」と思っていましたか。

広告配信したい企業にだけ広告配信できる手法があれば、とりあえず飛びつこうと考えていました。その点、IPターゲティングは本当にピッタリはまり、「やっておいて損はない」と直感しました。

最初はそれほど期待しておらず、「ダメモトでいいから、とりあえず試してみよう」とも考えていました。しかし、想定以上の成果が出ているため、いまや当社にとって欠かせないWebマーケティング手法になりました。

使ってみて感じたのですが、IPターゲティングはオーディエンスターゲティングとは全く違った「ビジネスシーンのターゲティング」という印象を持ちました。

どういうことかと言うと、ビジネスマンであっても仕事をしている時以外は普通の生活者であるため、仕事をしている場面以外でリーチしても効率は悪いはずです。その点、IPターゲティングは“会社のデバイスでアクセスしているユーザー”をターゲティングすることになるため、ビジネスシーンにリーチできるということです。ここがIPターゲティングのメリットだと思います。

―IPターゲティング以外で効果を上げている広告配信施策があれば教えてください。

トランジションバナー(ページめくり)は割と効果的だと思っています。

当社はネットリサーチ分野では国内最大級で、多くの方に「ネットリサーチと言えばマクロミル」という企業イメージをもっていただいていると自負していますが、提供しているのはネットリサーチだけではありません。ほかにも無料で利用できるリサーチツールやオフライン調査、近年ニーズが高まっているWeb広告のブランドリフト調査なども提供しています。

その点、トランジションバナーは当社の多彩なプロダクトをアピールできます。実際、通常のバナーに比べ、コンバージョン率は高くなっています。

―今後の広告配信戦略の重点を聞かせてください。

IPターゲティング戦略を磨き、より精度を高め、さらなる効率化を実現していきたいですね。トランジションバナーについても、より多彩なクリエイティブ展開をしていきたいと考えています。

また、BtoBの動画広告にも力を入れていきたいですね。BtoCの動画広告市場が伸びていますが、BtoBの動画広告では、まだ成功事例が少数なのが現状です。ただし、今後はBtoB向けも伸びると予測しており、ここでも成功できるよう、果敢にチャレンジしていきたいですね。

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