ブレークスルーしたベンチャーの肖像
#1
“元請け領域”に挑戦 「職人出身経営者」の大胆戦略 Sponsoredかえでファイナンシャルアドバイザリー

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「どうすれば利益を極大化できるのか」「どうすれば強い組織ができるのか」─。こうした悩みを抱えているベンチャー経営者は多いですよね。そこで、M&Aアドバイザリーやデューデリジェンスなどを提供、ベンチャーの成長戦略に詳しい“かえでファイナンシャルアドバイザリー”代表の佐武さんをナビゲーターに、新進気鋭のベンチャーの“成長戦略の裏側”を取材しました。今回はオフィスやショップの設計・施工などを行う建設・施工ベンチャー、ユニオンテック代表の大川さん。壁紙など「クロス張り」の下請けから社員数100名規模の企画・設計・施工のトータルプロデュース会社への “挑戦ストーリー”に迫りました。


<ポイント>

ユニオンテックはクロス職人だった大川さんが2000年に設立した設計・施工ベンチャー。現在は年間売上高約29億円・従業員数100名超を数えます。成長要因のひとつは事業領域の拡大。創業当初はクロス張りの請け負い会社でしたが、ある時薬局の内装工事を請け負ったことをきっかけに施工管理も行うことに。さらに、設計事業も立ちあげ、今では店舗やオフィスの企画・設計・施工のトータルプロデュースを行うまでになりました。システム開発ベンチャーや販売代理などを行っている営業系ベンチャーにとって参考になるケーススタディだと思います。

出発点は「人がやめない組織づくり」

──多くの下請け会社が「直接受注をしたい」と思っていても、なかなかできないのが実情です。ユニオンテックはどんな取り組みをしているのですか。

企業ブランディングにチカラを入れました。当時この業界ではまだ珍しかったWebサイトをつくってPR。ほかの元請け会社に比べて不足している信用力や営業力を、会社の“ガワ”の部分を整えることで補完していったんです。それから、地域密着型の営業を展開しました。当時は東京の稲城市に本拠をかまえていたので、「稲城の内装工事ならユニオンテック」という認知が広がるように、地元の施工実績を前面に出してPRしていました。

ただし、僕をはじめ全社員に「絶対に元請けになる」という強い決意があったことが、いちばんのポイントだったと思っています。下請けだったときも、毎年、売上高は右肩上がりにアップしていたんです。だから「このままでいい」となってもおかしくなかった。多くの会社が、きっとそんな状態なんでしょうね。でも、僕は「このままではダメだ」と。そう考えた最大の理由は、社員が「入っては辞めていく」という状態だったこと。こんな自転車操業では、いずれ施主に対して工事の品質を保証できなくなる。じり貧になるのが目に見えている。そこで創業4年目を迎えるころ、本格的に人が定着する環境と制度づくりに着手しました。

まず、どんな労働環境が望ましいか、社員たちと話し合いました。そこで出た結論のひとつに、週休2日制の導入があります。実現するには、生産性を上げなければならない。建設業の平均の粗利は15~20%です。これを35%にまで上げる必要がある。そのためには、施主から直接、工事を請け負う必要がある。だから、当時のユニオンテックにとって、元請け化は全社一丸となって達成するべき至上命題になっていた。成功できたのは、そういう全社的な取り組みだったからこそです。

──でも、こう言ってはなんですけど、職人っていい条件を求めて働く場所を渡り歩いたり、自分のペースで働きたいからと個人事業主になるケースが多いと思います。なかなか組織化しにくい事情や構造があるような気がしますけど。

職人だった僕にはよくわかるのですが、それは多重請負構造が問題なんです。間に入る会社が中抜きしていくことによって、職人の報酬が少なくなってしまう。それに、職人の声が施主に届かなくなる。僕自身も、職人になってすぐにそんな経験をしました。「ここの張り方、指示ではこうなっていますけど、こう変えたほうがいいんじゃないですか」と、自分の直属の上の人、つまり「親方さん」に伝えたんです。そうしたら「ちょっと待ってくれ」と。親方さんの上にいる会社、その上の会社…。と確認していって、元請けや施主の許可を得ないといけないんです。そんな時間をかけているうちに張り方を変えるタイミングを逸してしまうとか、そういうことが何回もあって。「これは絶対におかしい」と思っていました。また、業界の現状そのものを変えるため、2016年に、建設業界にかかわる企業を業態・業種・エリアなど細かな条件で検索できるWebサイト『SUSTINA』を開設しました。

「構造改革への挑戦」という成長戦略

──『SUSTINA』で何が変わるのですか。

元請け会社や、場合によっては施主が、直接、職人を抱えている会社に仕事を依頼することができ、間に入る会社をカットできる。職人を抱えている企業からいえば、このサイトに登録することによって、営業しなくても、仕事の依頼が入ってくるわけです。当然、1案件における職人の報酬は上がるでしょう。

ユニオンテックがこれからも成長し続けていくためにも、建設業界全体を活性化させなといけない。現状のままでは、業界を支える職人のなり手がいなくなる。魅力的な職業ではないからです。「2020年に廃業する」と宣言している同業者もいる。オリンピック特需が終わるからではありません。最新の耐震基準を満たしていない建物が多数あり、その解体・建て直しや補強の需要があるから、2020年以降も工事はあります。しかし、職人がいなければお手上げ。だから廃業宣言する経営者が出てくるんです。こうした現状を打開するため、『SUSTINA』を開設しました。僕としては、「職人は全員、個人事業主になって、このサイトを通して施主から仕事を直接、請け負えばいい」と。極論ですけれど、『SUSTINA』の取り組みが発展していけば、そんな未来もありえます。

──『SUSTINA』のスタートから2年ほどが経過しました。手ごたえを教えてください。

現在、無料会員企業が約5,000社、有料会員企業が約800社です。売上高の8割を、SUSTINA会員との連携であげている企業も誕生しています。建設業界では長年の取引慣行のなかで系列化が進んでいて、「どこにどんなプレイヤーがいるのか」がわからないケースが非常に多い。戸建て住宅の新築工事を請け負った会社が、「施主の希望通りの庭をつくれる造園会社を全国的に探し回ったが見つからない。でも、実は同じ町内にあった」なんて話がザラにあるんです。ですから、『SUSTINA』によって簡単にプレイヤーを探せるのは大きなメリットなんです。

「働き方改革」市場にも進出

──今後の成長戦略を教えてください。

『SUSTINA』については、今後、さらに会員数を増やすために、どんな価値を提供すればいいのか、突きつめていっている段階です。一方、店舗やオフィスの企画・設計・施工のトータルプロデュース事業の「UT SPACE」は、「働き方改革」が求められる時代のニーズをとらえて、オフィス分野に注力していく考えです。

具体的には、経営コンサルティング的な領域に踏み込んでサービスを提供していきます。企業が働き方改革を推進するうえで、「従業員と企業とのエンゲージメントの向上」は欠かせません。そこでユニオンテックがサーベイを行い、従業員の職場環境への満足度や期待値を調査。その結果にもとづいて、エンゲージメントが最大化するオフィス空間を企画し、提案するというものです。それに伴い当社独自のオフィス関連のプロダクトを開発していきます。住宅におけるシステムキッチンのように、これまでオーダーメイドが当たり前だったものを既製品化することで、顧客にはコストダウンというベネフィットを提供すると同時に、ユニオンテックの利益率を高めることができます。

──今後のビジョンを聞かせてください。

職人の多くは「日銭を稼ぐために現場で働き、疲れ果てて帰宅して眠る」の繰り返し。野心や大望を抱いていたとしても、それを実現する余裕がないんです。僕は18歳でクロス職人になり、20歳のときに独立。若かったので、眠る前に「もっと稼ぐにはどうしたらいいんだ」って考えることができた。そうして思案をめぐらして出した回答が、独立であったり、クロス張りだけでなく内装全般を手がけることであったり、下請けから元請けへの進出であったりしたわけです。

今後はIPOも視野に考えています。『SUSTINA』は業界に大きなインパクトを与えるもの。ユニオンテックが上場企業になることで、その意図がより伝わりやすくなり、かつ安心して会員になってもらえるからです。建設業界は、自動車に次いで国内2番目に大きな業界です。それを衰亡の危機から救い出し、活性化することは、日本全体の活性化にもつながるはず。このビジョンを共有する人がひとりでも増えてほしい。そう願っています。

 

<解説>成長の潮流
「プロとプロをマッチング」という成長戦略はこれからも有望

大川さんが目指す「プロとプロをマッチングでつなぎ合わせ、連帯していく」という動きは、近年いくつかの業界で見られています。2つの真逆の方向への流れが同時に進んでいくなかで、新しい業界構造がつくられていくと思います。その旗振り役として、大川代表のような若い世代は適任でしょう。

ところで、建設業界では後継者不足が深刻で、当社でも企業売却についての相談をよく受けています。「人が採用できない」という理由から、人材を確保するためのM&Aの依頼もあります。そうした状況から考えると、今後は、いくつかの企業が束になってブランディングをしていく方向になるのではと予想します。戸建て分譲事業やマンション分譲事業を主とする飯田グループホールディングスが典型例で、さかんにM&Aを実施して拡大していっています。

未来を見据えた大改革は、若い世代にしかできないこと。大川さんのような若い経営者が中心となって、古い慣習がいまなお残っている建設業界に、ぜひ新しい風を吹かせてほしいですね。

佐武 伸
佐武 伸(さたけ しん)
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社 代表取締役
1962年生まれ。2005年に株式会社サンベルトパートナーズ(現:かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社)を設立。

ユニオンテック株式会社
設立/2000年6月
資本金/2億4,486万円
売上高/29億円(2018年5月期見込み)
従業員数/108名
事業内容/
1. ショップ・オフィス・住宅の企画・設計・施工のトータルプロデュース
2. オンラインプラットフォーム事業
URL/https://www.union-tec.jp/

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
設立/2005年1月
資本金/2,000万円
売上高/3億円(2018年3月期)
従業員数/9名
事業内容/
1. M&Aアドバイザリー
2. 事業再生コンサルティング
3. 組織再編コンサルティング
4. 企業・事業評価
5. 財務調査 (デューデリジェンス)
URL/http://www.kaedefa.com/


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