ブレークスルーしたベンチャーの肖像
#2
“ひとつ屋根の下”作戦で 不仲の職種を融合し新ビジネス創造 Sponsoredかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社

イメージ写真

「どうすれば利益を極大化できるのか」「どうすれば強い組織ができるのか?」─。こうした悩みを抱えているベンチャー経営者は多いですよね。そこで、M&Aアドバイザリーやデューデリジェンスなどを提供、ベンチャーの成長戦略に詳しい“かえでファイナンシャルアドバイザリー”代表の佐武さんをナビゲーターに、新進気鋭のベンチャーの成長戦略の“裏側”を取材しました。今回は、不動産営業職とファイナンシャルプランナー(以下、FP)がタッグを組んで、顧客の最適な資産形成を支援するマネぷらホールディングス代表の岡崎さんが登場。業界では“不仲”とされる2職種にタッグを組ませ、新しい価値を生み出すビジネスモデルを創造するまでのヒストリーを聞きました。


<ポイント>

「○○分野×□□分野」「△△職種+◎◎職種」──。既存のなにかとなにかを掛け合わせる、もしくは足し合わせる。ベンチャー企業が新しいビジネスを生み出すときのパターンのひとつです。マネぷらホールディングスの場合、「不動産営業+FP」でした。どちらも顧客の資産形成を支援する職種です。でも、「ローンを組んで家を買う」「病気やケガの保障に保険に入る」を同時に検討している顧客に対し、不動産営業は高額の住宅物件を売りたい。一方、FPは高額の保険に入ってほしい。住宅ローン返済と保険料の支払いが両方とも高いと顧客は困るので、いずれか一方を抑えようとします。利益相反が生じる。だから、「両職種は仲が悪い」というのが業界常識でした。岡崎さんがそれを克服した方法は、「物理的に近づけること」。掛け合わせ・足し合わせ戦略で新ビジネス創造を目指すベンチャー企業経営者には、大いに参考になるでしょう。

【回答する人】

manepla1-500

岡崎 泰旦(おかざき やすあき)
マネぷらホールディングス株式会社 代表取締役
1981年生まれ。2012年にリアルパートナーズ株式会社、2015年にマネぷらホールディングス株式会社を設立。

 

【ナビゲートする人】

H17DI-248_USB

佐武 伸(さたけ しん)
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社 代表取締役
1962年生まれ。2005年に株式会社サンベルトパートナーズ(現:かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社)を設立。

「不動産営業+FP」2人1組で提案する

──2012年の設立から6年ほどで年間売上高約4.5億円という規模になりました。成長を遂げた要因はなんでしょう。

不動産とFPがくっついたサービスがお客さまに受け入れられたことですね。もっとも、目指していた売上にはまだ全然届いてはいないのですが。これからどんどん伸ばしていきますよ。

──2職種を融合させることで、どのようなベネフィットが顧客に生まれるのですか。

それぞれのお客さまが資産形成で目指しているゴールと、不動産も保険も貯蓄も含めた多種多様な資産全体のバランスを考えた上で、最適な提案ができる。それに尽きますね。たとえば、保険加入を検討しているとき。今後購入を考えている不動産まで考慮して勧めてもらえた経験のある人は、ほとんどいないでしょう。当社ならそれができるわけです。

保険を売らないとビジネスにならない立場の人は、どうしてもその目線に立ったサービスにならざるを得ない。でも、不動産を購入すると自動的についてくる保険もありますよね。先に入った保険の保障範囲とかぶってしまい、必要以上の保険料を支払ってしまっているケースはよく見られます。当社は不動産営業とFPが2人1組で提案するので、不動産購入のことも考慮したうえで、最適な保険商品の提案ができます。

──顧客からはどう評価されていますか。

「提案に説得力がありました」という声が数多く届いています。住まい探しをしているお客さまにも、不動産営業だけでなくFPも一緒に、2人1組でお客さまをサポートします。不動産ビジネス単体だと「売ったら終わり」ですが、うちの場合は住宅購入後の生活のことも考えて、「価格下げて探しましょう」とか「いま買うのはやめませんか」などなど、不動産営業の立場からは言いづらいことも当たり前に伝えています。それによって顧客に損をさせない。結果、お客さまから、不動産営業とFP、2名連名宛のお礼のハガキをいただくこともよくあります。

警戒しあっていた2職種を隣合わせに

──では、2職種を連携させることで、マネぷらホールディングスにはどんなメリットがあるのでしょう。

3つあります。まず不動産側でいうと、お客さまに「失敗の少ない購入のしかた」を提案できること。FPがいることで、お客さま目線での説得力をつけられます。よくある不動産営業の失敗は、お客さまから「私の資金力に関係なく、売りたいモノを売りつけようとしている」と不信感をかってしまうこと。そんな失敗が激減し、不動産の売上を最大化できます。

2つ目は、顧客ひとり当たりの売上を最大化できること。通常の不動産販売は「売ったら終わり」。でも、FPが入って保険や貯蓄についても相談に乗ることで、ほかの商品も販売できます。たとえば、自己資金を投入して家を買うことを考えていたお客さまに、「ローン控除の効果を最大化するために、最初は自己資金を入れず、その資金を投資商品の購入に振り向けましょう。10年間で、これくらいのプラスになります。満期を迎えた時点で、家のローンの繰り上げ返済に使う。こうするのがいちばんトクになりますよ」といったプランを提案できます。

3つ目は、お客さまとの信頼関係が強化され、グリップできることです。「家を買おう」「保険に入ろう」のどちらの動機からでも、つまる不動産側とFP側のどちらから発生したお客さまでも、連携してサービスを提供することで成約率は高くなります。成約にいたる前の段階では、別の会社さんが営業をかけてくることも少なくない。でも、当社が先にお客さまの気持ちをグリップしているので、そう簡単には奪われないですね。

マネぷらホールディングス代表の岡崎さん

──すばらしいビジネスモデルですね。起業からずっと順風満帆だったのですか。

いえいえ。いろんな壁がつねにありました。なかでも、事業としてのひとつの大きな壁は、F P側と不動産側、それぞれの考え方がなかなかすりあわなかったことですね。両者をくっつけるビジネスを立ち上げたのに現場は「なるべく、くっつきたくない」という状況。当社は不動産ビジネス出身の私と、三井生命のFP部門にいた現・専務取締役の若杉と、2人で立ち上げた会社。この2人の理念共有は100%以上できていました。でも、それ以外のメンバーの意思統一は一筋縄にはいきませんでしたね。

──どんなふうにすりあわないのですか。具体的に教えてください。

たとえば、お客さまは3,500万円の予算で家を探しているとします。不動産営業としてはその予算の物件で成約しようとする。一方、FPは将来設計をすべて数字化し、「本当にその負担に耐えられるか」という観点から結論を出す。不動産営業は「FPに相談したらお客さまの希望予算を下げられるかもしれない」という警戒心がある。一方、FP側は「不動産営業は高いモノを売りつけようとしている」と。両者の意見が相反することはしばしばあるんです。

私が不動産企業にいたときも、よっぽどお客さまから要望がでない限り、FPに話を振ることはありませんでした。「FPにはつなげたくない」がホンネでしたね。

──そんなに不仲なんですね。どのように両者を連携させてたのですか。

まず、物理的に近くに配置しました。同じフロアで近くの席に座ってもらったんです。これは意外と大きな効果がありましたね。それぞれの職種どうしで話している声が聞こえてきて、たとえば「いまの話、詳しく教えてください。保険を活用すれば、そのお客さまの悩みは解決できるかも」とか。ちょっとした質問もしあえますし、お互いの考えを知ることもできる。

それから考えを共有する機会をとにかく増やしました。ミーティングをひんぱんに行う。不動産側とFP側それぞれの商談ロープレを見学しあう。そうしたことをいまも徹底してやってます。

──そういう状況だと、先入観のない、業界に染まっていない人材の採用が効果的な気がします。

その通りです。不動産側は中途でも新卒でも、徹底して未経験者を採用しています。最初から「FPと一緒にやるのが当たり前」ということが常識になっている人材を育てようと。ただ、FP側はなかなか難しいです。金融商品から相続まで幅広い知識がなければできませんから。マーケットや為替、海外動向などに影響を受ける商品もありますし。専門知識をつけるまでの時間は、不動産営業よりもFPのほうがはるかに要します。未経験者採用は難しいのが実情です。

自社システムでより情報共有を密に

──今後の成長戦略について聞かせてください。

3つあります。まず1つ目は、業務支援システムの開発です。FP側と不動産側の情報共有を、極限まで高度化させていくのが目的です。当社の事業は独特なので、既存のシステムにはぴったり合うモノがなかった。そこで2年前から社内開発を続けています。

エリアごとや顧客ごとの細かな情報を営業スタッフが見られるシステムにする予定です。それによって社員全員がマーケティングの目線をもてるようにする。経営者やチームリーダーの目線で見られる機会を増やすことで、営業マン一人ひとりの目線をひとつ上にあげてあげたい。それがモチベーションアップにもつながりますし。

──自社開発はコストがかかるイメージがあります。

ええ、確かに。ただ、他社さんへ販売していく可能性もあるんです。試験的にですが、すでに別の不動産流通会社さんにも支援ツールとしての導入を始めています。提携している不動産企業でも近しいニーズが散見されるので、早めに商品化して積極的に導入してもらえるよう持っていきたいですね。

──2つ目の成長戦略はなんでしょう。

中古住宅やリフォーム・リノベーションといった、これから拡大が見込めるマーケットを取りに行くことです。不動産側単体で見れば、成長戦略でこれがいちばん重要かなと。当社は神奈川県の不動産を中心にあつかっていて、首都圏エリアであっても空き家問題は既にあるんです。それは、「空き家が増える=商品が増える&売りたい人が増える=僕らのマーケットが拡大する」ということでもあります。

これまで日本は新築市場に頼りきってきましたが、新築分譲数が今後10年で30%減少するなかで、中古市場もしっかり回せるよう、国がさまざまな対策を講じています。今後、家は「一生に一度のお買い物」ではなく、お客さまのライフスタイルにあわせて住み替えていく時代が来る。つまり「一生に二度三度」というマーケットになっていく。当社のような不動産会社の商機もそれだけ増えていくわけです。

──では、3つ目の成長戦略を教えてください

FP事業に関して「BtoBtoC」に注力していきます。これまではエンドユーザー向けにセミナー開催といった方法で集客していました。今後は企業の福利厚生の需要を開拓したい。たとえば日本版401k(確定拠出年金)を退職金代わりにするといったニーズがあると考えています。

FPではそれに加えて、コンサルティング事業を拡大していきます。いまは生命保険などの販売手数料がメイン。それに加えてコンサルティングビジネスを開拓することが、当社の拡大には欠かせないと思っていますので。コンサルティング専門の人材を採用し、ちょうど動き出したところです。

かえでファイナンシャルアドバイザリー代表の佐武さん(左)と、マネぷらホールディングス代表の岡崎さん(右)

知名度の獲得目指しIPOを急ぐ

──IPOを計画しているそうですね。

はい。創業時は「3年後に株式公開する!」なんて言っていたのですが、現状では2021年あたりが最短では、と。いまはレビューを受けること自体のハードルが高く、時間がかかっています。

──IPOの目的はなんでしょう。

まず知名度の獲得です。名も知らぬ会社から人生を左右するような大きな決断のアドバイスを受けるのはためらいがありますから。また、資金調達も重要な目的。FinTechや不動産Techといった新しい流れも出てきているなかで、新しいやり方を模索したい。そのためには資金が必要です。うしろからしがみついて、ついていくのではおもしろくない。「トレンドの先頭を走りたい」という気持ちはありますね。

また、創業時から掲げているビジョンとして「世界でやりたい」という気持ちも強くあります。不動産マーケットも金融マーケットも世界中にあります。それを開拓するには、必ずIPOが必要になってくると思います。

──世界中で「不動産+FP」を展開し、新しいスタンダードにするわけですね。

ええ。それが当社の使命であり、最終的な目標です。起業前に不動産営業だったとき、私自身、切ない想いをしたことがあります。「資金的に少しきついんじゃないか」と思いながらも、顧客に販売した物件。それが1年後、他社さんから売却に出されているのを目にしたんです。人生を左右する大きな金額の商品は、必ず全体のバランスを考慮したうえで販売されるべき。それが当たり前の世の中になっていけばいいですね。

<解説>成長の潮流
「売って終わり」からの脱却によって 新しい市場を開拓できる

「M&Aビジネスと本当によく似ているな」というのが、今回の取材を終えて一番に思ったことです。もともと不動産とM&Aは、よく「ラグビーとアメリカンフットボール」とたとえられるほど、ビジネスの手法が似通っています。あつかう商品が「土地や建物」なのか「企業や事業」なのかの違いだけ。そして、「仲介業だけではスポットビジネスなので収益が安定しない。そこで成約後に生じる顧客ニーズに対応することで、新しい市場を開拓していく」という流れも同じです。

M&Aの分野では、自社を売却したオーナー社長から、売却益をどのように運用して資産を増やせばいいかの相談にあずかる。また、買収した側も、両社のシナジーを拡大し、成長戦略を推進していくための経営コンサルティングを提供する。そんな「単なる仲介会社」から脱却する動きが業界に新風を吹き込んでいます。岡崎さんが創造した新ビジネスも、不動産販売の観点から見れば、「売って終わり」からの脱却。この新ビジネスを成功させ、独立系のFP企業としてはめずらしい、上場企業になってほしいですね。

佐武 伸
佐武 伸(さたけ しん)
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社 代表取締役
1962年生まれ。2005年に株式会社サンベルトパートナーズ(現:かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社)を設立。

マネぷらホールディングス株式会社
設立/2012年4月
資本金/5,200万円(グループ全体)
売上高/4億5,000万円(2018年1月期)
従業員数/42名
事業内容/
1. 宅地建物取引業
2. 生命保険募集に関する業務
3. 損害保険代理店業
4. 金融商品仲介業
URL/http://www.monepla-group.com/

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
設立/2005年1月
資本金/2,000万円
事業内容/
1. M&Aアドバイザリー
2. 事業再生コンサルティング
3. 組織再編コンサルティング
4. 企業・事業評価
5. 財務調査 (デューデリジェンス)
URL/https://kaedefa-ma.com/venture/


【 そのほかの記事 】