ブレークスルーしたベンチャーの肖像
#8
ニッポンの大課題「貯蓄から投資へ」を テクノロジーとデザインで解決する Sponsoredかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社

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「どうすれば利益を極大化できるのか」「どうすれば強い組織ができるのか?」─。こうした悩みを抱えているベンチャー経営者は多いですよね。そこで、M&Aアドバイザリーやデューデリジェンスなどを提供、ベンチャーの成長戦略に詳しい“かえでファイナンシャルアドバイザリー”代表の佐武さんをナビゲーターに、新進気鋭のベンチャーの成長戦略の“裏側”を取材しました。
 今回は、お金のデザイン代表の中村さんが登場。ロボアドバイザーが一人ひとりのユーザーに最適な設計で資産運用をしてくれるサービスを提供している同社。6万人という、FinTechのスタートアップのなかでは多くの一般ユーザーを獲得していることで、注目を集めています。その秘訣に迫りました。


<ポイント>

個人の金融資産を貯蓄から投資へと振り向けさせることは、日本の国家的課題となっています。これまでに政府や大手金融機関が懸命に努力を重ねてきましたが、大きな成果はあがっていません。そんななか、設立5年ほどのベンチャー企業・お金のデザインが『THEO(テオ)』という個人資産運用サービスで約6万人の一般ユーザーを獲得。さらに2018年5月にNTTドコモへプラットフォームを提供して開始した「ポイント投資」サービスでは、スタートから半年間で35万人のユーザーを得ています。これまで投資を敬遠していたはずの人々を動かせた背景には、ベンチャー企業ならではの「テクノロジー×デザイン」へのこだわりがありました。

【回答する人】

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中村 仁(なかむら じん)
株式会社お金のデザイン 代表取締役社長
1981年生まれ。2017年に株式会社お金のデザイン代表取締役社長に就任。

 

【ナビゲートする人】

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佐武 伸(さたけ しん)
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社 代表取締役
1962年生まれ。2005年に株式会社サンベルトパートナーズ(現:かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社)を設立。

「ストーリー」でユーザーを振り向かせた

──『THEO』が6万人を超えるユーザーに支持された要因をどう分析していますか。

これまで金融機関がやっていないような“ストーリー”と“コンテンツ”をつくっていったことが、この結果に結びついたと思っています。野村アセットマネジメントさんの最近の調査によれば、日本では8割近くの人が資産運用を行なっていない。私たちは、経験のある2割ではなく、資産運用未経験の8割を顧客ターゲットに定めました。

そして、デジタルなツールへの感度が高い20〜40代くらいの層への訴求ポイントを考え、実践していきました。実際、現状のユーザーの半数以上は資産運用未経験者が占めているので、成功したといえると思います。

──具体的にはどのようなマーケティングを実行したのですか。

まずサービス名。大画家・ゴッホの弟のテオという名前からきています。ゴッホは生前ほとんど絵が売れなかったそうです。それでも絵を描き続けることができたのは、彼を金銭的に支えたテオがいたからこそ。「一人ひとりが自分らしく挑戦できる人生を歩くために、お金の不安を解消する『テオ』になりたい」。そんなストーリーをつくり、メッセージとして打ち出しました。

あわせて、「いままで資産運用に興味がなかった人にリーチできるコンテンツ」もつくりました。登山家の栗城史多さんやチームラボの猪子寿之さん、シェフの松嶋啓介さんといった、「チャレンジしている人」のインタビュー記事を打ち出したのです。

金融領域というのは、ある意味モノづくり。「モノづくりをしたうえで、どう伝えるか」というのは、マーケティング領域になります。当社内で「伝える」という部分を担当しているCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)は、日本HP、マイクロソフト、Googleなどの会社で、長年エンドユーザー向けのマーケティングをやってきた人です。私たちのプロダクトの価値をエンドユーザーに伝えるにはどうしたらいいのか、エンドユーザーが本質的に抱える悩みや課題はなんなのか…といったことを、とてもわかりやすくコンテンツに昇華してくれています。

──お金の話を前面に出すのではなく、「自分らしく挑戦しよう。そのためには金銭的な不安がないことが大事だ」とアピールしたわけですね。

ええ。長引くデフレでは、お金の価値はだんだん上がっていくわけですから、「運用せずに貯金しておく」というのは、それはそれで合理的です。ただし、「これからはどうなるかわからない」という感覚を多くの人がもつようになっています。

予測不可能なことが、予想外のスピードで起こり続けています。英国のEU離脱・トランプ氏の米大統領就任・米中貿易戦争…。そういう予想外の事態に振り回されて、財産を毀損し、お金のために苦労する羽目になり、自分らしく生きることができなくなってしまう。それを避けるためには、このまま貯金しておくだけではダメなのでは──。私たちのつくったストーリーとコンテンツは、そんな心情に訴えたわけです。

リターン獲得よりリスクコントロール重視

──とはいえ「投資はハイリスク」というイメージがあり、それが多くの日本人が投資に二の足を踏む要因だったのではないでしょうか。

その通りです。デフレ下では、資産運用をPRするのに「デフレによるお金の価値上昇よりも、もうかりますよ」と訴えるしかない。ハイリターンを追求するなら、当然、リスクは大きくなります。そこが敬遠される要因になっていました。

いま、不確実性の高い時代になって、一般の人々は「ハイリターンよりもローリスク」を望む傾向にあります。自分のチカラではどうしようもない不確実な経済動向から、お金を守ってくれるサービスにニーズがあります。そこで私たちは「攻めすぎない、守りすぎない、お金の生存戦略」というコンセプトを打ち出しています。「リターンよりも、いかにリスクをコントロールするか」ということです。

──なるほど。確かに「もうけよう」ではなく「リスクを抑えよう」であれば、感情的にならないロボットに任せたほうがうまくいきそうですね。

ええ。テクノロジーのチカラによって、予測不可能な世界をなんとかコントロールすることができるのではないか、と私たちは考えています。

リスクコントロールのための手法のひとつは、徹底的な分散投資です。当社のサービスでは、最大で世界86カ国の1万1000銘柄への分散投資効果が得られます。そして、ていねいなリバランス・リアロケーションです。「グロース(株式中心)」「インカム(債券中心)」「インフレヘッジ(実物資産中心)」という3つのポートフォリオの構成比を市場の変化にあわせて毎月変えていきます。さらに3ヵ月にいちど、銘柄の構成比率も見直し、必要があれば入れ替える「リアロケーション」もやっています。

──非常に手の込んだ運用をしているのですね。

はい。私たちはこれらを全部自動で、預かり資産に対して1%の運用報酬で行なっています。抑えた手数料でこれだけ複雑な運用ができ、かつ「人間の恣意的判断を入れず、きちっと毎月、冷静にトレーディングし続ける」というところは、テクノロジーでしかなしえないワザだと思いますね。

その裏側には、しっかりした運用理論があり、それにもとづいて自らアルゴリズムを組んでいます。私たちは京都大学大学院経営管理研究部特定教授の加藤康之先生に、運用理論を監修してもらっています。加藤先生は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の経営委員でもあるので、日本人の公的年金を運用するのと同時に、『THEO』のユーザーのポートフォリオもみてくれている、というわけです。そうした信頼の高さによって、企業年金や大学の基金などの資金を『THEO』と同じ運用の考え方で預かるような、機関投資家向けサービスも当社で手がけることができています。

──FinTechベンチャーならではの強みが活かされている部分はほかにありますか。

徹底的にユーザー目線でプロダクトを開発したところですね。「投資リスクをどれだけ許容できるか」や「自分らしく生きるために、どれだけお金があったら安心できるか」といったことは、主観的な要素が入ってくるので、ユーザーごとに違ってきます。テクノロジーのチカラを使うことで、多種多様な資産運用パターンに対応することが可能で、それぞれのユーザーに合わせた資産運用ができるのです。

「結果的に正しい選択になる」導線設計を

──世界中のETF(上場投資信託)の組み合わせで、231パターンのなかから最適なポートフォリオを提供しているそうですね。しかし、自分自身に合ったパターンがわかれば、ネット証券を通じて、ユーザー自身がETFを購入して運用することもできるのではありませんか。

可能ですが、10万円なら27%、100万円なら7%、1000万円なら2%の手数料がかかるという結果が出ています。これは2017年に『THEO』と同様の運用を、ネット証券を通して実践したらどうなるか、私たち自身が試してみたものです。さらに私たちの場合、毎月のリバランス、リアロケーションも行い、通貨変換のコストも売買手数料も、すべて1%の報酬に含めることができています。

なにより、「自分自身で運用しよう」と考えるのは、ごく一部の投資意欲の高い層だけ。私たちは、手軽で、そして極力リスクを抑えた資産運用ができるサービスを提供することで、これまで投資に関心のなかった層を獲得したいのです。

──なるほど、よくわかりました。では、一般ユーザーに受け入れられるための工夫がほかにあれば、教えてください。

ユーザーインターフェイスのデザインですね。金融の世界は、理論としてはいくら正しくても、人間の“行動”がそのように動かない、ということが起こりがち。そのギャップを埋めるひとつの方法がデザインです。Webサービスの導線設計は、「なにもわからなくても先へ進める」というものであることが非常に重要です。とくにスマホでサクサクやることに慣れた若い世代をターゲットにするなら、どんなにすばらしいサービスでも、イライラするような導線設計がされているものは絶望的に普及しないでしょう。

金融商品の多くは、大量の説明書を読まないと使えない仕組みになっています。しかし、それでは一般ユーザーにとって敷居が高すぎる。そこで『THEO』では画面デザインを工夫することによって、ユーザーが「無意識のうちに、結果として、正しい選択肢を選べる」ようにしています。

ただし、誰でも使えるようにしつつも、お金をあつかう業務なので、セキュリティやコンプライアンスなどの面におけるプロ意識は高くもつ必要があります。テクノロジーが進歩するほど悪用する人たちも出てくるわけですから。そのあたりの意識をぶらさずにやることに自負をもっているメンバーが集まった。それこそが、当社の最大の強みだと思っています。

FinTech第3章がスタートする

──今後の成長戦略を教えてください。

4つの方向で成長戦略を考えています。私たちは昨年から「Beyond Robo-Advisor(ロボアドを超える)」というテーマで、サービスの領域を広げてきました。1つ目に考えているのは、「お金について、どういう悩み・ニーズをもっているのか」を可視化するサービスです。その可視化された悩みやニーズに向けて、金融コンサルティングやアドバイス、ソリューションを提供していく必要がある。ロボアドバイザーはものすごく可能性を秘めた、金融のソリューションのひとつだと思っています。しかしそれを普及させるには、まず前段階として、お金の悩み・ニーズを可視化できる環境を立ち上げていく必要があるのです。

2つ目は、「金融のプロとユーザーの出会いの場」の形成。2018年に『お金の健康診断』という、お金に悩んでいる人と解決できるプロをマッチングするサービスを開始しました。「お金でなにか相談ごとがあれば、ここに来よう」という場をつくりたいですね。この事業はプロの方々からの月額課金でマネタイズ。彼らに集客の労力やマーケティングコストを低減するメリットを提供できています。

──3つ目はなんでしょう。

「人とテクノロジーの融合」です。私は以前から「人それぞれの人生があるように、人がもっているお金には、それぞれに“色”がある」と強く感じていました。同じ年齢で、同じ100万円をもっていたとしても、その100万円の意味合いは個々に違う。この部分までテクノロジーが完全に理解できるかというと難しい。まだまだ人が果たす役割は大きいのです。そこで、「お金の色を理解したうえでヒアリングする」のは人間で、「そのヒアリング情報を踏まえて最適なソリューションを出す」のはテクノロジーが担当する。この組み合わせでハイブリッドなアドバイスをするサービスをつくりたいですね。

──4つ目の成長戦略を教えてください。

「海外展開」ですね。私たちのやっているポートフォリオはグローバルベースでして、いわば“世界の人”向けです。2018年はマレーシアでジョイントベンチャーの設立に合意。近々、同国でサービスをローンチしたいと思っています。iPhoneやQRコード決済のアジア全土での広がりを見ていても、タイミングと大胆さを失えば一瞬で市場を取られかねない。「少し早いかもしれない」ぐらいの、いまのタイミングで海外展開の準備を進めています。

──どんな出口戦略を描いていますか。

かなり柔軟にいろいろなオプションを考えています。当社は現在、株主数がすでに50社を超えています。日経新聞では“ネクストユニコーン”として時価総額が266億円と紹介されました。ここまでの規模になると、国内でのM&Aはなかなか難しいため、IPOを考えるべきかとも思っています。その際に上場する市場は、海外も含めて検討しています。

一方で、「IPOが正しいのか」という社内議論もあります。私たちの業態は一定程度以上の残高が積み上がると、キャッシュフローが潤沢になっていきます。ある程度の利益剰余金ができあがっていけば、自社株買いができる可能性があると考えています。それでやっていくのもひとつあるかと思います。

いずれにせよ、売上や利益の規模が小さければ、選択肢は限られたものになる。いろいろな選択肢が選べるほど、当社の規模を大きくしていくことが重要です。

──将来、お金のデザインは、社会のなかでどんな存在になっていますか。最後に、理想像を教えてください。

まず、いま置かれている状況についてお話しさせてください。私は、来年から「FinTech第3章」が始まると考えています。第1章は当社が創業した2013年ぐらいから2016年あたりまで。その間に続々とベンチャー企業が立ち上がり、決済アプリなどがどんどん出てきました。しかし2016年から2018年前半までの第2章で、いったん金融機関にリバンドルされていく動きが起き、「金融機関対ベンチャー」というカタチで、さまざまなサービスができ上がってきました。「日本のFinTechは金融機関と融合していくんだろうな」という流れになってきています。

そして、2018年後半からは「異業種の参入」という第3章に突入。実際、NTTドコモさんのような規模の会社が金融仲介業の登録を行うのは初ではないでしょうか。私たちとコラボしたこともあって、「ポイント投資」で約35万人のユーザーを半年間で一気に獲得した。そのことで激震が起こり、楽天、LINE、Yahoo!などの企業も、これまでにも増して一気に動いてきています。いわば異業種から、既存金融機関への宣戦布告です。間違いなく世の中が変わるでしょう。

そのなかで、たとえばAmazonがそうだったように、「ユーザーにとってなにがいいのか」をいっさい妥協せず追求し続け、その結果、急にグッと圧倒的な存在になっていきたい。「FinTech第3章」で、ものすごくユーザーに近い金融サービスがつくり上げられていく流れに、私たちは必死についていきます。ただし信念を曲げずにやり続ける。そうすることで、将来的には誰もが意識せず当たり前に使っているサービスにしていきたいと思います。

<解説>成長の潮流
“金融のApple”登場を思わせる
説明書不要の簡潔なアプローチ

「貯蓄から投資へ」というのは、この50年間、その必要性がずっと叫ばれていながら、なしとげられていない日本の大命題。これをベンチャー企業が解決しようとしていること、そして成果をあげつつあることに非常に感銘を受けました。

成功の要因は、「説明書をなくした」ことにあるでしょう。金融商品は非常にわかりにくく、説明書きばかりで、読むだけで買う気がうせてしまうものも少なくない。そのなかで、「わかりやすいデザイン重視で訴求していく」という手法が非常に功を奏したように思えます。中村さんはめざす企業のあり方としてAmazonを引き合いに出されていましたが、私はAppleを想起しました。彼らは「コンピュータから取扱説明書を全部なくした」ことで成功したからです。お金のデザインは金融・投資業界のAppleだな、と。

これまでの金融・投資業界の慣習、常識に流されず、独自にコツコツと信用を得ながら新たなマーケットを開拓し続けているところとして、お金のデザインさんは先頭に立っているように思います。「貯蓄から投資へ」が成功すれば、日本経済は再び活気づいてくるでしょう。ぜひ、がんばっていただきたいと思います。

佐武 伸
佐武 伸(さたけ しん)
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社 代表取締役
1962年生まれ。2005年に株式会社サンベルトパートナーズ(現:かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社)を設立。

株式会社お金のデザイン
設立/2013年8月 資本金/35億9,021万4,142円
従業員数/51名(2018年12月末時点)
事業内容/投資運用業および投資助言・代理業ならびに第一種金融商品取引業、確定拠出年金運営管理業
URL/https://www.money-design.com/

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
設立/2005年1月
資本金/2,000万円
事業内容/
1. M&Aアドバイザリー
2. 事業再生コンサルティング
3. 組織再編コンサルティング
4. 企業・事業評価
5. 財務調査 (デューデリジェンス)
URL/https://kaedefa-ma.com/venture/


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