ブレークスルーしたベンチャーの肖像
#7
“営業の達人”がつくった 売上増に直結するITツール Sponsoredかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社

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「どうすれば利益を極大化できるのか」「どうすれば強い組織ができるのか?」─。こうした悩みを抱えているベンチャー経営者は多いですよね。そこで、M&Aアドバイザリーやデューデリジェンスなどを提供、ベンチャーの成長戦略に詳しい“かえでファイナンシャルアドバイザリー”代表の佐武さんをナビゲーターに、新進気鋭のベンチャーの成長戦略の“裏側”を取材しました。今回は、伸長するマーケティングオートメーションの分野において、自社で『-KAIGAN(カイガン)-』というツールを開発し、「ツール代無料」という破格のサービスで業績を伸ばしているMarketing-Robotics(マーケティング-ロボティクス)社(旧:タクセル)代表の田中さんが登場。「数百万円かかるのが当たり前」といわれる分野で、なぜ価格破壊が可能だったのか。その秘密に迫りました。


<ポイント>

2016年9月設立の若い会社である「Marketing-Robotics」は知らなくても、同社代表の「田中亮大」を知る人はいるかもしれません。経営者が出演する動画メディア『社長.tv』やオンライン商談ツール『ベルフェイス』の営業を陣頭指揮し、短期間に急速に普及させた立役者です。その“営業の達人”が新たに立ち上げた事業は、伸長を続けるマーケティングオートメーション市場をターゲットとするもの。導入企業の多くが「使いこなせていないのが実情」という声があるなか、「売上を上げる効果を出す」マーケティングオートメーションサービスを提供。顧客からの支持を集めています。営業の現場を知り尽くした田中さんだからこそ、「本当に使える」サービスを生み出せたのです。

【回答する人】

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田中 亮大(たなか りょうだい)
Marketing-Robotics株式会社 代表取締役
1985年生まれ。2016年にMarketing-Robotics株式会社(旧:タクセル株式会社)を設立。

 

【ナビゲートする人】

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佐武 伸(さたけ しん)
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社 代表取締役
1962年生まれ。2005年に株式会社サンベルトパートナーズ(現:かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社)を設立。

顧客が抱える「四重苦」をすべて解決する

──Marketing-Roboticsは競合の多いマーケティングオートメーションの領域で事業展開しています。どんな強みがあるのですか。

マーケティングオートメーションのユーザーが抱える「4つの問題」をすべて解決するサービスを提供していることです。

4つの問題の第1は「ツールが高い」こと。導入するだけで少なくとも100万円超、大手企業の場合は1,000万~2,000万円必要です。しかも運用でも月額で30万円ほどかかるのが一般的。そのうえツールを使うスタッフの人件費など、全部あわせると巨額のコストになります。

第2の問題は、「シナリオ作成の手間がかかる」こと。第3に、「シナリオに合わせて送る、メール文面、ホワイトペーパー、eブックなどのコンテンツ作成の手間がかかる」こと。そして第4の問題はそれらのシナリオとコンテンツを「システムに設定する手間がかかる」ことです。

──マーケティング“オートメーション”という名前のイメージとは裏腹に、ツールの運用に大変な手間がかかるんですね。

その通りです。たとえ第1のコストの問題があっても、実際に運用して効果が出ているのであれば、そのベネフィットに「コストが見合っている」ケースも出てくるはず。しかし、導入しても実用化するまでにやるべきことが多く、その難易度も高いため、「宝のもちぐされ」にしてしまっているケースが非常に多い。そうなると、巨額の導入コストは全部ムダということです。そこで少なくない導入企業が、自社でこうした手間のかかることをやらず、外注しています。でも、そうすると第1のコスト問題が、より大きくなってしまう。

そこで当社は、4つの問題すべてを解決するサービスを提供しています。まず、数千万円を投資して自社でマーケティングオートメーションツール『-KAIGAN-』を開発しました。そのツールを無償化し、導入コストをゼロにする。そのうえで、シナリオやコンテンツづくりからそれをシステムに設定するところまで、運用をワンストップで当社が行う。つまり、「ツール無償×運用コンサルティングを1社で行う」ことが強みになっています。

──数百万円はくだらないツールの導入費用がゼロとは驚きです。では、運用コンサルティングサービスの価格設定を教えてください。

シナリオ設計・コンテンツ作成・システム設定などの運用業務を月額25万円で請け負っています。すでに他社のマーケティングオートメーションツールを導入していて、「運用コンサルティングだけ依頼したい」という顧客ニーズにもこたえています。

──なぜ、それほど低価格にできるのですか。

当社がBtoB事業をやっている企業だけを顧客にしているからです。ほとんどのマーケティングオートメーション事業者はBtoC事業をやっている企業をターゲットにしています。膨大なカスタマーデータを手に入れられるからです。でも、BtoCのマーケティング経路は多様。オムニチャネルやSNSやスマホアプリなど、それらすべてのマーケティング施策を企画していたら、業務が広範囲かつ煩雑になり、運用サポートの手間が大変になる。だから、高額のサービスになってしまうわけです。

その点、BtoB企業のマーケティングはいたってシンプル。当社としても、効率的なサービス提供が可能になるのです。

お客に土下座した経験のない技術者に開発させるな

──シンプルなマーケティングを展開しているなら、BtoB企業は自社でマーケティングオートメーションを運用できそうです。 なぜ、それが不可能なのでしょう。

理由は2つあります。ひとつは、導入企業側の問題。「マーケティングの定義があいまい」なことです。「価格の設定までがマーケティングだ」「広告の運用もその範疇だ」といった具合に、企業や個人によって定義がそれぞれ違う。定義があいまいだと、「どうなったらマーケティングオートメーションの導入・運用は成功だったといえるのか」ということがわからなくなってしまう。経営の最終的な目標は売上アップです。そのゴールにいたるプロセスのどこにマーケティングオートメーションの成功指標を置くのか。それがあいまいなので、効果測定ができず、改善のための手が打てない。

当社では、マーケティングを「商談の設定」と定義づけました。だから、ツールの導入前よりも商談の設定数が多くなっていれば、マーケティングオートメーション導入は成功だったといえるわけです。「商談を増やす」という指標で効果のよしあしを判定し、改善のための施策を打てばいいのです。そして商談が増えれば、当然、売上は増える。これではじめてマーケティングオートメーションが「結果を出せるツール」になるわけです。

──もうひとつの理由を教えてください。

「営業経験のない人がツールをつくっている」こと。これはツールを提供する側の問題です。「マーケティング=商談設定」と定義し、商談を増やすことをマーケティングオートメーションの成功指標とします。そして商談とは、営業が成約にもっていく確率の高いアポイントのこと。にもかかわらず、マーケティングオートメーションというITツールを開発しているのは、営業経験がない技術者。そういった人たちが書いたシナリオ、つくるコンテンツはすべて机上の空論です。

マーケティングオートメーションを使っても、なかなか商談が設定できなかったり、やっと設定できた商談も、営業が成約しやすいものではなかったり。そんなことが続出しているのは、ここに起因しています。

──なるほど。その点、田中さんは営業経験が豊富だと聞きました。

Marketing-Roboticsを起業する以前、私は動画サービスやオンライン商談ツールの営業部隊を統括するポジションに就いていました。試行錯誤を重ねつつ、億単位の資金調達を成功させたり、短期間で売上10億円超を達成したりしました。名刺の渡し方からイスに座るときに発するひとことなど、営業の行動すべてについてマニュアル化し、メンバーを指導しました。部下にハッパをかけるために「おまえのオデコはなんのためにある? お客さまに土下座したとき、床にこすりつけるためだぞ!」なんて言ったことも。経営者となったいまでは、口がさけても、そんなことは言いませんが(笑)。

そんな実体験が豊富にあるからこそ、当社がつくるツール、シナリオ、コンテンツは「営業が成約にもっていきやすい商談を設定できる」ものになっているのです。お客さまの前で土下座した経験のない人が、商談相手の感情を揺さぶるものがつくれるはずがない。既存のマーケティングオートメーションが「使えない」のは当然なんです。

──確かに、そうですね。しかし、営業担当者の「気合い」「根性」といったアナログな要素を排し、科学的にマーケティングを行うのがITツールの役割ではないのでしょうか。

いいえ。いつの世でも、そして営業に限らずどんな職種でも「気合いと根性」は成功への不可欠な要素です。それを大前提にしたうえで、「気合いと根性をムダ打ちするような場を減らし、最高度の効果を発揮する場をつくる」ことが必要。その部分を科学的な手法で実行するのがITツールです。

「気合いと根性があればITツールなんかいらない」という営業担当者も、「ITがあれば気合いと根性なんか不要だ」というエンジニアも間違っています。双方の間にあるミゾを埋めるのも、当社の役割のひとつです。

「中途半端はやめる」という覚悟を決めた

──そうした役割を果たすことで、Marketing-Roboticsは順調に顧客の支持を集めているわけですね。

いえいえ、まったく順調ではないです(笑)。2016年に設立した当初は、「在宅スタッフだけで、インサイドセールスを代行する」というコンセプトでした。でも、別会社を立ち上げたり、事業の方向転換をしたり、社員の管理に追われたり、クライアントとの関係が悪化してその修復に奔走したり…。ずっと迷いながら走ってきた感じですね。

──迷走から脱出できたきっかけはなんでしょう。

初心に立ち返って、「なにがしたいのか」をつきつめていったことです。現社名のMarketing-Roboticsに変更する前は、タクセルという社名でした。この社名には、「在宅でセールス」という意味のほかに、「次世代に託せる」というソーシャルな意味も含めていました。当初から、「ビジネスと社会貢献を両立させたい」という想いはあった。そこをつきつめていった結果、導き出されたのが現在の事業です。

SaaSのツールを無料にすることで導入件数を増やせば、運用コンサルティングを引き受けている当社は雇用をたくさん生み出せる。SaaSはクラウドなので、どこにいても、在宅でも仕事ができる。自社のSaaSであればさらにビジネス拡大の可能性も広がり、付随してより多くの雇用も生まれる。お客さまがマーケティング面で抱えている課題を解決し、雇用を増やし、利益をあげて税金をたくさん納める。社会に対して大きく貢献できる、と。

──しかし、「ツール無料」はリスクも大きいと思います。よく決断できましたね。

そうですね。事業立ち上げの際に、いろんな方に相談しました。当初は、低単価のツールをウリにしようと考えていました。すると、「安さをウリにする企業はほかにもあるし、いまからじゃ勝ち目はない。薄利多売なら、絶対やめろ」と言われて。再考した結果、「じゃあ、タダにしちゃえばいい!」という考えにいたったんです(笑)。

おかげで「中途半端なことはやめよう」という覚悟ができました。日本に先行しているアメリカの市場をみても、SaaSビジネス単体で利益をあげるのは難しいことがわかっていました。「日本国内だけの市場においては、もっと厳しい」と。だから、当社はSaaSでのマネタイズではなく、運用・コンサルティングを軸にするべきだと。SaaSベンチャーはコンサルティングで収益化していない。コンサルティング会社は、SaaSを開発しない。であれば、SaaS×コンサルティングの事業モデルで勝負しよう!と決断しました。

BtoBサービスと顧客のマッチング事業の構想も

──今後の成長戦略について聞かせてください。

現在の事業を拡大していくとともに、人材紹介事業を近々スタートさせます。「ツール無料」にしたことで、マーケティングオートメーションを導入する企業はどんどん増えていくでしょう。しかし、ほとんどの企業にはツールを使いこなせる人材がいません。そうした企業へ、マーケティングオートメーションを使いこなせる人材を紹介するのです。

当社がマーケティングオートメーション導入企業の運用コンサルティングを引き受けている裏側で、メールやコンテンツの作成、システム設定などの作業を委託している人材が数多くいます。当社が顧客を増やせば増やすほど、彼ら・彼女らの経験値も上がっていく。そうした経験豊富な人材のなかで、就職・転職を希望する人たちを紹介していくわけです。

──BtoC企業向けにマーケティングオートメーションを提供している事業者は、膨大なユーザーデータを獲得できるので、それを利用したビジネスを構想しているところが多いと思います。BtoB企業向けに特化しているMarketing-Roboticsは、どんな構想を描いていますか。

BtoB企業のサービスや製品と、そのユーザーとなる企業とのマッチングサービスを構想しています。「Amazonのレコメンド機能のBtoB版」というイメージが近いでしょうか。BtoBサービスや製品について情報を収集する方法といえば、検索エンジン、比較サイト、展示会などです。でも、検索エンジンはSEOコンサルティング料、比較サイトは広告料、展示会は出展料など、どれにおいてもお金を多く出したところのサービスや製品が、情報を収集する側の目にとまるようになっている。つまり、企業のトップは「誰かに意思決定を買われている」状態なんです。客観的な立場から「あなたの企業にふさわしいのは、このサービスです」というアドバイスができれば、その状況を変えられます。

──どうマネタイズするのですか。

ひとつは情報を収集する側から料金をもらいます。いまはまだ情報収集にお金を払うということは一般的ではなく、むしろ広告やSEOなどの形で情報を提供する側がお金を払います。しかし、今後ますますインターネット上の情報があふれると、取捨選択がいっそう困難になり、情報収集にお金を払うことが当たり前になると考えています。

『-KAIGAN-』に十分なデータが蓄積された近い将来、当社の会員企業の経営者が、ある分野のサービス・製品を探しているとします。「あなたの会社の業種・業績・成長ステージ・組織構成などとよく似た企業が利用しているのは、この3つのサービスです」といった情報を提供できます。リサーチコストは時間だけでなくお金、そして「すばやい意思決定をしていれば得られるはずだった利益」の損失分もあります。この経営におけるロスをカバーできるサービスの展開を考えています。

そして、情報を提供する側からも料金をいただく。私たちからの提案に対して、ユーザーの経営者から「では、提案にある会社から見積もりをとりたい」というリアクションがあったら、サービス提供側に「見積もりを出しますか?」と問いかける。「見積もりを出す」という企業から料金をもらうわけです。

個人商店からの脱却が課題

──ベクトル、エボラブルアジア、オークファン、ファインドスターなど、そうそうたる企業から資金を調達しています。どんな出口戦略を想定していますか。

2021年を目途にしたIPOの準備を進めています。資金調達ができたのはサービスのリリース前、まだ売上もない状態のときでした。出資者のみなさんには「田中ならば売上は上がるだろう」と、評価していただいた。実際にコンスタントに売上は上がってきています。

今後は上場企業として、市場にも評価され、さらに大きく成長し続けられる企業になっていかなければいけない。田中個人を評価してもらうステージはもう終わりです。第二・第三の田中をつくっていくステージに入りました。そのために注力すべきは、コンサルタントの教育、人事評価制度づくりですね。一人ひとりの仕事の成果とそこまでのプロセスをしっかりと評価し、前向きに仕事に取り組めるフィールドが絶対に必要。「人が勝手に育つ土壌」を整えることが、いまの私に求められていると考えています。

<解説>成長の潮流
真に求められるサービスの開発には「現場感」が不可欠

日進月歩のIT業界。続々と新たなツールが登場しますが、マーケティングオートメーションに限らず「使いこなせない」という声はよく聞きます。「自分がデジタルにうといから……」といった具合に、ユーザー側が一方的に敗北感を抱えて使用をあきらめてしまう状況も少なくありません。でも、そもそもツール自体が使い手に寄り添っていないケースも多々あるのではないでしょうか。真に血の通った、現場で使えるものにするためには、その現場を知りつくした人材の介在が不可欠でしょう。マーケティングオートメーションの分野では、営業現場に精通した田中さんが率いるMarketing-Roboticsという企業がその役割を担っていると思います。
もうひとつ、田中さんの話で印象的だったのは、顧客ターゲットの「選択と集中」についてです。多くの先行企業がBtoC企業へのアプローチをはかるなか、田中さんはあえてBtoB企業にターゲットをしぼった。「営業形態のシンプルさゆえに、運用サービスを低価格で提供できる」「今後の新規ビジネスの可能性が広がる」という点を考慮したうえでの決断だといいます。この決断こそ、Marketing-Roboticsの急成長のもとになっていると実感しました。

佐武 伸
佐武 伸(さたけ しん)
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社 代表取締役
1962年生まれ。2005年に株式会社サンベルトパートナーズ(現:かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社)を設立。

Marketing-Robotics株式会社
設立/2016年9月
資本金/5,830万円(資本準備金含む)
売上高/2億円(2019年8月期:予想)
従業員数/22名
事業内容/MA(マーケティングオートメーション)-KAIGAN-開発・運営、導入/運用コンサルティング、インサイドセールス支援事業
URL/
[コーポレートサイト]https://marketing-robotics.com/
[サービスサイト]https://kai-gan.net/

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
設立/2005年1月
資本金/2,000万円
事業内容/
1. M&Aアドバイザリー
2. 事業再生コンサルティング
3. 組織再編コンサルティング
4. 企業・事業評価
5. 財務調査 (デューデリジェンス)
URL/https://kaedefa-ma.com/venture/


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