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【徹底解説】会社を辞めそうな人の 「3つのサイン」GRCってなに!?

「辞めてもらったら困る人の退職」は防げるの!? “会社を辞めるヒトの実態をよく知ってるヒト”に聞きました

エン・ジャパン株式会社 次世代HRビジネス開発室 3E企画・推進グループマネージャー ソリューションスペシャリスト 越田 良(こしだ りょう)

INOUZTimes編集部
【徹底解説】会社を辞めそうな人の 「3つのサイン」GRCってなに!?

期待の人材が入社1年そこそこで突然退職―。こんな経験、ありませんか? こうした経営者にとって“ザンネンすぎるサプライズ”を起こさない奥の手ってないんでしょうか!? …そうだ、“会社を辞めるヒトのホントのところ”をよく知ってるヒトならいい知恵があるはず、ということで、あの「エン転職」などを展開しているエン・ジャパンの越田さんに取材してみました。3つのポイントがあるらしいですよ!

目次 ◆ 入社3ヵ月で辞められたら“約187万円の損失!”
◆ 退職に「追い詰められていく」構図
◆ 誤解を防ぐ「取り組み」と「To Do」
◆ 予兆発見で離職率が6割低下

入社3ヵ月で辞められたら“約187万円の損失!”

―今回は辞めてもらった困る人の早期離職を防ぐ方法ってあるんですか、というテーマで取材にきました。経営者にとって早期離職はくやしいというか、腹立たしいの一言だと思います。

その気持ちはわかります。早期離職は小さくないロスを会社に発生させますからね。以前、入社後3ヵ月で社員1名が離職した場合、どれだけの損失になるのかを当社で試算してみたんです。それによると、約187万円の損失が発生するという結果になりました。

―これって回収不能の純損失ですよね…。そもそも、なんで早期離職が減らないんですか。やっぱり、最近の人ってこらえ性がなかったり、飽きっぽくて隣の芝生がすぐに青く見えちゃうんですかね?

大きな背景のひとつに、人材の流動性の高まりという社会変化があります。でも、だからといって「しょうがない」とは言えません。

2013年頃から、日本最大級の総合求人・転職支援サービスである当社の「エン転職」を利用した方の定着支援サービスの一環としてヒアリングなどを行っており、蓄積された生の声を分析しています。それによると、防げるはずの早期離職が意外と多いことがわかったんです。

―問題があるから結果がある、ということなんですね。INOUZ Timesでも社員100人を対象に「退職者が多い会社の共通項」をアンケート調査したことがあります。もっとも多い退職原因は「給与への不満」、続いてほぼ同数で2位が「上司との折り合いの悪さ」、3位は「会社内の人間関係の悪化」という結果でした。

おもしろいデータですね。当社のサーベイは早期離職に絞ったものなのでINOUZ Timesさんのアンケート調査とはちょっと違った結論になっています。

長く勤務している人の場合、給与・人間関係・上司と折り合いが3大離職理由になるのはわかります。この3つは、会社としてすぐに改善するのは難しい問題。だからこそ、改善される見込みがないから離職した、というパターンです。

早期離職者の場合、ちょっと様子が違ってきます。給与は事前に聞いて納得したうえで入社しているわけですし、社内や上司と深い人間関係を築く前に退職するのが早期離職ですから。

―早期離職の場合、給与・人間関係・上司との折り合いがネックになっているわけではない、ということですか。

ええ。最初に「思っていたのと違った」「聞いていたのと違った」という“ボタンのかけ違い”のような小さなスレ違いがあり、それが修正されない結果、本人や周囲が期待するような成果を上げることができず、会社にいづらくなって退職にいたる。こんな構図が早期離職の背景にあるようなんです。

ボタンのかけ違いが起きがちなポイントは3つに集約できます。それを当社ではそれぞれの頭文字をとって「GRC」と言っています。ギャップ(Gap)リレーション(Relation)キャパシティ(Capacity)のことです。

【越田さんのPROFILE】1979年、大阪府生まれ。立命館大学を卒業後、エン・ジャパン株式会社に入社。2018年より現職。離職防止のためのサポートツール「HR OnBoard」(https://on-board.io/)の開発を先導、クライアントへの導入をサポートしている。◆PHOTO:INOUZ Times

退職に「追い詰められていく」構図

―もう少し詳しく教えてもらえますか。

ではG、ギャップから説明しましょう。ここで言うギャップとは入社前に抱いていた会社の雰囲気や仕事内容についてのイメージと実際の乖離です。ギャップはわりと早い段階、それこそ入社1日目から発生します。

たとえば面接で「ウチは社員一人ひとりの個性を大切にしていて自由な社風だから」と聞いていたとしましょう。でも実際に入社すると社内の規律やルールを大切にする“体育会系”だったり 、とか。当社の聞き取り調査などでは「ベンチャーだから現場の裁量が大きく、意思決定のスピードが早い と思っていたのに、結局、社長決裁が必要。想定イメージと全然違った」といった声も少なくありませんでした。

仕事内容のギャップについては「即戦力として期待されていると思ったのに、最初は作業的な仕事しかさせてもらえなかった」という声も多いですね。「まずは慣れてもらうため、カンタンな仕事から」という会社の真意が正しく伝わっていないために「自分は期待されてないのかも」という誤解を生んでしまった典型的なケースです。逆に期待のかけすぎなのか、本人の実力以上の業務をいきなりふっちゃうケースも“あるある”ですね。

ギャップが埋まらず、仕事環境になじめないと社内のルールやシステムに慣れるのも難しくなりますから、業務を覚えるのに苦労し、ほかのメンバーについていけなくなります。そのため「この会社では実力を発揮できない」と本人が判断したり、会社側が「期待していたけど、違ったな」と評価。早期退職を誘発する原因になります。

―しかし、イメージとリアルが違うことって、当たり前に日常生活でもよくあることじゃないですか。特別なことではありません。そこは順応してくれないと、どうにもならないのでは…。

「思っていたのと違うのが当たり前だよな」と自力でギャップを修正できる人もいれば、できない人もいます。全員が自己解決できるわけではありません。 今後も続くと予想される採用難において、企業文化や仕事への順応を社員まかせにするのは得策とは言えないと思いますよ。

―まぁ確かに…、大量採用して順応できる人だけを残すような採用が可能な時代でもないですしね。対策はあとで聞かせていただくとして、次にR、リレーションについて教えてください。つまり、誰とのリレーションなんですか?

直属の上司です。長年の人間関係を踏まえた折り合いの悪さといった深いものではなく、もっと手前のところ。単に「上司に相談しにくい状況」のことです。原因としてよくあるのが上司が“腫れ物”をあつかうように探り探りで入社者と接してしまうことがありますね。

どうしてそうなるのかというと、上司が「なぜ、この人を会社が採用したのかわからない」からです。採用過程にかかわっていないため、会社の採用意図を理解していない。そのため、どのように育成していいのかわからない。入社者の人となりもわかっていない。だから、どうしても探り探りの接し方になってしまうんです。

そうなった場合、入社者は上司から適切なサポートを受けにくくなります。結果、仕事を覚えるのに苦労して実力を発揮できず、入社者に「自分が活躍できる場所はここじゃない」と思わせてしまいかねません。

―あとはギャップの場合と同じプロセスで早期離職につながってしまうんですね。

そうです。最後のC、キャパシティの問題とは、本人にとっての業務量過多、もしくは業務量の少なさのことです。

仕事をわかっていない人に仕事をわかっていてサクサク進められる人と同じ業務量をふったら、おそらく同じ時間内ではこなしきれないですよね。そのため、会社としては過剰な業務量をふっているつもりはないのに、本人にとっては業務過多になっている場合があるんです。仕事内容が身についていないから成果も上げにくい。これも「こんなはずじゃなかった」「ここでは活躍できない」と思わせる原因になってしまいます。

逆に、もっと仕事ができるのに単純作業しかまかされないとか、チカラをもてあますような少ない業務量しかふられないケースもあります。この場合は「会社は自分に期待していない」と入社者を誤解させ、早期離職を誘発させやすくなります。

これらが早期離職を招くGRC。最初にギャップ、次にリレーション、最後にキャパシティの順番で問題が顕在化していきます。一覧表にまとめてみました。

―左から右に時間が経過していくんですね。ギャップによって仕事に集中できない状況が生まれ、上司とのリレーションの齟齬で必要なサポートを受けられず、業務量が過大もしくは過小となり、成果が上げられない…。誰にも相談できないまま追い詰められ、会社にいづらくなってしまう。そんな様子が伝わってきます。

まさにそこが大切なところです。入社者を孤独にさせないことが大きなポイントなんです。

誤解を防ぐ「取り組み」と「To Do」

―なるほど。具体的には、なにをどうしたらいいんですか。

ある会社の事例を紹介しましょう。その会社では入社日を重視していて、直属の上司を含め、配属されるチームのメンバー全員で入社者とランチに行くことを入社日のTo Doにしているんです。

多くの場合、経営者や人事から「新しいメンバーと、そのうちランチにでも行ってよ」という伝え方はしていると思います。でも「そのうち」という努力目標では「時間がある時に」「今日は時間調整できない」と先延ばしになりがちで、入社者を「あれ? 私、歓迎されてないのかな…」と思わせかねません。ですから入社日に全員でランチに行くことを“すべき業務”として会社が強制しているわけです。

目標設定の面談を入社初日の研修プログラムのひとつに設定している会社もあります。仕事を始めてもいないのに目標設定なんて、と思われるかもしれませんけど、経験者にとって辛いのは「早く成果を出したいけれど、どこまでのレベルを期待されているのかわからない」という状況なんです。そこを言語化して、会社が期待している内容を早く、かつ具体的に伝えてあげるんです。

最初は会社に慣れてもらうため、簡単な作業的仕事からやってもらうのが常道でしょう。目標設定していれば単純作業もゴールに至るプロセスであることが理解・納得できますが、ゴールが示されないまま単純作業をふられると「なんだ、これは」と思っちゃいますよね。

入社後の事例をふたつ紹介しましたけど、入社以前からボタンのかけ違いが起きないように取り組んでいる事例もあります。

―どんなことをやっているんですか。

求人サイトになるべく多くの情報を盛り込んだり、面接を通じて会社のいいところも悪いところも率直に伝える 。そんな取り組みです。“RJP理論”(脚注参照)と言われているもので、会社にとって不利な情報、たとえば「ウチはここはいいところなんだけど、ここはまだ整備されてなくて」といったことも包み隠さずに面接段階から伝える方法です。

事前のイメージと実際のリアルが完全一致することはないでしょう。それでも「聞いてはいたけど確かに残業が多いな」というのと「こんなに残業が多いなんて、イメージとまったく違う」では印象が全然違いますよね。入社者に「聞いていたのと全然違った」「知らなかった」と思わせてしまうことがマズイんですよ。

上司になる人を採用プロセスに参加させているケースもあります。一義的には、面接を通じておたがいの人となりを事前に知ってもらったり、会社と上司で採用目的の認識を一致させる目的があるんですが、メリットはそれだけではありません。「自分が採用したんだ」という自覚が芽生えることで、“育成をやりきる責任感”を上司にもってもらえることがすごく大きいんです。究極、入社者が活躍できるか、実力を発揮できるかは、上司の影響度合がいちばん強いですから。

リレーションの対策としては、毎日、上司と入社者でOne on Oneのミーティングをしている事例もあります。5分でも10分でもいいので、入社者がその日に感じた疑問や質問しきれなかったことは、翌日に持ち越さないでその日のうちに解決する。こうした取り組みも、かなり有効だと思います。

脚注:RJP理論:Realistic Job Previewの略。日本語訳は「現実的な職務予告」。アメリカの産業心理学者であるジョン・ワナウスによって提唱された採用のあり方の理論。

入社初日に直属の上司と配属されるチームのメンバー全員でランチに行くことをTo Doにしている会社も PHOTO:PhotoAC

予兆発見で離職率が6割低下

―それほどコストがかからない取り組みで、仕組み化もすぐにできそうです。でも一方で「そんなに甘やかしていいの?」とも正直、思います。困難な状況を打開できる人材にジャンプしてもらえる機会を奪いかねないというか…。

確かに、甘やかしになっては本末転倒です。しかし、早期離職を防ぐ取り組みや施策の目的は入社者を甘やかすことではありません。対応を間違えた結果、本来なら定着するはずの人が辞めてしまう。そんな会社にとってムダなロスを防止するには、早期離職につながるGRCの予兆を発見し、手数をかけずに適切な手立てを素早く打つことが有効なんです。

根本原因は要するにボタンの掛け違いのようなもの。逆に言うとボタンをかけ直すことさえできれば、GRCのどの段階であろうと事態を引き戻せるんです。放置して、本人が退職の意思を固めてしまってから引き戻すのは困難。早期離職を防止するには、GRCの兆候をいち早くつかめるかどうかにかかっています。

―実際のところ、効果はどうなんですか?

当社の調査ではGRCの早期発見に力を入れたことで早期離職を含んだ離職率が13.6%から5.3%に低下したというデータがあります。

会社側は中途入社者に対して「お手並み拝見」になりがちで、何も支援がないところで「どんな成果を出してくれるのか? 」というスタンスをとる場合が少なくありませんでした。もちろん、あえて会社が放置することで実力をはかりたい場合もあります。経営者が自分の“右腕”となりうる人材を採用する場合などは、そうした考え方もひとつの見識でしょう。

ただ、採用の難易度が高まっているなかでボタンのかけ違いのような原因で起きるザンネンな離職はなるべく防いだほうが得策。GRCの予兆発見の取り組みや仕組み化はカンタンにできるので、是非、参考にしてほしいですね。

予兆をつかんで素早く対処すれば“残念なサプライズ”は防げる PHOTO:PhotoAC

―いろいろと具体的なお話をありがとうございました。ところで、こう言ったらアレですけど、エン・ジャパンさんのビジネス的には、ある意味、離職者や転職者がガンガン増えたほうがいいわけですよね? 人材定着の方法をここまで話しちゃって大丈夫なんですか? とちょっと心配になりました。

いやいや…(苦笑)。当社の事業目的は転職者や離職者を増やすことではなくて、人と企業の縁のあり方を考え、より多くの人に働くことを自らの成長のステージととらえてもらうこと。離職者を減らす定着支援の取り組み・情報発信・アイデアの提供などもわれわれの事業ミッションなんです。ですから、そんな心配はご無用ですよ。

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