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「人の目利きに自信がある」だからあなたは“ダメ社長”

誰でも真似できる「デキる社長」の方法論 #3【退職マネジメント】

株式会社BNGパートナーズ 代表取締役会長 蔵元 二郎

INOUZTimes編集部
「人の目利きに自信がある」だからあなたは“ダメ社長”

離婚は結婚より数倍のエネルギーを使うとか。今回は幹部人材におけるデキる社長のエグジット・マネジメント(退職マネジメント)についてです。解説していただくのは、400名以上のベンチャー経営者を輩出するなど、数多くの起業家や経営者を間近に見てきたBNG代表の蔵元さん。「オレの人を見る目に狂いはない」ですって? それ、かなりヤバイ症状みたいですよ。

目次 ◆ 「3割の失敗」は避けられない
◆ 未来を妥協しない
◆ 先手を取る
◆ どんな時も「論語と算盤(そろばん)」

【PROFILE】

蔵元 二郎(くらもと じろう)

株式会社BNGパートナーズ 代表取締役会長

鹿児島県出身。九州大学卒業後、大手金融機関にて採用・経営企画に携わった後に、ベンチャー企業にて新規事業の立ち上げに従事。2001年に株式会社グッドウィル・キャリアに入社、事業開発部長・人事部長、社長室長などに従事。2002年、27歳で株式会社ジェイブレインを共同創業し、取締役最高執行責任者に就任。2009年、34歳で株式会社BNGパートナーズを創業、代表取締役社長に就任。2016年、代表取締役会長CEOに就任。「馬鹿(B)が日本(N)を元気(G)にする。」を理念に掲げ、これまで400名以上のベンチャー企業経営者を輩出。著書に『出来ない理由に興味はない!―蔵元二郎の仕事論』(STUDIO CELLO)。
◆PHOTO:INOUZ Times

「3割の失敗」は避けられない

最初に結論を申し上げると「採用の成功確率は3割」というのが私の持論。メンバー採用を振り返ってみると、いかがですか? すごくいい人材で会社とも相思相愛という成功ケースは3割。すごくよくはないけど悪くもない、そんな可もなく不可もないフツーが3割。そして「思ってたのと違った」なんていう失敗も3割。おおむね、こんな比率なんじゃないでしょうか。

幹部採用の成功確率も同じくらいでしょう。むしろ少し割り引いて見た方がいいかもしれません。なぜなら、幹部採用ではハイスペック人材が対象者となる場合が多く、そのレジュメのすばらしさに目がくらんで採用してしまうケースが“あるある”だったりするからです。

有名大企業の第一線でバリバリご活躍中、難関資格を取得されている。いずれもすばらしいことです。経営者の期待も高まるばかり。しかし、どれも過去の実績にすぎないとも言えます。社風と合うのか、目指す方向に向かって一緒に進んでくれるのか、この会社でバリューを発揮してくれるのか。過去の実績だけでこれらを判断するのは危険です。

「心配ご無用。オレの人を見る目に間違いはないから」なんてことは、デキる社長は言いません。なぜなら、3割の「すごくいい」成功をつかむためには「思ってたのと違った」という3割の失敗が避けられないことをデキる社長はわきまえているからです。

もちろん人に対する“目利き力”はないよりあった方がいい。でも、だからといって「神ならぬ人間は必ず失敗する」という真理から目を閉ざすのは、思考停止や現実逃避と同じこと。デキる社長は避けられない3割の失敗と逃げずに向き合い、退職マネジメント、つまりエグジット・マネジメントに対処します。

未来を妥協しない

あるベンチャー企業の幹部人材採用のケーススタディをご紹介しましょう。自分だったらどうするか、想像しながら読み進めていただけると幸いです。

<ケーススタディ>
応募してくれたのは某有名企業で活躍されているAさん。実績もスキルもすばらしい。まさに理想の相手。経営者はひとめでホレ込み、幹部として迎え入れることを決断しました。

仕事ぶりはおおむね期待した通り。しかし、現場からは「社風との相性にちょっとだけ違和感があります」という報告が。実際、経営者もそこに一抹の不安を感じていました。でも、絶対的に相容れないということではなく、少しの違和感です。果たして、経営者が出した結論は―。

こんな場合、みなさんならどうしますか? 結論を言うと、その経営者は3ヵ月後にAさんにお辞めいただいたそうです。

ささいな違和感が我慢できなかった、ということではありません。それはきっかけにすぎません。その経営者は違和感をきっかけに「果たしてAさんがいなかったとして、会社は困るだろうか」。こんな熟考を重ね、「困らない」という結論になり、お辞めいただくことを決断したそうです。

どんなモノサシで「困る・困らない」を判断したのでしょう。その経営者が基準にしたのは会社の未来の姿、ビジョンでした。つまり、ビジョンの実現というゴールから逆算して考えて、「Aさんがいなくても困らない」という結論に至ったのです。

Aさんのスキルや実績、人間性に問題があったわけではありません。なので、きわめて高度で難しい判断だったでしょう。

ちょっと厳しすぎるんじゃないの? そんな声が聞こえてきそうですね。でも、自分がホレ込んだ人材にお辞めいただかざるをえなかった経営者の方こそ、断腸の想いだったんじゃないかな。そう思います。

このケースから私自身、指針とさせていただいた教訓がふたつあります。ひとつは「未来を妥協しない」こと。

ビジョン実現という軸がグラグラすれば会社が迷走します。海に行く準備を整えて高速道路を走行中に「いや、山にしよう」と言い出したり、「海までは遠いので、この辺で」とあきらめて途中で車を止めてしまう。家族旅行なら笑い話かもしれませんが、会社で同じことが起きたら、なんかもう、めちゃくちゃですよね。

先手を取る

ゴールにたどりつくための戦略や戦術は朝令暮改であっても構いません。しかし、向かう先は海なのか山なのか、どこなのか。出したり引っ込めたりでビジョンがグラグラしていたら、結局どこにもたどりつけないでしょう。

経営者が実務から遠ざかり、より深く未来を考えるようになればなるほど(#1参照)目指す会社の姿、つまりビジョンが明確かつ具体的になっていきます。そして、それに比例して現実や日常に厳しくなっていきます。

なぜなら、ビジョン実現というゴールにたどりつくためにはこっちのコースを行かなきゃならないのに、崖から落っこちちゃうような方向違いの順路を進んでいることがわかるから。だとしたら、体を張ってでも正しいコースに引き戻さないといけませんよね。

幹部人材についても同じ。未来の視点から見て現実を妥協しない経営者なら「ビジョン実現にはならないかもしれないけれど、実績やスキルがすばらしいので幹部として迎え入れよう」。こうはならないはずです。「実績もスキルも人間性も、もちろん働きぶりもすばらしいのだけど、ビジョン実現が遅くなる、もしくは遠ざかってしまう。だから、残念ながら…」。こんな厳しい決断を泣きの涙でくだせるのがデキる社長なのです。

もうひとつの教訓。それはイグジット・マネジメントにおいては経営者の方から先に「辞めてほしい」と思うことの重要性です。

会社の仕事のフローにしっかりはまってワークしている人材から、ある日突然、「辞めたいです」と青天の霹靂で言われたら、後任をどうする、フローはどうするで混乱しますよね。幹部人材ならなおさらです。

しかし、経営者のほうが先に「辞めてほしい」と考えたとしたら、どうでしょう。先手を打って混乱が生じないように準備することが可能です。組織の動揺も最小限におさえられます。むしろポストがひとつ空くので、ほかのメンバーは「チャンス」ととらえてくれるかもしれない。災い転じて福となす。そんなことも可能になるでしょう。

「人手不足で会社が回らないので緊急募集」という採用が最悪なのと同様に(#2参照)イグジット・マネジメントにおいても経営者が後手にまわるのはよくない。最善手を打つためには、先手をとることが大切です。

ケーススタディは幹部人材を外部から採用した場合でしたけど、「未来視点から幹部人材を検証する」「経営者から先手を打つ」というふたつの教訓は、社内で育成した幹部のエグジット・マネジメントにも方法論として応用できます。

特に辞めそうな幹部人材の事前察知はきわめて重要。サプライズがあると、すべてが後手後手に回るので追い詰められてしまいます。

どんな時も「論語と算盤(そろばん)」

ご紹介したケーススタディには後日談があります。Aさんにお辞めにいただくにあたり、その経営者は3ヵ月分の給与と同額の“手切れ金”をお支払いになったそうです。会社にそんな規定はなく、例外的で特別な対応です。

理由のひとつは、あまりに早く会社をお辞めいただかざるをえなくなったことに対する経営者からの気持ちとして。もうひとつは穏便かつきれいに“別れ話”をまとめることで、根も葉もない会社の悪評が広まるなど事後リスクの芽を摘む “投資”として。そんな判断があったそうです。

誠意を示しつつ、現実の計算もしっかり働かせる。どんなシビアな局面でも経営の最適解を見つけ出そうとするのがデキる社長の基本的な思考なんですね。

次回はお金の使い方について考えてみたいと思います。使う時はケチケチしない、だけど投資効果の最大化はしっかり追求する。そんなデキる社長のお金の使い方の方法論です。

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※「デキる社長の方法論」連載です。あなたはダメ社長?
「実務が大好き」だから あなたは“ダメ社長”

「人が足りないから採用する」だから あなたは“ダメ社長”

※過去の人気連載「CEOとCOOの経験論的生態学」
CEOとCOOの「超えられない一線」「超えてはならない一線」

「“経営者”を辞めたいCEO」と 「“経営者”になりたいCOO」

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