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ロマンのCEO ロジックのCOO

CEOとCOOの経験論的生態学 #3

株式会社BNGパートナーズ 代表取締役会長 蔵元 二郎(くらもと じろう)

INOUZTimes編集部
ロマンのCEO ロジックのCOO

夢想家のロマンチストと論理でキチキチと推し量るリアリスト。まさに“水と油”、混じりあうのは難しそうですよね。でも、400名以上のベンチャー経営者を輩出するなど、数多くのベンチャー企業やその経営チームの“生態”を見てきたBNG代表の蔵元さんによれば「CEOとCOOが相互補完し、ロマンとロジックという対立概念を融合することが会社経営には欠かせません」と話します。CEOとCOO、それぞれの“思考回路”を分解してみました。

目次 ◆誰も知らない“秘密の花園”
◆CEOとは「AIのような夢想家」!?
◆「ロジックのプロ」というCOOの役割
◆「最強の経営チーム」の姿

誰も知らない“秘密の花園”

「誰も知らない“秘密の花園”があっちにあるぜ。一緒に行ってみないか?」。こんなことを言われたら、どうしますか。おもしろそうなのでついて行ってみたいと思う人、なんだか怪しそうなのでためらう人。反応はそれぞれでしょう。

ただ、ある“特定の人”は、きっとこんな反応をするはずです。「誰も知らないと言ってるのに、どうしてあなたは、それが“あっちにある”と言えるんですか? ロジカルじゃない…」。

特定の人とはCOOのこと。COOはロジックでモノゴトを推し量る“人種”です。COOの思考では「誰も知らない“秘密の花園”に行く」という発想そのものが論理破たんしている、ということになります。

だけど、「いやいや、それはある」と確信している人たちもいます。それがCEOという“人種”です。

今回はCEOとCOOの考え方が、なぜかくも違うのか。そのワケをお話ししましょう。

CEOとは「AIのような夢想家」!?

なぜCEOは「誰も知らない“秘密の花園”」があると断言できるのでしょう。それは、イメージで頭のなかが満たされているからです。なに色の花がどれだけ咲いていて、どんな匂いなのか、どんな実をつけるのか、蜜の香りはどうか。とても具体的で、すみずみまで完璧な世界観が頭のなかで構築されています。

分かれ道に出会ったらこの方向に進んで、その先にある山や谷を越えるためにはこんな装備が必要。順調にいけばこれくらいの日程で、なにかトラブルがあってもこの程度の期間をかければ行ける。そんな風に、順路もスケジュールも緻密にイメージされています。

でも、ひとつだけ“突っ込みどころ”があります。非常に説得力があるんですが、いかんせんイメージなので理屈では説明できないところです。その点がCOOとは決定的に異なる部分でもあります。

ぼくもかつてCEOに振り回された経験があります。それは、ぼくがHRベンチャーを共同創業し、会社のNo.2であるCOOとしてオーナー社長のCEOと“二人三脚”で経営していたときのこと。CEOから突拍子もない新規事業のプランやビジネスアイデアを聞くことがしょっちゅうありました。そんなとき、大抵の場合、ぼくはこう返していました。

「非常におもしろいアイデアですが、それが成功するというロジックを聞かせてください」

「どの程度の売上、利益が出る事業になると計算しているのか、教えてください」

まさに“ロジックのCOO”の見本のような反応ですね。それに対するCEOの応答は、大体こんな感じでした。

「だって、絶対に成功するでしょ」

「その分野でトップになれるのだから、結構な売上・利益になると思うよ」

見事なまでに噛み合っていませんね。なぜ、噛み合わないのか。それは、ぼくが“職務放棄”していたからです。

ある意味、CEOは“夢想家”と言えます。いまの延長上で将来を考えているワケではないので、「突拍子もない」と周囲からは見えます。しかし、目指す理想、理念があり、そこから逆算して着手しようとしているだけ。根拠がないのではなく、思いつきでもありません。計算があり、確かな青写真があります。

その思考の巡らせ方はAIと似ているかもしれません。AIが囲碁や将棋のトッププロを打ち負かしたことはご存知だと思います。しかし、ひとつひとつの打ち手については「トンデモない手」「非常識な手」「まるで素人」。プロや観戦記者などからは、こんな散々な評価を受けていました。でも最後には、なぜかAIが勝っちゃう。

先日、こんなテレビ番組がありました。少子高齢化、医療、格差、消費など、シリアスな社会課題の解決策をAIに聞く。そんな情報バラエティ番組です。

番組なかで、こんなやりとりがありました。要介護などの状態にならない「健康寿命の延伸」が日本社会の課題になっていますが、「健康寿命を延ばすためには、どうすればいいのか」という質問をAIに投げかけました。AIが導き出した回答は「病院を減らせ」。病院を減らせば健康な人が増える。そう言うのです。

大きな矛盾のように感じますよね。AIは人間ひとりが一生かかっても調査・分析しきれないほどの膨大かつ多様なビッグデータから回答を導き出したのですが、「なぜ、そうなのか」というロジックは説明してくれません。番組では、さまざまな識者や専門家がロジックを懸命に考え、見ていて「最初はデタラメに思えたけど、確かにそうだな」と最終的には納得させられました。

「ロジックのプロ」というCOOの役割

CEOの思考の基礎にあるもの。それは自社そのものと自社が存在する社会のビッグデータです。自分で勉強したことや経験則をはじめ、ほかの経営者などの多種多様な世界で活躍している人たちとの交友関係や人脈のなかから得た、さまざまな情報などです。

細かいデータも“好物”です。たとえば、営業の日報、日々の問い合わせ件数の推移、具体的なクレーム内容。それらを毎日のように目を光らせてチェックするCEOは少なくないと思います。それは、ヘマをした担当者を叱りつけたり、短期的な売れ行きに一喜一憂するためではありません。「傾向」という大きな流れをつかむためです。

いま、世の中はどんな流れになっていて、これからどうなろうとしているのか。具体的なディティールの“手触り”が感じられるまで深掘りする。そして、起きるであろう将来の変化から逆算して、“いま打つべき手”を探ろうとしているのです。

膨大な棋譜や自己対局によって深層学習したAIには、「いま、ここにこの駒があるので最終的にはこんな形勢になる」といった“誰も見たことが秘密の花園”が見えています。だから「いま着手すべきはここ」といった具合に、逆算した打ち手が見えるのです。

でも、ひとつひとつの手はロジックでは説明できない。そのロジックを考えるのは、先ほどのテレビ番組の場合は有識者や専門家の仕事、会社でいうならCOOの役割、というワケです。CEOの“突拍子もないアイデア”をロジックで翻訳し、メンバーを動かすこと。それがCOOの職務なんです。

僕は質問というカタチでの抵抗を試みただけですけど(それ自体、職務放棄でダメダメですが)、最悪なのはこんなことを口走ってしまうことです。

「CEO、そんなこと言われても誰も理解できないですよ。どうしてもおやりになりたいのなら、ご自分でメンバーに説明してください」

“我関せず”という態度を咎めているのではありありません。ロジックのプロであるべき有識者や専門家が「なぜ、その手なのか。説明してくれ」と、ロジックを語るはずもないAIを拝み倒しているのと同じだから、最悪だと言ってるのです。

「自分はロジックを考える能力がありません」。こんな白旗を掲げてしまっている。それは、まわりまわって「自分の存在価値はありません」と言っているのも同然。そう思いませんか?

少し自分のことをお話しましょう。最近、ぼくはある尊敬する経営者に見習って、今期から「健康手当」を会社に取り入れることにしました。「上司から健康であることが認められたら月1万円の手当を支給する」というものです。「3,000円とか5,000円ならわかるけど、なんで1万円も?」と驚かれたり、呆れられたりすることがたびたびあります。昔のぼくもそう感じたでしょう。しかし、いまのぼくは「非常に適切、安いくらい」と考えています。

「最強の経営チーム」の姿

健康管理を意識できない人はアマチュア。プロとは言えません。だから、信賞必罰の褒章として、「健康手当」を新設したんです。プロ集団をつくるための投資と考えれば、社員ひとりに月1万円は高くありません。

いかがでしょう。ぼくの想いはおわかりいただけたんじゃないかと思います。でも、自分で言うのもなんですけど、ロジカルではないですよね(笑)

では、根拠のない思いつき、思い込みかと言うと、そんなことはありません。世の中を見渡してみるとどうでしょう。社員の健康に無関心な一流企業があるでしょうか。

一方で、COOはロジックで説明できないものへの拒否感が強い。それは当たり前で、たくさんのメンバーとコミュニケーションする場合、ロジックこそもっとも有効な“ツール”だからです。ロジックで説明できないことはメンバーに伝わらない。その通りです。

だからといってCEOにロジックを求めるのは禁じ手でしょう。「ロジックを考える」というCOOの役割を放棄し、自分の介在価値を自ら否定するのと同じなのですから。

しかし、どこからどう考えても、さすがにムリ筋。そんなアイデアをもちかけるCEOもいます。その時、大切なのは、いったんやってみることだと思います。ぼくもそうでした。ロジカルではないけど、実際に動いてみると意外とカンタンだったり、ここを乗り越えればうまくいく、というポイントが見えたりしたものです。

大切なのは、ロジックに欠けることを前提として、CEOのことが信じられるか、信じられないか。どうしても信じられない場合、COOには会社を辞めるという自由があります。だけど、CEOには会社を辞めるという選択肢がありません。不自由なんです。

絶対自分にはできそうもないと思ったのなら、「自分にはできそうもない」と正直に話せばいいんじゃないかと思います。そうなれば、社内か社外かは別として、CEOは代わる人材を見つけてくればいいだけなのですから。

口では「やりますよ」と言いながら、実際にはなにもしない「面従腹背」は会社を混乱させ、活力を奪い、未来を閉ざします。自分がCOOだったときの後悔の念も込めて、それだけは止めてほしいなぁと感じます。

「将来」という遠くを見ているCEOは意外と現場のリソースや状況などの足元についてはわかっていないことがあります。ですから、「こんな新規事業をやりたい」と思ったときは「これが成功するロジックをつくってくれ」とCOOにオーダーをする。COOは、それを信じて、ロジックの構築と格闘する。CEOは出てきたロジックを見て、「これはイケるね」「結構、苦しいね」など、GOかNO GOかを決断する。

こんな風にCEOとCOOが“イマジネーション担当”と“ロジック担当”といった役割に分わかれ、それぞれの役割を補完しあっている会社は最強になれるでしょう。

CEOは“誰も知らない秘密の花園”を見つけ出す。そして、COOはそこにたどり着く地図をつくり、メンバーを鼓舞する―。夢想とロジックという、本来、相容れない対立軸の相互補完が、会社経営という複雑極まりない方程式を解くカギなのではないか。そう思います。

連載 CEOとCOOの経験論的生態学

CEOとCOOの「超えられない一線」「超えてはならない一線」

「“経営者”を辞めたいCEO」と 「“経営者”になりたいCOO」

仕事をしないCEO 仕事しかしないCOO

【PROFILE】

蔵元 二郎(くらもと じろう)

株式会社BNGパートナーズ 代表取締役会長

鹿児島県出身。九州大学卒業後、大手金融機関にて採用・経営企画に携わった後に、ベンチャー企業にて新規事業の立ち上げに従事。2002年、27歳で株式会社ジェイブレインを共同創業し、取締役最高執行責任者に就任。2009年、34歳で株式会社BNGパートナーズを創業、代表取締役社長に就任。2016年、代表取締役会長CEOに就任。
◆PHOTO:INOUZ Times

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