「働き方改革」の手段の一つとして、いま、注目度が高まっているテレワーク。編集部はベンチャー企業の経営層100人に、「テレワークが会社の一体感をそこなうと思うか」を聞いてみました。回答は半々にわかれ、どちらかといえば「そこなう」と思う派が多い、という結果でした。(前編)
「ベンチャー企業とテレワーク」を考察するコラムの後編は、「一体感をそこなわないと思う」と回答した理由を中心に、どうすれば「会社の一体感」と「テレワークの推進」が両立できるのかを探ってみました。
ITでコミュニケーションは十分にできる
INOUZTimes編集部では、「働き方改革」にベンチャー企業がどう対応しているのか、全国の従業員100人未満の企業の経営層100名にアンケート調査を実施しました。
━【調査概要】━━━━━━━━━━━
調査対象:全国の従業員100人以下の企業の経営層
調査方法:インターネットリサーチ
性別 :男性93人、女性7人
役職 :代表取締役55人、取締役39人、執行役員6人
回答数 :100サンプル
調査内容:「働き方改革」に関するアンケート
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[設問]あなたは、テレワークや在宅勤務を導入しても、会社の一体感・チームワークはそこなわれないと思いますか。Yes/Noのどちらであっても、そう回答した理由を教えてください。
「Yes」と回答した経営者のひとりは、その理由として「本当はわからない。選択肢がないのでこう答えた」と記述。テレワークを自社で導入していない企業の経営層のなかには「正直、わからない」という回答が散見されました。
このような「とりあえず回答した」企業を除けば、設問に「Yes」と回答したのは、大半がテレワークを導入済みの企業。これらの会社は、どうやって一体感がそこなわれないようにしているのでしょうか?
答えはITの活用。「SNSやメールで連絡を取り合っている」「ビデオ通話アプリやグループチャットなどを活用すれば、コミュニケーションはとれる」と、ITを活用することで、必要な一体感を醸成している様子がうかがえます。確かに、一昔前と比べれば、テレワークを導入しやすい環境がぐんと整っています。メールはもちろん、グループウェアやチャットが進化を遂げ、たとえば勤務時間中にチャットツールを立ち上げっぱなしにしておけば、リアルタイムで仲間たちとコミュニケーションがとれます。
また、ビデオ会議システムを使えば、離れていてもフェイスtoフェイスのコミュニケーションができます。とくに、いま規格化が進行中の次世代無線通信システムで、超高速・大容量のデータ送受信を可能にする5Gが普及すれば、これまでのビデオ会議システムにあった通信のタイムラグが大幅に減少。リアルにコミュニケーションをしているのとほとんど変わらない品質が実現されると見込まれていて、テレワーク推進に拍車をかけることは確実です。
もうひとつ、クラウドによる情報共有システムの発達も見逃せません。これまでは物理的に会社のファイルキャビネットに存在していた情報をクラウド上で管理することで、テレワークをしていても会社にいるときと同じように仕事ができるようになったのです。
異なる考え方がぶつかる「オフィス」の重要性
ITをうまく活用すれば、テレワークと会社の一体感を、ある程度、両立させることは可能。そのことは、アンケートの問いに「テレワークは会社の一体感をそこなう」と答えた人たちもわかっているはずです。それでも、回答者の過半数がテレワークによって一体感を失うことを懸念するのはなぜでしょう。ヒントになる回答として、「アイデアの共有化がそこなわれると思う」というものがありました。
顔を突き合わせるアナログなコミュニケーションと、IT技術を活用したデジタルなコミュニケーションの違いとして、よく「ストレス量の差」がいわれます。デジタルなコミュニケーションでは、コミュニケーションを遮断したり、コミュニケートの中身を管理したりすることが容易。簡単にいえば、「イヤな相手」とコミュニケーション量を減らしたり、「ストレスフルなテーマ」でのコミュニケーションを避けたりすることが、アナログなコミュニケーションより容易にできるということです。
しかし一方で、ストレスを避けるようにみんながコミュニケーション量を減らしていくようになると、異なる考え方がぶつかり合い、気づかなかった視点を得ることで新たなアイデアが生まれてくる機会も減っていきます。ベンチャー企業は、画期的なプロダクトやサービスを発明し、世の中を変えていくイノベーターとしての社会的役割を負っています。そしてイノベーションには、同じ時間・場所を共有する仲間たちが健全にぶつかり合う、ある意味、ストレスフルな人間関係が重要であることが少なくないのです。
たとえば、創業者が大学生だったとき、学生仲間とつきあうなかで、開発したツールを原点に、世界経済に巨大な影響力をもつまでに成長した企業もあります。校舎という同じ場所で、講義という同じ時間を過ごす仲間たちの濃密なコミュニケーションがなければ、この企業は生まれなかったでしょう。
そう考えると、メンバーがリアルに集まる「オフィス」はベンチャー企業にとって、非常に重要なものだといえます。「メンバー全員がテレワークをして、本社オフィスをもたない」というベンチャー企業は、これからさらにテレワーク推進を後押しするIT技術が登場しても、少数派にとどまるのではないでしょうか。
新しい企業文化を創造しよう
そのなかで、「テレワークを選択するメンバーには、2週間に1回とか、定期的にオフィスに出てきてもらえれば十分」「仕事はSNSやメールでのやりとりでOKだが、その後の飲み会には参加してもらうようにしている」と、うまくデジタルとアナログのバランスをとる手を打っている回答もありました。ITを駆使したオフィス外での仕事を基本としつつ、リアルなコミュニケーションを欠かさないことで、会社の一体感をキープしているわけです。どうやら、こうしたきめ細かい施策が、ひとつの方法といえそうですね。
少子高齢化がますます進む日本。労働市場にこれまで参画してこなかった人材にスポットが当たるのは当然の流れです。出産・育児を経ても女性に働き続けてもらうことや、高齢者の就業促進が求められています。これらに対し、テレワークの導入は大きな効果があるでしょう。
総務省では、専門家を企業に派遣してテレワーク導入への助言を行う「テレワークマネージャー派遣事業」や、テレワーク導入で実績を上げた“先輩”企業が導入検討企業を支援する「テレワーク推進企業ネットワーク」といった支援策を用意し、後押ししてくれています。
ベンチャー企業が優秀な人材を確保するうえで、大きな強みになりえるテレワーク。こうした支援制度を利用し、トライアルでもいいので始めてみるのも手でしょう。「やってダメならすぐに修正する」という柔軟性はベンチャー企業の得意とするところですから。時代の一歩先を行ってテレワークに取り組み、トライ&エラーを繰り返しながら、「会社の一体感」との両立をはかる。そのうえで新たな「働き方」の文化を築き上げてほしいですね。
中規模ハイグレードオフィスシリーズ『BIZCORE』
オフィスワーカーをとりまく環境は日々変化し続けています。組織のあり方、働き方、個々の価値観など様々な事象が多様化しています。このような状況において、ビジネス空間にはいったい何が求められているのでしょうか。
見せかけの装飾で彩られたものでもなく、単に無駄を省いた簡素なものでもない。「Make Standard」 のコンセプトをもとに、機能とデザインを高次元で融合させたオフィス。
それが、新日鉄興和不動産の『BIZCORE』です。
【公式】BIZCORE(ビズコア)
https://www.bizcore-office.com/