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「抜擢」は人材を潰す毒薬にも急成長させる良薬にもなる

“37da×ソヤマン”白熱対談 #2

KLab株式会社 代表取締役社長 真田 哲弥(さなだ てつや)

株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括 曽山 哲人(そやま てつひと)

INOUZTimes編集部
「抜擢」は人材を潰す毒薬にも急成長させる良薬にもなる

PHOTO:INOUZ Times

2017年9月、成長企業の経営者約300名が一堂に会する経営者イベントBestVenture100 Conference 2017が開催されました。

経営陣の役割分担、経験論的な組織の危機とその打開策、指揮系統のデザインなどについて聞いた前半に続いて、後半では、ミドル人材育成や抜擢のあり方、ロイヤリティのつくり方について激論が交わされました。

[概要]
BestVenture100 Conference 2017
2017年9月13日(水)
主催:イシン株式会社
協賛:SMBC日興証券株式会社/三幸エステート株式会社/有限責任あずさ監査法人/株式会社オービックビジネスコンサルタント/株式会社プロネット/TMI総合法律事務所/新日本有限責任監査法人/住友不動産株式会社/宝印刷株式会社

[セッション]
組織拡大の壁はこう越える

[スピーカー]
KLab株式会社 代表取締役社長 真田 哲弥

株式会社サイバーエージェント 取締役 曽山 哲人

[モデレーター]
イシン株式会社 代表取締役社長 片岡 聡

※「BestVenture100 Conference 2017」(2017年9月)で行われた対談セッションより抜粋・構成しました。

川の「こっち側」と「あっち側」では見える風景が全然違う

―組織の結節点であるミドル人材の底上げや育成については、どんな取り組みをしていますか。

真田

創業以来、毎週1回2時間という頻度で、経営会議を行っています。そこに、まだ入社2年目、3年目の若手を参加させています。“経営会議留学”とか呼んでいますけれども。

すると、視点が変わっていくんですよね。従業員側だと「うちの社長、何考えてんだよ、こんなことして」みたいな、下から見ていると不満であることが、経営サイドでは違う次元で議論して、違う次元で悩んで対策していることがわかる。

「現場のことをわからず、なに決めてんだよ」と思っていたのが、実はそんなことは百も承知で、そのうえで議論をし、決定しているんだということを知る。同じ事象を川のこっち側から見るのか、あっち側から見るのかで全然風景が変わりますよね。それと同じことです。

誰もがそう変化できるわけじゃなくて、変化しそうな素質があるやつを呼びます。誰でも呼ぶわけではありません。将来、こいつは幹部になる資質、素質があるなというやつを呼ぶ。これ、創業以来ずっとやってる制度です。

参加期間はMAX3ヵ月。3ヵ月、毎週参加できます。僕らがやった限り、3ヵ月くらい継続的に参加すると変化が生まれてきます。けど、これをやるとリスクもありまして、経営者視点で考えられるようになるので辞めて独立しようという人が増えるんです。悩ましいです。

―その場合、テーマを絞ったりするんですか。

真田

1部、2部にわけていまして、1部には参加させるけど2部には参加させません。2部で取り扱うテーマは人事。誰を降格させるとか昇格させるとか、そういう人事まわりには参加させません。1部でやる人事制度には参加できます。クリティカルな財務マター、これも1部ではやらない。あとはだいたい議論全部ぶっちゃけて、みんなの前でやります。

多岐にわたるKLabの事業概要

曽山

川のこっち側から見るのか、あっち側から見るのかで全然風景が変わる、というのは全くおっしゃる通りだなと思います。

CAで従業員が300人くらい、マネージャーが40~50人くらいになった時、マネージャーのレベルのばらつき、年齢差が出てきたので、役員8人とマネージャー50人で1泊2日の合宿をしたことがあります。これは5~6年続けたのですが、効果がありました。

初めての試みとなる合宿で何をやったかというと、社長の藤田から「今日みんな集まってくれてありがとう。じゃあまず1個目のお題はマネージャーの役割って何かを考えて書いてみて」と言われ、マネージャー5~6人でグループワークを行い、マネージャーの定義を議論しました。

当時、僕はマネージャー側として参加していたのですが、マネージャーの役割について、「環境を整える」「モチベーションをあげる」「育成する」など、いろいろ意見が出ました。

それで、みんなでプレゼンをして、最後に藤田から「みんなの意見ありがとう。でもね、みんなズレてる」と。何かと言うと「マネージャーというのは組織の成果を出すことが唯一の役割だから」と。1人の成果を出すんじゃなくて組織の成果なんだということを藤田が言って、「あ、なるほどズレてる」ということを、参加者全員が理解したんです。マネジメントスタイルや手段は、はっきり言ってどうでもいいんだなと。

定義を議論するのはすごくいい。マネージャーの役割のほかにも、たとえばイノベーションってなんだとか、今ホットな会社の経営議題となっているテーマを議論する。目線合わせができるだけでも、経営陣との意思疎通がはかられます。

ちなみにその合宿では、マネージャーの定義のほかに新規事業を考えようというワークを行い、そこでアメーバブログのスタートが決まったんですよ。

人材を成長させる“ゴッコ”と“見届け”

―もう最後になってしまうんですけども、抜擢したはいいけど、なかなかワークしない。そんなケースをよく経営者の方から聞きます。そこのエピソードや取り組みを聞かせてください。

真田

抜擢でよく失敗しました。僕も抜擢するのが好きなんです。こいつおもしろいなと思って、いきなり若手を引き上げてドンとそれなりのポジションにつける。それがうまくワークすればいいんですけど、最初、ワークしないことが多いんです。

そうすると結局、抜擢をしたがゆえに逆にそいつを潰してしまう。周囲は「期待外れだな」と感じ、下から上からブーイングが出る。すると結局、抜擢された人間が潰れてしまう。退職してしまう。ないしはうまくワークしなかったから降格する。そうするとモチベーション下がって、結局、辞めてしまう。

そんなことが散々あって、じゃあどうしたかというと、そこで“登竜門”の設定というのを始めました。うちの会社では課長とか部長とかいう名前じゃないんですけど、たとえば課長を部長にする時に、いきなり部長にするんではなくて、部長の登竜門という設定をします。肩書は課長のまま、部長の権限を持って基本3ヵ月間、部長ゴッコをやりましょうというものです。給料も課長の時のまま、上がりません。給料は上がらないけれども仕事の量が増えるから決して得な話じゃないですよ。

で、部長の登竜門で3ヵ月経つと、原則、いったん元の課長に戻します。これは誰であれ、いったん戻します。そのうえで本物の部長に昇級するかどうかの審議をします。

期限をつけ、原則戻すことで、何回でもチャレンジできるんですね。登竜門1回目、2回目、3回目、4回目で部長に昇格しましたという人も結構います。戻せるというところが大きなポイントです。

いきなり部長というと、周りからやっかみがでたり、もうなんかいろいろ。「部長なのにそんなことできないの?」みたいな話になるわけです。けど、運転免許の若葉マークと一緒で、まだ登竜門だから、あんまり後ろからプップー言わんといてや、ここからみんなでちゃんと育てていきましょうねと。そういう仕組みです。

“ゴッコ”をやってみると、ここが足りなかったとか自分でもわかるんですよね。「とりあえず試してみる? ただの登竜門だから3ヵ月でいったん元に戻るけど、とりあえず試してみようよ」ということで試して、部長になるためにはこの点とこの点が欠けてるよね、ということが見えてくる。あとここが出来るようになったら本格的に部長に登用できるよね、というフィードバックがしやすくなるんです。それを何回も気軽にトライしようよと。割とこの制度はワークしてます。

―登竜門という名前もいいですよね。

真田

上向きな感じがいいですよね。

曽山

サイバーエージェントでは、子会社の社長として意図的に抜擢するのですが、成功するまで見届けます。抜擢しても、その後完全に放置して失敗する例って結構多いですよね。抜擢したんだから頑張れよって。ただ、抜擢した後に完全放置すると、未経験でまだ未熟なので失敗することが多い。なので、きちんと見届けることが大事なんです。

具体的にどう見届けているかというと、3つくらいサポート体制があって、1つは新しい子会社ができ、そこの社長に若手を抜擢するとCA本体の取締役の誰か1人が必ずその子会社の役員に入ります。それによってきちんとガバナンスを効かせます。ただし、意思決定や事業判断は絶対に抜擢した子会社の社長にさせるんですね。相談には乗っても「お前はどうしたいんだ」と聞く。

もう1つはバックオフィスのサポート。新会社ができると、人事や経理といった管理部門でその会社向けのサポートチームをつくります。3つ目は、月に1回、子会社の社長たちで集まる経営会議。そこでは各社のトピックスや戦略を共有することで子会社の社長の横の繋がりをつくっています。

―意思決定は本人にさせるというところがポイントですね。

曽山

そこだけは絶対にさせないと、名ばかり社長になってしまいますから。決断経験というキーワードを使っていますが、決断経験こそが人材を育てます。サポートはするけど、決めさせることだけは絶対に本人にやらせますね。

KLab代表の真田さん(左)とサイバーエージェント取締役の曽山さん

ポイントは「仲間を増やす」「横の関係を深める」

―せっかくの機会ですから、会場からも質問を受け付けさせていただきます。

会場

会社に対するロイヤリティが上がるいい取り組み、よかった取り組み、今も継続してる取り組みがあればぜひ教えてください。

真田

最初に言いたいことは、全社員が高いロイヤリティを持つということは幻想であって、そんなことはありえないと理解、認識したほうがいいと思います。

取り組みについては、僕らもいろんなことをやりました。例えば、僕もやってるんですけど、フットサル部とかゴルフ部とかの社内サークルに対する部活動の支援金。なぜ、これをやっているのかと言うと、職場の縦組織・部門以外に、社員同士が仲良くなっていくことが、その会社のロイヤリティにつながっていく。そんな理解をしています。

また、新卒には同期の仲間がいるんですけど、中途採用には同期がいないんで、中途採用にも同期をつくろうと。3ヵ月に1回、その間に採用された人たちを集めて会社側が同期会というのを用意して1泊2日の旅行に連れて行き、同期のつながりを強めてもらう。そんなことをやってました。

ほかにも、Facebookさんが提供されている社内SNSでコミュニケーションしたり、いろんな、あの手この手の工夫をしています。

曽山

ロイヤリティを考えるポイントで気をつけなければいけないのは、ロイヤリティを感じていても意外と少人数の人に属しているんですよね、社長とか、役員とか。これをチームや仲間、組織に対してロイヤリティを感じられるように分散させなければいけないんです。

部活動であれば、仲間が増えるのでロイヤリティが分散できる。上にもいるけど、横のつながりもあることで分散をさせることが大事な考え方です。

組織規模が大きくなるにしたがって、人と人の共通項が減り、ロイヤリティが希薄化する結果、退職者が増えるかなと思います。そこを考えて、会社の風土も考え合わせて、飲み会なのか部活なのか、食事会なのか、パーティーなのか。仲間を増やしてもらう方法を考えて頂くといいんじゃないかなと思います。

真田

あとね、奥さん(やダンナさんなどのパートナー)がカギを握ってることもあります。

曽山

大事ですね、それ。

PHOTO:INOUZ Times

真田

それで、授業参観じゃなくて“事業参観”というのもやっています。子どもやパートナーに会社を訪問してもらうんですね。そんなこともやってますね。

僕はこれまで組織をテーマにしてしゃべる機会が少なかったんですけど、難しいです、組織は。今でも悩みだらけですよ、ほんと。なにか問題を解決したら、すぐに別の問題が必ず起こり、終わりがありません。それで、曽山さんの本も読んで勉強しています。

曽山

ありがとうございます。めっちゃうれしいです。

#1『ベンチャー企業の成長痛 「組織拡大」の壁はこう超える』

BestVenture100 Conference 2017

BestVenture100 Conference 2017セッション記事はコチラ

昨年のBestVenture100 Conference 2016セッション記事はコチラ

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