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IPOには「時の運」が存在する

“3人の上場起業家”に聞いた「IPOというドラマの内側」 #2

株式会社ネットマーケティング 代表取締役社長 宮本 邦久(みやもと くにひさ)

INOUZTimes編集部
IPOには「時の運」が存在する

2017年9月、成長企業の経営者約300名が一堂に会する経営者イベントBestVenture100 Conference 2017が開催されました。

上場を果たした3人の起業家に「IPOドラマの内幕」を聞くシリーズ。ネットマーケティングは2017年3月に東証JASDAQに上場しました。2015年に東証マザーズへの上場承認がおりるものの、それを取り下げて再挑戦。およそ1年半を経て“リベンジ”を果たしました。起業時から「経営者たるもの、上場を目指すのが当たり前」との想いを抱き続けてきた同社代表の宮本さん。その“ブレない挑戦ストーリー”をお届けします。

[概要]
BestVenture100 Conference 2017
2017年9月13日(水)
主催:イシン株式会社
協賛:SMBC日興証券株式会社/三幸エステート株式会社/有限責任あずさ監査法人/株式会社オービックビジネスコンサルタント/株式会社プロネット/TMI総合法律事務所/新日本有限責任監査法人/住友不動産株式会社/宝印刷株式会社

[セッション]
~経営トップが語る~
IPO“ホントのところ”

[スピーカー]
株式会社ネットマーケティング 代表取締役社長 宮本 邦久

[モデレーター]
イシン株式会社 専務取締役 吉田 秀明

※「BestVenture100 Conference 2017」(2017年9月)で行われた対談セッションより抜粋・構成しました。

社運をかけた「マッチングアプリ」でブレークスルー

―最初に、上場までの経緯を聞かせてください。

2004年に創業した当時から、ずっと上場を目指していました。それは野球少年が甲子園を目指すのと同じ感覚に近いものがありました。起業した以上、上場を目指すもの。そんな想いがあり、上場しないという選択肢は考えていませんでした。

起業以前はベンチャーキャピタルで働いていました。しかし、投資する側の立場ではなく、投資される側の立場になりたいとの想いがずっとありました。父親が自営業をやっていたので、小さなころから「食いぶちは自分で稼ぐ」という考えが当たり前になっていたんです。私の独立を支援してくれる人たちとの縁にも恵まれ、インターネットのアフィリエイト広告代理店として、ネットマーケティングを起業しました。

しかし、売上はそこそこあるものの、利益がちょっと伸びきれない。広告事業1本ではIPOを果たすまでに時間がかかり、かつ、上場後に市場から高い評価を受けられるとは限らないという意見が幹部からも上がってきました。

上場を実現するためには新規事業をつくり、成長を加速させなければいけない。それが大きな経営テーマになりました。そこで、2010年に立ち上げたのがメディア事業。マッチングアプリのお見合いサービス「Omiai」です。

なぜマッチングサービスに目をつけたのかというと、世界を見れば社会インフラといえるぐらい普及しているからです。アメリカでは配偶者との出会いのきっかけの1位は職場で2位がマッチングサービスという調査もあるほどです。

開発費などのコストがかかるため、赤字からのスタートでしたが、2013年には単月黒字化を果たしました。社運をかけた戦略事業として、広告ビジネスで得た利益をすべて「Omiai」に振り向けたことが功を奏したと思います。「YAHOO! Japan」と業務提携を結ぶなど大きな評価を得るまでに成長し、会社も上場できるスケールになりました。この過程を通じて、全社員の想いがひとつになることができたことも大きな収穫でした。

上場準備を開始したのは、メディア事業の単月黒字化を実現した2013年から。2年で上場という計画をたて、実際、2015年8月には東証マザーズへの上場承認もいただきました。

けれど、詳しいことは後でお話ししますが、この上場は取り下げます。そして、取り下げから1年半ほどを経て、2017年3月にJASDAQへの上場を果たしました。

ネットマーケティングの売上推移と上場までの足跡

「取り下げはしょうがない。もう1回頑張ろう」

―せっかく上場承認がおりたのに、なぜ取り下げたんですか。

上場承認がおりた月に主要取引先との関係で事業環境の変化が生じることが判明したためです。

起業したときから上場を大きな目標としていたので苦渋の決断でした。冷静に考えれば取り下げるべきだ思うんですが、「何とかできないか」という声も社内にはありました。

こうしたなか、主幹事証券会社がうまく“ブレーキ役”を果たしてくれました。主幹事証券会社と話し合い、ここはいったん取り下げようとの結論になりました。きちんとご説明をいただき、最終的には社内の空気も「取り下げはしょうがない。もう1回頑張ろう」という前向きなものなりました。

―大きな激震だったのではないかと思います。どんな影響がありましたか。

大きな緊張感のなかで上場準備を進め、ようやく上場が承認されてホッとしたところに、またやり直しですから、精神的には大きなストレスがかかりました。それがいちばんの問題でしたね。

よく聞かれるんですけど、上場を取り下げたからといって人が辞めるようなことはありませんでした。取り下げの理由は外部要因による売上減少。時間はかかるけれども売上をリカバリーすればいいだけでしたから。これが内部要因が理由で上場延期、ということになっていれば、また違った結果になっていたのかもしれません。

そのほかの影響としては、リスクを考える志向が強くなったと思います。私自身はイベントや新規事業など、こんなことをやりたい、あんなことをやりたいと思っても、社内は先にリスクを心配するようになりました。

Aという選択肢とBという選択肢があった場合、よりリスクが少ない方を選ぶ。そんな傾向が強くなったような気がします。上場企業としては健全なことだと思いますけれど。

ネットマーケティング代表の宮本さん

「チャンス」は逃すな

―資本政策については、どんな考えでしたか。

上場前にVC8社から2億円ちょっとを調達しました。金額の割にVCの数が多いですけど、これは前職がベンチャーキャピタルだったこともあって、投資家の声をたくさん聞きたかったからです。

月に1回、みなさんに「ウチの会社のことをどう思いますか」という質問をしました。VCの意見を聞いていると、いろいろな気づきや学びがありました。「あ、そういう投資家の視線はおもしろいな」とか「新しい事業をやらなければ、みんな上場できるって思ってないんだな」といったことですね。とても参考になりました。

ただ、8社のスケジュールを調節するのは結構大変でしたね。自分が思うところと違う視点でいろいろな話を聞けたのはよかったんですけど。

―これから上場を目指す経営者へのアドバイスを聞かせてください。

2回目の上場準備の時は結構大変でした。その経験から言わせていただくと、もしIPOできるなら、なるべく早い方がいいと思います。公募時の時価総額を大きくしたいなど、そうしたこだわりを持ちすぎるとチャンスを失う可能性があると思います。

実は1回目の上場申請のときは思っていたよりも順調に進みましたが、2回目のときには引き締めや制約がいろいろあってすごく大変だったんですよ。1回で上場していたらわからなかったことだと思いますが、上場のタイミングは運の部分も大きいと感じています。たとえ多少、公募時の時価総額が小さくても、それは上場後に成長して大きくしていけばいいんですから。

また、マザーズやJASDAQなどの新興市場に上場した後、さらに東証2部、東証1部といった上を目指すなら、上場チームを解散せず、そのまま一気に指定替えの準備に入った方がいいと思います。新興市場などに上場してから10年たって上を目指すとなると、もう一回、ゼロベースで準備などを行わなければなりません。それは結構大変だと思うんですよ。

むしろ、新規上場した直後の方がガバナンスやコンプライアンスも整ってます。そのまま一気呵成に行った方がいい。そんなことを考えています。

BestVenture100 Conference 2017

BestVenture100 Conference 2017セッション記事はコチラ

昨年のBestVenture100 Conference 2016セッション記事はコチラ

宮本 邦久(みやもと くにひさ)

株式会社ネットマーケティング 代表取締役社長

1975年、熊本県生まれ。1998年に慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、日商岩井株式会社(現:双日株式会社)に入社。2004年に株式会社ネットマーケティングを設立し、代表取締役に就任。2017年にJASDAQ(スタンダード)に上場。

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