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IPOは辛くて素晴らしい

~5回の企業上場に関与した「IPOの賢者」が語る戒めとノウハウ~

株式会社日本M&Aセンター 代表取締役社長 三宅 卓(みやけ すぐる)

INOUZTimes編集部
IPOは辛くて素晴らしい

2017年9月、成長企業の経営者約300名が一堂に会する経営者イベントBestVenture100 Conference 2017が開催されました。

「IPOにコツはあるんですか」―。上場会社の仲間入りを目指す経営者から、よく聞かれる質問のひとつです。日本M&Aセンター代表の三宅さんは、5回の企業上場にかかわり、まさにIPOのコツを知り尽くしている経営者。その経験から導き出された「IPOのコツ」の決定版をお届けしましょう。まさに「活きた実学」が詰まったお話しです。

[概要]
BestVenture100 Conference 2017
2017年9月13日(水)
主催:イシン株式会社
協賛:SMBC日興証券株式会社/三幸エステート株式会社/有限責任あずさ監査法人/株式会社オービックビジネスコンサルタント/株式会社プロネット/TMI総合法律事務所/新日本有限責任監査法人/住友不動産株式会社/宝印刷株式会社

[セッション]
起業家の軌跡

[スピーカー]
株式会社日本M&Aセンター 代表取締役社長 三宅 卓 氏

※「BestVenture100 Conference 2017」(2017年9月)で行われたセッションより抜粋・構成しました。

実際にIPOできる会社は少数

私はこれまで、指定替えを含め、上場を5回経験しました。まず、日本M&Aセンターのマザーズ上場と東証1部への指定替え。当社のグループ企業で組成しているファンドの投資先企業。この会社には社外取締役として参画しています。それから、30代の時に仲間とつくったIT系の会社。最後に、船井財産コンサルタンツ(現・青山財産ネットワークス)という会社。上場時に社外取締役として協力させて頂きました。

「IPOしたい」。そういう会社はいっぱいあります。でも実際にIPOできる会社は少数。2008年以降、1回も新規上場会社数は年間100社を超えたことがありません。それだけ難しいものなんです。この険しい壁を上り切るためには、いくつかの課題を克服しなければなりません。

国内のIPO社数の推移

「ジャンヌ・ダルク」になるか「生ける屍」となるか

IPOは本当にしんどい。営業も管理部門も経営者も大変。全社員が一致団結して汗をかかないとIPOは実現しません。本当に大変なんです。

こうした困難な作業をやり遂げるには、いくつかのポイントがあります。

まず、“錦の御旗”が必要。なんのためにIPOをするのか、ということです。100年戦争でイングランド軍を打ち破ったジャンヌ・ダルクのように、経営者が明確な目的を常に先陣で掲げ、社員たちを鼓舞し続けなければいけません。

次にIPOスケジュールの厳守。タイミングは逃すべきではありません。全社員が団結してIPOに向けて必死になっている中で、「今は株価が軟調なので、1年後に延ばそう」などと経営者は考えるべきではありません。なぜなら、大変な作業をまた1年間、社員たちは繰り返さなければならないじゃないですか。

経営者は社員に「IPOをしたらこんな世界が開けるよ」という夢を語り、社員はそれについてきてくれています。そんな社員たちに対する約束を反故にしてはなりません。スケジュール通りにIPOすべきです。

経営者による「上場するする詐欺」が繰り返されると、本当にIPOができなくなります。そうした会社のことをベンチャーキャピタルでは「リビングデッド」と呼んでいます。生きる屍、という意味です。

チームプレーも重要。IPOを実現させるためには仕組みづくりと組織づくり。この2つが最低必要で、営業部門と管理本部が手を取り合わなければいけません。

当社では営業部門は私が陣頭指揮をとり、管理部門は副社長で管理本部長の楢木(孝麿氏)が管掌しています。このコンビでコンプライアンス、ガバナンスなどのほか、監査法人から要求されたものに対して1時間の遅刻もなくパーフェクトに遂行してきました。営業部門と管理部門がしっかり手を取り合わなければ、こうしたことはできません。

「IPOの具体的なメリット」を語って社員を巻き込む

それから社員のモチベーションアップ。先ほど申し上げた「錦の御旗」だけでは、社員は3ヵ月くらいは頑張ってくれますが、半年、1年、2年となると息切れします。息切れを起こさせないためにはどうすべきか。IPOが実現したら何が得られるのか、それを明示する必要があります。

IPOが実現したら、いろいろなことが得られます。まず、会社の社会的ステータスの向上。信用ができて、社員は仕事がしやすくなります。

当社の事例を説明すると、ひと昔までM&Aと言えば乗っ取りなど、ネガティブな目で見られていました。「会社を売りませんか?」と提案しても「どこの誰かもわからん会社に、自分の大事な会社を任せられない」。そうおっしゃる方が大半でした。

だけどIPO後は激変しました。「当社は東証1部に上場しているんですよ」と言うだけで任せてもらえるようになったんです。

また人材についても、たくさんの人が応募してくれるようになり、優秀な人材の確保も容易になってくる。これも大きいですよ。

事業拡大によって、社員は出世もしやすくもなる。係長は課長、課長は部長、部長は取締役になれる。事業拡大により組織が大きくなり、ポストができるので、出世のチャンスが広がります。

ストックオプションによって資産形成もできる。それによって、社員個人の生活や人生の夢が実現できる。これらのことを、本当に、リアルなカタチで社員に示し、「一緒に夢を実現していこう」と説き続けないと、準備を始めてから2年から3年という長い期間がかかるIPOの実現まで、社員を引っ張ることはできません。

「ストックオプション」への想い

ここで少し、当社のストックオプションに関する考え方をお話しします。

2017年7月に権利行使されたストックオプションの割り当て対象者は約100名で、7月の時点での株価で推計すると総額約100億円のキャピタルゲインがありました。

現在進行形の中期計画にともなって社員に付与しているストックオプションについては、対象者が約170名で、すでに75億円のキャピタルゲインが出ている計算になります。権利行使時までにさらにキャピタルゲイン額を増やせるよう努力しています。

当社では中期計画にともなって業績連動型のストックオプションを付与しています。中期計画は社員個々が150%の力を出していかないと達成できないような目標を設定しています。でも、150%の力を出し切れば、中期計画が達成でき、社員はキャピタルゲインを得ることができる。こうしたサイクルが5年おきにくるよう設定しています。

当社は、中期計画達成のモチベーションにしてほしいということと同時に、「人生の3大テーマ」を社員に解決してほしい。そんな想いでストックオプションを付与しています。

人生の3大テーマとは、まず家を買うこと。都内は不動産価格も高く、頭金をコツコツ貯めて購入するのは長い年月がかかります。その頭金にぜひストックオプションを活用してほしい。

次に子どもの教育。いい教育にはお金が必要。これをストックオプションで解決してほしい。経営者としては、ストックオプションを通じて間接的に40年後に通用する人材を育てている。こんな想いもあります。

そして最後に親の介護。国に頼らないで自分で親の介護をしなければならないとすると、数百万円~数千万円ものお金がかかります。

こうした人生の3大テーマをストックオプションによって解決していきたい。当社の経営陣はこんなビジョンをもっているんです。

資本政策、取引所への対応のコツ

M&Aセンター代表の三宅さん

少し実務的な話しもしましょう。

主幹事証券会社を巻き込むことも大事だと思いました。当社は4月に経営方針発表会や全社の決起集会をやります。そこに主幹事証券会社の幹部を招待し、当社の事業計画を丸1日聞いていただきました。決起集会のパーティーではご挨拶していただき、全社員で盛大な拍手をしました。

それによって当社の本気度、社員たちの熱意が伝わったと感じています。そして我々の社員と同じような気持ちで、日本M&Aセンターの上場をサポートしてやろう。そんな風に思ってくれたと思います。

それから資本政策。これは早くからつくった方がいい。資本政策はやり直しがききませんから。その際、経営者と社員と株主と会社、この4つがすべて豊かになれるようにすべきだと思います。

また、IPO準備を進めていくにあたって、未上場の時は許されていたのに、上場するとなると許されなくなることがいろいろとあります。そうした問題、課題は前向きにとらえた方がいいでしょう。

例えば、取引所から「結構、公私混同が見られますね」という指摘を受けたとします。それに対して、いちいち反論するのは得策ではありません。「確かに公私混同がありました」とあっさり認めてしまった方がいい。

そのうえで「でも、これからは上場企業になるので公私混同は一切やめます」「2度と公私混同がないように、リスクマネジメント委員会をつくります」「リスクマネジメント委員会では社長、社員、管理本部が一丸となって問題を洗い出し、監視体制をつくりあげます」「二度と1円たりとも公私混同は発生させません」。こんな風に指摘を認めたうえで対策を打ち出し、再発防止を約束する。こうした対応の方が、はるかに得策です。

取引所や証券会社がおそれているのは、上場後に問題が発生すること。ですから「指摘された問題が発生しないような体制をつくります。そのエビデンスはこうです」と示すことで取引所や証券会社に安心してもらうことが大事なんです。

上場は素晴らしい。上場準備も本当に楽しいです。でも失敗したら、その傷跡は大きい。ベンチャー企業が成長しないと日本の経済、日本の国はよくなりません。ですから、失敗がないよう、気をつけていただきながら、勇猛果敢にIPOにチャレンジしてほしい。そう願っています。

BestVenture100 Conference 2017

BestVenture100 Conference 2017セッション記事はコチラ

昨年のBestVenture100 Conference 2016セッション記事はコチラ

三宅 卓(みやけ すぐる)

株式会社日本M&Aセンター 代表取締役社長

1952年、兵庫県生まれ。大阪工業大学工学部経営工学科卒業後、1977年に日本オリベッティ株式会社に入社。1991年に日本M&Aセンターの設立に参画。2008年より現職。著書に「会社・社員・お客様 みんなを幸せにするM&A」(あさ出版刊)、「会社が生まれ変わるために必要なこと」(経済界刊)、「M&Aを成功に導くPMI」(プレジデント社刊)など。

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