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うちの社員、仕事の熱量に バラつきがあります…

「HRの名医」サイバーエージェント・曽山氏が社長の悩みを解決 #7

株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括 曽山 哲人(そやま てつひと)

INOUZTimes編集部
うちの社員、仕事の熱量に バラつきがあります…

ヤル気があるメンバーがいる一方で覇気が感じられないメンバーもいる―。同じ会社で同じような仕事をしているのに、なぜか、メンバーの仕事の熱量にバラつきがあったりしますよね。経営者なら「会社のメンバーを全員、ヤル気集団にしたい」という願望をもっているはず。でも、そんなことは可能なの!? HRドクター・ソヤマンにメンバーの仕事に対する熱量を上げ、強い組織をつくる方法を聞きました。

メンバーを不安にさせる最大要因とは?

―今回の相談内容は「社員の士気にバラつきがあり、モチベーションを上げるのに苦労しています」ということ。でも、人間は十人十色なのでヤル気にバラつきがあるのは、ある種、どうしようもないことなんじゃないでしょうか。

僕自身も同じような問題に直面したことがあります。その時の経験で言うと、仕事の熱量にバラつきがあるのには、そうなる原因、理由があるんです。

―ということは、原因や理由がわかれば対策を立てることができる、“ヤル気集団”をつくれる、ということですね。

ええ。そのために、まず「熱量にバラつきがある」というのは、どういう状態であるのか。その認識をしましょう。

一部の人は会社や仕事にすごくハマっていて、一部の人はその逆。これが「バラつきがある」という状態です。全部ダメ、ということではありません。会社がこんな状態にある時、ベンチャーでありがちなのは、熱量が高い人のことを経営陣が可愛いがり、そうではない人には厳しく対応してしまうこと。でも、厳しく対応すれば熱量の低い人が高くなるのかというと、そうではないですよね。逆に退職する可能性が高い。

つまり、仕事の熱量のバラつきを放置していると退職率が改善しない、なかなか人材が定着しないといった悪循環が続いてしまうことになっちゃいます。

よくあるパターンは、熱量が高くない人のことを「アイツはダメだよね」と、その人の話を聞いてもいないのに一方的に判断してしまうこと。でも、話を聞かずに、思い込みだけで判断してしまうとミスをしがちです。それを避けるために、熱量が高い人からも低い人もからも、なぜそうなのかを聞いたほうがいいと思います。

―確かにそうですね。そもそも、なぜ仕事の熱量にバラつきが出てしまうんですか。

結論を先に言ってしまうと、ベンチャーに多いんですけど、経営陣の考え方がメンバーに見えないためです。経営陣の考えていることがわからない、想いが伝わってこない。こう感じているメンバーは不安になります。自分は一体、どこを向いて仕事をすればいいのか、と。不安を抱えた状態で仕事への熱量を上げるのは、しんどいですよね。

一方、熱量が高いメンバーは経営陣との距離が近い場合が多い。しょっちゅう経営陣とコミュニケーションをとっているので、経営陣の考えていることや「こんな会社をつくりたい」といった想いを共有でき、共感もしている。感情的にも非常に安定した状態です。どこに向かって仕事をすればいいのかわかっているので、仕事への熱量もおのずと高くなる。こうしたパターンが多いと思います。

「想いの明文化」が会社をまとめる

―つまり、経営陣がメンバーとコミュニケーションをとることで仕事の熱量のバラつきをなくしていくことができる、というワケですね。

半分は合っています。メンバーとのコミュニケーションは必要条件。だからといって十分条件も満たしているワケではありません。どういうことか、説明しましょう。

熱量が低いメンバーとも経営陣が直接面談してコミュニケーションをとり、会社のビジョン、ミッション、バリューなどについて想いを伝えれば、わかってくれ、共感してくれることが非常に多い。でも、こうした個別対応には限界があります。「自分の前ではいいことを言ってくれて、共感もするんだけど、ほかのメンバーには別のことを言っているんじゃないか」。そんな疑心暗鬼が生まれる余地を残しているからです。個別のマンツーマンの対話だけは十分ではありません。

―では、どうすればいいのですか。

経営者の想いを明文化するんです。社訓、ミッション、コアバリューなど、いろいろな形式がありますけど「自分たちは、こうした会社をつくっていく」ということを宣言する。それが熱量のバラつきをなくしていく第一歩です。

宣言したあとは、言行一致の努力をメンバーにしてもらいます。その際、「言行一致できていないこと」はあまり問題ではありません。むしろ、「●●したい」「●●になりたい」という宣言なので、宣言したタイミングでは言行一致できていないメンバーの方が多いかもしれません。でも、それでいいんです。大切なのは、言行一致の努力をしてもらうこと。一朝一夕にはできないでしょう。ですから、愚直に、粘り強く言行一致を働きかける必要があります。

―でも、想いを明文化したからといって、全員がそれに共感して言行一致の努力をするワケではないと思います。

明文化するねらいのひとつは、まさにそこにあります。明文化することで会社がどこに向かおうとしているのか、方向が打ち出されます。するとそれに対して「自分は共感できる」という肯定派と「そうは思わない」という否定派にメンバーが二分されるでしょう。二分されたら、あとは会社をまとめるだけです。

―どういうことでしょう。

想いが明示されていない、会社の方向がわからない場合、メンバーの意見は、それこそ十人十色でバラバラ。意見の数は無限大に増えていきます。でも、明文化すれば、二分されるとは言え、イエスとノーのふたつにまとまりますよね。

イエスとノーのふたつに社内を集約したあとは、言行一致の努力をしてくれるメンバーを増やしていけばいい。すでに言行一致ができているメンバーは厚遇するなどして、努力をすれば報われることをほかのメンバーにわかってもらうこともひとつの方法です。

一方で、どうしても肯定できない、反発してしまう、言行一致の努力すらしてくれない。こうしたメンバーもいると思います。その場合、申し訳ないけれども、その人にとってふさわしい違う場所に移ってもらうしかありません。

愚直な努力から「強い組織」が生まれる

―結構、手間も時間がかかりそうですね。

そうですね。時間はかかります。でも、こうした部分への投資は、長期的に必ず効いてきます。

結構、昔のことなんですけど、僕はサイバーエージェントの全メンバーを対象に、挑戦する企業文化をつくるために策定した「バリュー10箇条」についてアンケート調査をしたことがあります。すると、ほとんどの項目について大多数のメンバーが「共感する」「イエス」という回答をしれくれたんですが、チャレンジして失敗してもまた挑戦のチャンスを与えるという意味の「セカンドチャンス」というキーワードについて「イエス」と回答したのは2割くらいしかいませんでした。浸透していなかったんですね。

でも、「セカンドチャンスさえメンバーに浸透すれば、挑戦する企業文化をつくれる」ということが見えたので、ここに的をしぼり、セカンドチャンスの浸透に相当の時間をかけました。

―即効性だけを求めず、長期的な視点で取り組むひたむきさが大切なんですね。

ええ。理想に向かって一歩一歩、動いていくしかありません。結局、経営陣がそうした地道な努力を継続していくことが、強い組織を生む原動力になるんだと思います。


編集協力/池田園子

本連載の回答ドクター「ソヤマン」ことサイバーエージェント取締役 人事統括の曽山さんが主宰する「強い人事」を生む会員制コミュニティ、HLC(Human Resource Learning Community)がスタートしました。
詳しくはコチラ

曽山 哲人(そやま てつひと)

株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括

1974年、神奈川県生まれ。株式会社サイバーエージェント取締役 人事統括。人事関連の著書・共著書多数。最新刊は2017年7月に刊行した『強みを活かす』(PHPビジネス新書)。

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