INOUZTimes > 組織 > 会社説明会と同じ効果をもつ “ライブ感”のあるメディアをつくりました

会社説明会と同じ効果をもつ “ライブ感”のあるメディアをつくりました

採用オウンドメディア成功の法則#1

グロービス 経営管理本部長 / マネジング・ディレクター 林 恭子(はやし きょうこ)

INOUZTimes編集部
会社説明会と同じ効果をもつ “ライブ感”のあるメディアをつくりました

空前の売り手市場による採用難のなか、「採用オウンドメディア」を活用して大きな成果をあげている企業が出てきています。他社の採用メディアに頼りきるのではなく、社員のキャリアストーリーや社風が伝わるコンテンツを自社メディアで発信し、自社サイトからの直接採用やリファラル採用につなげていく新しい採用手法の登場です。そこで編集部では、採用オウンドメディアを実践し、成果をあげている企業を取材。「採用オウンドメディアの成功法則」を考えていきます。
第一回は、国内最大のビジネススクールの運営で知られるグロービス。2017年から人財採用目的のWebメディアを立ち上げ、予算を増やさずに採用人数を倍増させる成果を上げているそうです! 人財採用を統括する同社経営管理本部長 / マネジング・ディレクターの林恭子さんに、その秘訣を聞いてみました(肩書きは取材時のもの)。

100名を超える規模の採用をめざす

─まずは、グロービスさんの人財採用計画を教えてください。

年間でトータル100名を超える規模の採用をめざしています。中途採用がメインで、新卒採用はエンジニア以外はしていません。職種では、エンジニア・デザイナーなどのクリエイティブ系が20~30名、あとはビジネスサイドという構成です。

ビジネスサイドというのは、私たちが手がける大きく2つの柱となるビジネスに携わってもらう人財です。1つは経営大学院をはじめとする学校という箱をもち、運営する事業。もう1つが法人向けサービスです。組織開発コンサルティング業務として、経営課題やビジョン、5年後10年後の経営計画を実現するため、いま在籍している人財で大丈夫かを分析・判断し、目的が達せられるような人財を育てるコンサルティング業務や、パッケージ研修や様々な教育サービスを最適に組み合わせ提案するソリューション営業などです。学校事業と法人向けサービス事業は、収益的にもほぼ同程度です。

─なるほど。ただ、事業内容からすると、エンジニア系の職種を全体の3割近くも採用するのは、多い印象を受けます。

未来への投資のためです。2~3年前から新しいデジタルビジネスの開発に注力しています。EdTech、つまり「エデュケーション×テクノロジー」の分野。ITを使った新しい教育のあり方を追求し、学ぶ中身も学び方も一新。さまざまなデータを蓄積してAIで解析し、より効果的な学びにつなげていくといったことをめざしています。ですから、多くのエンジニアにジョインしてもらわなくてはいけないのです。

─エンジニアは、人財獲得の競争が激しい職種です。

その通りです。でも、ありがたいことに、EdTechという言葉に反応してくださるエンジニアの方が多いのです。自分の技術力をなんのために活かすのかを考えたとき、「世のため人のために技能を使いたい」と考えるエンジニアの方が多いことに驚いています。

顧客向けのブランド戦略の功罪とは

─では、エンジニア系・ビジネス系をあわせた人財採用において、オウンドメディア開始以前に抱えていた課題はなんでしたか。

私たちが推進したブランド戦略に功罪があって、その“罪”の部分が課題でした。小泉内閣で構造改革特区構想が打ち出されたとき、グロービスは株式会社として大学経営に参入。その後、学校法人として認可されました。当時、「グロービスMBA」「グロービス経営大学院」をブランドアンブレラとして社会に浸透させていこうと、マーケティング活動を行いました。そのおかげで、「グロービスといえばMBA」「グロービスといえば経営大学院」と多くの方に認知していただけるようになりました。ブランド戦略の功罪の“功”の部分です。

ところがその一方、人財採用の領域では、「大学院なのだから、グロービスが求めている人財は大学の職員だろう」というイメージをもたれるようになってしまったのです。「マニュアルや規則に従って業務を淡々とこなしていくような仕事をしている」と思われ、我々が求める、志を持ち、プロアクティブに動けるような人財が集まり難くなってしまったのです。

─顧客や一般社会に向けて絶大な成果のあったブランド戦略が、求職者向けにはアダになってしまったわけですね。

はい。私たちの事業では、大学院の仕事であっても、一般的にイメージされる「大学職員の仕事」とは大きく異なります。大学院で学んだ方が、学んだことを実ビジネスで活かし、キャリアアップにつなげていく。それを徹底的に追求します。実ビジネスの世界と連動し、一人ひとりのキャリアにあった「学び」を提供する、攻めのビジネスなのです。さらに、もうひとつの柱である、法人向けコンサルティング事業は、そもそもグロービスがそのようなビジネスを行っていることさえ知られていないため、人財採用に非常に苦戦していました。

そこで、採用ターゲットとなる人財にアプローチする手段として、人員をさいてなんどもなんども説明会を開き、私たちのビジネスを理解していただくことに注力していました。しかし、「このコスト感がどうなのか、効率はどうか」と、つねに問題意識をもっていました。関心のある方が必ず説明会に来るわけではありませんから、スタッフがこれほど苦労するバリューがあるのか、と。そこで、物理的に時間をかけず、説明会を開くのと同じ効果を生むことができるものはなにか考えた結果、オウンドメディアにたどりついたのです。

ステークホルダーに登場してもらう

─説明会にかわるものにするために、オウンドメディアにどんな工夫をしたのでしょう。

ライブ感をもりこむことです。めざしたのは、人事ではなく、部門のメンバー自身が会社や事業、自身のキャリアのストーリーをリアルに語っているようなメディアです。読み物としてつくっていくことを意識しました。

もうひとつ意識したのは、会社側の勝手な思いを語るだけではなく、本当にグロービスがバリューを世の中に提供できているのか。それをステークホルダーの方たちに語っていただくこと。それにより、グロービスで働くことの意義をわかっていただきたいと考えました。

─確かに、大学院で学ぶ方のキャリアアップをサポートする職種を紹介するコンテンツで、企業のコア人財として活躍している卒業生の方に登場してもらったり、法人向けのコンサルタントを紹介するコンテンツで顧客である大手企業の担当者に登場してもらったりしていますね。結果、説明会のかわりを果たせるようになりましたか。

はい。以前は会社説明会を2週間に1回の頻度で開催していました。現在は選考会を兼ねた形式のものは開催していますが、単なる会社説明を行うだけの場は開催していません。オウンドメディアを活用したため、選考会であっても事前に候補者の方がグロービスの理解をある程度、深めてきてくださっているので、採用決定までのプロセスも短縮できています。

─それはすごいですね。コンテンツの作成や撮影など、メディアの制作はだれがどのように行っているのですか。

グロービス経営大学院の卒業生で ブランディングコンサルティング企業を経営されている方とコラボして制作しました。「自分がグロービスで得たものがいかにいまの経営に役立っているか伝えたい。一緒にメディアをつくりましょう」といっていただいて。当社のことをよく知っているプロフェッショナルとコラボできたことで、とてもスムーズに進められたと思います。当社側は人事のスタッフが担当しました。

制作期間については、計画段階のところに時間をかけました。どのような方に出ていただくかの検討と、出ていただくからには納得して出ていただきたいので、説得に時間をかけたからです。メディアの話が出てから、カットオーバーまで半年くらいでした。

採用人数は2倍、リファラル採用も2倍に

─立ち上げ後の効果を聞かせてください。

年間の採用数が倍増しました。2015年の採用実績が49名、2016年52名だったのが、オウンドメディアを開設した2017年は84名に。そして2018年は109名を採用しています。採用予算はほとんど変わらないので、採用者ひとりあたりでいえば、大きく下がりました。

応募者の質も変化しました。採用面接をして感じるのは、みなさんがメディアを読みこんできてくださっていることです。「会社のポリシーや理念に共感しました」といった話は、メディア立ち上げる前はぜんぜん出てこなかったので、効果を実感しています。

また、リファラル採用の数も倍増していて、昨年採用した109名のうち約20名がリファラルです。リファラル採用への協力を社員にお願いするときは、お知り合いの方に、まずこのオウンドメディアを見ていただくよう伝えてもらうので、理解が非常にスムーズです。転職願望がそれほど高い方でなくても、興味をもっていただけるようです。

─ほかに効果を実感していることはありますか。

メディアをつくったことで、人財エージェントさんの当社に対するご理解が深まったことも大きかったと思います。より当社の求める人財像にあった方をご紹介いただけるようになりましたから。これまでは採用担当が個別にエージェントさんに説明をしていたのですが、メディアを見ていただくことで、「具体的な仕事のイメージをもやすくなった」とおっしゃっていただいています。求職者の方に対しても面接前にメディアを見ていただく案内をしてくださるなど、効果的に活用いただいたことで、採用人数が倍増という結果につながっていると思います。

事業部門にとって採用が「自分ごと」に

─オウンドメディアを立ち上げたことで、社内における変化はありましたか。

事業部門が人財採用を人事部まかせではなく、「自分ごと」として考えていただけるようになりました。どこの企業もそうですが、採用は会社の将来を決める重要な問題で、人事だけの問題ではありません。とはいえ、なかなかそうした意識をもつのは難しい。でも、オウンドメディアというツールができたことで、意識の変化が生まれてきたように思います。「ウチの部門ではこういう人材がほしいので、ここをぜひ取材してほしい」と、事業部門の担当者から提案してくれるようになったからです。人財採用は事業部門の「自分ごと」であり、人事はその最強のパートナーとして、タッグを組んでやっていく。そのとき、使えるツールとしてオウンドメディアがある。そんな感じですね。

─メディアにアップしたコンテンツのマーケティング展開では、どのような手を打っていますか。

新しい記事をアップしたときは、SNSで社員にシェアしてもらっています。当社はSNSを使っている社員が非常に多いので、シェアしてもらう文化が育っています。また、エンジニア向けのコンテンツの一部は、エンジニアが知識を共有するサイト『Qiita』にも転載。それをさらにエンジニアの社員がSNSでシェアすることで広げています。

マーケティングにとくにお金をかけることもなく、自然発生的に広がっていっていますね。もともと会社として、社員がフェイスブックやツイッターなどで、自分の仕事などについて発信することを奨励してきました。リクルーティングについてもそれがはたらいているのです。

─今後の運用方針について聞かせてください。

「ストーリーを感じていただく」というコンセプトは変えずに、採用ターゲットにあわせて、着実にコンテンツを積み上げていきたいと思っています。「月に○本アップする」といったことは決めていません。それが目的になってしまうと本末転倒だと思っているからです。ひとついえるのは、動画コンテンツをつくりたいですね。部門の方たちから「活動を動画で発信したい」という要望が出ていますから。なるべく早く実現していきたいと考えています。

関連記事

※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。

INOUZTimesの最新ニュースをお届けします
INOUZTimesの最新ニュースをお届け!

公式アカウントをフォロー

ベストベンチャー100 注目の西日本ベンチャー100 ベンチャー通信 経営者通信 TECHBLITZ ヤッパン号 人財力Woman
ベストベンチャー100 注目の西日本ベンチャー100 ベンチャー通信 経営者通信 TECHBLITZ ヤッパン号 人財力Woman