「自己解釈」の余地を残さない
私たちはルールの中で生きています。誰も信号を守らないとしたら、毎日、大混乱が起き、社会は麻痺します。仕事にルールがない場合、つねに「伝票の書き方はこれでいいのか」「日報を書くべきか、書かないべきか」くだらないことでもいちいち確認が必要となり、膨大なムダな時間が発生します。
ルールがないと人は何をし始めるか。すべてが自己解釈になり、「これぐらいなら大丈夫だろう」という考え方が蔓延します。組織として危険な状態です。
しかし、意外と自己解釈が入り込む、曖昧なルールしか設定していない会社が少なくありません。会社のルールをつくる場合、認識のズレが生じない、自己解釈の余地がないものでなくてはなりません。
「大きな声で挨拶しましょう」というルールを設定するとします。しかし「大きな声」といっても人それぞれですから、これは自己解釈の余地がある曖昧なルールだと言わざるをえません。
この場合、たとえば「フロアの一番奥にいる人に聞こえる大きさの声であいさつしましょう」といった具体的な基準を設けることで、自己解釈の余地も認識のズレもないルールとなります。
「姿勢のルール」と「行動のルール」
会社のルールで押さえておくべきキモは「姿勢のルール」と「行動のルール」です。
「姿勢のルール」とは、挨拶や身だしなみ、あるいは出社時間といった、直接は業績に連動しないもの。「行動のルール」とは、売上目標や訪問件数、製造会社なら品質基準など、業績に直結するものです。
また、能力に関係なく、やろうと思えば誰でもできることが「姿勢のルール」、能力と連動するのが「行動のルール」だとも言えます。
たとえば「姿勢のルール」である身だしなみは、10年選手も昨日入った新入社員も、守ろうと思えば誰でも守れるルールです。できない理由はないので、「姿勢のルール」を守れなかった場合は、しっかり指摘しなければいけません。
一方、たとえば「行動のルール」に属する売上目標は、個々人の能力やキャリアによってできるかできないかの差が生じます。したがって、「行動のルール」の未達者を厳しくとがめると相手は落ち込むばかり。できなかったことを責めても仕方がないので、その要因を特定して改善につなげていかなければいけません。
こんな対応は間違い!
「姿勢ルール」と「行動のルール」における未達者への接し方の差。これがマネジメントの本質です。しかし、この2つのルールを混同している、あるいは取り違えている会社が非常に多いです。
売上未達も挨拶ができないのも同じように厳しく叱る、もしくは両方に甘いという両極端な社長や上司が少なくありません。あるいは、挨拶をしない社員は見て見ぬフリで、売上未達者は厳しく詰めるとか。
正しいマネジメントが会社を成長させます。「姿勢のルール」と「行動のルール」を分けて考え、それぞれ正しい対応を行わなくてはならないのです。