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2017/2/23

タリーズ創業者・松田氏に政治のホントのところを聞いてみた

~永田町という「月の裏側」に行ってきたからこそ見える風景とは~

タリーズコーヒージャパン創業者 前参議院議員 松田 公太(まつだ こうた)

タリーズ創業者・松田氏に政治のホントのところを聞いてみた

PHOTO:INOUZ Times

「トランプ当選」のニュースが世界を揺るがした渦中の昨年11月にリスボンで開かれたWeb Summit。この会場でアメリカ大統領選挙の開票結果を知ったシリコンバレーのベンチャーキャピタル・500StartupsCEOのデイブ・マクルーア氏が「起業家よ、戦おう。さあ、スタンド・ザ・ファッ〇ン・アップだ!」と目を吊り上げて怒り狂い、咆哮している動画が話題になりました。政治を語ることをタブー視せず、ぐいぐいコミットするシリコンバレーの起業家たち。「それに比べて日本の起業家は、どこか政治に対して醒めている。でも、閉塞する政治を活性化するためには、起業家の役割が大きいんですよ」とタリーズコーヒージャパン創業者で昨年まで参議院議員を務めた松田さんは指摘します。それって、どういうこと!? 松田さんに起業と政治について、ちょっとだけ踏み込んで聞いてみました。

永田町にフツーの感覚がない理由

―起業家から政治家へ、そしてまたビジネスの世界へと、松田さんは日本では希少な経験をした経営者だと思います。

確かに、私にとって貴重な経験になりました。アメリカでは「リボルリング・ドア(回転ドア)」と言って、民間から政治や行政の世界に入り、政権交代などにともなってまた民間に戻るのは一般的なこと。日本もそうなればいいんですけどね。

―日本では出入り自由の回転ドアどころか、とりわけベンチャーと政治のかかわり方は、地球と月の裏側みたいな距離感がありますよね。はるか天空にあり、しかも見上げているだけでは見えようがない裏側というか。

だから月の裏側、なんですね。確かに。ウマイこと言うなぁ(笑)。

―ありがとうございます(笑)。で、そんな松田さんだからこそ見えた風景があるはず。それを聞きたいなぁと。まず、民間から政治、そしてまた民間へという人生経験をしたことについて、どんな感慨をもっていますか。

政治意識はほかの起業家より強かったのかもしれませんけど、自分自身が政治家になるなんて思ってもいませんでした。

しかし、国に身を投じ、政治家でなければ成し遂げられない改革を実現することもできましたし、よくも悪くも、この国の仕組みを理解できたことは、大きな財産となりました。

―安保法制では松田さんが代表を務めていた「日本を元気にする会」が提出した修正が反映されましたね。

原案では内閣の一存で自衛隊の海外派遣を決められることになっていました。これは問題だなと思い、国会を通さないと海外派遣できないとする修正を提出したんです。これって、フツーの感覚だと思うんですよ。

当時、安保法制についての世論調査などを見ると賛成と反対が拮抗していました。それなのに誰のチェックも受けずに政府が自衛隊の海外派遣をどんどん進めることができるなんておかしい。

基本的に私は自衛隊の海外派遣に道筋をつけるべきだと考えていましたけど、国民の意識は分断されているのに誰かの胸先三寸で決定されるようなものであってはならない。

これが私たちが提出した修正の趣旨です。でも、こうしたごく当たり前の感覚が、既存政党からは出てこないんです。

―なぜ既存政党から “当たり前の感覚”が出てこないんですか?

永田町ではあらゆるものごとが党利党略、選挙対策を基準に進められるからです。安保法制でいうと自民党などの与党は賛成、野党は反対で歩み寄ろうとしない。

なぜかというと、賛成反対でわかりやすく色分けされていたほうが、次の選挙に有利だからです。くわえて、世襲議員が多いことも関係しているように思います。

安倍内閣の世襲率は50%とも言われていましたが、こんなことはほかの先進国ではありえません。

世襲議員にとって優先度がもっとも高いのは、いわゆる“地盤と看板”。選挙区での地元組織と一族の知名度を子々孫々に継承していくことを最大のミッションとしている。

こうした二世三世議員たちは、みなさん同じような育ち方をしているので、考え方も似たり寄ったり。そんな画一的な価値観を持っている人たちの集合体では多様で活発な議論は生まれにくいんです。

日本社会でオープンに話せるのは起業家だけ

PHOTO:ACworks

―ビジネスの世界でも人材が画一化している企業からは、イノベーションは生まれにくいですよね。

ええ。民間での経験を活かして国のために働くことが可能なアメリカの「リボルリング・ドア」とは、単に人の出入りを指すのではなく、多様なナレッジの循環のことを言うんです。こうした循環が日本の政治にも必要で、その鍵を握るのは起業家。私はそう思っています。

―起業家は政治参画せよ、立候補せよ。そういうことですか。

いえいえ。政治家を志す起業家がもっと増えてもいいとは思いますが、私が言いたいのはオープンに政治を語れる文化を日本にも根づかせるためには起業家の役割が大きい、ということなんです。

今回の大統領選挙でも見られた光景ですが、アメリカでは経営者や芸能人など、だれもが自由にオープンに政治を語っていました。

一方、日本ではどうか。大企業が加盟する経済団体の政治介入が取り沙汰されることはありますが、大抵の大企業トップはサラリーマン社長で自分が属する組織や業界を守りたいという意識がありますから、開かれた政治とはかけ離れてしまいます。

―それでは起業家はなにをせよと。

こうした日本社会において、唯一、政治についてオープンに、自由に発言できるのは起業家しかいないと思うんです。

金融や薬品関連のECなど、規制業種で勝負している起業家は政治に対して気を遣わざるを得ないこともあるでしょうけど、そうではない大多数のベンチャー起業家は規制もなにも関係ない。ですから、本来、自由に政治を語れるはずなんです。

でも、なんとなく、みなさん政治と距離を置き、ノンポリを決め込んでいるように見えます。心の中では「もっとこの国をよくしたい」「社会をよくしたい」「そのためにはこんな政策が必要だ」と思っていても、口を閉ざしている。そんな風に感じます。

―ひとりの起業家が発言してもなにも変わらないし、叩かれたりするのがイヤなんだと思います。

その気持ちはわかりますよ。でも、日本のような一定程度成熟した社会で起業する原動力って、金銭欲や名誉欲ではないと思うんですね。

苦しくてひもじい幼少期を送った、だからお金を儲けるためだけに起業した。そんな人は少数でしょう。

それよりも「社会をよくしたい」「国をよくしたい」という強い信念で起業した人の方が多いんじゃないかな。そうした人たちなら、当然、日本の政治状況について自分の考えをもっているはずです。

起業家たちが自らの志に基づいてオープンに政治について語り、国民がその意見を参考にする。そんな世の中になれば、社会も、もっとよりよい方向に発展するはず。政治と経済は車の両輪なので、それが当たり前の姿でもあるんですよ。

―社会を変革していくためには経済だけでは限度がある、というのはその通りかもしれません。

それと、多くの経営者には、主義主張ではなく現実を直視して決断する習慣がありますよね。

たとえば私のことでいうと、安保法制については必要性を感じていて、原発については反対ではあるけれども即時運転中止ではなく、中長期的に廃止し、時間をかけて自然エネルギーにシフトしていくべきだと考えています。

しかし、いまの日本の政治の世界ではライトウィングに属しているなら安保法制も原発も賛成でなければいけないとされる。

私のように安保法制は賛成だけど原発は反対と言っていると、発言の中身ではなく「松田は一体、どっちの側なんだ」とライトウィングからもレフトウィングからも批判される。

しかし、起業家はどちらの陣営に属しているワケでもなく、自由な立場、“フツーの感覚”で発言ができます。それこそが多くの国民が参考にしたい意見なんです。

ベンチャーも実は政治と密接な関係にある!?

PHOTO:INOUZ Times

―でも、政治について発言したら、なにか面倒なコトに巻き込まれそうな気がしたりするんですけど。

事業を通じて社会をよくしたい、この国をよくしたいという志をもって起業したのならば、政治を避けて通ることはできないはず。もっと政策について発言をしていかないと社会は変わりません。

―どういうことでしょう。

たとえば、国は「女性の活躍」を推進していますが、スローガンを唱えているだけでは状況は変化しませんよね。

なかなか進まない理由のひとつに男性の家事や育児への参加率が低いことがあげられますが、女性を家事から解放し、社会進出をうながすために、それを下支えする民間サービス、たとえば家事代行を利用するのもひとつの方法ですし、そういった業種の発達が必要と考えています。

しかし、一方で家事代行の仕事をしたいと考えている人材はもともと少なく、とくにいまは事実上、完全雇用が達成されているため、人材不足にますます拍車がかかっています。サービスを拡充したくてもできない状態なのです。

そうであれば、海外から人材を獲得するということも考えられます。つまり、「女性の活躍」の実現には移民政策も関係してくるのです。

政界引退後、私は家事代行サービスのベンチャー企業で社外取締役を務めているので、いろいろ考えてしまうのですが、社会をよりよい方向に変えていくためには、民間企業や起業家が建設的な政策提言や発信をすることが、とても大切なんです。

―松田さん自身は今後、政治とのスタンスをどうしていくつもりですか。

私も「社会をよくしたい」「日本をよくしたい」との志をもって起業したひとり。ですから、意図せずとも政治的な発言を自然体で続けていくと思います。政治の世界に入ったからこそ「社会をよくするために必要だ」と気づいたビジネスも立ち上げていきたい。

そのひとつとしてバイオエネルギーのベンチャー企業を設立しました。FIT(固定価格買取制度)の制度改正などにより経営状態は大変ですが、これはなんとしてもでもやり続け、いずれ全国展開したい。

志を実現するためには政治とのかかわりを避けて通ることはできないし、避けてはいけないと思っています。

編集後記

政治情勢の変化が社会を直撃するような不安定な新興国・後進国とは事情が異なる日本社会。日々の経営のなかで政治を意識する経営者は、きっと少数でしょう。しかし、「起業家出身政治家第1号」といわれる松田さんが指摘するように、「社会をよくしたい」という想いを実現するためには、コトの大小は別として、政治や行政と向き合わなければいけなくなる場面が生じるのは事実だと思います。シリコンバレーの起業家のように熱く政治にかかわる必要はないのかもしれませんが、政治をことさら無視したり、わからないものとして遠ざけるのではなく、「わがごと」としてとらえなおしてみる。そこから新しい価値が生まれるのかもしれません。

松田 公太(まつだ こうた)

タリーズコーヒージャパン創業者 前参議院議員

1968年生まれ。5歳から17歳までの大半を海外で過ごす。90年筑波大学卒業後、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)を経て、97年にタリーズコーヒー日本1号店を創業。翌年タリーズコーヒージャパン(株)設立。2001年に株式上場を果たす(04年MBOにより非上場化)。300店舗超のチェーン店に育て上げ、07年同社社長を退任。同年、世界経済フォーラム(ダボス会議)にて「Young Global Leaders」の1人に選出される。08年、シンガポールへ拠点を移し、飲食事業を中心に数々のビジネスを手掛ける。09年 Eggs 'n Things (エッグスンシングス)の世界展開権(米国除く)を取得し、EGGS 'N THINGS INTERNATIONAL HOLDINGS PTE. LTDをシンガポールに設立。日本では10年に原宿1号店をOPENさせ、「パンケーキブーム」の火付け役となった。同年、参議院議員選挙で初当選(東京選挙区)。16年の議員任期満了後は、飲食事業の海外展開や自然エネルギーの事業など精力的に活動中。主な著書に「愚か者」(講談社)、「すべては一杯のコーヒーから」(新潮社)などがある。

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