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社会を支えているのは起業家であり、 スタートアップであり、ベンチャーである(前編)

創業から1年で上場を果たした松本氏が思う“大切なこと”

マネックス証券株式会社 代表取締役会長CEO 松本 大(まつもと おおき)

社会を支えているのは起業家であり、 スタートアップであり、ベンチャーである(前編)

2016年7月、成長企業の経営者約460名が一同に会する経営者イベントBestVenture100 Conference 2016が開催され、基調講演としてマネックス証券株式会社松本氏が登壇。創業から17年の経営者人生を振り返り、経営者が持つべき信念や忘れてはいけない視点を語った。

[概要]
BestVenture100 Conference 2016
2016年7月25日(月)
主催:イシン株式会社
協賛:SMBC日興証券株式会社/三幸エステート株式会社/有限責任あずさ監査法人/アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド/株式会社オービックビジネスコンサルタント/株式会社プロネット

“未来からやって来た金融機関を作りたい”そう想ったのが起業のきっかけです

私自身、ベンチャー論であるとか経営学というものは一切勉強したことはありません。また、マネックスという会社を17年間経営しておりますが、経営者としてもまだまだ未熟だと思っています。なので、基調講演という立場でお話しするのが大変恥ずかしい部分もございますが、ご指名を頂きましたので今回は私自身が経験してきたことを経験談としてお話しできればと思います。

まず、ベンチャーやスタートアップ、何でもいいのですが会社を経営していく上で理念や価値観というものは常に大切になってくるものだと思っています。もちろん、理念・価値観だけで会社が作れるものでもないし、成功するものでもないけれど、やはり元となる理念というものは大変重要になると思います。

少し話が変わるのですが、皆さまは1968年にスタンリー・キューブリックの撮った映画で「2001年宇宙の旅」というSF大作をご存知でしょうか。この映画が公開された1968年は2001年というのは「未来」でした。本作は当時の「未来」である2001年に人類よりも高い知能を持ったコンピューターが出来た、という物語です。

この主役のコンピューターの名前が「HAL」といいます。スペルで言うと「H」「A」「L」です。真相は本当かどうかわかりませんが、これはかの有名企業「IBM」の、それぞれ「I」「B」「M」のアルファベットを1個ずつ前に戻して「H」「A」「L」として、“未来のコンピューターである”という意味合いがあったと言われています。

実は、我々マネックスというのも「MONEY」の「Y」を同じように1個前に戻し、「MONEX」とすることで新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインして提供して、未来から来た金融機関のようなものを作りたいというように考えて会社を創ったのです。

会社を始めた最初の5年くらいは、かなり突き進んでいました。しかし、最近はまだまだ理想に手が届いていないなと反省しております。ですので、もう一度イチからしっかり実現していきたいと考えている今日このごろです。

私は大学を出てからずっと金融業界で働いてきました。ソロモンブラザーズやゴールドマンサックスというアメリカの投資銀行です。資本市場という中にどっぷりつかって生きてきました。

そこで感じたのが、日本には資本主義という概念が本質的に浸透していないなと。資本主義というのは正しく使われればとても良いものなのだけれども、日本ではしっかり機能していない。あるいは「正しく使うことができれば良いものだ」という理解があまりされていない。

私にはそれが大変悔しかったのです。これではいけないと感じました。資本市場の正しい在り方を実現していき、社会に訴えていこうという想いがマネックス創業に至った根底にあります。

また20年位前の話ですが、日本の金融機関は不良債権など数多くの問題を抱えていました。きれいな水からしかおいしいお酒は造れないように、多くの問題を抱えた金融機関が、性能のいいお金・商品を作れるのかと疑問に思っていました。

大きな金融機関が様々な問題を抱え身動きがとれないのであれば、0からベンチャーとして始めた方が低いコストで性能のいいお金や金融商品、サービスを提供できるのではないかと考えました。そして、1998年にマネックスを着想し1999年に起業をしました。

生活を変えることはとても難しい。ただ、ソニーは大きく生活を変えた

当時は今と比べると環境が大変厳しくて、お金がほとんど集まりませんでした。マネックスを創業した際には私が個人保証で、ソニーと半々ずつ出資して会社を作りました。普通にお金を借りたり、ベンチャーキャピタルのようなものから出資してもらったりするにも、個人保証が必要な時代でした。

ですから、それに比べると今の方が断然楽になってきていると思います。起業前はゴールドマンサックスで働いていましたが、当時はそれほど有名ではありませんでした。そういった中で新しく個人向けにインターネットを使って証券会社を作るという発想をだれも信用してくれませんでした。そういう状況下でした。

0からベンチャーで、しかもインターネットという新しい技術を使ってお客様のお金の管理をする。技術によって個人の生活が変わるという今までとは違う体験を理解してもらうことはとても大変でした。そもそも生活を変えるということは非常に困難な仕事です。

例えば、今も昔もあまり変わらないことってたくさんあると思います。通勤とかも相変わらず混んでいたりとか、あまり変わっていない。

当時、あまり変わらないものが多い中で、エレキの世界で画期的な出来事が起きました。その仕掛け人の1つがソニーだったのです。テレビ局に入らなければ動画というものを撮影するのが不可能だった当時、ソニーがハンディカメラなどを出したことで、だれでも動画を撮れるようなりました。

技術によって個人の生活を良くしたという体験・経験を提供したのがソニーです。そんな歴史のあるソニーならば私の考えているマネックスの想いを汲んでくれるのではないかと思い「出資してほしい」という話をはじめました。

最初ソニーからは完全小会社でやってくださいよと言われていました。つまり松本0%:ソニー100%でやればいいじゃないかという話です。そこから交渉を続けました。途中で私が49%:ソニー51%という話も出ましたが、それを全部断わり、松本50%:ソニー50%という状態で会社を始めました。後日談ですが、そのあとの交渉で松本51%:ソニー49%になりました。

今から20年前はとにかくめちゃくちゃな状況でした

マスコミとの戦いもたくさんしてきましたね。

今現在、当社から約70万通配信しているマネックスメールというEmailのメルマガがあります。実はこれ、創業直後の開業前夜段階でメールの誤配信をしてしまったことがあるのです。

当時は創業したとはいえまだ海とも山ともわからない状況です。お客さまも来るか来ないのかわからない状況でお金も全然ありませんでしたので、まずはメールマガジンで集客をしていこうという戦略を立てていました。

そしたらあっという間に人気が出ました(笑)。3日くらいで登録者が1000人くらい集まりました。そして、その時に事件が起こったのです。

当時の編集長がBCCに入れるはずのアドレスを本文に貼ってしまいましてた。1000人に1000人のアドレスを送るという事故です。すぐさまウェブサイト上にお詫びを出し、再発防止の対策も全部やりました。しかしメディアには連日連夜、記事が出てしまいました。

それで終わればまだ良かったのですが、1ヶ月ぐらいしてから大手新聞社の方が来て、またいろいろ聞かれました。「メールアドレスを漏洩しましたよね」「はい、しました。ただ、これについてはすべて発表をしてウェブサイトにも書いてありますし、こういったことがあって申し訳ないという事ですべて対策を打ちました」というようにお伝えました。

ただ、私の伝え方と先方の捉え方にギャップがあったようです。「松本さんは全然お客さんのことを大切にしていないのだろう」と決めつけられてしまい、結局それが次の日、その全国紙の1番目立つ所に「マネックス、個人情報を漏らした」という記事が掲載されてしまいました。1か月前の出来事で沈静化しているにも関わらず、大手新聞社にとっては「昨日判明した」ということだけで騒動をぶり返すような記事を出されてしまったのです。

また、それからさらに1ヶ月くらい経ったある日のことです。我々が新しいオンライン証券の開業の日を迎える際にもメディアは私のもとにやってきました。手数料完全自由化のタイミングでした。

私はそのメディアに対してかなり辟易していたのであまり話はしたくなかったのですが、宣伝のためと思い取材を受けました。

その取材が終わって帰るときに、その記者の方が信じられないことを言いました。「メールを誤配信した方、自殺なんてしてないでしょうね」と。この人は自分が書いてきた記事で自殺を導くという予見があったのかと。昆虫のように緑色の血が流れているのではないかと思ったのですが、喧嘩しても仕方がないので、お引き取りくださいとその場は返しました。そんなことが数多くありました。

今から20年前はとにかくめちゃくちゃな状況でした。ベンチャー企業ができるとすぐにブラックジャーナリストが来るとか。そんなことが頻繁に行われていた時代です。とにかくそんな状況なので、少しのトラブルで企業存続が危ぶまれる、そんなことが繰り返されてきた中でマネックスは成長してきました。

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