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社会を支えているのは起業家であり、 スタートアップであり、ベンチャーである(後編)

創業から1年で上場を果たした松本氏が思う“大切なこと”

マネックス証券株式会社 代表取締役会長CEO 松本 大(まつもと おおき)

INOUZTimes編集部
社会を支えているのは起業家であり、 スタートアップであり、ベンチャーである(後編)

2016年7月、成長企業の経営者約460名が一同に会する経営者イベントBestVenture100 Conference 2016が開催され、基調講演としてマネックス証券株式会社松本氏が登壇。“前編”では、創業時にあった不祥事を乗り越え、起業やベンチャーの社会的意義を語ってもらった。後編では、「経営者のあるべき姿」を松本氏の視点で語る。

[概要]
BestVenture100 Conference 2016
2016年7月25日(月)
主催:イシン株式会社
協賛:SMBC日興証券株式会社/三幸エステート株式会社/有限責任あずさ監査法人/アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド/株式会社オービックビジネスコンサルタント/株式会社プロネット

アイデアよりも、継続することの方が重要

ただ、起業して経営していくには、生き残らなければいけない。よく「僕はこんなアイデアがあります」という話を聞きますが、それに関して二つの伝えたいことがあります。

1つは、日本中、世界中で自分が1番はじめにそのアイデアを思い付いたという確率は極めて低い。ましてそのアイデアを考えた中で自分が1番優秀だという確率は、ほぼゼロ。間違いなく自分よりも優秀な人間が、自分より早く同じアイデアに気づいています。おそらく99.999999…%くらいそうだと思われます。人間は何十億人といるわけですからね。ではどうすればいいか。早く生まれて早く思いつかなければダメかというとそうではない。

そこで、2つ目に伝えたい事が、継続するということです。ほとんどのそういうアイデアは継続ができないのです。途中でやめてしまう人が多い。この継続するかしないかが非常に大切で、このアイデアで社会や人々の生活を変えられるのだと着想しても、継続させながら規模を拡大していかないと、何も変えられない。

そして、規模を持つためにはやはり継続していかなければならない。なので、継続するという事が一番重要だと思います。アイデアよりも、継続することの方が重要ということです。継続する仕組みづくりにおいて重要なのは、ビジネスアイデアではなく、ビジネスモデルです。

エジソンが、発明は1%のひらめきと99%の努力であると言いました。例えば、後述しますが将棋の羽生善治さんが全くその通りで、アイデアよりもそれをいかに継続していくかがはるかに難しく、はるかに重要です。ビジネスモデルとはまさにそのことです。あえて付け加えるのであれば、正しくて賢い資本政策も継続のために重要であると思います。

生き残るためにどういうことが重要であるかについて、私自身の経験から感じてことをお話ししたいと思います。

理念はクリアで高い位置で持とう

まず1つは理念。冒頭にマネックスという社名に込めた想いをお伝えしましたが、理念はとても大切です。ベンチャーとかスタートアップは基本的に小さい所帯で始め大企業と競っていきます。少なくとも自分たちのベクトルは合わせて全力でぶつかっていかないと、勝てませんよね。

2人の人がいて、2つのベクトル、2つの矢印があったとする。ベクトルの長さをスカラというのですが、この2人が同じ方向で働けばスカラは2、ベクトルも2。この2人が逆向きで働くと、スカラは2、ベクトルは0になってしまうのです。要は構成員の働く方向を同期しないと力が出ない。

昔よく思ったのが、北極点を挟んで2人が向かい合って立つと2人とも北極点を向いているが、実は二人は全く逆の方向を見ている。北極点が真ん中にあって、お互いが挟んで向かい合っている。2人とも北を見ているが、2人とも180度逆の方向を見ていることになってしまう。要はみんなのベクトルを向かせる目標をあまり近くに置きすぎてはいけないのです。そこに向かわせることができても、上から見るとみんながちぐはぐな動きをしてしまっている。

そして、理念をクリアにもつことはベンチャーやスタートアップでさえ難しいのに、大企業ともなってくるとより難しくなっていくものです。いろんな事情が絡み合って分からなくなってきてしまうのです。しかし、少なくともベンチャー企業としては、クリアでなるべく高い目標をもつことが、続けていくうえで大切なことであると私は思っています。

コミュニケーションの本質を理解しよう

2つ目はコミュニケーション。ビジネスというのは、主役はいつも相手です。どんなに良いものをつくったとしても、相手が買ってくれなければ意味がありません。すべての主役は相手である。なので、相手に理解させることができて初めてコミュニケーションであるといえます。

こちらが何か言っても言わなくてもよくて、相手に自分の言いたいことを理解してもらい、相手を行動させることがコミュニケーションです。コミュニケーションは「相手に視点がある」ということですね。

ビジネスも全くその通りで、相手が主役である。お客様が価値を認めてくれて使ってくれてなんぼだよと。ということは、お客様とコミュニケーションし、お客様が何を欲しがっているかを理解することが大切です。

変化を求めながら、軌道修正をしよう

3つ目は軌道修正。先ほどお伝えした通り、種というのは、突然変異が起きると1万年から10万年くらいまでその種は繁栄します。そして次の突然変異体に乗っ取られ、それがまた繰り返されていきます。

ところが、ビジネスの場合はその限りではありません。ビジネスは真似し放題なので、誰かが1回正しい突然変異を起こしても、すぐに競争相手はそれを真似することができる。またお客様のニーズも常に変わっていってしまう。あるとき、新しい環境にあったものを作ったとしても、もう次の瞬間にはお客様の欲しているものは変わってしまっているかもしれない。そうすると、それに合わせてもう1回突然変異をしなければいけません。

そういうことを考えると、種とは違ってビジネスの場合では、常に新しい変化を求めなければならなく、常に軌道修正しなければならない。

例えば、太陽系の外まで飛んでいったボイジャー2号という宇宙船だって、初速度と角度が噛み合って発射が成功し、そのまま正しく木星行ったり土星行ったり冥王星に行ったわけではありません。常に情報をとりながら軌道修正しているから遠くまで行けるのです。当たり前の話ですね。

だから、情報をとりながら軌道修正していくことが大切だという風に思っています。

陳腐化する自分を受け入れよう

4つ目は自己旧体制の自覚。私はいま52歳ですけれども、起業した時は35歳でした。当時日本人の単純平均年齢は40歳ぐらいでした。ざっくりとお客様の中心が35歳~40歳とすると、当時の私は加齢するたびにだんだんそのお客様の中心に近づいていく。

自分は毎年1歳年を取る。35歳から36歳に。ターゲットである社会の中心は、平均年齢ですから40歳が40.2歳ぐらいにしかならない。自分は1歳年をとるが、平均年齢は0.2歳しかあがらない。

そうすると、私は中心にむかってどんどん近づいていって、そのあとはドップラー効果のようにどんどん離れていってしまう。

どんどん社会の中心から離れていってしまう一方で、私は創業者であって経営者でもあります。17年間ずっと経営してきていますし、会社の中で誰よりもオンライン証券のことを分かっていると思っている。中心から離れていっても、大丈夫だと考えてしまう。

ただ、まだ平気だと思っていてもいずれはボケていきます。数学的帰納法的な考えですが、いずれボケるんだったら、そのちょっと前からボケは始まっています。そうするとその前だって少しはボケている。そういう風に考えると、自分だけは例外で、陳腐化していかないということはなくて、必ず自分も陳腐化していくのです。

しかし、そのことに経営者として自分が中心でやっていると気づかない。とても危険なのが、自分の経験が増え、権力も増え、いざというきの言い訳もすごく上手になり、社会的影響力も出てきたりしたときです。自分が陳腐化していっている事を受け入れられないことなのです。

マーケットのお客様全体が離れてきていることをしっかり自覚しなければなりません。そして次世代に経営を繋ぐとか、繋がないまでも若い社員を入れていくとか、自分は陳腐化していっても会社という組織は陳腐化していかないような工夫が大切だと思います。

クレイトン・クリステンセンという人が提唱した、破壊的イノベーションという言葉があります。競合他社に対する攻撃だけじゃなくて、組織の中でもディストラクションを起こしていかなければ、組織は硬直化して、頭でっかちになっていってしまうということです。

ただ、これは私が常に思うことなのですが、人間とは弱い。人間は陳腐化していく。人間は怠けてしまう。自分が経営者であるとか、自身の持つ権力が強ければ強いほど、経験が長くなるほどごまかす手を覚えてしまう。

なので、常に組織を壊すような仕組みが必要なのではないでしょうか。

創業当時の好奇心、今もまだ持っていますか?

様々なお話しをしましたが、継続するために必要であると考えてきたことはいろいろあります。ただ、いろいろある中で1番大切なことは好奇心だという風に私は思います。

いま、ここに400~500人の方がいらっしゃいますよね。

例えばいまから今日の日経新聞を皆さまに配ります。その中に1か所だけ「仕事」という単語があるので、それを見つけてくださいとお願いしたとします。皆さん、探してくれと言っても見つけようとしないですよね。もうこんな時間だし、いい加減にやめてくれよと。そのうち居眠りする人も出てくるかもしれません。ところが、同じ新聞を同じ皆さんに配って、「最初に見つけた人に400万円あげます」と言ったら、誰かすぐ見つける。

同じ情報で、同じモニターで、同じCPUを使っているけれど、全く違う結果が出ます。これはまさに好奇心やモチベーションが成せる技であると思います。

先ほどから申し上げてきた、突然変異をし続け生き残り続けるために必要な継続するということの大切さや理念をクリアに高く持つこと、コミュニケーションを社員とお客様にとること、情報をとりながら常に軌道修正をすること、自分の陳腐化を自覚してそれに対応することなどは、言われたらそうだよねと思われると思うのです。しかし、それを実行に移せるとは限りません。

ただ、ひとつ明らかなのは、自分の競争相手が自分よりも仕事・ビジネス対して高い好奇心を意識して持ち続けているとしたら、必ず負けます。自分の会社よりも競争会社のほうがそのビジネスに対して好奇心を持っている、あるいは自分自身が創業時と比べて好奇心が弱くなっているとするならば必ずダメになっていきます。

だから好奇心が1番大切。好奇心さえあれば人間がもっているいろいろな能力を目覚めさせ、動かすことができるという風に思います。好奇心を高く持ち続けるのはなかなか難しいと思います。ただ申し上げたように、現在もっている好奇心が、競争相手に負けてしまうとビジネスで負けるというのはほぼ確実で事実です。それを認識するだけでも、好奇心がやばいと思って、元へ戻るのではないかと思います。

いま持っている好奇心を確かめる方法は、自分が過去の自分に比べてどうだろうというのを幽体離脱して俯瞰的に見ればいいと思います。毎日忙しく過ごしていると、自分は何をやっているのだろうと思ってしまうことがあるかと思います。そこで幽体離脱して上から自分を見るようなイメージで「本当にお前は出来ているか」「昔と比べてどうだ」「他者に比べてどうだ」と自問自答するといいでしょう。そういう風に見てみるといいと思います。最近ではこのことをマインドフルネスと呼ぶそうです。

私は起業家を応援している

例えば、羽生善治さんという将棋の天才がおります。羽生さんがこんなことを言っております。

才能とは継続できる情熱である。

私はこの言葉が本当に好きなのです。私が実際17年間で会社を経営してきて感じたこと、思ったことが凝縮されています。

最後に、これも羽生さんの言葉に尽きるのですけれども、人それぞれ物事を続けるにはスタイルというものが必要で自分のスタイルが大切です。

自分が他人の大きい靴を履いたって遠くに歩けないですよね。自分は自分の靴を履かなければならない。自分のスタイルでやることが、自分で遠くまで行く方法なのだと思うのです。

ただ、自分の考えを押し付けることが良いというわけではありません。先ほども申し上げた、継続する秘訣としてあくまで私が思ったことであります。皆さんがどういう風に考えやっていくかは別だと思っています。

自分に合った靴、つまり自分に合ったスタイルというものを見つけて、ずっと続けて先まで行くことが大切だと思います。

起業、ベンチャーというのは社会の大切なプロセスであるし、それを担う人たちというのは大変重要な役割があると思うので、ぜひ頑張ってほしい。冒頭でも伝えた通り、まだまだ自分自身成功したわけでもないので、恥ずかしいのですが、私自身の経験則から少しでも皆さまのお役立ちになればと思いお話しをさせていただきました。

また何かの形でお手伝いとかできることがあったら、喜んでお手伝いをしたいと思っています。

“前編はこちら”

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