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上場までは長く辛い日々でした

国内旅券販売の業界最大手エボラブルアジア吉村氏が語る“IPOのホントのところ”
INOUZTimes編集部
上場までは長く辛い日々でした

2016年7月、成長企業の経営者約460名が一同に会する経営者イベントBestVenture100 Conference 2016が開催され、2016年にIPOをされた経営者が、その実際を語り合った。
※本記事は株式会社エボラブルアジア吉村氏のパートになります。

[概要]
BestVenture100 Conference 2016
2016年7月25日(月)
主催:イシン株式会社
協賛:SMBC日興証券株式会社/三幸エステート株式会社/有限責任あずさ監査法人/アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド/株式会社オービックビジネスコンサルタント/株式会社プロネット

[セッション]
IPOのホントのところ

[スピーカー]
株式会社エボラブルアジア
代表取締役社長
吉村 英毅

株式会社ストライク
代表取締役
荒井 邦彦
※記事はこちら

株式会社アカツキ
代表取締役CEO
塩田 元規
※記事はこちら

[モデレーター]
イシン株式会社 代表取締役社長 片岡 聡

大学生になったら起業をしたかった

イシン株式会社 片岡 聡(以下、片岡)

今日は上場に至るまでの経緯と舞台裏、上場してからの実際のところをいろいろお聞きしていきたいなと思います。2015年のIPO社数は92社。実際、この裏側にある何倍も準備されてる企業様がいるのがIPOの世界です。そんな中で壁をぶち破り、見事今年2016年に上場された経営者にお集まりいただきました。吉村さん、まずは自己紹介からお願いします。

株式会社エボラブルアジア 代表取締役社長 吉村 英毅氏(以下、吉村)

エボラブルアジアの吉村です。私自身は20歳、大学3年生のときに自分の会社をつくりました。24歳のときに現会長である大石の会社と経営統合をしまして、旅キャピタルという名前の会社を共同創業しました。その後、現在から3年前にエボラブルアジアという社名に変更しました。そして、今年2016年3月に上場をいたしました。

事業は3つの事業をやっています。メインはオンライン旅行事業です。インターネットで旅行を販売するという事業です。商材は国内線の航空券の販売で、全航空会社の旅券価格を比較検索してもらい、販売してます。ウェブ上における国内旅券の販売でしたら業界最大手です。2つ目が、訪日旅行事業、インバウンドです。昨今急増している海外からの訪日旅行者様に対する旅行サービスを展開しています。3つ目が、ITオフショア開発事業です。こちらは主に日本の法人会社様からウェブ系の開発のお仕事をいただいています。当社ベトナムのホーチミン、ハノイ、ダナン、3拠点で約550名のエンジニアを雇用しております。こちらも東南アジアにおける日系のオフショア開発会社としては最大手です。

当社では、取扱高という数字を1番のKPIとしています。取扱高とは、旅行における販売額とITオフショアにおける売上額を合算した金額のことです。先期は約206億。今期の第3四半期が終わった時点で200億弱ぐらいは進捗できています。今期の目標予算は262億ですので達成できるかな、と思っております。取扱高を東京五輪前2020年までに1,000億までもっていきたい。こちらインバウンドであったり、旅行系でいうと民泊であったり、さまざまな追い風吹いておりますので、何とかこれを達成していきたいというのが短期的な目標になっております。

片岡

まずは基本的な質問になるのですが、なぜその事業を選んだのか教えてください。

吉村

昔から大学生になったら自分で会社をつくりたいと思っていました。大学1年生から2年生までは先輩の会社で働いていました。そして3年目に自分で会社をつくりました。当時は「こんなビジネスをしたい」というよりは、「とにかくビジネスをしたい」という感じでした。ですので、旅行事業とは違うことも結構いろいろやっていました。

その中でなんとかものになってきたのがオンライン旅行業です。旅行とインターネットって昔からすごい親和性が強いと言われていました。ただ自分が始めた当時2004年ぐらいは、まだ全般的にはプレイヤーが少なく、参入しやすいのではないかと思いました。在庫も必要がない、っていうところが始めやすかったという背景もあります。

人的関係もいい縁がありました。これが今のエボラブルアジアを共同創業した大石です。自分よりも10歳年上の人間なんですが、当時旅行会社を既にやっていました。最初は仕入れさせてもらっていて、そんな人間関係も含めて、オンライン旅行事業スタートをしました。

もう1つのITオフショア開発事業、旅行業とは結構違う感じです。ただ、オンライン旅行事業ってシステムの完成度がすごい重要だったりします。いろんなサービスをブラッシュアップしていこうとすると、大体システム開発の話になっていくんです。そこがボトルネックだったんです。もともとはオンライン旅行事業の自社開発をしたいがために、2011年に拠点をつくってしまいました。実際にやってみると思った以上にベトナム人の開発者のクオリティが高くて、これであればオンライン旅行事業のコストセンターとしてだけじゃなくて、これ自体も事業化・収益化できるんじゃないかと思い、事業を始めていきました。

片岡

大学を卒業したら起業したい、ではなく大学に入学したら起業したい、だったんですね。

吉村

はい、僕たちが中学生ぐらいのときに、ちょうどビル・ゲイツがすごい有名になった時期でした。ビル・ゲイツもハーバードに入ってすぐ起業されてると思うんですが、それに対しての憧れが強くありました。

会長と社長の役割分担

片岡

なるほど。そして実際に起業されるわけですけど、上場というものを目指そうと思ったきっかけは何だったんですか。

吉村

自分たちは、どちらかというと本当に苦労して、何とか上場できたって感じでした。準備期間はすごい長いほうだったと思います。大石と私はそれぞれのオーナー会社を経営統合して、共同経営になりました。統合が決まった時から、上場したいと準備をし始めました。

2007年に会社をつくったんですが、2008年に証券会社に入っていただきました。本格的には2009年頃から準備を開始していました。その頃からは本当に毎年、直前前期と直前期を繰り返していたかたちです。直前前期がきて、直前期がくると、本来は申請期にならないといけないんですが、また直前前期に戻って、っていうことを結構ずっと繰り返していました。

本当に上場できる会社に変わったのが、最後の上場準備チームを組成したときです。もちろんそれまでもいろんな方に上場準備チームとして入っていただいていたんですが、今現在の上場準備チームに出会ったことってのがすごく大きいです。公認会計士で、自分の大学の同級生にCFOで入ってもらいました。経営企画室の室長も、優秀な方に入ってきていただいたりして、ようやく本当の意味でレールに乗ったっていう感じです。

片岡

大石さんとの経営の役割分担などはどうされているのでしょうか。

吉村

まず、今ももちろんそうですけど、とにかくずっとコミュニケーションをしています。毎日です。認識のずれを生じないようにしていく、っていうことは基本だと思います。役割分担ですが、私たちは、オンライン旅行業でいうと、仕入れ関係は大石が中心にやって、販売・マーケティングは僕が中心にみています。新規事業でいうと、訪日のインバウンドは大石がみて、ITオフショアは私がみています。

片岡

上場前、上場後どちらでもいいんですけれど、会社としてグッと節抜けをしたきっかけはありましたか。

吉村

いくつかあります。まずは経営統合したというところが、大きな節抜けになったと思います。ある意味、代表が2人いることでエンジンが2つになったっていう感じです。事業スピードがすごく早くなったというふうに思います。

次にBtoB営業です。企業の法人出張やサイトをOEMで提供することで、とにかく数字をつくっていきました。取扱高が100億ぐらいになり、国内線の販売として最大手になった時期からスピードが変わったかな、というふうに思います。

そしてオフショア開発の進出です。オンライン旅行事業のオフショアで大量に開発エンジニアを抱えていたのは、日系では当社だけだったりするので、競合に比べて開発スピードが上がりました。結果として、オフショア開発が新たな製品モデルになったということでよかったかなと思います。

最近では、国内線の全航空キャリアグループと直接契約を結べたことも、大きな節抜けのタイミングでした。

航空会社と直接契約を締結していくということのハードルは実はかなり高いのですが、オンライン旅行業界で唯一、全国内航空キャリアグループとの直接契約を結べたことで、他社と明確な差別化を図ることが出来ました。

いつ倒産してもおかしくなかった

片岡

では節抜けと逆になるかもしれないですけど、非常に困難だったときのエピソードを教えてください。これは、潰れるんじゃないかな、というぐらいの困難はありましたか。

吉村

自身の会社の創業当時から2007年頃までは、キャッシュフローですごく苦労していました。本当に会社が倒産しかけました。旅行業の場合って、動くお金がすごく大きいんです。でも、そこの粗利益部分って10%から15%ぐらいなんです。しかも、支払いサイトが結構早かったりします。ちょっとした手違いもありました。3日後までに5,000万の現金を作らないといけない、そんな状況がありました。

当時、銀行からなかなか融資もなくて借りられる知り合いから借りたりしました。あと、ツケで買える商品を仕入れてきて、それをバッタ屋さんみたいなところに持ってって(笑)。その時点で、お金をつくったのに既に10%ぐらい損してるんです。だけど、しょうがないので持って行きます。そんなこともありました。ひどいときは毎週ずっとやってる、みたいな感じのときも。そのときは本当に、いつ倒産してもおかしくなかったと思います。

また、振り返ってみると、いわゆる上場準備疲れみたいな状態になっていました。社内でも、直前前期とか直前期とか公言していましたし。「3年後は上場だ」ずっとそういうことを繰り返し言っていたわけです。そうすると途中から信頼感があんまりなくなっていくんですね。

結局、この人たち何年同じこと言ってるんだろう、みたいな雰囲気。面と向かっては言われてないですけど、恐らくそういうふうに思ってたと思います。そんなタイミングで行っていた新規事業あるいは買収してきた案件がうまく収益化ができずに悪循環で苦しんでいました。それが2011年から2014年ぐらいです。

一言で言うと、毎年毎年ずっと同じ景色をみているような感じでした。これがなくなったのが、先ほど申し上げた人たちも含めて2014年からジョインしていただいた優秀な方々のお陰です。それまでは自分と大石の共同創業者2人で、結構何でもかんでも直接やっていた感じだったんです。そこに、報酬体系もしっかり組み直した上で、ハイエンドでかつ人間関係が元々あった方何名かにジョイン頂いたことで、すごく変わった。これを乗り越えることができたというふうに思っています。

片岡

今後の展望と、あとは「上場してぶっちゃけ何が変わりましたか?」というところを教えていただけますでしょうか。

吉村

今後の展望として、私たちの事業領域である3つの事業の拡大です。オンライン旅行事業、訪日旅行事業、ITオフショア開発事業。今、3つの事業がすごく伸びており、大きな成長を続けている状態です。なので、まずは2020年までに1,000億にいきたいというのを目標にしています。それは5年10年かけてやっていきたいっていうことではなくて、本当はできる限り早く、できれば2年3年で達成したいっていうふうに思っています。

上場後に変わったところとでいうと、売上や利益を上げるためにできることが多くなったっていうイメージがあります。これまでは、2年に1回くらいしかアポが取れなかった方に、どんどんアポがとれたりだとか。当社BtoBもかなり多いので、その可能性がすごい広がったっていう感じはします。

また、プライベートみたいなところで言うと、やはり上場すると比較的人から尊敬されやすくなる(会場笑)。それは、すごく感じています。自分の場合は学生起業なので、例えば同級生の人たちと久しぶりに会うときとかに、人によっては「まだ続けてたの」みたいなこと言われて、イラッとするってことがあったんですが(笑)。やっぱり創業した会社が上場して「すごいね」っていうのをいろんな世代の方からや昔からの知り合いからも思っていただけるのは、本当にすごく嬉しいです。

片岡

上場されると、仕事でもプライベートでも人がよだれ垂らしてやってくる、って言いますけど(笑)。

吉村

プライベートでは…。そんなこともないんじゃないかなと思います(笑)。仕事での付き合いが多くなるのは本当にすごくありがたいお話です。改めて、昔から知っている人から尊敬されるのは嬉しいですね。

来場者からの質問

片岡

会場の皆さまから、もしご質問あれば挙手いただいて、答えていただこうと思います。どなたかご質問あるかたいらっしゃいますか。

来場者

あんまりIPOに関係ないんですけど、大手の航空会社とアライアンスを組んだっていうところで、それベンチャーじゃとても難しいところかなって思っています。その中で困難だったところとか、意識してやっていたところを、もう少し詳しくお伺いしたいです。

吉村

オンライン旅行事業は、販売に関して色んなウェブの手法を駆使してやったりします。一方で仕入れのほうに関しては非常に真逆というか、泥臭く、アナログで1社1社積み重ねていくような感じで回るんです。

そこにおいては、大きく2つなんですが、1つは、航空会社のいろんな方々との人間関係を丁寧に丁寧に構築してきたっていうこと。ここを主にやっているのは大石のほうなんですが。もう1つが、やっぱり量をどれだけ売れるのか、っていうことがリテーラーとしての僕たちの価値なので、そこをどんだけ上げていけるか。特に航空会社と約束した分に関しては何があってもやる、っていうことで積み重ねてきたような感じですね。

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