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「当座貸越×地銀」という知っていると得する資金調達スキーム

~「エボラブルアジア」が実践した低コストで機動性の高い「銀行借入」~

株式会社エボラブルアジア 代表取締役社長 吉村 英毅(よしむら ひでき)

INOUZTimes編集部
「当座貸越×地銀」という知っていると得する資金調達スキーム

イラスト:INOUZ Times

経営を取り巻く3大問題といえば、ヒト・モノ・カネ。今回はカネ、資金調達について、「こんな方法があったのか」と思わせられる目からウロコの手法で投資余力のレバレッジを利かせる。そんなことに成功した事例をご紹介します。それは、昨年3月に東証マザーズに上場し、1年で東証1部に“昇格”するなど急成長しているエボラブルアジアが用いた「当座貸越」という銀行借入。なぜ、市場から直接調達せず、あえて金利がつく資金調達に踏み切ったのか。同社代表の吉村氏にその狙いなどを直撃取材しました。資金調達についての固定観念が変わるかも。

目次 ◆ ゼロに近いコストで好きな時に成長投資にまわせる資金
◆ 成長ベンチャーとの接点をもちたい地銀
◆ 資金調達するときは“プラスα”を追求すべき

【PROFILE】

吉村 英毅(よしむら ひでき)
株式会社エボラブルアジア 代表取締役社長
1982年、大阪府生まれ。東京大学経済学部経営学科で経営管理と金融工学を専攻。大学在学中の2003年に株式会社Valcom(2009年に株式会社旅キャピタルに吸収合併)を創業。2007年に株式会社旅キャピタルを創業し、代表取締役社長に就任。2013年に株式会社エボラブルアジアへ社名変更。2016年3月、東証マザーズに上場。2017年3月、東証1部に上場。
◆PHOTO:INOUZ Times

ゼロに近いコストで好きな時に成長投資にまわせる資金

―昨年3月に東証マザーズに上場し、ちょうど1年で東証1部に昇格しました。

3本柱であるオンライン旅行事業、訪日旅行事業、ベトナムで展開しているITオフショア開発事業のすべてがオーガニックで伸びています。特に国内の出張需要や個人旅行ニーズを取り込んでいるメインのオンライン旅行事業が好調。ここで全体利益の8割を稼ぎ出しています。

2020年までに取扱高1,000億円、売上高200億円、利益で50億円という計画の達成が当面の目標。そのため、既存事業とシナジーのある会社の戦略的な大型M&A、昨年11月に発表した「エアトリ」などオンライン旅行事業にかかわるブランド認知、顧客獲得を目的としたマス広告を含むマーケティングに、今後、積極投資していくことにしています。

―業績好調で成長投資のための資金調達ニーズも旺盛というワケですね。そうしたなか、御社では「当座貸越」などを活用して投資余力を大幅に増やしました。これは、どういった資金調達スキームなのですか。

当座貸越は、おもに決済のための当座預金口座で使われている制度。当社のように成長投資のための資金調達法として活用しているケースは少ないかもしれませんね。

当座貸越とは、当座預金口座に極度枠を設定し、その範囲内なら、いつでも、いくらでも貸越、つまり借入をおこせる制度です。当座貸越の金利は、いまは超低金利ということもありますが、0.5%程度。

もちろん金利が発生するのは貸越しをした後で、極度枠を設定しただけでは金利はつきません。いわば、ゼロに近いコストで好きな時に成長投資にまわせる資金を手元に置くことができたんです。

ちなみに、いま当社の投資余力は、自己資本の25億円(2016年12月末現在)と銀行15行からの当座貸越またはコミットメントライン契約締結による総額30.5億円、合計55.5億円にのぼります。メガバンクや地方銀行、15行と契約を締結しました。

―どのような方法で銀行と交渉したのですか。

似たような銀行融資として複数の銀行が“船団”を組むシンジケートローンがありますが、この場合は船団のまとめ役をしている銀行と交渉すれば済みます。しかし、当社が今回採用したスキームでは、1行1行と個別交渉する必要がありました。

―15行の銀行ひとつひとつと個別交渉していったワケですね。時間がかかりそうですが。

確かに、交渉の手間を減らすため、取引銀行数を減らし、極度枠を高く設定する手段もあります。

しかし、たとえば1行10億円で3つの銀行から30億円を調達しようとした場合、与信金額が高くなるため審査手続きなどに時間がかかり、かえって非効率になる可能性があります。その点、多数の銀行と交渉する必要はありましたが、1行あたりの極度額を数億円程度に抑えたため、逆に交渉スピードは速かったと感じています。

また、今回のスキームにしたおかげで、当社の課題だった地方市場への浸透を図る手がかりができる、といった副次効果もありました。

成長ベンチャーとの接点をもちたい地銀

―どういうことですか。

先ほども触れましたが、今回、契約を締結した15行の多くは地銀。地銀はその地方では大企業ですし、その土地の有力企業と強固な関係を築いています。今回の取引行との間で業務提携のようなカタチも組めたので、出張需要が高い地方の有力企業との接点が新たに生まれそう。そんな期待をしているんです。

―さまざまな効果がありそうな「当座貸越×地銀」というスキームは、ほかのベンチャー企業も活用できる可能性はありますか。

一般的には、信用力の高さなどが問われるため、当座貸越契約は難度が高いと言われているようです。業績好調なだけではなく、上場したからこそ、当社もそれができたのかもしれません。

一方の地銀については、銀行借入で資金調達したいベンチャー企業は、視点を変えてアタックしてみる価値があると思います。

―その理由を聞かせてください。

一般的に在京のベンチャー企業と銀行の付き合いは、東京の銀行と数行というケースが大多数。「地銀と取引しよう」と考えているベンチャー企業の経営者は少ないように思います。しかし、超低金利のなか、成長ベンチャーとの関係値をつくりたいと考えている地銀は意外と多いんです。でも、いままでお付き合いがなかったので、どうすれば成長ベンチャーと接点がつくれるか、地銀も試行錯誤しているようです。

地銀の東京支店は、それほど大きくないし、ベンチャー企業の与信担当者も数名というケースがほとんど。そうしたこともあって、これまでベンチャー企業の視界に地銀の存在はあまり入っていなかったのではないでしょうか。しかし、これからは東京の銀行だけではなく地銀にもあたってみる。こんな方法は、結構、使えると思いますよ。

資金調達するときは“プラスα”を追求すべき

―ところで、上場企業なのですから、市場から直接調達する方法もあったんじゃないのかなと思います。なぜ、あえて銀行借入で調達したのですか。

われわれ経営陣からすれば、まだまだ株価は高くできると確信しているからです。ですから、いまはまだ市場から調達するタイミングではない。金融機関から調達できるのであればそうしようと考えました。

―最後に、いまは投資環境が好調で資金調達に悩みや課題を抱えている成長ベンチャーは多くないと思います。そうしたベンチャーの経営者に向けてアドバイスがあれば聞かせてください。

未上場の企業であってもVCなどから数億円、数十億円の規模での資金調達がしやすいといったように、いまの投資環境は大変恵まれていると思います。しかし、企業成長にとって本質的な問題は資金調達方法ではなく、調達した資金をどう使うか。そこが重要だということは銘記してほしいですね。

いまより昔の高金利の時代、数億円の銀行借入をしたことがあるんですが、返済するのに苦労した思い出があります。返済は税引後利益から捻出するしかなく、利益成長が絶対だからです。調達した資金が成長投資で消えるのは瞬間的。でも、その後が長い。当たり前の話ですが、それは覚えていてほしいですね。

それと、VCもいいんですが、成長ベンチャーの場合、事業会社が運営しているVC、つまりCVCの活用を積極的に考えてほしいですね。CVCは事業会社の背景があるので、メンター的な存在として、さまざまな実務相談や、直面しやすい課題解決のサポートが可能だからです。

当社が実現できた地銀との業務提携のようなカタチでもいいですし、メンター的なサポートでもいいですが、資金調達するときには、資金調達プラスαも考えた方がいいと思います。最後に宣伝っぽくなりますが(笑)当社もCVCを運営しています。なにかあればいつでも相談してください。

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