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2016/12/20

「35歳上限」の中途採用がもたらす恐るべき機会損失

企業の中途採用を熟知するエキスパートが語る“都市伝説”

ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役 黒田 真行(くろだ まさゆき)

「35歳上限」の中途採用がもたらす恐るべき機会損失

人材採用に苦労している中小・ベンチャー企業は多い。しかし、それは“しなくてもいい苦労をしている”のかもしれない。経営者が「採用するなら若手しかない」と考え、わざわざ争奪戦の激しい若手人材に殺到し、人手不足が長引くという悪循環を繰り返している企業も多い。もし、「若手でなければいけない」という考え方が思いこみに過ぎなかったら─。国内最大級の転職サイト『リクナビNEXT』の編集長を務めた後、いまは企業の中途採用を支援するルーセントドアーズ代表の黒田氏に、人材採用をめぐるウソとホントを聞いてみた。

年功序列は20年前に終わった、ミドルの給料は高くない

―2017年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の求人倍率は1.74倍(リクルートワークス研究所調べ)。前年を上回っていて、中小・ベンチャー企業は採用面で厳しい状況が続きそうですね。

確かに数字の上では採用難の市況ですね。

でも、もう少し分解してみると採用が困難なのは若手だけ。35歳以上のミドル世代に目を向ければ、活躍してくれる人材は大量に存在しています。もちろん、業種や職種によっては、若い世代に限定される仕事もあると思います。たとえば女子高生向けのアパレルショップで、おじさんが販売員をしていたら売れ行きが鈍るかもしれませんよね。

でも、そうした仕事でない限り、ミドル採用で業績向上を実現できる可能性は十分にあります。

―なるほど。とはいっても、人件費が高くつくのが心配です。

年功序列の時代が終わってから、もう20年が経過しています。ミドルの給与が若手に比べて高いという考え方は、実際には都市伝説と言っていいと思います。成果型給与が浸透した今、年齢が高いから給与が高いという現実は、ほとんどありません。

北海道拓殖銀行や山一證券が破たんしたのが1997年。「大企業であっても倒産する」という状況ですべてが一変しました。「ペイ・ナウ」という考え方で、企業はいっせいに年功主義から成果主義へと給与体系をシフトしました。

あれから20年。すでに年齢ではなく、実績や市場価値が給与額を決めるベースになっています。にもかかわらず、「ミドル世代を雇うと給与が高くつく」と思いこんでいる経営者が少なくないのが現状です。

―多くのベンチャー企業の経営者は、既存の業界の常識に逆らい、革新を起こします。そのとき、「既存の常識に染まっているミドルは使いづらい。白紙の状態にいる若手のほうがいい」。これも経営者が若手の採用を志向する理由のひとつです。

たしかに、そう考えられる経営者も多いですね。ただ、その考え方には2点、重要なポイントをお伝えしてきたいと思います。

ひとつは、自社のマネジメント層の力量不足を過剰に心配しているのではないか、という可能性です。

たとえば、33歳のマネジャーの下に、年上のメンバーを採用したら「マネジャーが仕事を振りにくいのではないか」という心配をされるケースです。その瞬間に「33歳以下限定」という採用方針を決めてしまう。その結果、激戦市場に絞った採用活動となり、商機を失ってしまうこともありがちです。

実際には、いまの若い世代には、年功序列の記憶がない方も増えています。先ほどいった通り、年功序列が崩壊して20年たっているので、年上の部下をマネジメントすることを「荷が重い」とは考えず、淡々と役割を行うことができる方も増えていると思います。

若手マネジャーがミドル世代のメンバーに自社流のやり方を教え、前職までの経験からくる常識を変えていくような「強いマネジメント」ができる方も確実に存在すると思います。経営者が“過剰な親心”で機会損失しているケースも多いと感じています。

年齢をNG条件にして、 会社を変えてくれる人材を見逃していませんか?

―もうひとつの重要なポイントはなんでしょう。

過去の失敗体験からくるトラウマに縛られている、という可能性です。

じつは、意外と多くの会社に「〇〇大学卒は採用しない」「〇〇社出身者はNG」といった、独自のNG条件があります。NG条件の生まれた背景を聞くと、ほとんどの場合、過去に採用した人材がうまく会社にハマらず、活躍できなかった記憶が原因となっています。

「過去に活躍できなかった人材と属性が同じだからと言って、本当にその属性を切り捨ててしまっていいのかどうか?」という観点は、ぜひより深く考えていただきたい視点です。

同じように、過去にミドル世代を採用して活躍してもらえなかったという経験があると、「ミドル世代はやっぱりダメだ」という風に、NG条件になってしまっているケースも非常に目立ちます。

学校名や、経験してきたスポーツの種目、性別などの属性条件と同じように、年齢のNG条件化も、科学的ではないし、優秀人材の膨大な獲得機会ロスにつながっていると思います。

―確かに、年齢の問題ではなかったケースが大半でしょうね。では、どうすれば間違ったNG条件をつくらずにすみますか。

「こういう人がいい」と、ヒト軸で採用条件を決めるのではなく、「こういう仕事ができる人材がほしい」と、コト軸で決めていただくことがいいかと思います。

採用する人材にどんな成果を生み出してもらいたいのか、何を達成してほしいのか。その仕事を完遂するために必要なスキル・知識・経験・資質はなんなのか。それだけをつきつめていけば、ほとんどのケースで年齢は問題にならず、よりよい候補者と出会えるはずです。

採用方針で大切なのは“ヒト軸”でなく“コト軸”

―経営者が年齢にこだわらない採用方針をとったことで、成功したといえる事例を教えてください。

建設系の中堅メーカーの例があります。

創業から約40年、従業員2,000名ほどにまで成長した。しかし、建設市場は2020年の東京オリンピックをピークに衰退していくと予想されている。そのなかで「これからの40年」の中長期ビジョンを描いていきたい。

60歳の社長がそんな風に考えて「一緒にビジョンを考えてくれる、右腕のような存在がほしい」と。なので当初は「未来のことを考えるんだから、若い人がいいだろう。30代まで」とおっしゃっておられました。

しかし、最終的に採用したのは55歳の男性。

ある大手商社の営業畑で長く勤め、早期退職制度に応募した人でした。その大手商社がビジネス誌の優良企業ランキングに取り上げられていた黄金時代に、トップの右腕として10年間、活躍した経験のある方です。

社長が求める条件とはまったく異なりましたが、面談で会った瞬間に社長は気づかれたようでした。「これまでの自社の成長の延長ではなく、非連続な成長を実現する40年計画の策定には、この人が必要だ」と。

結果的に三顧の礼で迎えられ、大活躍されています。

—ほかにもミドル世代採用の活躍事例はありますか。

ある学校法人の例です。

学生の就職指導にあたるキャリアセンターのマネジャーを募集していた。若者と接する仕事ですから、募集当初は「30代前半まで」という条件が、理事長の方針でした。ところが、採用したのは49歳の男性。それも未経験者です。

前職は企業の広報販促用パンフレットの制作に携わっていたクリエイター。確かに、今回の募集条件に近い領域の知見や経験があります。しかし、当初イメージしていた年齢を超え、しかも未経験者を採用した決め手は、その人のねばり強い説得力や地道に調整していく能力を買ったからでした。

理事長には、キャリアセンターのマネジャーにやってもらいたい仕事がはっきり見えていたからこそ、コト軸で考えることができていたんです。重要な仕事のひとつに、「就職率を高めるために、企業が求めている教育を学校のカリキュラムに反映させる」というものがあります。学校の先生からすると、カリキュラムを変えたくない。ヘタに話をもっていくと「学問をなんだと思っているんだ」なんて炎上しかねない。利害関係者とうまく調整しなければすべてが台無しです。

理事長は、面接するなかで「この人なら、先生たちをうまく説得してくれそうだ」と判断したわけです。

―採用難に苦しむ経営者にアドバイスをください。

いかに採用のROI(Return On Investment、投資対効果)を上げるかを考えて、採用条件をぜひ精査していただきたいと思います。ヒト軸でなくコト軸で考えたとき、年齢などのNG条件ではなく、まったく新たな条件になるかもしれません。

転職市場の世界では35歳の誕生日をさかいに、転職先のオファーが半減するんです。40歳、45歳、50歳と、5つ歳をとるごとに半減していく壮絶な状況です。たった1日でスキルや能力がガクンと落ちるはずもないのに、あまりに非合理的な状況なのです。

また、採用する側の観点からいえば、この状況は「競争相手が少なくなる」という意味で大きなチャンスになります。「募集要件は35歳まで」という企業が多いからこそ、30代後半や40代・50代も対象として広げれば、採用のROIを大きく高め、かつ今よりも事業を前に進めるスピードを加速させることができると信じています。

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黒田 真行(くろだ まさゆき)

ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役

1965年、兵庫県生まれ。1989年に関西大学法学部法律学科卒業後、株式会社リクルート(現:株式会社リクルートホールディングス)入社。転職情報誌『B-ing』や女性向け転職情報誌『とらばーゆ』などの企画・編集・事業企画に携わった後、2006年に転職サイト『リクナビ NEXT』編集長に就任。2011 年以降、メディア事業と人材紹介事業の再編に携わる。2014年、独立してルーセントドアーズ株式会社を設立、 代表取締役就任。企業の中途採用を熟知するエキスパートとして、とくに「ミドル世代と企業との適正なマッチング」をメインテーマに事業展開している。

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