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「人とイズム」の手を抜かない【オプトホールディング鉢嶺代表】

急成長期に直面した「壮絶なる成長痛」PART1

株式会社オプトホールディング 代表取締役社長グループCEO 鉢嶺 登(はちみね のぼる)

INOUZTimes編集部
「人とイズム」の手を抜かない【オプトホールディング鉢嶺代表】

伸び盛りだからこそ味わうのが“成長痛”。人間ならガマンしていれば、そのうちおさまります。けれど企業経営では「時は良薬」とノンビリしてられませんよね。業態転換の混乱、社員の離反、役員との衝突などなど、成長企業だからこそ宿命づけられる「ベンチャーの成長痛」には一刻も早い手当が必要です。オプトホールディング代表の鉢嶺さんも、そんな試練を味わった起業家のひとり。同社が急成長する過程で直面した「壮絶なる成長痛物語」を鉢嶺さんに聞きました。明日、あなたの会社に起きること、かもしれませんよ!?

※この記事は2018年11月に開催された西日本ベンチャー100カンファレンス 2018で行われたオプトホールディング 代表取締役社長 グループCEO 鉢嶺 登さんのセッション「2030年1兆円企業を目指すまで 〜苦難と飛躍の7年周期〜」より抜粋・構成しました。

[概要]
西日本ベンチャー100カンファレンス 2018
2018年11月21日(水)
主催:イシン株式会社
協賛:株式会社識学/有限責任 あずさ監査法人/SMBC日興証券株式会社/日本オラクル株式会社NetSuite事業本部/宝印刷株式会社/株式会社タスク/株式会社オービックビジネスコンサルタント/あいわ税理士法人

7年周期の禍福

振り返ると、これまで7年ごとに厳しかった時期、うまくいった時期、また厳しかった時期を繰り返してきました。この周期ごとに、なにがうまくいったのか、なにが失敗だったのかをお伝えしたいと思っています。

急成長を支えた“基盤”

まず第1期、創業から2000年までの7年間についてです。

最初は私ひとりでワンルームマンションの1室から始めました。第1期では社員数30人くらいまでになりました。売上でいうと最大3億円くらい。売上はなかなか伸びず、収支トントンの状態が続きました。結構、頑張ったんですけれどね(笑)

第2期の2001年から一転、業績が急激に伸びました。その伏線となったのが第1期における「人とイズム」でした。

創業期に、ベンチャーマインドを持ち、将来について熱い想いを持っているメンバーが集ってくれました。そういう人を採用していたんです。

当時、あるベンチャーキャピタルから投資していただいた際に「30人くらいしか社員がいないのに、みなさん、大変優秀ですね」と言われ、とてもうれしかったですね。

長期で成長する会社には、必ずイズム、文化、社風があると言われています。私も創業する時から会社の基本理念や文化には非常に気を配っていました。

「起業するなら上場したい」とも考えていたので、上場前提でいろいろな手も打っていました。上場するのか、しないのかによって、組織のつくり方はまったく変わってきます。採用や人事制度も大きく違ってくるので、上場するなら、なるべく早く決断すべきです。

“強制終了”させた主力事業

第2期で業績が急激に伸びた直接のきっかけはFAX広告からインターネット広告代理事業への業態転換でした。

起業時はFAX広告事業を展開していました。しかし、上場に向けて事業計画を書いていた時に気づいたんです。「この事業では上場できるほどの規模にはならない」と。それで、ちょうど普及し始めたインターネットの広告代理事業に思い切って転換しました。

業態転換を実行するにあたって大きな困難がありました。現場がついてきてくれなかったんです。

私が「明日からインターネットをやろうぜ」「そういう会社になるぞ」と言っても、現場はなかなか変わってくれなかった。既存事業のお客さまがいらっしゃるし、そもそもインターネットに関する知識もありませんでしたから。

オプトホールディングの創業時からの売上と従業員の推移

そこで、ある日、「この日から一切既存事業はもうやらない」と社員の前で宣言しました。強制的にインターネット広告代理事業に切り替えたのです。それに反発して会社を辞めるメンバーもいました。でも、事業転換の決断は結果的に会社としては正解だったと思います。

「応援団」という経営者の力量

この時期に行ったことで「正解だった」と思うことに株式のこともあります。いろんな分野の方に個人で1口ずつ出資をいただき、会社の「応援団」になっていただいたんです。

ベンチャーの先輩起業家の方、大企業の役員の方、大手コンサルタントの方、大学教授の方など、いろんな方に「応援団」になってもらいました。

今、当社でもベンチャー投資をしていますが、投資判断をする際に重要視するのは、なんと言っても投資先の社長と経営チームであり、次に「その会社を誰が応援しているのか」という点です。

「どんな人が応援団についているか」は、その社長の力量、目線の高さ、経営者としての魅力を推し量るうえで極めて重要なファクターなんです。

目線が高くないと素晴らしい方は応援団になってくれません。応援団を見て「じゃあ、この社長に投資しよう」と判断することもあるくらいです。それほど重要です。

儲けることは重要だ

一方、この時期の失敗のひとつとして「儲けることの重要性」に気づくのに時間がかかったことがあります。

私は最初、「世のなかに貢献するんだ」という理想が先走っていました。「儲けることはいけないことなんじゃないか」と思う時期すらありました。

当社の理念のひとつに「先義後利」という言葉があります。まず「義」があって後に「利」がある。お客さまのために貢献すれば利益が後から自然とついてくるという考え方です。

実際、それはそうなんです。けれども本当にお客さまにためになるには、よいサービスをドンドンつくりあげないといけない。ちゃんと利益を出して、その利益から次のサービスに投資をするというサイクルを回さなければいけない。そうしないと、結果としてお客さまにご迷惑をおかけしてしまう―。そこに気づくのに数年かかりました。

よかれと思った「株譲渡」

もうひとつ大きな失敗に、株を役員に渡しすぎてしまったことがありました。資本政策に悩まれているベンチャーの経営者や起業家は多いと思います。「パートナーである役員に株を渡したほうがいいんですか?」「どの程度、渡したらいいんですか?」という質問をよく受けます。

基本的には、多くは渡さないほうがいい。自身の失敗を通じて、私はそう思っています。

私の場合、かなり渡してしまったんですね。当時、3人の取締役に合計20%近い株式を譲渡しました。「パートナーである3人の取締役に報いたい」という私なりの気持ちがありました。

でも、最初に配ったときはまったく感謝されませんでした(笑)。年商3~4億円くらいで利益も出ていなくて会社は全然イケていませんでしたし、上場できるなんて誰も思っていませんでした。ですから「株をもらっても、まったくうれしくないんだけど」みたいな感じです(笑)。

感謝されない程度なら、まぁいいんですけど、株をわけることで会社の安定性を損なうリスクが高まってしまう。ですから、基本的に株は渡さないほうがいいんです。実際、次のような経験をしました。

瀬戸際の経験

かつて電通と資本業務提携を行い、電通に当社の株を35%保有してもらっていた時期のことです。その時、経営方針について意見の違いがあり、株主総会決議が必要となったことがありました

電通の出資比率35%は「過半数に届かないから大勢に影響ないじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかしれません。でも、上場企業の場合、一般の投資家さんが毎回毎回株主総会で賛成票や反対票を入れるわけではありません。実質的には議決権40%くらいで過半数に迫ることになるんです。

(PART2「『俺って要るのかな?』という葛藤」に続く)

鉢嶺 登(はちみね のぼる)

株式会社オプトホールディング 代表取締役社長グループCEO

1967年、千葉県生まれ。1991年に早稲田大学商学部を卒業後、森ビル株式会社に入社。1994年に有限会社デカレッグス(現:株式会社オプトホールディング)を設立、代表取締役社長に就任。2004年にジャスダック上場。2013年に東証1部上場。

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