やるなら最初から海外で
―最初に簡単な経歴と事業内容を教えてください。
前職はアドテクベンチャーの株式会社マイクロアド。同社ではManaging Directorおよび東南アジアのCEOとしてアジア太平洋全域のビジネス拡大に従事しました。その後、2016年にAdAsia Holdings(現:AnyMind Group)をシンガポールで設立し、CEOおよび共同創業者としてグローバルでのビジネス拡大を担当しています。
アジア市場でインターネット広告の広告主とインフルエンサーなどのマッチングをやっています。募集企業と求職者のマッチングも手がけています。現在、シンガポール、バンコク、ジャカルタ、ホーチミン、ハノイ、台北、カンボジア、上海、香港、東京の計10拠点でビジネスを展開しており、社員は250名、クライアントは350社ほどです。
―現在の事業を選んだ理由や、なぜ最初からグローバルで勝負しようと考えたのか。その理由やきっかけを聞かせてください。
2012年から2016年まで、前職で海外のビジネスを手がけました。自分自身で事業を立ち上げるにあたっては、やるなら最初から海外でという考えでした。ゼロからのスタートですから可能性だけは広げておきたかったのです。
勝負するには複数のビジネスを立ち上げることが重要だと思っています。シンガポールでインターネットビジネスを立ち上げ、いけると思った時点でタイ、インドネシア、ベトナム、台湾、カンボジア、香港、東京と展開しました。
もちろん競合はたくさんいました。それでも基本的に私は、超ポジティブに「これはいける」「絶対いける」と思うことが大切だと考えています。計画は立てますが、多少無理なことでも信じ切って取り組めば実現してしまうものです。
腰を据えれば十分勝てる
―前職で学んだことをどのように現在の仕事に活かしていますか。
私は2010年に新卒でマイクロアドに入社し、東京で営業をしていました。100%頑張らなくても誰にも負けない成績を残し、他社からもヘッドハンティングの誘いがあったので、転職を考え、社長に相談しました。
すると、社長から「ベトナム法人を立ち上げようと思っているのだが、代表として立ち上げをやらないか」といわれ、ベトナムで会社を立ち上げました。ベトナムに関する知識もなかったのですが、この会社も上手く立ち上がりました。
さらに当時の社長から、次は「2,000万円用意するのでフィリピンで会社を」と言われ、その後マレーシア、タイ、インドネシアと次々に会社を立ち上げました。
この経験から「それぞれの国で1,000万円単位の予算があればなにができるか」、理解を深めることができたと同時に、実行能力や営業力はどこにも負けない自信がつきました。
―ゼロから東南アジアでビジネスを始めるには、どんな分野がいいと思いますか。
自分たちが今後何をしたいのかを考え、ビジネス領域を選ぶべきです。
当社の場合、マーケティング領域からビジネスをスタートさせました。アドテクの分野は技術の進歩が速く、今後はAIなどの効率化ノウハウがBtoBのプラットフォームで活きてきます。
東南アジアではまだまだビジネスチャンスがたくさんあり、チャレンジしない理由はありません。どの業界でもライバルは多い。しかし、しっかり腰を据えてコミットしていけば、十分に戦えます。もちろん事前に得られるリターンを計算し、アクセルのふかし方は調整する必要はありますが。
―アジアで伸びている領域を教えてください。
伸びているところはたくさんあります。しかし儲かっている会社はあまりいません。
AnyMind Group代表の十河さん
肌感覚の情報が大切
ベンチャーは理想を大きく掲げるものですが、まずは稼ぐことも大切だと私は思います。今は市場を拡大する段階という場合も、将来的には儲かることを前提にやることが大切です。
―ゼロからの進出、M&A、現地企業との合弁など、さまざまな進出スタイルが考えられますが、アジアに進出する場合、重要なことはなんでしょう。
圧倒的に情報収集です。私の場合、ゼロから入ったので、ネットからのものも含めて取れる情報はすべて取ります。そのうえで、飛び込み営業をしてマーケットの肌感覚をつかむことが大切です。
会社を訪問すると裸の情報が収集できます。それがないとジョイントベンチャーなどの判断はできないと思います。特に意思決定者は、新しいマーケットに行くときは肌感覚の情報が大切です。
一方で、ビビらないことも大切です。ベトナムでは相手が大企業でもアポが比較的容易にとれます。訪問する際もビビらないこと。ビビっていてはせっかくの機会の損失になります。動じないマインドもアジアで成功するためには必要です。