どこにあるのかも知らなかった…
―最初に事業内容を教えてください。
私は大学卒業後、2008年に楽天株式会社に入社し、2010年より同社のインドネシア事業立ち上げに従事。2013年に退社後、インドネシア初のファッションサイト「VIP Plaza」を2014年に立ち上げ、VIP PlazaのFounder&CEOに就任しました。現在の社員数は約200名で、東南アジア各国への進出を加速させているところです。
「VIP Plaza」は、取り扱いブランド数1,000、会員数100万人のサイトに成長しています。その間、たくさんの失敗を繰り返しました。ファッションのフラッシュセールスで売上を伸ばしましたが、売れば売るほど赤字が増える状態でした。1,000ブランドに絞ってZOZOモデルに移行したり、ポイント制を導入してリピーターを増やしたりして売上を拡大しましたが、それでもなかなか収益化は難しいですね。
―現在の事業を選んだ理由や、なぜ最初からグローバルで勝負しようと考えたのか。その理由やきっかけを聞かせてください。
インドネシアがどこにあるかも知らずに、なにも立ち上がっていない大きな市場に魅力を感じてマーケットプレイスのeコマースを始めました。
ファッションとeコマースを選んだのは論理的な分析に基づいてではなく、大きな市場で日々しっかり事業に取り組めばきっと開拓できると考えたからです。前職でファッション分野に携わっていたことも、この事業を選んだ理由です。
日本のやり方が正しいとは限らない
―前職で学んだことをどのように現在の仕事に活かしていますか。
私は日本で2年間ビジネスを経験した後、24歳のときにインドネシアに来ました。その時、日本のビジネスのやり方しか知らず、現地で日本流のマインドとオペレーションを植え付けることをやってしまいました。
インドネシアの営業会社は規律にゆるいところがあって、そこに時間や数字を厳しくマネジメントしたので、20名規模の会社で1年間に累計で24名辞めてしまいました。120%の離職率です。
この時に学んだのは、「日本のやり方が正しいとは限らない」ということです。ゴリゴリにオペレーションを回してもうまくいかない。現地の実情に合わせたマネジメントをする必要を学んだ1年でした。
―ゼロから東南アジアでビジネスを始めるには、どんな分野がいいですか。
せっかく東南アジアでやるなら“王道”で挑戦するのがいいと思います。これから大きく成長する東南アジア市場では王道でスケーラブルな分野にチャレンジするのが醍醐味です。
当社はBtoCのeコマースからスタートしましたが、現在はその周辺領域にもチャレンジしていこうと考えています。王道ビジネスの周辺領域は今後確実に大きく成長してゆきます。
しかし消費者に課金するBtoCでしっかりと利益を出してゆくには、それなりの投資と時間がかかります。一方、メーカーなどの企業には潤沢な広告予算があるので、BtoBを狙ってゆくのもよいと思います。
―いまアジアで伸びているのは、どんなところですか。
インドネシアは国も産業も伸びています。しかしC向けにサービスを展開しているスタートアップは売上は飛躍的に伸びているものの、誰も儲かっていない。特にBtoCを狙っているところは儲かるまでに時間がかかります。
VIP PLAZA INTERNATIONAL代表の金さん(中央)
陥りやすい誤り
―ゼロからの進出、M&A、現地企業との合弁など、さまざまな進出スタイルが考えられますが、アジアに進出する場合、重要なことはなんでしょう。
進出する時は本質的な戦略を誤らないことです。実際に進出してみると、マーケットスケールが想像以上に小さい、というケースは多々あります。ですから、いろいろな人に会って現地の情報をつかむことが大切です。
かくいう私も、インドネシアでファッションのフラッシュセールを展開する時も、心の底でマーケットサイズを大きく見てしまいました。しかしやってみると意外に小さい。起業家の陥りやすい誤りです。
実際に飛び込んで肌感覚の情報を収集することが大切です。ネット上に情報はころがっていますが、自分の目で確かめることです。