INOUZTimes > M&A > 約20億円で企業売却、「2020年までに世界を獲る」

約20億円で企業売却、「2020年までに世界を獲る」

学生時代に創業し事業を売却、その資金を元手に新サービス「BE HEARD」をローンチ

XVOLVE CEO 「生涯起業家」望月 佑紀(株式会社リジョブ創業者)(もちづき ゆうき)

INOUZTimes編集部
約20億円で企業売却、「2020年までに世界を獲る」

M&A、当然うまくいくこともあれば、いかないこともある。今回は売り手、買い手、両者がハッピーとなった成功事例をとりあげたい。じげん社に31歳という若さで約20億円で企業売却した望月氏にベトナム・ホーチミンで取材を敢行!「企業売却って、実際のところ、どうなの?」という感じで、かなり突っ込んで聞いてみた。

シリコンバレーで挑戦するも、日本は月に2000万円近くもの赤字を垂れ流す

望月さんは2014年9月にじげん社に会社をバイアウト(企業売却)しましたが、いつくらいからバイアウトを考えていたんですか?

望月:バイアウト自体を考え始めたのは、実際にバイアウトする1年くらい前からですね。具体的に動き始めたのはその半年後くらいだったかと思います。

そもそも、なぜバイアウトしたんですか?

望月:私には「FacebookやGoogleのような世界トップレベルの会社を創る」というビジョンがあって、そのビジョンを考えるとバイアウトが最善だと判断したからです。

実は少し前の2012年くらいから、そのビジョンを実現すべくアメリカのシリコンバレーで事業を展開していたのですが、任せていた日本のリジョブの業績が一気に悪化して自分が日本に帰国しなければいけなくなりました。

2013年10月にいったん一時帰国すると、月に2000万円近くの赤字が出ているくらいに悪化していた。これは潰れるぞと。新規事業をシリコンバレーでしている余裕なんてなくなりましたね(笑)。

その後、なんとか日本の事業は私が陣頭指揮を執って抜本的に改革。3か月くらいで月にプラス2000万円ほどの黒字にまで持っていった。この件があって、こういうことが起こっては、異国の地で新規事業に集中なんてできないなと。

なるほど。そういうことで、バイアウトして身軽になって、売却資金を次の事業に突っ込もうと。

望月:そうですね。ただその時点ではバイアウト含めて3つの選択肢がありました。1つ目はバイアウト。2つ目は私の後継者を見つける。3つ目がIPO(株式上場)するという選択肢です。

まず後継者を見つけるという選択肢ですが、そもそもその時点で後継者が見つかっておらず、たとえ見つかったとしても引き継ぐのに3~5年はかかる。そこまでは待てないなと(笑)。私は自らのビジョンに向けて、少しでも早く動きたかった。すぐやりたかったんです。

3つ目のIPOですが、これも時間かかるなと。売上や成長率等、条件的にはなんら問題はなさそうでしたが、監査法人や証券会社の方に聞いたら、上場準備に時間もかかるし、しかも私が日本にいないといけないと。そうして消去法で残ったのがバイアウトだったんです。

高値を提示したファンドには売却せず、なぜじげん社に売却したか

ちなみに売却先のじげん社とは、いつ頃に会ったんですか?

望月:バイアウトする3か月くらい前ですかね。じげん社CEOの平尾さんから直接Facebookのメッセンジャーで連絡があったんです。平尾さんとは同じ大学ですし、お互い学生時代から知っている仲でした。平尾さんから、「最近どうなの?お元気」みたいな軽い感じのメールが来まして(笑)。

その後、久々に再会して、まずは近況報告をして、お互いのビジョンを語り合ったり。そんな話の中で平尾さんから「うちにバイアウトしてよ」と持ち掛けられました。

実はじげん社以外にも、売却候補先は他にもありました。あるファンドが興味を示してくれて。しかもそちらの方が提示された金額は高かった。でも、最終的にじげん社に売却することを決めました。

某ファンドの方が提示金額は高かったんですよね。なぜそちらに売らなかったんですか?

望月:理由は主に2つあって、1つ目の理由はじげん社の方がロックアップ(ここでは、経営陣が残らないといけないという意)がゆるかった。ファンドの方は中心メンバーに最低1年間のロックアップ期間があった。つまり売却後1年間は、主たる経営陣が会社に残って経営をしなければいけない。

私は何よりも時間が惜しかったので、これは厳しい条件だなと。反面、じげん社の条件はというと、私自身はロックアップ無し。すぐに離れられる。役員のロックアップも短かった。しかも会社の幹部を7名連れていくことにも同意してくれたんです。またバイアウトまでの交渉の流れがホント早かった。じげんスピードですかね(笑)。私は早く次の挑戦がしたかったので、ここらへんが大きかったですね。

また2つ目の理由は、じげん社にバイアウトした方が面白そうだなと。そもそもじげん社は、経営スタイルも面白ければ、業績もがんがん伸びている非常に稀有なベンチャーです。

残った社員のことを考えても、たとえ売却金額が低くなっても、じげん社にバイアウトした方が自分の人生を考えても、その方が良いなと考えたんです。じげん社と自分がバイアウトという縁でつながっていて、将来お互いさらに事業が発展して、年を取って平尾さんと良い思い出話ができたら素敵だなと。

売却を社内で発表、ざわつく社内

社内には、いつの時点でバイアウトの話をしたんですか?

望月:一部の役員を除いて、じげん社がIRの発表を出した日まで知らせていませんでした。じげん社は上場企業ですので、こういった話はインサイダー情報にもなるので、IR発表まで社内といえども公開はできませんでしたね。

じげん社がIR発表をしたその日の夕方に、リジョブの新宿本社に社員を集めて、直接わたしの口からみんなに話しました。

社員のみなさんの反応はどうでしたか?

望月:ざわざわって感じでしたね。そりゃそうですよね。いきなり、「この会社はバイアウトされましたよ」と話すんですから。私と役員が一通り話した後に、じげん社の平尾さんにも会社に来て話してもらいました。

社員のみんなは、なかば放心状態で平尾さんの話を聞いていたと思います。なぜか分かりませんが、当日の平尾さんもすごくテンション高く、どこかお笑い芸人のような感じで話していた(笑。平尾さんスミマセン)。

なるほど。その後、社内では動揺などはなかったですか?

望月:騒然としましたよ。彼らが一番気になるのは、当たり前ですが雇用のこと。この先、自分たちはどうなるのかと。私からは「雇用は守るから安心してください」と伝えました。じげん社ともそういう契約だったので。

また私のビジョンに共感してくれている20名ほどの幹部メンバーには、個別で面談しました。「自分についてくるか、それともリジョブに残るか」と。選択肢をこちらから提示したんです。「来たかったら来てもいいよ」と。私が想定していた主なメンバーは私についてきてくれる決断をしてくれました。

社外からの反応はどうでしたか?

望月:みんなから「おめでとう!」というメッセージをたくさんもらいました。しかし中にはバイアウトに否定的な印象を持っているのか、「なんと言っていいかわからないけど、大変だったね」みたいな同情的なメッセージもありましたね(笑)。

ここらへんがアメリカとかとの違いだなと。おおむね経営者やスタートアップ界隈の人からは「おめでとう」とポジティブなメッセージ。逆にネガティブなメッセージは会社経営とは縁のないような人からでしたね。

恋人を取られたような気持ち。帰り道で涙が込み上げた

Photo by: photo AC

実際にバイアウトするまでに、望月さんの中で葛藤はなかったんですか?

望月:なかったですね。バイアウトすると決断してからは、早く次の挑戦がしたくて、特に葛藤みたいなものはありませんでした。

ただ、バイアウトしてしばらくしてから、ものすごい喪失感に襲われました。大恋愛した恋人を失ったような喪失感。バイアウトした直後に、平尾さんとじげん社の幹部、そして私とリジョブの幹部で飲み会をしたんです。その飲み会は本当にブルーでしたね。大好きな恋人を取られたような、そんな心境でしたよ(笑)。

バイアウトした直後だったので興奮していたのかもしれません。飲み会の帰り道、ものすごく悔しくて、さみしくて、涙がこみ上げてきました。あの感情は何なのかわかりません。うまく言い表せませんね。さみしいやら、悔しいやら。

バイアウトの契約書にハンコを押した瞬間から、ガラッと風景も変わりました。会社の中を見渡しても、今までの景色とは全く違う。そこにある椅子も、もう自分の会社の椅子ではなく、人の会社の椅子なんだと。そんなことを思いましたね。これは会社を売却した創業者にしかわからない感覚なのかもしれません。命がけでやってきた会社。それを失くす喪失感。

喪失感からはその後数か月で、立ち直りました。そもそも「世界を抜本的に変革する」というビジョンを達成するためにバイアウトしているので、後ろを振り返っている暇はありません。昔のリジョブのころの仲間もついてきてくれましたし、新しい事業を立ち上げて、今は新しい恋人を見つけた高揚感が生まれています。だから、ものすごく頑張れる(笑)。

バイアウトした直後、すぐに海外に移住されましたよね?なぜドイツに?

望月:バイアウトしたので、時間にゆとりができました。なので、この機会に全世界を見てやろうと。アメリカには最後に行くと決めて、まずはヨーロッパに住んだことがなかったので、ヨーロッパのスタートアップの集積地であるドイツ・ベルリンに移住しました。世界でいま何が起きているかを自分の目で見たかったんです。

半年くらい、頭をリセットする期間として、世界中で友人を作り、いろんな人と話し、いろんな書物を読みました。歴史書などを読むと、そのスケールの大きさに心が震え、自分も命がけで世界を変えるようなことをやりたいなと。命を狙わるくらいの大きなことをしなければと。そんな志を新たにしたりしました。

しかし、半年も経つと、うずくんですよ。事業欲がふつふつと(笑)。やはり人と会ったり、本を読んでいるだけではつまらない。

みんな興味あるのは自分の過去の話、正直おもしろくない

途中で日本に帰国したりはしなかったんですか?

望月:ほとんどしませんでしたね。帰国するとリジョブの話も耳に入ります。そうするとどうしても気になってしまう。だからあえて聞かないように、帰国したくなかった。しかも帰国して、いろんな人に会うと、みんな興味があるのは、私の次の挑戦よりも過去のバイアウトの話。正直、私としては面白くない(笑)。僕にとってバイアウトはあくまで世界を変える(勝負をする)ためのステップでしたし、本当の挑戦はこれからなんです。

いま挑戦しているWebサービス“BE HEARD”について聞かせてもらえますか?なぜこのビジネスに行きついたんですか?

望月:事業欲がふつふつと出てきて、リサーチ、そしてブレストの毎日を3か月ほど続けました。

次にやる事業は、どこかが買収できるような規模のビジネスにはしたくなかった。どでかいビジネス、そんなポテンシャルを秘めたビジネスを立ち上げたかった。そんなことを念頭に考え続け、試行錯誤してたどり着いたのが、“BE HEARD”です。

私の人生を振り返ると、そもそも私は昔から「人と人をつなげて価値を生む」ということをしてきた。そこに気づいて、このビジネスを始めることにしました。“BE HEARD”は一言でいうと、世界のだれかと一瞬でつながることができるサービスです。

誰かと話したいなと思ったら、ボタン一つでリスナーという訓練された聞き手につながる。ライブチャット機能で、ビデオ、ボイス、テキストでつながることができます。話す内容はなんでもいいんです。他愛もない話でも、深刻な話でも。誰か話し相手がほしいなと思ったときに、気軽に使えるサービスにしたい。

リスナーという聞き手は、まさに聞き上手のプロ。ユーザーの話を上手に聞いて、時にモチベートし、時に共感し、時にアドバイスをくれる。料金は基本的にはかからないフリーミアムモデル(Freemium Model)です。より使いたい人に対して、課金プランを用意しています。また言語は英語からスタートして、ゆくゆくは中国語、スペイン語、日本語などに広げていく予定です。

2020年にビジネスの世界から引退後、世界の世直し集団を創る

最後に、望月さんの今後のビジョンを教えてください。

望月:まずはこの“BE HEARD”をUBERやAirbnbと並ぶくらい世界的にメジャーなサービスにしたいと考えています。UBERが車に乗りたいユーザーと乗せたいドライバーのマッチング、Airbnbが泊まりたいユーザーと貸し出したい家主のマッチングなら、“BE HEARD”は話したいユーザーと話を聞いてあげたいリスナーのマッチングです。“BE HEARD”のターゲットは全世界。老若男女のすべてがユーザーになりえます。このサービスで世界をまずは獲りたいですね。目標は「2020年までに世界規模にまで大きくする」です。

2020年以降は、私はビジネスの世界から引退して、世界中の識者を集めた「世直し集団」を創る計画です。世界中から、その道のエキスパートを集めて、世界を今後どうしていくべきかを議論して道筋を定める。そして、世直しの実行までする集団を作りたい。

一流の政治家や文化人、芸術家、文芸家、科学者、哲学者を集めた「世界の世直し集団」を創る。そして世界をより良く変えていく。それを自分の命を懸けてやっていきたい。それが私の最終的なビジョンです。

望月さんとはお互いが学生時代からの仲。同じ大学で同じ元学生起業家。今でも2か月に一度はご飯を一緒にさせてもらう。僕は彼ほど起業家気質に溢れる人を他に知らない。根っからの起業家精神。寄らば大樹の陰の真逆、独立不羈(ふき)をまさに地で行っている。幕末期に生きていたら、高杉晋作のようだっただろうか。高杉もあの時代に中国上海に渡り、世界を見ている。その後、帰国して農民集団「奇兵隊」を結成した。

そういえば、だいぶ以前に渋谷の寿司屋で二人で飲んでいる時に、僕は彼にこう言った。「望月さんはGoogleのような世界的なITサービスを作ると言ってるけど、望月さんは経営者のタイプとして営業会社の経営者的なにおいを持っている。もともと学生の営業部隊をつくり、通信の販売代理で資金を貯め、今のリジョブも営業部隊が中心だ。この自分が放つ経営者のにおいというのは、なかなか変えれるものじゃない。だから、望月さんがITサービスをやってもあまりうまくいかないんじゃないか。この経営者としての持つにおいを変えるのは本当に大変だ。不可能に近い。自らの経営者のにおいを変えて自己変革し、それに合わせて事業体も変化させていくことができたのは、サイバーエージェントの藤田さんとかディーエヌエーの南場さんくらいじゃないか」。そんな話をした。その時、僕の記憶では、望月さんと少し感情的な話になり、場の空気が気まずくなったのを覚えている。

いまここで改めて謝りたい!望月さんの志の高さ、その決断力と実行力。素晴らしい。5年前とは、いま彼の放つにおいは明らかに変わった。まさにITの力で世界的なサービスを生み出しそうな雰囲気がする。土壌は整った。ぜひ“BE HEARD”で世界を獲り、世間をアッ!と言わせてもらいたい。期待してます。

「生涯起業家」望月 佑紀(株式会社リジョブ創業者)(もちづき ゆうき)

XVOLVE CEO

慶応義塾大学経済学部3年生の時に経営者になることを決意し100人の経営者に会いに行く。大学4年生でオネスティ(現:株式会社リジョブ)を学生起業。その後、通信の販売代理業務で資金を貯め、数々の事業を立ち上げた後、求人サイト「リジョブ」をオープンし軌道に乗せる。2014年に会社を約20億円で売却、単身でドイツに移住。ドイツを拠点に世界中を旅して見聞を広める。2016年に新サービス「BE HEARD」をローンチ。現在はベトナムのホーチミンを拠点に世界展開をもくろむ。趣味はダイビングとビリヤード。

関連記事

「M&A」カテゴリーの記事

※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。

INOUZTimesの最新ニュースをお届けします
INOUZTimesの最新ニュースをお届け!

公式アカウントをフォロー