グローバル展開には人事評価改革が必須
あしたのチーム代表の髙橋です。今日は当社の支援事例もまじえて、人事評価制度の有効性についてお話させていただきます。よろしくお願いします。
私が代表取締役会長を務めている「あしたのチーム」という会社は、設立10周年を迎えたばかりの、まだ若い会社です。東京に本社をかまえていて、全国での活動拠点は計56拠点。全国47都道府県すべてに営業拠点をもっていることになります。組織活性や人事の領域のプレイヤーでいうと、リクルートさんやエン・ジャパンさんのような大手も含めて、「すべての都道府県に営業拠点を開設する」ということを成しとげた会社はほかにありません。私たちが本気で、中小・零細企業、小規模事業者に向けたサービスを展開していることが伝わるかと思います。
また、海外においては、2015年に台湾、2016年にシンガポール、2017年に上海、2018年に香港に法人を設立しています。いま、日本は「エンゲージメント後進国」「生産性後進国」などといわれており、アジア新興国が台頭するなかで日本企業は非常に悩んでいます。グローバル展開する企業が現地スタッフをマネジメントするとき、日本国内で戦後70数年間続けてきた人事評価制度がなかなか通用しない。そんな実態があるなか、私たちは少しずつ活動の幅を広げています。
私自身の略歴について、少し触れておきたいと思います。1974年生まれで金融畑の出身です。2002年、設立3年目のベンチャー企業だったプリモ・ジャパン株式会社に入社し、20代から取締役副社長として経営全般と人事業務に携わりました。社員が数十名だったところから500人規模の企業へ、そしてブライダルジュエリー業界シェア1位へ、急成長を実現させました。そのなかで、いまの「あしたのチーム」のサービスの原型を確立させ、リーマンショック直後の2008年に起業して現在にいたります。
社会的な活動として、2018年2月に一般社団法人スマートワーク推進機構を設立。全国の中小企業を対象として、事業承継と企業防衛における課題解決を目的とし、人事評価制度の有効活用に関する啓もう活動を展開しています。医療法人社団 平成医会の島田潔理事長、プロバスケットボールリーグ・株式会社千葉ジェッツふなばしの島田慎二代表取締役社長、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授、第一勧業信用組合の新田信行理事長といった方々を理事に迎え入れ、政策提言を含めた活動を全国で進めています。
企業に対する人事評価規定の届け出義務化や、「過去に所属していた会社における評価データを個人に帰属をさせ、転職時に活用できるようにする」といったことを目指した活動をしています。
地方企業にかかる賃金アップの重圧
それでは、「働き方改革と人事評価」という題材に沿ってお話ししましょう。働き方改革関連法案が2018年の通常国会で成立し、2019年、2020年、そして中小企業の同一労働同一賃金化が2021年と、3年間にわたって施行されていきます。大企業だけでなく、中小企業の経営者にとっても「働き方改革」が大きな課題となったといえます。この課題解決のカギを握っているのが、人事評価制度の抜本的な見直しと適切な運用にある。今日はそのことをお伝えしたいわけです。
どんな改革を迫られるのか。まず、経営上、利益に直結する給与についてみてみましょう。これは単純に、「アップすることを迫られる」といえます。最近の日本経済新聞に出ていましたが、最低賃金について、政府は全国で引き上げる意向を示しています。2018年の最低賃金は、前年比26円増となる874円でした。おそらくこのまま、「全国加重平均を1,000円まで引き上げる」という政府の方針は変わらないでしょう。毎回の改定で約30円ずつ上昇していっているので、このままいけば、2022年には全国加重平均は1,000円を達する見込みです。
地方では約3割の就業者の方が最低賃金ギリギリの賃金で働いています。当然、企業側は毎年の最低賃金法の改正にあわせたベースアップを余儀なくされているというのが実情です。私は講演で全国を回っています。そのなかで、街を車で走っているとコンビニや商店の貼り紙求人には、1円単位のアルバイト時給を記載している例が、最近、本当に増えたと実感しています。今後、この「1円単位で上げる」戦いが、よりいっそう厳しくなっていくでしょう。
優秀な人材から退職していく非情な現実
それでは次に、人材採用の話に移ります。2018年7月の有効求人倍率は1.63倍です。都市部のベンチャー企業に限定すれば、3倍以上になります。最低賃金だけでなく、全国の有効求人倍率も上がり続けているのです。「もはや高どまりするのではないか」といわれていますが、じつはまだまだ有効求人倍率は上がっているのです。
リーマンショックより以前、そしてバブルの絶頂期をも超える水準に達している状況下で、 うまく人が採れず、採用競争に負けている企業は、社員の退職にともなって衰退していきます。その際、どんな方が辞めていくかというと、優秀な方から辞めていく傾向があります。需給バランスが崩れているなかで、現状のまま仕事を続けることをすすんで選ぶ方はいません。チカラがある方は、新しい会社に行きますよね。そんななか、生き残りをはかるために、企業はなにをしたらよいのか。それが、みなさんの関心が強いところではないかと思っています。いま、この会場に立ち見が出るほどの方が集まってくださっているのも、そういう関心からなのでしょう。
企業も従業員も負担を感じる法施行
解決策の話に入る前に、もう少し今回の働き方改革関連法の解説を続けます。従来からの変更のポイントは、残業時間の上限についてです。時間外労働の上限を年720時間、月100時間に設定するというもの。これは明らかに会社側が不利になり、従業員側に対してのみ有利になっていくものです。
ただ、残業代は減ります。これは会社側にメリットがあり、従業員側にはデメリットになります。大和総研がまとめた調査結果によると、「働き方改革」により残業時間の上限が月平均で60時間に規制されると、残業代は日本全体の最大値で、年間8兆5,000億円減少するとのことです。
また、新聞報道ではあまり大きく出ていませんが、中小企業では2023年4月、割増賃金率の猶予措置廃止が始まります。これはつまり、同年3月末をもって「時間外労働60時間越え×1.25」の猶予期間が終わるということです。以降は、中小企業であっても、割増賃金は50%増で計算することが義務づけられるようになります。いままでは法定外休日の日曜日の出勤時のみ割増賃金が発生していましたが、これ以降は、平日の通常残業においても60時間以上の場合は50%増になっていくのです。この負担増は非常に大きいといえます。
そして、もうひとつ負担増になる変更があります。今回の関連法案の目玉と言われている同一労働同一賃金化です。中小企業は2021年4月まで2年間の猶予が与えられました。これは、それくらいの時間をかけて準備をする必要がある厳しいオペレーション変更が今後課せられていくということを意味しているのです。
つまり、雇用契約書の内容を問わず、働いている仕事の内容が同じであれば80%相当以上の賃金を年収比例で支払うことになります。正社員と非正社員において「同一労働をしていない」ということをきちんと会社側が証明できない限りは、あらゆる従業員に80%相当以上の賃金を支払うことが義務になります。
このあたりの制度改革についても、私たちの人事評価制度の導入ニーズが拡大している要因になっています。その証拠に、私たちのクライアント数は、愛知県よりも沖縄県のほうが多いのです。経済の規模でいえば愛知県より圧倒的に小さい沖縄県。でも、インバウンドも含めたサービス業、観光業がさかんになるなかで、人材の獲得競争が激しくなり、非正規社員の方々の賃金が上がってきています。どうせ賃金を上げるなら、「同一労働同一賃金対策にもとづいて、職務をベースにきちんと目標設定をして、その成果を賃金に反映していこう」と考える経営者が増えてきているのです。
クラウドで人事評価し法施行にそなえる
こうしたニーズに対して、私たちが提案するサービスをご紹介させてください。商品名は『コンピテンシークラウド®』です。これは、人事評価に特化したWebシステムです。その会社の実情にマッチした評価項目を設定し、クラウド上で管理できます。各評価項目とともに、それらのウェイト設定、賃金との連動など、人事評価にまつわるデータが設定・管理しやすくなります。
とくにシステム構築面における「カスタマイズ」と、制度構築面における「コンサルティング」の2つの事業にチカラを入れてきました。だからこそ、非常に汎用性が高いのが特徴です。お客さまからのさまざまなご意見・ご要望を随時反映し、バージョンアップを続けています。
既存のシステムには初期開発費用が高く、完成まで時間がかかってしまうというデメリットがありました。当社は、人事評価制度をクラウドシステム化するにあたり、数々の機能を搭載しながらも、圧倒的に低額な導入費を実現しました。設立して間もない企業や従業員が少ない企業から、数千名規模の企業まで、幅広い要望におこたえできるサービス領域をもっています。