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「給与はコストではなく投資」正しい人事評価がリターンを増やす

改革を支援するプロから学ぶ経営者のやるべきこと #2

株式会社あしたのチーム 代表取締役会長 髙橋 恭介(たかはし きょうすけ)

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「給与はコストではなく投資」正しい人事評価がリターンを増やす

2018年9月、「ケーススタディから学ぶ働き方改革カンファレンス」が開催されました。「働き方改革」に成功している企業のキーマンや「働き方改革」をサポートしている専門家のみなさんが、自身の体験を語りました。
※本記事はあしたのチーム代表の髙橋氏講演から抜粋・編集したものです。

[概要]
ケーススタディから学ぶ働き方改革カンファレンス
2018年9月19日
主催:イシン株式会社
協賛:アトラエ、あしたのチーム、Chatwork、ヒューマンキャピタルテクノロジー、INTLOOP、AKASHI
協力:日本経済新聞クロスメディア営業局

[基調講演]
「なぜあの会社は働き方改革を成功させることができたのか?」

[スピーカー]
あしたのチーム 代表取締役会長 髙橋 恭介氏

※働き方改革カンファレンス (2018年9月)で行われたセッションより抜粋・構成しました。

HR領域の専門家が説く法改正への対策

来年4月から施行される働き方改革関連法案は、企業側からしてみるとまぎれもなく「向かい風である」といえるものだと思います。それにどう立ち向かい、そなえていくか―─。具体的な対策をお話ししたいと思います。

ここで重要なのは、「8兆5,000億円」です。先にお話しした通り、大和総研が算出したデータによると、「働き方改革」が進み、残業時間の上限が月平均で60時間に規制されると、年間の残業代は日本全体の合計で、最大8兆5,000億円減少するといいます。そこで問題となるのは、「その浮いた残業代はどこにいくのか」というところですね。

もしこの金額が従業員に回らないのであれば、給与ダウンになります。従業員側からすれば「生産性を上げると、給与が減る」。これでは明るい未来が担保されているとはいえません。従業員のモチベーションは低下するでしょう。「個人生産性を上げたら企業の業績がさらに上がり、給与も上がる」という循環をつくることが重要だと、強く指摘させていただきたいのです。つまり、「8兆5,000億円」は、従業員に再分配されるべきなのです。

私たちが2018年に実施した残業時間についての調査結果をお見せしましょう。少し分母が小さいですが、1つのトレンドがはかれるものではないかなと思っています。「世間で働き方改革が推進される中で、あなたの会社では残業時間は変わりましたか?」という問いに対して、「確実に残業が減っている」「残業が減った気がする」という回答は全体の22%程度で、そんなに多くないのです。

さらにその方々に「残業時間が減った結果、年収はどうなりましたか」と質問したところ、「減った残業時間分の残業代が減り、年収が下がった」との回答が31%、「減った残業時間分の残業代の全額分ではないが、年収は下がった」という回答が28%でした。生産性を上げていったものの、自らの賃金の上昇にはつながっていないということが、実態として浮かび上がってきてしまったのです。「年収はあまり変わらない」という方をあわせると、ほぼ100%の方が再分配の恩恵を受けることができていないということが判明しました。

さらに、減った残業と給与についても調査しました。「残業時間が減ったことで年収が下がることに対して、会社側は救済の措置をとりましたか」との問いに対しては、「賞与額またはインセンティブの金額上乗せを行った」(15%)、「基本給の引き上げを行った」(30%)との回答率でした。救済措置を取っていない会社は半数を超えたわけです。残業が減ったことによって所得が減ってしまっては本末転倒。生産性の向上と適切な評価にもとづいた給与の支給が急務なのです。

人事評価に前向きになれない日本

端的に申し上げます。私は10年間ほどもっぱら「人事評価」というテーマで講演していますが、じつはこの「人事評価」という4文字は、経営者・管理職・一般社員の方々、あらゆる立場の方々から、あまりいいキーワードとして捉えていただいていないという実感があります。そして歴史をひも解くと、残念ながら日本の人事制度改革、もっといえば狭義の「人事評価制度の改定」は、「人件費の抑制を目的として制度変更してきた」という負の歴史が存在するのです。

だからこそ、いまになって「エンゲージメント」という言葉が叫ばれているわけですが、なかなかそこに一足飛びには向かうことができないのです。まずは、従来の目標管理制度の形骸化ともいえる現状を変えていくことこそが、めざすべき組織活性につながっていくと考えています。

終身雇用を前提とした年功序列制度というのは、日本の高度経済成長期を支えた日本独特の「労使の関係性」の仕組みだったわけです。ここに企業別の労働組合があり、学卒一括採用システムがありました。これは世界の先進国のどこを見ても、類を見ない成功モデルだったのです。しかし21世紀に入り、人材の売り手市場時代に突入し、デフレ脱却がテーマとなり、グローバル化が進むなかにあって、過去の成功体験が通用しない時代に突入しました。

理想形よりもまずマイナーチェンジを

そうした流れを踏んだいま、すべての企業の経営者・人事の方々が人事制度改革を企図しています。「ダイバーシティ」「エンゲージメント」「ティール(命令を与えるボスも永遠に追求するべき目標もない、自律的に変化し続ける組織)」という3つのキーワードがアメリカから入ってきて、組織マネジメントの理想形のひとつとして確立しつつあります。私自身はもう少し足元を見て、いまの評価制度・目標管理制度のマイナーチェンジから取り組むことが重要ではないかと考えています。

評価制度による効果として期待しているのは、業績を上げることであり、優秀な人材の獲得につなげることであり、離職率を下げていくことであるということです。そして、いまの日本の目標管理制度のなかに足りないものでいうなら、「人材、とくに管理職人材の育成」というのも注視したいテーマのひとつです。

もし、いまでも「人事評価」ではなく「人事考課」という言葉を使っていらっしゃる企業があるとすれば、いま列挙した効果はありません。考課という言葉を使っている時点で、査定のための仕組みという枠を超えられていないのです。「人事評価」と「人事考課」という言葉の違いは明確にあります。人事評価制度は人材育成に資するものであり、人が企業で働く動機付けにつながっていくもの。そこまで見すえて人事評価制度の構築・運用を進めていらっしゃいますか? そういう問題提起をさせていただきます。

行動目標の真の意味を理解できていない

私たちは、人事評価制度を自社で運用できるようになるクラウドシステムを提供しています。その経験から、人事評価制度を運用するポイントを導き出しました。1つは、「行動目標に着目する」ということです。従業員のモチベーションを引き出しつつ仕事の成果を向上させることを目的とした「パフォーマンスマネジメント」の裏に、コンピテンシーを活用するのです。すなわち、「行動変容が伴わなければ成果は上がらない」という考え方を使うのです。

日本企業でも、この流れを「ぜひ自社に取り入れたい」という前向きな姿勢をもつところが増えてきました。しかし一方で、その真意を深く追求できていないケースが多いと思っています。「うちの会社はコンピテンシーがありますよ」「うちの社員は行動目標がしっかりありますよ」といっても、どうでしょう。目標の自己設定をしておらず、ディクショナリーはあっても抽象度が高いケースが見受けられます。

そして5段階で評価をしているケースもあります。かなり各論に踏み込みますけど、ほとんどの会社がそのような実態になっているのです。結果、定性的な目標に対する評価には、ほぼ差がついていないというのが実態です。だとすると、実際の目標管理制度における最終評価点は、なにによって差がついているのでしょうか。結果的には、成果目標に対する結果により点数に差が出ている、というのが多くの会社の実態です。

そしてもうひとつ、問題点を指摘させていただきたい。目標管理制度と報酬制度を切り離して運用している会社が非常に多いということです。日本の社会はいまだに終身雇用を前提とした年功制がベースにあります。なぜなら、単年度で一人ひとりの社員に目標管理制度の評点をもってして賃金格差を出すということを嫌ってきたからです。

経済産業省のレポートの指摘にある通り、「賃金の伸縮性がない」というのがいまの日本の大きな課題です。賃金の伸縮性とは、マイナス査定のように基準内賃金が減額することもありえるということ。いまの日本企業のなかでどれだけ実現しているのでしょうか。これは、信賞必罰の徹底のために、さらには成果を正当に評価するために、大きな課題です。

人事評価制度を活用して、正当な評価を

「正当に評価をする」ということの裏には、プラス評価もあればマイナス評価もあるわけです。そういう意味で私たちが人事評価制度の活用ポイントとして2つ提案したいことがあります。「行動目標を具体的に設定する」というのが1つ目。そして、それを「自己設定する」というのが2つ目です。自らが具体的な目標を設定し、内発的動機でプロセスを掲げていくことが必要なのです。

成果は、「行動×能力」というかけ算です。行動が変わらない限りは、恒常的に好業績を出すことはありえない。ラッキーパンチはありえますが、ベースとしての好業績はなしえないということです。そして、この一人ひとりの成果が企業の業績とリンケージしている、すなわち経営計画が全員の目標にきちんとブレイクダウンされているのであれば、絶対評価によってきちんと賃金を上げていったとしても、労働分配率は決して上がりません。つまり、「経済におけるデフレ脱却と、企業が売り手市場のなかで労働分配率の上昇を食いとめるための方法は、給与を上げることではないか」という逆説的なアプローチです。

「給与を下げる」というコストカットは、会社の売り上げが変わらなければ、労働分配率の減少につながるかもしれません。そして、まさにいまがその状態といえるかもしれません。「売上が上がっても賃金はステイである。だから労働分配率は下がっている」という統計データがあります。しかしいま、企業がめざすべきは、給与を上げながらそれ以上に業績を上げていきデフレ脱却を果たすことでしょう。経営者の発想の転換が非常に大切だと思います。「給与はコストではなく、投資である」という思考の転換を実現するためにも、人事評価制度の活用は不可欠です。

厳しさとやさしさを兼ねそなえた人事評価を

少し情緒的なお話をさせてください。現在の日本企業の評価制度は、GDPが右肩上がりであり終身雇用が継続できた時代の考え方をいまだに引きずっているというのが、まぎれもない事実なのです。つまり、給与は年功によって自動的に上がっていく。やさしいですね。でも、やさしさ一辺倒の評価の報酬の仕組みでは、これからの時代は真っ当な評価を実現できない。

厳しさとやさしさの両方をもってこそ、人材育成が可能になります。私はこの厳しさとやさしさをあわせもつことこそが、いまの時代にあった評価制度であり報酬制度のひとつの考え方だと主張させていただいています。

いま、私たちのサービスをサッカーのJ1、バスケットボールのB1も含めた80のプロスポーツチームが導入しています。一般企業の導入については、ほぼすべての業種業態を網羅しています。そして、そのお客さまの従業員規模が「10名未満」の小規模事業者が3割です。就業規則・賃金規定の届け出義務のない小規模事業者。それが3割なのです。そして30名未満が7割を超えています。小規模事業者においてこそエンゲージメントを上げ、業績を上げていく人事評価制度の適切な運用というものが、いまほど必要とされている時代はありません。

#1 いよいよ「働き方改革」元年! 残業削減を強制される前に手を打て

髙橋 恭介(たかはし きょうすけ)

株式会社あしたのチーム 代表取締役会長

1974年、千葉県松戸市生まれ、千葉県立船橋高校出身。東洋大学経営学部卒業後、興銀リース株式会社に入社。リース営業と財務を経験する。2002年、創業間もないベンチャー企業であったプリモ・ジャパン株式会社に入社。副社長として人事業務に携わり、当時数十名だった同社を500人規模にまで成長させ、ブライダルジュエリー業界シェア1位に飛躍させた。
同社での経験を生かし、2008年、株式会社あしたのチームを設立、代表取締役に就任。現在、国内47全都道府県に営業拠点、台湾・シンガポール・上海に現地法人を設立するまでに事業を拡大。1500社を超える中小・ベンチャー企業に対して人事評価制度の構築・クラウド型運用支援サービスを提供している。給与コンサルタントとして数々のセミナーの講師も務める。2018年6月より代表取締役会長に就任。

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