睡眠 is 灯台下暗し
連日の激務による寝不足で霞がかかったかのように頭がぼーっとしているのに、会社の未来を左右する重要な経営判断を下さなくてはいけない…。こんな辛い経験をしたことがある経営者は少なくないだろう。
諸説あるが、ナポレオンの睡眠時間は3時間だったという。どうすればナポレオンのように短時間で効率的な睡眠がとることができ、頭脳をクリアな状態に保てることができるのか。それは、まさに寝る暇もなく飛び回っているエグゼクティブたちが密かに関心を寄せるテーマだ。
本書は睡眠時間の「量」ではなく、睡眠の「質」に注目。多忙なビジネスマンなどを対象に、睡眠の質を高めるための具体的なメソッドや眠気に打ち勝つメソッドなどを紹介している。
睡眠の量が圧倒的に不足したり、睡眠の質が悪い状態が慢性的に続くと、脳が自分自身を守るために瞬間的に居眠りを行う防御反応「マイクロスリープ」が起きる。なんの前触れもなく、脳が突然活動を中止する結果、意識が数秒間、飛ぶのだという。
スタンフォード大学の1990年の調べによると、こうした睡眠障害による経済損失は産業事故も含めて700億ドル以上にもなるという。確かに、「クライアントの重要な商談中」「移動中、電車待ちの駅のホーム」「会食帰りの車が行き交う信号待ち」。例えばこんな状況の時に意識が飛ぶ、マイクロスリープがわが身に起きたらと考えたら、ゾッとする。
私自身、こんな経験をしたことがある。社会人になって数年目、営業チームの一員として企画書や提案資料との格闘に、連日連夜、夢中になっていた頃。帰宅してベッドに入っても頭の中は仕事の興奮状態が渦巻き、寝ていたつもりでも脳は寝ていなかったのだろう、出先から会社に戻る途中の信号待ちでマイクロスリープらしき現象に襲われたのだ。
シビアな商談を首尾よく終えホッと一息ついて気が緩んだせいか、一瞬意識が飛び目の前が真っ白になった。次の瞬間、気がつくと、クラクションを激しく鳴らしながら鼻先をこすらんばかりの近さで大型トラックが目の前を通過して行ったのだ。いま思い出してもゾッとする…。
経営者の頭の中は“破裂しそうな風船”
ビジネスという戦場に立つ限り、思考を常に研ぎ澄まし、クリエイティブでいたいと心底思う。それはきっと、私だけではないはずだ。
そして、常に研ぎ澄ました思考を持つために、経営者は各人各様のリフレッシュ方法を持つのではないだろうか。まるで、破裂寸前の風船から、割れないように慎重に、かつ迅速に空気の入れ替えを行うかのごとく。
ベストなリフレッシュ方法はなんなのだろうか。常にベストコンディションでいるためにはなにが必要なのだろうか。著名経営者や知り合いの経営者に話を聞いても、自分には合っている気がしない。そんな時に手にしたのが本書である。
睡眠は人生の3分の1を占めるという。残された3分の2の時間のパフォーマンスを上げるべく、人間は睡眠をとっている。睡眠時には、どんな科学でも、どんな医療でも治療できない脳と臓器のメンテナンスが行われているのだそうだ。
睡眠を“最強の味方”とするか“最凶の敵”とするかは、自分次第だ。どうせ眠らなければならないのなら、私はその質を徹底的に高めていきたい。
私は本書を読んで、睡眠が日中のパフォーマンスを向上させてくれることに気づいた。いや、気づいている人は多いかもしれない。ただそれは、当たり前すぎることが故に、ないがしろにしてはいないだろうか。
人生において大切な3分の1の時間を見つめ直す、良い機会となった。
睡眠が、明日の私のパフォーマンスを高めてくれる。
ああ、早く眠りたい。
スタンフォード式 最高の睡眠
画像をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします