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メンバー全員が会社の株主。言い訳できない相互評価

[後編]「アトラエ流」プロチーム論

株式会社アトラエ 代表取締役CEO 新居 佳英(あらい よしひで)

メンバー全員が会社の株主。言い訳できない相互評価

PHOTO:Atrae,Inc.

[前編]出世の概念がない「ホラクラシー・ベンチャー」の働き方では究極のフラット組織、ホラクラシー(holacracy)を標ぼうするアトラエでの働き方をお届けしました。後編では、さらなる「フラット化」への挑戦や独特のIPO戦略などに迫りました。

どんな人でも働きやすい

―一方で、新卒や入社年次の浅いメンバーは既存メンバーに比べて高度なスキルは期待できず、パフォーマンスは見劣りしがちです。そこで育成が大切になってくると思うんですけど、それはどんな方法で?

アトラエの新卒比率は70%。新卒は重要な戦力です。でも会社として育成らしいことをやっているのかと言われれば、ほとんどなにもやっていません。いきなり現場に配属します(笑)。

スキルアップは自発性にゆだね、それに先輩たちが最大限の協力をするというカタチですね。たとえば、データベースについて学びたいメンバーがいたら詳しい先輩をつかまえて、自分で勉強会を企画してその先輩のスケジュールを押さえる。そんな感じです。

会社で研修会を企画したり、外部研修を利用することはありません。仕事ができる優秀な人で「自分は研修制度で成長しました」と思っている人っていないでしょう?

でも、おもしろいもので、そんな優秀な人でも、いざ自分が育成する側に回ると研修会を企画したり、外部研修を調べ始めたりする。

それより、早く育成したいと思うなら、現場という試合にガンガン出したほうがいいんじゃないかな。泳げない人を最速で泳げるようにする方法とは、机上で泳ぐフォームを教えることではなく、とにかくプールに入れることですよね。

―このままやっていくのが難しそうなメンバーが現れたときはどうしているんですか。

まず本人にきちんと説明します。それは「この会社にいても、もしかしたらキミは成長できないかもしれない。評価もされないかもしれない。結構ドライな会社なので、長くいるからといって給料が上がっていくわけでもない。だから、キミにとってこの会社の環境は、もしかしたらかなり厳しい、極論、生涯レギュラーとして試合に出られないかもしれない。だったら違うところに行ったほうがいいかもしれない。もしくは、意識を変えてがんばり直すという道もある」。

こんな具合ですね。そして「どっちにする?」って質問し、最終判断は本人にまかせます。私から「だから辞めて」と言うことはありません。

そして、この会社が大好きで、少しでも貢献したい気持ちがあるなら、会社なのでいろんな仕事があるので、その人なりの仕事を用意します。ただし当然ながら給与もその貢献に見合ったものになりますが。

―小さな組織の方がメンバーと経営層の距離が近いので、目線を合わせやすいというか、価値観を共有しやすいですよね。新居さんはアトラエ独自の価値観をすごく大切にしていて、そこが会社の命であり、優位性を担保していると考えているように思います。となると、規模拡大ではなく少数精鋭で“アトラエ文化”を突き詰める道を志向しているのかなとも感じるんですけど。そこはどうなんですか。

アトラエ文化を大切にしつつ、規模も拡大することは十分可能だと思っています。というのも、私達がやっていることは、意欲ある人がストレスなく働くことができ、イキイキと仕事ができる環境づくりですから。

アトラエは、ビジネスに対してまっとうに向き合う意志がある人にとっては、多くの人にとって働きやすい会社だと思っています。そういう意味では、どういうふうに融合していくかという課題はあると思いますけど、M&Aもひとつの戦略オプションとして考えています。

新陳代謝が速い業界ですから、大胆な業態転換も躊躇しません。少なくとも10年後、20年後、いまの事業を未来永劫やり続けているイメージはありません。新しいことに挑戦し続ける会社が勝つと思っていますし、私を含めて守るより攻めることが好きなメンバーが集まっていますから。

いま、アトラエにとって大きな課題のひとつはスケール。私達はまだ売上10数億円で利益も数億円レベルの会社。社員も40人程度ですから、いくら理想論を語っても社会的影響は非常に軽微だと自覚しています。

ですから、どうやってスケールしていくかが何より重要です。しかも、なんでもいいから売上を拡大すればいいというのではなく、自分たちが本当に誇らしいと思える事業をつくってスケールしていきたい。

こうした難易度の高い目標を実現するためには、運と縁とタイミングをつかみきれるかどうかも凄く大切です。そのためには、不安と葛藤しながらも挑戦し続ける、バットを振り続けるしかない。そう考えています。

研究対象になる会社に

PHOTO:INOUZ Times

―評価制度についてはいかがなんですか。どんな組織でも評価に不満を抱く人はいるものですけど。

確かに、評価というものには正解がなく、必ず不満がつきまといます。それを解消するために、現在のボードチームミーティングで最終決定する仕組みから、今後は評価される人が自分を評価するメンバーを選び、その仲間達から評価されるような仕組みに切り替える予定でいます。

そうなれば私は評価にさえも評価者のひとりとして以外は関与しないということになります。評価者は6名を想定しています。

この仕組みのキモは、自分が評価されると同時に、自分も誰かを評価する側になるという点。「この人だったら自分を適切に評価してくれる」と思ったメンバーを指名するので、その結果については文句の言いようがありませんよね。

それと、自分もほかのメンバーから評価者に選ばれるので、評価する側の難しさも理解できます。この仕組みであれば、例え経営者に文句を言ったとしても、別に私が評価しているワケではないし、何も変えられない。誰も私に向かって不満を言わなくなるという点も大きなメリットです(笑)。

不満があるとしたら、やれることはこの仕組み自体をどう変える、ということだけなんです。もうひとつ、この仕組みのいいところは、評価についてはこれまでボードメンバーミーティングを構成する私達が細部を見ていましたが、そうしなくてもキチンと評価できる点。国内でも海外でも、どこに支社をつくっても同じように適切に評価制度を運用できると期待しています。

―もうひとつ意地悪な質問なんですけど、なぜIPOをしたんですか。理想の会社をつくりたいなら、オーナーシップを十分に発揮するために、あえてIPOをしないという方法もあったんじゃないかなと。

それは、おっしゃる通りですね。ただ、私はIPOというのは例えるなら高速道路のようなものだと思っているんですよ。一般道で行っても目的地には到達できます。ですが、高速道路に乗ったほうが早く着けることが多い。

ただし高速道路に乗ると好きなところで降りることができないとか、止まることができないなどの制約がありますが、それらを苦にせずに走り続けられるレベルの会社になっているのであれば、上場したほうがかなりの確率で目標の実現可能性が高まると思っています。

とにかく自由にやりたいだけなら、確かにIPOはしないほうがいい。一般道ならガソリンが切れたらガソリンスタンドに行けばいいし、お腹が空いたら自由に車を止めて目に止まったレストランに立ち寄れます。

でも、私達は世界中の人々から尊敬されたり、世界中の人々を魅了するような会社をつくりたくて、1日でも1年でも早く、その目標に到達したいと考えています。だから、IPOというオプションを行使したんです。

―IPO後にメンバーに対して「特定譲渡制限付株式」として新株を発行しましたね。これにはどういう意味があるんですか。

会社がチームとして一致団結して、株主価値の向上を常に意識しながら会社経営を行うことをより徹底するためです。特定譲渡制限付株式とは、一定期間の譲渡制限を付すもの。今回は3年間の譲渡制限期間を設定しました。つまり、市場で売却できるのは3年後、というワケです。

ストックオプションとは大きな違いがあり、ストックオプションは一定期間経過後にあらかじめ決めた価格で新株を買える権利を付与するもの。ストックオプションを付与した時点では手元に株はありませんし、多くのケースでは行使するタイミングでその全てが売却されます。

一方、特定譲渡制限付株式は、譲渡制限はあるものの、当初より株主としての権利を有することができますし、譲渡制限解除後も一定の税金だけ納めれば継続して株主でいることが可能です。それによって全員が会社の株主になれます。

ストックオプションのように、インセンティブというニンジンをぶら下げたいわけじゃなくて、純粋にこの会社の株主として、そして経営リーダーとして、会社の成長や時価総額などを考える人たちであってほしいという想いに基づき、特定譲渡制限付株式をメンバーに付与しました。

通常は経営者などの経営陣を対象に発行している事例しかないので、それをどうやったらメンバーに出せるか、法律事務所と一緒にいろいろ知恵を絞りました。おそらく、メンバーを対象に発行した事例は、世界初のケースなんじゃないかと思います。

―今後の目標について、具体的な数値目標はありますか。売上はいくら、従業員数は何人といったような。

数値目標はないんですけど、スタンフォード大学とかハーバード大学などの組織論や経営学の教授たちがアトラエを研究テーマに取り上げたいと思ってくださったり、インタビューするために来日したりするような、そんな魅力ある会社になりたいですね。そうなったら、私達がつくりたかった組織をつくりえたという、ひとつのマイルストーンになりえると考えています。

連載記事

[前編]出世の概念がない「ホラクラシー・ベンチャー」の働き方

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