なくならない日本企業のコンプライアンス違反
コンプライアンスとは「法令遵守」や「企業が法律や企業倫理を遵守すること」という意味で使われます。日常生活でも法律を守りながら生活しているように、企業活動を行う上でも法律や倫理を侵さないように活動しようという趣旨から使われています。
コンプライアンスの徹底が叫ばれる中においても、日本企業による不祥事は後を絶ちません。特に昨年は自動車メーカー、鉄鋼メーカー、非鉄金属メーカーなど、歴史ある企業の話題が続いた一年でした。
不祥事が発覚した場合、リコール措置や調査など、コンプライアンスを徹底すれば防ぐことができた莫大な費用と手間がかかることになります。それが引き金となり、製品やサービスの質とは無関係に企業の存続が難しくなったケースも数多く存在しています。
コンプライアンスへの意識はあまり高くない
本来、守って当たり前。でも業務を進めるうえでは面倒なこともありそう。実際に指示を受ける従業員はどういう印象を持っているのでしょうか。INOUZ Times編集部では100人の社員を対象に「コンプライアンスってめんどうだと思いますか?」というアンケート調査を行いました。
【質問】
コンプライアンスって面倒だと思いますか?
【回答】
YES:54
NO:46
━【調査概要】━━━━━━━━━━━
調査対象:全国の成人男女を対象にしたインターネットリサーチ
平均年齢:39.7歳
性別 :男性47人、女性53人
職種 :正社員
回答数 :100サンプル
調査内容:コンプライアンスに関するアンケート
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暗黙の了解?
コンプライアンスは面倒だと答えた人が若干多いという結果になりました。従業員の立場からすると、法令や倫理は守るべきものという意識は持ってはいるが、会社側から押し付けられているものという印象が強いでしょう。アンケートでは、コンプライアンスを意識すると仕事が中断されてスピードが落ちると感じている社員が多いようでした。
また、会社で決めているコンプライアンス自体がそもそも実態とずれているという意見や、達成するように求めてくる上司が守っていないなどの意見もありました。
それではアンケートの回答の中から主だったものをピックアップして紹介します。
無意味と感じるから
・世間体的な感じで、表面上さえ良ければ良いみたいな感じがある。形骸化。(30代/男性/正社員)
出ました。「意味がない」という意見。2つのコメントでは共通して「守らなくていいという雰囲気」を感じているようです。この空気は社内のどこから出ているのでしょうか?
仕事のスピードが遅くなるから
・効率が悪くなったりするので面倒だと思うが、守らなければいけないので守っています。(30代/男性/正社員)
ただでさえ残業が多くなったり業務が忙しくなったりしてくると、コンプライアンスのための確認作業を面倒と感じるようです。経営者としては、コンプライアンスの達成と成果の両立は当然という意識付けと共に、業務遂行の妨げにならないようなやり方に目を配ることも必要かもしれません。
熟知するのが難しく範囲も曖昧だから
・色々とルールが細かいので理解するまで時間がかかるのでやっぱり面倒ではあると思います。(30代/男性/正社員)
内容がわかりにくいという声も多く聞こえました。業界特有のもの以外に、取引相手との関係から守るべき規則などもあります。「なるべく分かりやすく整理して欲しい」という心の声が聞こえてきそうです。
仕事に融通が効かなくなるから
・売上をあげるためには、多少グレーな部分を判断しなければいけませんが、全て規制されてしまう。(50代/男性/正社員)
コンプライアンスがあるために、融通を効かせられずに売上などの成績低下につながると感じている社員もいるようです。
論理的な回答がずらり
それではコンプライアンスを面倒と感じないと答えた人の意見を見てみましょう。理由としては、コンプライアンスを達成することがひいては自社や自分の身を守ることにつながる、会社の成長につながるといった意見がありました。
・コンプライアンスがあるからこそ、いろいろルールを守って暮らしやすいので(30代/女性/正社員)
・それがしっかりしていないと少し取引する側としては不安。それだけがしっかりしていてもだめだが。(20代/女性/正社員)
・ごく基本的なルールにしたがって活動する事だと思うので、面倒だとは感じません。それよりも、万が一、コンプライアンスに違反してしまった後の対応のほうが、面倒だと思いますし、大変なはずです。(30代/女性/正社員)
・内部統制がないと、企業の良さが失われ、社員の品格が失われると思う。また、長期的に見るとコンプライアンスを重要視できる会社は成長し、社員も魅力ある人材がそろうと考える。(30代/女性/正社員)
・大事なことだから。一人の失言で企業イメージが失墜することを考えれば面倒とは言えない。(30代/男性/正社員)
コンプライアンスを面倒ではないと回答した理由は、経営者の考え方に近いものです。企業を存続させていくために、社会的な責任としてコンプライアンスの達成は不可欠のものという意見です。また、コンプライアンス違反が発覚した場合に、その対応に相当のコストがかかるということにも意識が働いているようでした。
企業全体でコンプライアンスの意識醸成を
アンケートではコンプライアンスを面倒と感じている人といない人とが、ほぼ同数という結果になりました。また、面倒と感じている人でも「必要性を理解している」という声が一定数。まずは一安心だったのではないでしょうか?
とはいえ立場が変われば解釈も異なるのが言葉の怖いところ。INOUZ Timesでは以前、誠実さに対するCEOとCOOの考えの違いを紹介しました。経営チームでもこれだけ認識の違いがでるのが人間です。経営者と従業員では優先度が変わってくることは十分考えられますね。
企業の成長は仕事の効率性とコンプライアンスの達成が両方揃ってこそ。社内に変な雰囲気が出てないか、一度確かめてみるのもいいのでは?
※次ページからは、すべての回答を公開いたします。