「振り返ってみると、M&Aがなければ、今の会社の姿はないよね。M&Aは、IPOとともに成長を勢いづけた最大の原動力だったよ」
いまや、だれもが知る超優良企業を作り上げ、日本を代表するベンチャー企業家となったある創業社長が最近、こんなことを言っていました。「成功へのターニング・ポイントは?」と聞いた際のお答えでした。
ベンチャー企業の聖地、アメリカ・シリコンバレーではいうに及ばず、日本でも、かの「経営の神様」松下幸之助氏や稲盛和夫氏も、買収を繰り返し、ベンチャー企業から巨大企業グループへの脱皮を果たした時期を経験しています。飛躍を遂げたいベンチャー社長にとって、企業や事業の買収は必ず通るべき道なのかもしれません。
しかし、ことはあまりにもセンシティブな話。軽々しく口にし、周囲に相談できるようなことではありません。ましてや相手が同じ社長である場合は……。
そこで今回、INOUZ Times編集部ではベンチャー社長100人にざっくばらんに聞いてみました。
「社長、買収考えたことありますか?」
「資金がない」という考えは得策ではない?
アンケートの結果、なんと買収を考えたことのある/ないは、ほぼ拮抗した結果となりました。それぞれの回答を見てみましょう!
まず、買収を考えたことのある社長の意見は以下の通りです。
■買収を考えたことのある社長
・同業で5億以上の会社。見ているのは売上と特許商品を持っているか
・考えることは頻繁。事業内容とリンクするところを買う。グローバル関係
・常に考えている。実際にしている
・時間を買うという考え
・過去何社か買収している
・採用の一環として。
基本的に、同業の買収などを検討しており、事業を拡大させていく手段として位置づけているようですね。なかには、事業内容や規模はもとより、地域や国籍、なかには在籍社員の保有資格、保有特許の性質など、ピンポイントで条件を絞り込み、かなり詳細に検討している回答が多く、実に印象的でした。
生の声一部抜粋しました。
「以前に買収の経験があるからね。時間を買うという意味で積極的だよ」
「そこの社長とは、数年間いい距離感でお付き合いしていて(ずっとGiveをしていて)、そろそろ打診する時期だと判断して、この前聞いてみた。結果、検討してもらってるよ。一緒にやればきっと上手くいく自信もある」
「めっちゃ考えている。知的好奇心として」
さすが、勢いを感じますね。実に前向きです。
一方で、買収を考えたことのない社長の意見は以下の通りです。
■買収を考えたことのない社長
・そこまでキャッシュに余裕がない。
・まだ自社は成長期
・今でも大変なので
・まだメリットデメリットを整理できていない
・そこまでいききってない
・自社の能力だけでどこまでやっていけるか勝負したい
理由として、資金不足を挙げた経営者が多かったようです。
「考えたことがない」「興味がない」というよりは、「(今は現実的には)できない」という状況なのでしょうか。
実際に、“ない”という意見の中には、こんな回答の社長もいました。
・ない。カネがない。いずれはなりたい。
・今のところはないが、将来的にシナジー効果が見込めて、ビジョンが合いそうな会社があれば検討したい
・会社を大きくしていく上での選択肢の一つとして考えてもいい
小が大をのむ買収で数々の大勝負を挑み、自社を成長させてきたソフトバンクの例もあります。少なくとも、「資金がない」というだけで、買収に対して思考停止に陥ってしまうのは、得策ではないかもしれませんよ。
今回のアンケート、「考えたことがある」という回答はもちろん、「ない」という回答にしても、理由の説明がかなり具体的だったような気がしました。
逆に、一度は真剣に検討したことがあるからこその回答、と読むのはうがった見方でしょうか…。
このアンケートを見て、想定よりも「ある」という回答が少ないと感じたとしたら、もしかして、そんな事情も反映しているのかもしれませんよ。
いかがでしたか?逆視点で“売却を考えたことありますか?”もアンケートしています。社長のホンネ、次回以降も色々と聞いていきます!