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M&Aにより“社長の孤独”から解放された

自社を売却した経営者がホンネを語る

株式会社メディックス 代表取締役社長 小林 秀樹(こばやし ひでき)

Sponsored株式会社日本M&Aセンター
M&Aにより“社長の孤独”から解放された

経営者にとって、大切に経営してきた会社は、「自分の子ども」といっても過言ではありません。親が子どもの幸せを願って嫁に出ることをすすめるように、会社の発展を望むからこそ他社へ売却することもあります。従業員数31名の中堅IT企業、メディックス代表の小林さんもそうでした。2018年6月に、従業員数449名と10倍以上の規模をもつIT企業、アイコムシステックへ持ち株を譲渡したのです。この“嫁入り”の結果、小林さんは会社の継続と、経営基盤の強化という果実を手に入れ、安堵の笑みを浮かべています。中小企業がM&Aで得られるメリットはどのようなものなのか、実体験を語ってもらいました!

※2019年7月、IT・ソフトウェア業界の経営者などを対象にしたセミナー「IT・ソフトウェア企業経営者のための 事業承継・M&Aセミナー  ~事業承継・M&A後の"現在"に迫る~」が開催され、本記事は、セミナー第二部「株式譲渡後も経営を続ける、企業オーナーのM&A体験談」を抜粋・再構成し、第一部「事業承継・M&A後の現在、会社はどう変化しているか?」を抜粋・要約しました。

[概要]
2019年7月17日
主催:株式会社日本M&Aセンター

[講演]
株式譲渡後も経営を続ける、企業オーナーのM&A体験談

[スピーカー]
株式会社メディックス
代表取締役社長
小林 秀樹 氏

リストラがきっかけで起業

みなさん、はじめまして。メディックスの社長の小林と申します。少し自己紹介を兼ねて、会社を設立した経緯をお話しさせていただきます。私はもともとサラリーマンをしていました。30年ほど前、従業員数が20名程度のソフトウェア開発会社に入社。いまもお付き合いしているNECさんの放送営業事業部、つまり放送局向けにシステムを提供しているところの仕事を請け負っていました。

ところが半年ほど経ったとき、会社が開発業務からの撤退を決定。当時、20名ほど在籍していた従業員のうち、3分の1がリストラとなってしまいました。私もその対象者のひとり。転職活動をして、なんとか別の働き口を見つけました。

一方で、NECさんからは「いま携わっている仕事を最後までやってほしい」と、個人的にご依頼いただきました。私は、その仕事を終えるために必要と見込まれる3ヵ月ほど再就職先に入社を待ってもらい、引き続き携わることにしました。しかし、途中で不具合が生じ、開発期間が延びることが判明。それでもNECさんは、「継続してやってほしい」と。私はやむなく、再就職先への転職をお断りして、個人で業務を請け負うことにしました。

当初は私ひとりで進めていましたが、ありがたいことに次から次へと仕事が舞い込んできたため、それでは対応しきれなくなりました。そこで「仲間を集めよう」と思い立ちました。それで、メディックスの設立にいたったわけです。そんな発端での起業でしたから、私には経営の知識がまったくない。それでも運に味方されたこともあり、少しずつ人を増やし、仕事の幅を広げつつ、30年間、会社を存続させることができました。

初の赤字で先行きが不安になった

ところが、ちょうど10年ほど前のことです。テレビ業界がいっせいに地上デジタル放送への切り替えを実施しました。多額の設備投資をして地上デジタルに対応したため、各局は予算の帳尻を合わせる必要があり、その後2~3年間は積極的な投資を抑えてしまったのです。そんななか、放送の仕事を請けている私たちの仕事量は激減。そのときに設立以来はじめて、会社として大赤字を出しました。

「このままでは、自分の経営者としての力不足により、社員やその家族の方々の生活を支えられなくなってしまう」――。とはいえ、社内に有力な後継者候補がいなかったものですから、私は、会社を存続させることに限界を感じました。そんなとき、知り合いから日本M&Aセンターさんを紹介されました。

当時の私の年齢は58歳。すぐに引退する気はなかったものの、そろそろ事業承継を考えなければいけない。M&Aによる事業承継が視野に入りました。これまで一生懸命、育ててきた、自分の子どもともいえる会社。ですから、嫁入りの相手探しについては、信頼できるところにお願いするのがいちばんです。「全国展開していて交渉経験も豊富な日本M&Aセンターさんにご相談しよう」と決めました。

「大会社と一緒になればいい方向に」と社員説得

M&Aを進める際に苦労したのは、財務関連の書類準備でした。私はもともと会社経営を学んでいたわけではないし、年に1回の決算時は会計士さんに頼りきり。決算書を読み解くことはできましたが、作成したことはないんです。そんな私が、さまざまな書類を自分で用意するのは大変なことでしたね。

それだけの資料を提出することは、いいかえれば、「自分の会社のすべてをさらけ出さなければならない」ということです。日本M&Aセンターさんから、「あとでなにかマイナス情報が発覚したら、取り返しがつかなくなりますよ。すべてオープンに」とご説明がありました。

 それにくわえ、一連の作業を、会社の社員には秘密裡に行う必要があります。資料を自宅に持ち帰ったり、土日に誰も社内にいないことを確認してから作業したり――。私ともうひとりの幹部の2人だけで作業しましたが、2週間以上の期間を要しました。

その後、アイコムシステックが売却先の候補に名乗り出てくださいました。はじめて面談でお会いした際、協和エクシオという大手企業のグループ会社にもかかわらず、非常にざっくばらんに接していただきました。2回目の面談時には、先方の田町オフィスにおうかがいいました。夜、お酒をくみかわしながら語り合ったことも。対面でのコミュニケーションを重ねるうち、距離が縮まっていくのを実感しましたね。そのなかで、「この会社なら、私の会社の社員を大事にしてくれる」と確信することができました。その後はスムーズに話がまとまり、契約日を迎えました。

私にとっていちばん大きな仕事は、会社の従業員たちにM&Aの決定を発表する場面でした。全社員への発表の前日、まずは幹部を集めて話をしました。幹部たちは、「なるほど」と。当然、驚いてはいたものの、受けとめてくれました。私の年齢が60歳間近でしたから、今後どうやって会社を存続させていくのか、幹部たちも心配していたようです。

正念場は翌日。全社員を集めて話をしました。やはり社員は驚きを隠せず、「ええ~」という声が上がりました。私が努めたのは、「社員のみなさんは、いまの仕事をいまの環境のまま続けられるんだよ」と伝えること。また、私がいままで通り社長として在職するので、「基本的にはなにも変わらないよ」ということを詳しく説明しました。なにより、「大きな会社と一緒になるので、変わるとしたら『いい方向』に変わるよ」と。社員からは、質問も反論もありませんでした。

資金・人財・与信に絶大な効果

M&Aをしてから、私が個人として会社の銀行融資の保証人をしていたのを、すべてアイコムシステックが引き取ってくださいました。おかげで、自分の老後の心配がいっさいなくなりました。さらに、今後、資金的にまとまった金額が必要になった場合に、いままでであれば銀行にお願いできた限界値の何倍もの金額を、すんなり受け取れる環境になりました。大変ありがたいことです。

人財採用面でも期待しています。これまで、アイコムシステックは年間20~30名程度の採用を行っていますが、うちは年間0~3名程度。しかし今後は、東京に拠点をもつアイコムシステックと、神奈川に本社をかまえる私たちとで協力して、採用活動を実施していきます。たとえば、アイコムシステックに面接に来た、神奈川在住の方に、「神奈川の拠点で働いてみてはどうでしょうか」と誘導するといった、地の利を活かした採用ができると思っています。

お客さまからの信用の面でも、大きな効果がありました。じつは、当社もアイコムシステックも、長期にわたってNECさんの放送映像事業部の仕事をしていたんです。でも、M&Aの話が出るまで、お互いの存在を知りませんでした。NECからしてみれば、私たちが一緒になるというのは好都合。互いが切磋琢磨することで、より高い品質をめざせる環境になりました。

一方で、M&Aのデメリットもあります。財務を担当している管理部の負担が大きくなったことです。いままで当社では作成していなかった書類を、親会社に提出することになったからです。それも年1回ではなく四半期ごと。私たちからすると、3ヵ月ごとに決算をやっているかのような状況です。しかも、上場企業の決算ですから、書類が非常に多いんです。仕事量でいうなら、以前の2倍ほどにまで増えました。

誰かと一緒に経営できる喜び

「株式を譲渡した後、半年~1年ほど経ったら、私は社長を引退したい」と考えていました。でも、M&Aにより忙しくなった業務があるので、いまも継続して社長に就いています。といっても、泣く泣くやっているわけではありませんよ。私はこれまで30年あまり、自分自身がトップに立って経営してきました。相談できる相手は、ほぼいない状態だった。でも、昨年のM&Aにより、経営するうえでの相談相手が得られた。これは、本当に心強いことでした。

また、「人員が必要だ」となった場合には、アイコムシステックや協和エクシオグループに所属する何千・何万人ものなかから、技術者を紹介してもらえます。そんななか、いまは仕事が充実していて楽しいんです。引退後にプライベートでやりたかったことは、ひとまず先延ばしです(笑)。

経営者のみなさんには、遅くとも60歳までに、会社の将来を考えることをおすすめします。当社の場合、株主があちこちに散在していたため、まずは株の買取りを4~5年かけて実施しました。これがけっこう大変なことだったんです。「準備する」という意味でいうなら、早く始めるにこしたことはないと思います。 当社のように成功した事例があります。思い立ったときには、ぜひ、信頼できる方々にご相談してみてください。

<解説>M&Aを取り巻く潮流
M&Aは「吸収・合併」ではありません

IT業界のM&Aの件数は、ここ数年、史上最多を毎年更新しています。2018年は過去最多となる1070件でしたが、今年は6月時点ですでに572件を記録。昨年を上回るペースとなっています。

M&Aの動機として、オーナーの高齢化と後継者不在問題があげられます。日本の中小企業における後継者不在率は66%。3社に2社が後継者難です。また、統計によると、中小企業の経営者年齢の中央値は、20年間で47歳から66歳に推移しています。つまり、20年もの間、世代交代が進んでいないのです。このままだと2025年には、70歳以上の経営者が過半数を超える計算になります。

経営者の年齢が上がれば、リスクをとった経営がしづらくなります。「人財を大量に採用する」とか「大きな宣伝費を投じて勝負に出る」といった積極的な経営ができなくなれば、横ばいの業績になりがちです。

M&Aは「吸収・合併」と訳されるので、会社を吸収すること・合併することと同義に考えている方もいらっしゃいます。でも、基本的に中堅中小企業のM&Aにおいて、いきなり吸収・合併することはまずありません。オーナー個人がもっている株を、買い手企業さんが買うというだけ。純粋な株式譲渡なんです。外から見ると、株主が個人から法人に変わっただけです。当然、社名、所在地、取引先、従業員、なにも変わりません。リストラもありません。

では、なにが変わるのか。買い手企業という心強い事業承継の相手を得たことで、会社の存続が確実になり、経営者が積極的な経営ができるようになる、ということです。いいかえれば、経営者が若返るのです。それにより、より大きな企業成長がもたらされる。もはや、M&Aなくして成長はありません。もっとも成長できる相手を選ぶことが最大のポイントなので、ぜひ、お気軽にご相談いただけたらと思います。

佐武 伸
瀬谷 祐介(せや ゆうすけ)
株式会社日本M&Aセンター IT業界M&A責任者
1984年生まれ。大手金融機関を経て株式会社日本M&Aセンターに入社。調剤薬局業界・IT業界のM&Aアドバイザーとして、50件以上のM&A関与実績がある。現在は、IT業界のM&A責任者として、数多くの友好的なM&A、事業承継を実現している。

小林 秀樹(こばやし ひでき)

株式会社メディックス 代表取締役社長

1957年生まれ。1982年、ラオックス株式会社に入社。コンピュータ事業部で働く。その後、株式会社ユニテックに入社、エンジニアとして活躍。1988年に株式会社メディックスを設立し代表取締役に就任。放送局関連のソフトウェア開発を主に手がけ、業績を伸ばす。将来的な事業承継を見すえて、2018年5月にアイコムシステック株式会社への株式譲渡を行う。その後も代表取締役社長にとどまり、会社を牽引している。

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